ここ数年、会社員の副収入として賃貸物件を買う人が増えています。しかし、誰にとっても収益物件が最適とは限りません。実際には、物件を持った結果、ストレスや損失を抱える人も少なくないのです。本記事では「収益物件 やめた方がいい人」の特徴と、失敗を避けるための対策をわかりやすく解説します。読み終えた頃には、自分が投資に向くかどうかを判断できるようになるでしょう。
収益物件投資が合わないタイプとは

重要なのは、自分の性格とライフプランが賃貸経営に合うかを早めに見極めることです。ここでは、特に相性が悪い三つのタイプを取り上げます。
第一に、損失を極端に恐れる人です。賃貸経営では、空室や修繕といった不確定要素が常に伴います。資金繰りに余裕があっても、毎月の収支変動で睡眠不足になるようなら向いていません。投資全般に共通しますが、精神的な許容度はキャッシュフローより優先されます。
第二に、時間をまったく確保できない多忙なビジネスパーソンです。区分マンションでも入居者対応や確定申告の作業は発生します。管理会社へ丸投げしても、最終判断に要する時間はオーナー自身が捻出しなければなりません。週末すら取れない働き方を続けながら黒字経営を維持するのは難しいでしょう。
三つ目は、決断に時間がかかりすぎる人です。良質な物件は市場に出てから数日で買付が入ることも珍しくありません。書類を読み込むのに時間を要し、専門家へ相談しているうちにチャンスを逃すケースが多いのです。慎重さは大切ですが、期限を区切れないタイプは何度も徒労を味わいます。
以上の特徴に一つでも強く当てはまるなら、まずは不動産以外の運用から始めるほうが無難です。具体的には、REIT(不動産投資信託)の少額積立で市場感覚をつかむ方法が現実的でしょう。
資金計画に不安がある人は要注意

まず押さえておきたいのは、手元資金と融資枠の差がそのままリスクになるという事実です。数字をあいまいにしたまま契約すると、たちまち資金ショートを招きます。
物件価格以外に諸費用が七〜一〇%ほどかかる点を見落とす人が後を絶ちません。登記費用や仲介手数料、火災保険料などは現金払いが基本です。自己資金をギリギリで組むと、引渡し直後に一時的な赤字に陥る可能性があります。
金融機関は担保評価の八〇%までしか貸さないケースが増えています。自己資金二割を出す計算ですが、これはスタート地点にすぎません。長期修繕や入居率の低下に備えて、最低でも家賃収入の六か月分を別口座に確保する方法が堅実です。
さらに、金利上昇ストレステストも欠かせません。日本銀行の短期金利は二〇二五年上期に〇・二五%上昇しましたが、地方銀行の変動金利は連動して〇・三%ほど引き上げられました。三千万円を二五年返済で借りている場合、金利が一%上がるだけで毎月返済額は約一万三千円増えます。
二〇二五年度の住宅ローン控除は居住用限定で、賃貸用ローンには適用されません。税制優遇を勘違いして返済負担を軽く見積もるのは典型的な失敗パターンです。数字を精緻に把握できない人は、収益物件 やめた方がいい人の筆頭と言えます。
メンタルと時間管理が投資成否を分ける
実は、賃貸経営の難所は物件取得後の日常管理にあります。心の余裕と時間のゆとりがなければ、想定外のトラブルで簡単に音を上げてしまいます。
入居者からの夜間連絡や水漏れ対応は、管理会社に委託しても最終決裁が求められます。電話一本で数万円の緊急工事を即決できるかどうかは、オーナーの胆力にかかっています。問題を先延ばしにするとネットの口コミで評判が落ち、収益性に直結します。
空室が三か月続くと、家賃が丸ごと欠損するため心理的負担が急増します。国土交通省の二〇二五年版住宅市場動向調査によると、個人オーナーの退場理由で最も多いのは「精神的ストレス」でした。数字以上に自分の感情が収支に影響する現実を軽視しないようにしましょう。
また、家族の理解も不可欠です。配偶者が賃貸経営に消極的だと、休日の内見や修繕立ち会いが家庭不和の火種になります。家計を共同で管理している場合、損益の説明責任は想像以上に重いものです。
