不動産の税金

年収1500万以上 アパート経営 失敗を防ぐ5つの視点

高年収でもアパート経営で手痛い赤字を抱える人は少なくありません。たとえば、年収が一五〇〇万円を超える医師や経営者が節税目的で築古物件を一括購入し、数年でキャッシュフローが逆転した事例も珍しくないのです。本記事では、失敗につながる典型的な落とし穴を整理し、二〇二五年時点の市場データを基に回避策を解説します。読み終えたとき、投資判断の軸が明確になり、思わぬ損失を防ぐための具体的な行動がイメージできるはずです。

なぜ高年収ほど失敗リスクが高まるのか

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ポイントは、高年収ゆえに金融機関から高額融資を得やすく、慎重な精査を飛ばしてしまう点にあります。

まず、年収一五〇〇万円以上の層は与信が厚いため、フルローンやオーバーローンの提案を受けやすいです。融資審査がスムーズに通ると「銀行が貸すのだから安全」という心理が働き、賃料相場や修繕計画を深く検証しないまま契約に進みがちです。

さらに、高収入の本業が忙しいほど物件視察の時間を取れず、仲介会社に調査を丸投げするケースが多いです。その結果、空室率の高いエリアや築年数の古い物件を掴み、後々の修繕費でキャッシュが枯渇する例が後を絶ちません。

実は、金融機関も二〇二四年以降、個人の余裕資金よりも物件収益力を厳しく見る姿勢に変わりつつあります。与信があるから大丈夫と考えるのは危険で、収益性の裏付けを数字で示せなければ追加融資や金利交渉が難しくなる点を忘れてはいけません。

融資条件とキャッシュフローの落とし穴

融資条件とキャッシュフローの落とし穴のイメージ

まず押さえておきたいのは、表面利回りだけでなく返済比率と修繕積立を含めた実質利回りを確認することです。

金利二%で二億円を三五年フルローンした場合、年間返済額は約七七〇万円になります。一方、満室想定家賃が年一二〇〇万円でも、固定資産税や管理費を差し引くと手残りは八〇〇万円前後に減ります。ここに空室率一〇%と修繕積立二〇〇万円を加味すると、一気に赤字になる計算です。

国土交通省住宅統計によれば、二〇二五年十月時点の全国アパート空室率は二一・二%です。つまり、都市部でも入居付けに苦戦する物件は珍しくなく、自己試算で空室率五%など楽観的な前提を置くとキャッシュフローがすぐ破綻します。

また、団体信用生命保険や火災保険の保険料は年々上昇傾向にありますが、シミュレーションに含め忘れる投資家が多いです。支出を一つずつ棚卸しし、空室率を現実的に設定することで、初めて安定経営の基盤が見えてきます。

エリア選定と賃貸需要の読み違い

重要なのは、人口増減と雇用動向をデータで確認し、需要のある間取りを選ぶことです。

地方都市でも新駅開業や大学移転があるエリアは賃貸需要が伸びますが、逆に郊外の単身向けワンルームは供給過多が進んでいます。国勢調査二〇二五年速報では、単身世帯の増加率が仙台市でプラス四・二%、一方で前橋市ではマイナス三・一%と地域差が鮮明です。

にもかかわらず、紹介資料だけを信じて郊外ワンルームをまとめ買いし、入居付けに苦労する失敗が目立ちます。現地の不動産会社三社から客付け状況を聞き取り、募集家賃と成約家賃の差額を調べる作業を怠ると、机上の利回りは簡単に崩れます。

一方で、都心近郊でも学生向けの一Kよりファミリー向け二LDKの成約期間が短い地区が増えています。言い換えると、間取りミスマッチが空室率に直結する時代になり、エリアだけでなくターゲット層の選定が欠かせません。

税金対策が裏目に出る理由

実は、所得税の圧縮だけを目的にすると、トータルコストが節税額を上回る危険があります。

年収一五〇〇万円層がアパート経営を始める動機の一つが、減価償却による所得税・住民税の軽減です。しかし、木造アパートの償却期間は二二年しかないため、一三年目以降は経費計上額が急減し、税負担が元に戻ります。

さらに、帳簿上の赤字が増えると金融機関から家計全体の返済余力を低く評価され、次の投資や住宅ローンに影響することがあります。税金が減っても資金調達力を失えば、中長期的な資産形成は遠のくのです。

二〇二五年度の個人版事業承継税制は事業的規模(五棟一〇室以上)を前提にしていますが、適用要件は厳しく、規模拡大ありきの投資は危険です。節税は結果として得るものであり、目先の減税額で物件を選ぶと、後々の修繕費や売却損で元も子もなくなります。

失敗を防ぐための実践ステップ

まず、事業計画とリスクシナリオを同時に作り、第三者の視点で検証するプロセスが欠かせません。

具体的には、家賃下落率二%、空室率二五%、金利上昇一・五%の厳しい条件で十年シミュレーションを作成します。そのうえで、毎年の手残り現金が一〇〇万円を切るようなら、物件価格交渉か見送りを検討するのが無難です。

次に、管理会社とのインセンティブ設計を見直します。成約家賃が想定を上回った場合に成功報酬を上乗せする契約に変えることで、空室対策のモチベーションを維持できます。また、修繕計画を五年区切りで共有し、突発工事の発生率を下げる工夫も効果的です。

最後に、月次のキャッシュフローと貸借対照表を自分で入力し、数値感覚を養いましょう。数字を自分の言葉で説明できるようになれば、銀行との交渉や売却判断のスピードが飛躍的に高まります。

まとめ

結論として、年収一五〇〇万円以上の方がアパート経営で失敗する主因は、資金力への過信と情報不足が重なり、リスク検証を省くことにあります。本記事で示した融資条件の精査、需要データの確認、そして厳格なシミュレーションを怠らなければ、多額の赤字を避けつつ堅実な資産形成が可能です。今すぐ家賃下落や空室増を想定した計画表を作成し、数字で物件の将来を語れる投資家を目指してください。

参考文献・出典

  • 国土交通省 住宅統計調査 2025年10月速報 – https://www.mlit.go.jp/statistics/
  • 総務省統計局 国勢調査2025年速報 – https://www.stat.go.jp/
  • 金融庁 金融レポート2025 – https://www.fsa.go.jp/
  • 国税庁 令和7年分 所得税の手引 – https://www.nta.go.jp/
  • 住宅金融支援機構 2025年度民間住宅ローンの実態調査 – https://www.jhf.go.jp/

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