相模原市でワンルーム投資を検討しているものの、「本当に空室は埋まるのか」「都内より安いけれど利回りは十分なのか」と不安を抱える方は多いでしょう。地方都市に近い魅力と首都圏の需要を併せ持つ相模原市は、初心者にも取り組みやすいエリアといえます。本記事では二〇二五年十二月時点のデータをもとに、需要動向から収支シミュレーションの勘所、融資の最新事情までを網羅します。読み終えるころには、自分の目的に合った物件をどう選び、どのように運営すればよいかが具体的に見えてくるはずです。
相模原市の賃貸需要を読み解く鍵

まず押さえておきたいのは、相模原市が「学生」「単身社会人」「防衛関連」の三本柱で安定した単身需要を抱えている点です。市の住宅・土地統計調査(二〇二四年速報)によると、単身世帯数は直近五年間で六%増加しました。
一つ目の要因は大学の集積です。青山学院大学や北里大学などがキャンパスを構え、毎年一万人規模の学生が市内外から流入します。学生は築年が古くても家賃が手頃なワンルームを選びやすく、更新率も高いため、安定した稼働が期待できます。
二つ目に、都心へのアクセスです。JR横浜線や京王相模原線を利用すると、新宿・渋谷まで四十分前後で到着します。総務省の通勤者流動統計では、相模原市在住で都内に通勤する単身者は約三万八千人と推計されており、テレワーク併用の広がりで「家賃を抑えつつ都内へ出やすい沿線」を選ぶ流れが続いています。
三つ目が防衛関連需要です。米軍相模総合補給廠や陸上自衛隊相模原駐屯地が立地し、単身赴任の隊員が社宅の代わりに民間賃貸を利用するケースがあります。こうした多様な需要源が重なっているため、業者間データでも二〇二五年の平均空室期間は五十六日と、政令指定都市の中で短めです。
価格と利回りの相場感を具体的に把握する

重要なのは、投資効率を実数値で把握することです。二〇二五年十一月時点でのレインズ成約データによれば、市内ワンルーム(専有面積二五平方メートル前後)の平均成約価格は一千二百万円、表面利回りは六・八%でした。
まず中央区淵野辺・矢部エリアは大学が集まるため、家賃相場が五万八千円前後と比較的高めに維持されています。一方、南区相模大野駅周辺は小田急線で新宿直通三八分という利便性があり、分譲価格はやや高いものの家賃も六万円台半ばを確保できます。利回り重視なら横浜線の橋本駅より北側が狙い目です。リニア中央新幹線新駅の開業計画に伴い、一部築古物件でも再開発期待が先行して値上がりしつつありますが、現時点では五万二千円程度の家賃で購入価格が千万円前後、表面七%超を実現できるケースが残っています。
しかし、利回りだけで判断すると修繕費と管理コストが埋没しがちです。特に築二十五年以上の区分マンションは屋上防水や給水管交換など、将来三百万円超の大規模修繕積立金増額が見込まれます。つまり、ネット利回り(家賃収入から管理費・修繕積立金・固定資産税を差し引いた後の利回り)を試算し、五%前後を確保できるかを確認することが欠かせません。
融資最新事情と二〇二五年度控除のポイント
ポイントは、金融機関の選定と税務優遇を組み合わせて資金効率を上げることです。二〇二五年度も引き続き、投資用区分マンション向け融資は都市銀行より地方銀行や信用金庫で積極的に取り扱われています。相模原市内に本店を置く信用金庫では、融資期間三十五年、金利二・一%(変動)の商品が主流で、自己資金一割を投入すれば審査が通りやすい傾向があります。
融資を利用する場合、減価償却による所得税節税効果も見逃せません。鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は四十七年ですが、中古購入では残存年数を基準に四分の一で償却できるため、築二十年なら残り二七年、年間約三十万円の経費計上が可能です。また、二〇二五年度の損益通算ルールでは、給与所得と不動産所得の合算控除上限が引き続き赤字二百万円まで認められています。これにより、投資初年度のキャッシュアウトを抑えつつ将来の修繕資金を積み立てる余裕が生まれます。
さらに、相模原市内で一定の省エネ性能を満たす新築ワンルームを購入すると、不動産取得税の軽減措置(標準税率四%→三%)が適用されます。適用期限は二〇二六年三月三十一日までと定められているため、計画中の方は早めに着手するとよいでしょう。
収支シミュレーションで押さえる三つの指標
実は、初心者が見落としがちな指標は「空室率」「金利上昇」「修繕積立金増額」の三つです。これらを組み込んだシミュレーションを行うことで、初めてリスクに耐えられるかどうかが判定できます。
まず空室率は、市平均三・五%を基準に、厳しめに一〇%で計算しましょう。家賃六万円なら年間収入は七十二万円ですが、空室一〇%を加味すると六十四万八千円になります。次に金利は現状二・一%でも、二%上昇し四・一%になった場合の返済額を試算し、返済比率が家賃収入の四〇%以内に収まるか確認します。最後に、修繕積立金は築二十五年を超えると一平米あたり月額三百五十円程度に上がる事例が多く、年間で九万円前後の負担増となる点も忘れずに組み入れます。
こうした保守的な条件でもキャッシュフローが黒字なら、実際の運営で想定外の出費が起きても慌てずに対応できます。反対に試算が赤字に転落する場合は、購入価格をもう一段下げる交渉をするか、別エリアへの乗り換えを検討する決断が必要です。
購入後の運営戦略と出口を考える
基本的に、区分ワンルーム投資の成否は「長期保有で安定収益を得る」か「再開発や価格上昇局面で売却益を狙う」かで異なります。相模原市では二〇三〇年前後のリニア開業が話題ですが、周辺地価の上昇がいつ収益に反映されるかは読みにくい面があります。
長期保有を選ぶなら、管理会社との連携が要です。入居者属性を定期的に分析し、学生向けにはインターネット無料設備、社会人には家具家電付きプランを導入するなど、ターゲットに合わせた付加価値を提供します。また、退去時原状回復費の抑制策として、耐久性の高いフロアタイルや汚れに強いクロスを採用することで修繕費を三割程度削減した事例もあります。
一方で売却益を狙う場合は、築年数と立地による価格維持力を十分に見極める必要があります。築十五年以内で駅徒歩五分以内の物件は、区分所有取引価格指数(国土交通省)でも値下がり幅が小さい傾向があります。買取業者への一括査定を早めに取得し、希望価格と市場価格のギャップを把握しておくと、売り時の判断材料になります。
まとめ
本記事では、相模原市ワンルーム投資の需要構造、価格と利回りの相場、二〇二五年度の融資・税制優遇、リスクを織り込んだシミュレーション方法、そして長短二つの運営戦略を解説しました。空室率一〇%・金利四%でも黒字を確保できる物件を選び、ターゲットに合わせた設備投資を行えば、安定したキャッシュフローを実現できます。まずは実勢家賃と管理コストを正確に把握し、保守的な試算を行うことが第一歩です。行動を起こすタイミングは、情報がそろった「今この瞬間」かもしれません。
参考文献・出典
- 相模原市住宅都市局住宅・土地統計調査速報(二〇二四年) – https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp
- 国土交通省 レインズデータライブラリ(二〇二五年十一月版) – https://www.reins.or.jp
- 総務省 令和五年通勤者流動統計 – https://www.stat.go.jp
- 国土交通省 区分所有取引価格指数(二〇二五年九月速報) – https://www.mlit.go.jp
- 神奈川県信用金庫協会 住宅ローン・不動産投資ローン統計(二〇二五年度) – https://www.shinkin.org/kanagawa