精神的な備えとして、物件購入前に一度管理会社の現場見学に同行する方法があります。生のクレーム対応を観察すれば、自分が許容できるかを具体的に判断できます。時間的余裕とメンタルタフネスを確保できない場合には、一歩引いて検討する価値があります。
最新制度と税務知識のギャップに注意
ポイントは、制度変更のスピードが投資計画を簡単に狂わせる点です。不確かな情報で損をするのは常に個人投資家です。
二〇二四年の税制改正で、築古木造の耐用年数経過後に購入した場合でも定額法で四年均等だった減価償却が、二〇二五年一月以降は最長六年に延長されました。節税メリットが小さくなるため、短期で赤字を出して給与と相殺する手法は効果が薄れています。
一方で、二〇二五年度の「賃貸住宅ZEH化支援事業」は継続中です。外皮性能や断熱材の基準を満たすと、一戸あたり最大九〇万円の補助金を受け取れます。ただし申請は着工前に限られ、枠が埋まるのも早いので、実行する場合は施工会社と連携して早期申請が必須です。
固定資産税についても二〇二五年度評価替えが実施され、都市部の商業地は平均七%上昇しました。対象地区の木造アパートでは年間税負担が一挙に二十万円増える事例も出ています。購入前に市区町村の試算サービスを利用し、引渡し後の税額を見誤らないようにしましょう。
税理士報酬を惜しんで自力申告に挑む初心者がいますが、ミスで追徴を受けると節約分を簡単に超える出費になります。制度が複雑化する今こそ、顧問料を月一万円程度と考えても、専門家を巻き込むほうが結果的に高い利回りを確保できます。
投資前に確認したいセルフチェック項目
基本的に、購入を決める前に自分自身をチェックする習慣を持つだけで、大半の失敗は防げます。以下の流れを使って冷静に判断してみましょう。
まず、ライフプランとの整合性を確認します。十年後に転勤や子どもの進学など大きな支出が控えている場合、長期ローンとの両立が可能かを試算します。仮にキャッシュフローが月五万円でも、教育費のピークと金利上昇が重なれば赤字に転落する恐れがあります。
次に、想定外の支出を吸収できる現金比率を算出します。家計金融調査(二〇二四年版)によれば、貯蓄のうち流動性資金が三割以下の世帯ほど投資損失率が高い傾向です。生活費六か月分とは別に、物件価格の五%を緊急予備としてプールする姿勢が望ましいです。
最後に、運営体制のネットワークを作ります。仲介会社、管理会社、リフォーム業者、税理士をリスト化し、連絡手段と料金目安を事前に把握します。連絡先が揃っているだけで、トラブル発生時の初動が速くなり、損失を最小化できます。
チェックポイントを簡潔に整理すると次の五点に集約されます。
- 手元資金は自己資金二割+予備費を確保しているか
- 金利一%上昇でも家計が耐えられるか
- 家族の合意を文書で得ているか
- 税理士や管理会社と連絡体制を組んでいるか
- 最悪シナリオでもメンタルが折れないか
まとめ
結論として、収益物件はキャッシュフローを生む魅力的な資産ですが、向き不向きがはっきりしています。本記事で挙げた特徴に複数当てはまる人は、まず知識と資金の土台作りに時間を使うほうが得策です。一方で、セルフチェックをクリアし、専門家と連携する準備が整えば、二〇二五年以降の市場でも十分にチャンスがあります。慌てず情報と数字を確認し、自分のペースで一歩を踏み出してください。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅市場動向調査2025年版 – https://www.mlit.go.jp
- 日本銀行 金融政策決定会合資料2025年7月 – https://www.boj.or.jp
- 財務省 税制改正大綱2025年度 – https://www.mof.go.jp
- 環境省 賃貸住宅ZEH化支援事業2025 – https://www.env.go.jp
- 総務省 家計調査年報2024 – https://www.stat.go.jp
- 全国銀行協会 住宅ローン金利動向2025 – https://www.zenginkyo.or.jp