年収が400万円前後だと、マンション投資に興味はあっても「ローン返済に追われないか」「空室が出たら破綻するのでは」と不安になる方が多いでしょう。しかし、実は適切な資金計画と情報収集を行えば、手取りが限られていてもリスクを抑えた運用は十分に可能です。本記事では、2025年12月時点の最新データを用いながら、年収400万円層が直面しやすいリスクと、その回避策を具体的に解説します。読み終えるころには、自分に合った投資判断の基準と、失敗しないためのチェックポイントが整理できるはずです。
年収400万円でも投資は可能か

まず押さえておきたいのは、金融機関の融資姿勢です。住宅ローンと異なり、投資用ローンは家賃収入を返済原資とみなすため、年収400万円でも借入自体は十分に可能とされています。全国銀行協会の調査では、2024年度に融資を受けた個人投資家のうち年収400〜500万円層が約27%を占めました。一方で、自己資金が少ないままフルローンに頼ると、家賃が1カ月入らなかっただけで返済が滞る危険があります。つまり、可能かどうかより「安全に返せるか」を判断軸にすることが肝心です。
実際には、自己資金として最低でも物件価格の10〜15%を用意したいところです。たとえば2,500万円の中古区分マンションを例に取ると、頭金250万〜375万円を入れれば借入額は2,125万〜2,250万円に抑えられます。この水準なら、金利1.9%、期間30年で返済額は月約7万円前後となり、都内平均賃料10万円の物件ならキャッシュフローにある程度のゆとりが生まれます。もちろん、自己資金をさらに厚くすればリスクはより小さくなる点は言うまでもありません。
ポイントは、給与収入だけでなく、投資用ローンの返済を家賃収入でまかなえる試算を行うことです。金融機関の審査を通ったとしても、収支計算が甘いと結局は本業収入で赤字を埋める事態に陥ります。年収400万円という限られた可処分所得を守るためにも、空室時シナリオを含めたキャッシュフロー表を事前に作成しましょう。
返済計画とキャッシュフローの落とし穴

重要なのは、月々の返済額だけを見て安心しないことです。国土交通省の「賃貸住宅市場景況調査」によれば、2025年時点で首都圏区分マンションの平均空室率は6.2%です。言い換えると、年間で約3週間は家賃が入らない前提で収支を組む必要があります。また、築15年以上の物件では修繕費が年間賃料の10%程度かかるケースも多いです。
さらに、管理費・修繕積立金の上昇にも注意が必要です。不動産経済研究所のレポートでは、新築時から15年後までに平均で月6,000円上がる例が報告されています。返済額が変わらなくても、ランニングコストがじわじわ増えればキャッシュフローは圧迫されます。ライフプラン表を作る際は、管理費が毎年2%ずつ上がる保守的な試算を組み込みましょう。
実は、持ち出しを防ぐコツは「家賃より返済比率を60%以下」に抑えることです。例えば家賃10万円の部屋なら、返済額は月6万円が上限と考えると余裕が生まれます。金利が変動するローンを選ぶなら、金利が1%上がった時の返済額も試算し、その場合でも返済比率が70%を超えないか確認しておくと安心です。
空室・家賃下落リスクの見極め方
ポイントは、物件選定時に「将来の需要」を数値で確認することです。総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、東京23区は2025年も転入超過を維持していますが、区ごとの格差は拡大中です。例えば足立区の人口は横ばい、中央区は年1.9%増と差が顕著です。つまり、同じ23区でも需要の強さには大きな開きがあるわけです。
家賃の下落カーブも重要です。レインズの成約データでは、築20年を超えると平均家賃は新築時の約75%に低下します。投資判断の際は、将来の家賃を築年数ごとに3%刻みで減算してシミュレーションすることで、楽観的な収支計画を避けられます。また、駅徒歩10分圏内と15分圏外では成約スピードに平均1.6倍の差があるため、立地は空室リスクに直結します。
ここで一つ覚えておきたいのが、「周辺競合物件の供給ペース」です。国交省の住宅着工統計を見ると、23区でも江東区や品川区は新築供給が多く、将来の競争が激しくなる懸念があります。購入前に役所の都市計画課で再開発予定を確認し、数年後に同規模の新築が大量供給されないかを把握しておくと回避策になります。
金利上昇と税制変更への備え
まず、2025年12月時点で日銀はマイナス金利政策を解除しており、長期金利は1.2%台で推移しています。住宅ローンより金利が高い投資用ローンは、変動型で2%前後、固定型で2.6%前後が目安です。今後さらに0.5%上がるだけで、借入3,000万円の場合は月々の返済が約7,000円増えます。小幅でも総支払額には大きく影響するので、固定と変動のどちらを選ぶかは慎重に比較しましょう。
税制面では、2025年度も不動産所得と給与所得の損益通算は認められています。ただし、赤字計上を続けると金融機関の追加融資が受けにくくなる副作用があります。また、住宅ローン控除は自宅用に限定され、投資物件には適用されません。税金メリットに期待しすぎると、思わぬキャッシュアウトになるため注意が必要です。
金利と税制は国策で動きますが、個人がコントロールできるのは「借入総額」と「金利タイプ」の選択です。返済期間を25年以内に短縮すれば、元金の減りが早く金利リスクを抑えられます。また、期間固定型を選びつつ、手元資金が貯まったら繰上返済を行う二段構えも有効です。
リスクを抑える物件と運用のチェックリスト
最後に、年収400万円層が実践しやすいリスク管理手順を整理します。箇条書きで示しますが、各項目の裏付けとなるデータや考え方は前述の通りです。
- 物件価格の15%以上を自己資金として用意する
- 家賃に対する返済比率を60%以下に設定する
- 空室率10%、家賃10%下落でも黒字かシミュレーションする
- 駅徒歩10分圏内、築15年以内を基本条件にする
- 管理費・修繕積立金の年2%上昇を織り込む
- 金利1%上昇シナリオでも返済が継続可能か確認する
上記をすべてクリアできれば、年収400万円でも破綻リスクは大幅に下がります。加えて、管理会社との連携を密にし、募集条件の見直しや小規模リフォームをタイムリーに実施できれば、空室期間を短縮しながら資産価値を維持できます。
まとめ
本記事では、年収400万円の方がマンション投資で直面しやすい資金計画、空室・家賃下落、金利変動と税制変更のリスクを整理し、それぞれの回避策を解説しました。鍵となるのは、自分の手取りでカバーできる安全圏を明確にし、保守的なシミュレーションで収支を組むことです。記事中のチェックリストを用いて物件選定と資金計画を行えば、家計を圧迫せずに長期の資産形成が期待できます。まずは家賃と返済比率を見直し、小さな成功体験を積み上げる一歩から始めてみてください。
参考文献・出典
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 国土交通省 住宅着工統計 – https://www.mlit.go.jp
- 全国銀行協会 個人向け融資動向調査 – https://www.zenginkyo.or.jp
- 総務省 住民基本台帳人口移動報告 – https://www.soumu.go.jp
- レインズ マーケットインフォメーション – https://www.reins.or.jp
- 日本銀行 金融政策決定会合資料 – https://www.boj.or.jp