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年収1000万でも油断禁物!アパート経営に潜む5つのリスクと回避術

年収が1000万円あると、「銀行融資も通りやすいし、アパート経営なら安定収入が得られるはず」と考えがちです。しかし実際には、空室・金利・税金など複数のリスクが絡み合い、思ったほど手取りが残らないケースが目立ちます。本記事では、2025年12月時点の最新データを踏まえながら、年収1000万クラスの会社員がアパート経営に挑む際に直面しやすい落とし穴を具体的に解説します。読み進めることで、自分の資金計画を再点検し、長期的に安定したキャッシュフローを守る方法がわかります。

年収1000万でも融資は万能ではない

年収1000万でも融資は万能ではないのイメージ

重要なのは、高めの年収があっても融資条件が常に有利とは限らない点です。結論として、自己資金比率と返済比率のバランスを誤ると、想定外の返済負担に苦しむことになります。

まず金融機関は、年収1000万円の個人には年間返済額が年収の35〜40%以内に収まるよう求める傾向があります。例えば年間返済額400万円で計画すると、手取りのおよそ半分がローンに消える計算です。この状態で空室が続くと家計は一気に赤字へ傾きます。

次に、2025年時点の住宅ローン平均金利は日本銀行の統計で変動1.3%、固定2.2%前後です。変動金利を選び低金利の恩恵を受けても、金利上昇局面で返済額が増えるリスクを無視できません。また自己資金を1割に抑えフルローンに近い形で進めると、融資総額が伸びやすい一方で、月々のキャッシュフローが薄くなり、修繕費や広告費を賄えなくなる恐れがあります。

さらに、金融庁「金融レポート2025」は、投資用不動産ローンの審査厳格化を継続すると示しています。年収だけでなく、保有資産や副業状況まで細かく確認される流れが強まっています。つまり、属性よりも事業計画の実現性が重視される時代に突入したといえます。

最後に、自己資金を2割以上投入し、融資期間を物件の法定耐用年数内に抑えると、返済総額を圧縮できます。この保守的な組み立てが、突発的な金利変動や空室リスクに耐えうる安全圏を確保する鍵となります。

キャッシュフローを左右する4つの費用

キャッシュフローを左右する4つの費用のイメージ

ポイントは、家賃収入から差し引かれる経費を正確に把握し、手残り額を予測することです。表面利回りだけを見て判断すると、収支が黒字のはずなのに実際は赤字になる落とし穴があります。

まず固定資産税と都市計画税は、築年数が浅い物件ほど評価額が高く、年間家賃収入の7〜10%に達することがあります。特にRC造の新築アパートでは課税標準が重く、想定を上回る支出になるため注意が必要です。

次に修繕費です。新築時は発生しにくいものの、築10年を超えると屋根や外壁の大規模修繕が避けられません。国土交通省のガイドラインでは、アパート全体の長期修繕費は年間家賃収入の8〜12%を積み立てることが推奨されています。積み立てを怠ると、急な修繕でキャッシュフローが一気に崩壊します。

さらに管理委託手数料と広告費も無視できません。管理会社へ支払う月額手数料は家賃の5%程度が一般的ですが、退去時の広告料は家賃の1〜2カ月分が相場です。長期で見ると、空室解消のための広告費は毎年波があり、見落としやすい費目の一つです。

最後にローン返済以外の保険料です。火災保険や地震保険は、2025年度改定で保険料率が平均3%上がりました。保険期間を長めに設定すると割引がありますが、更新時には必ず値上がりを見込みに入れることが大切です。このように4つの費用を正確に積算することで、家賃収入の実質利回りを把握でき、無理のない運営が可能になります。

空室率21.2%時代の入居戦略

実は、全国平均のアパート空室率が2025年10月時点で21.2%と高止まりしている今、入居戦略は利回り計算と同じくらい重要です。空室リスクは年収や物件規模に関係なく、すべてのオーナーに降りかかります。

第一に、立地の競争力をデータで裏付けることが欠かせません。総務省の人口推計によると、地方都市の20〜39歳人口は前年比1.8%の減少です。つまり、単に「駅徒歩10分以内」ではなく、「大学・病院・大型雇用施設へのアクセスが良いか」を重視し、移動の多い若年層ニーズに的を絞る必要があります。

第二に、間取りと設備をターゲットに合わせて最適化します。例えば都心ワンルーム需要は根強いものの、競合物件はバストイレ別や高速インターネット無料を標準装備しています。共用部に宅配ボックスを追加すると、月額1000円程度の賃料アップが現実的に見込めるという管理会社の実例もあります。

