賃貸経営に興味はあるものの、どのエリアで物件を購入すべきか決めかねている方は多いでしょう。特に人口が多く経済活動も活発な横浜市は魅力的に映りますが、競争が激しいぶん不安も残ります。本記事では、横浜市 収益物件の特徴や最新データを基に、初心者でも失敗しにくい選び方と運用術を解説します。読み終える頃には、自分に合った投資戦略が具体的にイメージできるようになります。
横浜市の市場環境を読み解く

重要なのは、横浜市の人口動態と経済基盤を正しく把握することです。横浜市統計ポータルによると、2025年の推計人口は約377万人で、首都圏内でも安定した微増傾向が続いています。とりわけ20〜40代の勤労世代が市内中心部と湾岸エリアに集中しており、単身向け賃貸の需要は底堅いと言えます。
一方で、郊外部では世帯高齢化が進んでおり、ファミリー層よりシニア層向けの住み替え需要が増加しています。つまり市内でもエリアによって入居者層が大きく異なり、ターゲットを絞らないと空室リスクが高まります。また、国土交通省の地価公示データでは、みなとみらい地区の商業地が前年比4.2%上昇と強含みですが、金沢区や栄区の住宅地は横ばいです。立地ごとの価格差が拡大している点にも注意が必要です。
家賃水準を確認すると、総務省住宅・土地統計調査の2025年版では、市平均の月額家賃が7.9万円と川崎市よりやや高い水準です。しかし中心部の中区と西区は10万円台が珍しくない一方、瀬谷区や泉区では6万円台が主流です。この格差は利回り計算に直結するため、表面利回りだけでなく実質利回りを見極める力が欠かせません。
また、横浜市は市独自の「民間賃貸住宅質向上認定制度」を運用しており、耐震補強や省エネ改修を行った賃貸住宅に対して固定資産税の軽減措置が2025年度も継続しています。こうした制度を活用すれば長期的な運用コストを抑えられ、競合物件との差別化にもつながります。
収益物件タイプ別のメリットと注意点

まず押さえておきたいのは、収益物件の種類によってキャッシュフローとリスク構造が大きく異なる点です。ワンルームマンションは初期投資額が抑えられ、単身需要が豊富な横浜駅周辺で人気があります。実は平均利回りが5%前後と安定する一方、家賃水準の上昇余地は小さいため家賃改定での伸びしろは限定的です。
木造アパートは戸数が多ければ空室分散が効き、戸塚区や港南区の駅徒歩10分圏内で利回り7%台の物件も見つかります。しかし建物の維持管理費が高く、築20年を超えると外壁改修などで数百万円単位の支出が発生しやすい点に注意が必要です。さらに金融機関の融資期間が短く設定される傾向があり、毎月の返済負担が重くなりやすい点も忘れないでください。
一方で、RC造(鉄筋コンクリート造)の一棟マンションは耐用年数が47年と長く、長期融資を組みやすいためキャッシュフローの安定度が高いとされています。港北ニュータウン周辺では、築15年のRC造でも利回り6%超の案件が出ることがあります。とはいえ、購入価格が高額になるため自己資金2割に加えて予備費を必ず確保しないと資金繰りが苦しくなる恐れがあります。
最近注目を集めるのが、築古戸建てをリノベーションしてシェアハウスやマンスリーマンションとして運用する手法です。固定資産税評価額が低いうえ、改修費に対して横浜市の「既存建築物省エネ改修補助金(2025年度)」が最大100万円交付される可能性があります。ただしシェアハウス運営は居住者間トラブルや管理コストがかさむ点を十分に見込む必要があります。
キャッシュフローを最大化する資金計画
ポイントは、購入価格だけでなく融資条件と運営費用を総合的に見積もることです。日本政策金融公庫の2025年調査によれば、賃貸住宅向け融資の平均金利は固定2.0%、変動1.4%前後で推移しています。具体例として、3,000万円のワンルームを金利1.4%、期間30年で借りると月額返済は約10万円です。家賃が9万円なら単純計算で赤字になり、管理費・修繕積立金を加えるとさらに収支は悪化します。
