年収が約400万円だと「不動産投資は高嶺の花」と感じる人が少なくありません。しかし、実際には平均的な会社員でも計画的に準備すれば物件を保有し、家賃収入を得ることが十分に可能です。本記事では、年収400万でも実現できる資金計画、融資の受けやすさ、リスクを抑える物件選び、そして税制優遇までを体系的に解説します。読み進めることで、自分の年収帯に合った戦略と具体的な行動ステップが分かり、将来の資産形成に向けた一歩を踏み出せるでしょう。
年収400万から始める資金計画の基本

まず押さえておきたいのは、自己資金と月々の返済額のバランスです。年収400万の場合、手取りはおおむね月25万円前後となり、金融機関が融資審査で注視する年間返済負担率は30〜35%が目安になります。
日本政策金融公庫の統計によると、自己資金が物件価格の20%を超えると融資審査の承認率が約1.4倍に向上する傾向があります。そのため、物件価格2000万円なら400万円程度の頭金を用意すると審査が通りやすく、借入金額も抑えられるため毎月の返済額が安定します。また、諸費用として購入価格の7%前後が別途必要です。ここを見落とすと予定が狂うため、自己資金と合わせて計画的に貯蓄しましょう。
一方、予備費も欠かせません。国土交通省の「住宅リフォーム調査」によれば、築20年を超える集合住宅では年間平均12万円の修繕費が発生しています。突発的な費用をカバーするため、家賃の1〜2カ月分を毎月のキャッシュフローとは別枠で積み立てると安心です。こうした準備が、物件購入後の資金ショックを防いでくれます。
つまり年収400万でも、自己資金20%+諸費用+予備費の三段構えを意識すれば、無理のない資金計画を立てられるのです。資金計画の健全さは、その後の融資交渉や物件選定の土台となります。
安定収入が生む融資メリット

重要なのは、安定的な給与所得があること自体が金融機関にとって大きな安心材料になる点です。住宅金融支援機構のデータでは、年収400万前後の会社員は変動金利1.3〜1.8%で融資を受けるケースが増えています。
融資審査では勤務先の規模や勤続年数も評価されますが、年収400万円帯は実はボリュームゾーンです。そのため、同程度の年収で実績を積んだ先行投資家事例が多く、金融機関側もリスクを定量的に把握しやすいという利点があります。また、団体信用生命保険(いわゆる団信)への加入によって、万一の際の返済リスクがカバーできる点も評価されます。
さらに、2025年度も継続する住宅ローン減税は、自宅用だけでなく一定要件を満たす投資用区分マンションにも適用できる場合があります。減税額はMAXで年控除額40万円×最長10年ですが、投資目的で利用する際は「合計所得金額2000万円以下」など細かい条件があるため、税理士に確認しながら進めましょう。
年収400万クラスだからこそ「融資を受け過ぎない」姿勢が大切です。返済負担率を25%以下に収めるシミュレーションを複数作成すると、将来の金利上昇局面でも耐えられるポートフォリオが組めます。金融機関と交渉する際は、家計簿や貯蓄実績を提示し、堅実な管理体制をアピールすると金利優遇を引き出せる可能性も高まります。
リスクを抑える物件選びとエリア戦略
ポイントは、初期投資を抑えつつ空室リスクが低いエリアを見極めることです。総務省の住民基本台帳によれば、都心部周辺5km圏の20〜39歳人口は2020年比で2025年も微増が続いています。一方で郊外の駅徒歩15分超エリアは軒並み減少傾向にあり、将来の賃貸需要に差が生じる見込みです。
実は、築15〜20年の都心ワンルームは価格がこなれており、表面利回り5〜6%でも実質空室率が低いぶん安定した収益を生みます。反対に郊外ファミリータイプは利回り7%前後と一見魅力的ですが、成約までの平均空室期間が都心部の約1.5倍に伸びるデータがあります。年収400万で初めて投資するなら、安定優先で都心・好立地の中古区分を検討するのがセオリーです。
ただし、価格だけで判断すると長期的な修繕コストがかさむ恐れがあります。管理組合の修繕積立金総額や直近の大規模修繕履歴を確認し、将来的な出費を見通すことが不可欠です。建築後30年以内、直近10年で大規模修繕済みの物件を選ぶと、突発的な資金流出を抑えられます。