第三に、入居者との長期関係を築く施策が効果的です。更新料を免除する代わりに、室内設備の小規模バージョンアップを提案すると、退去率を抑えられます。日本賃貸住宅管理協会の調査では、退去理由の約30%が「設備の老朽化・不満」です。小さな改善が結果的に空室期間の短縮につながり、収益を底上げします。

最後に、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を活用した募集手法が拡大しています。オンライン内見や電子契約に対応する管理会社と組むと、遠方の入居希望者を取りこぼさず、募集期間を平均10日短縮できたケースも報告されています。年収1000万円のオーナーだからこそ、広告費に余裕を持たせ、新技術への投資を積極的に行う姿勢が求められます。

法人化と税負担、知らないと損

まず押さえておきたいのは、年収1000万の給与所得者が個人名義でアパート経営を始めると、所得税と住民税で45%近い最高税率が適用される可能性がある点です。税負担が大きいと、手残りのキャッシュフローを圧迫します。

法人化すると、実効税率は約30%に下がるうえ、経費計上の自由度が広がります。例えば自宅を役員社宅として貸すスキームを活用すれば、個人の家賃負担を圧縮しつつ、法人経費に組み込むことができます。ただし設立費用や毎期の決算申告コストが発生するため、所得が年間900万円以上になるまでは、節税メリットが相殺されることもあります。

2025年度からは中小法人の交際費課税が年800万円まで非課税に拡充されました。アパート経営でも、入居者向けイベントや管理会社との打合わせ費用を交際費として処理でき、経費枠が広がります。一方で、個人事業主の場合は同様の費用が家事按分で制限を受けやすい点を意識しましょう。

さらに消費税還付を狙った法人スキームにも注意が必要です。新築アパートを建てる際、課税売上割合の要件を満たせば還付を受けられますが、課税事業者選択届出と2年縛りのルールを理解していないと、逆に納税負担が増えるケースがあります。税理士と早期にシミュレーションを行い、自分の投資計画に合ったスキームを設計することが不可欠です。

想定外リスクへの備え方

基本的に、アパート経営では「低確率だが高額」の損失リスクが存在します。火災・地震・家賃滞納・法改正など、多面的なリスクに同時に備える視点が欠かせません。

火災と自然災害については、2025年度の地震保険料率見直しにより、首都圏の2階建て軽量鉄骨アパートで年間保険料が平均5%上がりました。保険料を惜しんで補償を削ると、最悪の場合は復旧費用を自己負担することになります。特約で家賃補償を付けておくと、修繕期間中の収入減をカバーでき、キャッシュフローを安定させられます。

家賃滞納は管理会社の保証サービスで対策できますが、保証範囲や免責期間は会社ごとに大きく異なります。たとえば「滞納3カ月で保証開始」「免責1カ月」という契約では、短期的に家賃が途切れる可能性があります。契約前に具体的な支払いフローを確認し、自己資金でブリッジできるよう運転資金を別途100万円以上確保しておくと安心です。

法改正リスクには、インボイス制度や民法改正による敷金返還ルールの変更などが挙げられます。2025年10月以降は、課税売上が1000万円以下でもインボイス発行事業者を選択するオーナーが増えています。選択しないと、法人テナントから取引を敬遠される可能性があるため、税務面と集客面を総合的に判断する必要があります。

最後に、長期的な金利上昇シナリオも想定しましょう。日本銀行は2025年半ばからステルスタイプの引き締めを示唆しています。固定金利2%上昇時の返済額を試算し、CFがマイナスにならないかチェックする「ストレステスト」を年1回実施すると、危機が迫った際に素早くリスクヘッジ策を打てます。

まとめ

本記事では、年収1000万の会社員がアパート経営を始める際に直面する主なリスクを解説しました。融資条件は年収だけで決まらず、自己資金比率や返済期間がキャッシュフローを左右します。また、固定資産税・修繕費・管理費・保険料という4大コストを正確に見積もることで、収支ブレを小さく抑えられます。空室率21.2%という環境では、立地データと設備投資による入居戦略が欠かせません。さらに法人化を含む税務戦略、自然災害や法改正といった想定外リスクへの備えを組み合わせることで、長期的に安定した収益基盤を築けます。まずは自身の返済比率と修繕積立の計画をチェックし、必要に応じて専門家へ相談する行動から始めてみてください。

参考文献・出典

  • 国土交通省住宅局「住宅・土地統計調査」 – https://www.mlit.go.jp
  • 日本銀行「貸出約定平均金利統計」 – https://www.boj.or.jp
  • 金融庁「金融レポート2025」 – https://www.fsa.go.jp
  • 総務省統計局「人口推計」 – https://www.stat.go.jp
  • 日本賃貸住宅管理協会「住まいの賃貸住宅市場実態調査」 – https://www.jpm.jp

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