したがって、手元資金を2割以上入れて元本を圧縮し、表面利回り6.5%以上を最低ラインに設定すると安全度が高まります。さらに、横浜市は市内全域で賃貸住宅のエネルギー効率向上を推進しており、太陽光発電や高効率エアコン導入時の国の「賃貸住宅省エネ投資促進税制(2025年度適用可)」を利用すれば、初年度に一括償却できる特例があります。減価償却による節税効果を早期に得ることでキャッシュフローを改善できる点は見逃せません。
次に、長期運営を見越して「修繕積立口座」を確実に作ることが欠かせません。空室率15%を想定したうえで、毎月家賃収入の10%を修繕積立金として別口座に移すと、将来の大規模修繕に備えられます。この仕組みを徹底すれば、突発的な修繕費で追加借入をせずに済み、返済負担が暴発するリスクを抑えられます。
最後にシミュレーションのコツを整理します。
- 金利上昇2%まで耐えられるかを確認
- 空室率20%でも黒字になる家賃設定かを検証
- 修繕積立と税金を加味した実質利回りを試算
この三つをクリアして初めて安全な投資計画と言えます。
エリア選定で差がつく実践ポイント
実は、横浜市内でも駅周辺の再開発計画が多いエリアほど将来の賃料上昇が見込めます。横浜市都市整備局によれば、2025年時点で再開発が進む主な地区は「横浜駅きた西口」「関内駅周辺」「上大岡駅東口」です。これらは商業施設やオフィス誘致が予定されており、若年層の流入が期待できます。
一方、利回り重視なら周辺インフラが整いながらも地価が抑えられている「東戸塚」「鶴見市場」「弘明寺」などの準主要駅が狙い目です。相鉄・東急直通線が2024年に開業し、都心とのアクセスが改善された影響で、戸建てよりも賃貸マンションの需要が顕在化しています。地価の上昇が緩やかなため、購入価格を抑えつつ家賃を維持しやすい特徴があります。
さらに、横浜市は区役所ごとに「空家等対策計画」を打ち出し、古家の賃貸活用を後押ししています。例えば金沢区では空き家バンクを通じて改修後に賃貸へ転用する際の助成金が最大30万円交付されます。こうしたローカル施策を利用すれば初期投資を削減でき、実質利回りを引き上げられます。
最後に、物件選定では通勤時間30分圏内かつバス便を避け、徒歩10分以内を基本ラインに据えることが大切です。人口動態を踏まえると、若年層は「ドア・ツー・ドア」の通勤時間を重視する傾向が強く、駅距離の長い物件は大幅な家賃ディスカウントが必要になります。立地条件を妥協しないことが、長期安定運用の近道です。
まとめ
今回のポイントは、市場データを基にしたエリア分析と、融資・税制を含む総合的な資金計画を両立させることでした。横浜市は人口と経済が安定している一方、エリアによる需要格差が大きいため、入居者ターゲットを明確にして物件タイプを選ぶ姿勢が求められます。さらに、2025年度も利用できる省エネ投資促進税制や市独自の改修補助金を活用すれば、キャッシュフローを押し上げることが可能です。結論として、データに基づく冷静な分析と制度活用を徹底すれば、横浜市の収益物件は初心者にとっても安定資産を築く有力な選択肢になります。まずは自分の予算と目標利回りを明確にし、信頼できる仲介会社とともに具体的な物件を見学する一歩を踏み出してみてください。
参考文献・出典
- 横浜市統計ポータル – https://www.city.yokohama.lg.jp
- 国土交通省 土地総合情報システム – https://www.land.mlit.go.jp
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp
- 日本政策金融公庫 融資統計 2025年版 – https://www.jfc.go.jp
- 横浜市都市整備局 再開発計画資料 – https://www.city.yokohama.lg.jp/development