加えて、賃貸需要の指標としてコンビニやドラッグストアの出店状況、夜間の人流データをチェックすると精度が上がります。オープンデータとして提供される人流統計を活用すれば、エリアの将来性を客観的に判断できるでしょう。こうした多角的な視点が、年収400万クラスの限られた投資余力を最大化します。
キャッシュフローを改善する具体策
まず押さえておきたいのは、収入を増やすより支出を減らす方が即効性が高いという点です。管理会社の手数料を相場の5%から4%へ下げるだけで、家賃7万円なら年間8400円の改善となり、複数戸を持てば効果が積み上がります。
一方で、家賃設定をむやみに上げるのは危険です。国土交通省の「不動産価格指数」によれば、2025年現在の賃料は都心ワンルームで過去5年平均プラス1.4%にとどまります。相場以上の値付けは空室期間を長引かせるため、募集後2週間で反応が薄い場合は柔軟に見直しましょう。また、原状回復費を抑えるため、入居前の壁紙を1面だけアクセントクロスに替える「部分リフォーム」が人気です。費用1万円程度で見栄えが上がり、退去時に全面張り替える必要が減るメリットがあります。
固定費削減では、火災保険の複数年契約が有効です。例えば5年一括払いにすることで年換算15%前後の割引が適用されます。さらに、借り上げ保証(サブリース)を利用する場合は手数料や将来の賃料改定条件を必ず精査し、総収益に与える影響を試算してから契約すると失敗を防げます。
このように、日々の運用コストを1%でも引き下げる意識が長期的なキャッシュフロー改善につながります。年収400万の投資家にとっては、細かな管理が堅実なリターンを生む最大の武器です。
税制優遇と出口戦略で得られる長期メリット
実は、不動産投資の利益は「運用中」と「売却時」で課税方式が異なります。運用中の家賃収入は総合課税ですが、減価償却費を計上できるため、税負担を抑える余地があります。築20年超の木造物件は償却期間が短いため経費効果が大きいものの、修繕リスクも高まる点を忘れてはいけません。
2025年度の所得税控除では、不動産所得から最大20万円までの青色申告特別控除が適用できます。帳簿付けや決算書作成といった手間はかかりますが、クラウド会計ソフトの普及でハードルは下がっています。年収400万の給与所得者がこの控除を活用すると、実効税率10%前後として年間2万円の節税になり、管理コストを差し引いてもメリットが残ります。
売却時には譲渡所得税がかかりますが、所有期間5年超で税率が39%から20%へ半減します。つまり、最初から7〜10年保有して売却益を狙う中長期プランを描くと税率面で有利です。また、2025年度も継続する「特定住宅用財産の買換え特例」を活用すれば、一定要件の下で譲渡益を繰り延べられるため、次の物件へスムーズにステップアップできます。
出口戦略を考える際は、将来の賃貸ニーズだけでなく再開発計画やインフラ整備など行政の都市計画も確認しましょう。国土交通省の都市再生特別措置法に基づくエリア指定は、発表から2〜3年で地価に影響が表れます。こうした中長期の視点を取り入れることで、年収400万の投資家でも売却益を最大化できる道筋が見えてきます。
まとめ
本記事では、年収400万でも可能な不動産投資のメリットと具体的な進め方を解説しました。自己資金20%を確保し、返済負担率を25%以下に抑える資金計画が第一歩です。次に、安定収入を武器に低金利融資を引き出し、都心中古ワンルームなど空室リスクの低い物件を選ぶことで堅実なキャッシュフローが期待できます。さらに、日々の運用コスト削減と青色申告特別控除などの税制優遇を組み合わせることで、手取り収益を底上げできます。最後に、5年以上の保有を見据えた出口戦略まで描けば、給与収入だけに頼らない安定した資産形成が実現します。今日から情報収集と貯蓄を始め、将来の選択肢を広げていきましょう。
参考文献・出典
- 国土交通省 – https://www.mlit.go.jp/
- 総務省統計局 – https://www.stat.go.jp/
- 日本銀行 – https://www.boj.or.jp/
- 国税庁 – https://www.nta.go.jp/
- 住宅金融支援機構 – https://www.jhf.go.jp/