東京都心に近い港区で収益物件を探しているものの、「価格が高すぎて利回りが見えにくい」「競争が激しいため初心者には難しいのでは」と悩む人は少なくありません。しかし都心部ならではの高い賃貸需要と、長期的な資産価値の保ちやすさは大きな魅力です。本記事では港区の市場特性から収益物件の選び方、最新の税制や法規制までを整理し、初心者でも判断材料を持てるよう解説します。読み終えるころには、自分に合った投資戦略を描くヒントが得られるはずです。
港区が投資家に選ばれる理由

まず押さえておきたいのは、港区が国内外の投資家から一貫して注目される背景です。最大の要因は、人口流入が続き賃貸ニーズが途切れにくいことにあります。国勢調査によると2020年から2025年にかけての港区の人口増加率は約3%で、同期間の23区平均を上回ります。
続いて、港区は大手企業の本社や各国大使館が集まり、国内外の高所得層が職住近接を求めて転入します。この層は家賃許容額が高く、共用施設の充実した高級賃貸に需要が集中します。つまり月額30万円を超える賃貸でも一定の需要があるため、高額物件でも空室期間が短く収益安定性が高いのです。
さらに交通利便性が将来も維持されやすい点は重要です。日比谷線や南北線の再開発計画、羽田空港と都心を結ぶ新ルート整備が進むことで、賃貸需要は中長期的にも底堅いと推測できます。また、2025年度に向けて区主導の環境配慮型開発が進み、エリア全体のブランド力が強化される見込みです。
収益物件のタイプと収益性の特徴

ポイントは、物件タイプによって利回りとリスクが大きく異なることです。港区で流通が多いのはワンルーム区分マンション、一棟レジデンス、そして宿泊系の用途変更が可能な小規模ビルの三つです。
ワンルーム区分は価格帯が5,000万〜9,000万円が中心で、表面利回りは3.0〜3.8%が目安です。運営が比較的容易で出口戦略も立てやすい半面、フルローンの場合はキャッシュフローが薄くなるため、頭金2割程度を入れて金利負担を抑える戦略が推奨されます。
一棟レジデンスは土地を含むため資産価値を保ちやすく、築浅であれば表面利回り4%台も狙えます。ただし土地が高額な港区では購入価格が3億円を超えるケースが一般的です。融資期間は最長35年が目安ですが、建物の構造と築年数により短縮されるため、金融機関の評価が投資成否を左右します。
小規模ビルは1階を店舗、上階を住居や宿泊施設に転用できる柔軟性が魅力です。賃料単価が高い反面、用途変更手続きと改装費がかさむ点がデメリットです。2025年12月時点で宿泊業許可のハードルはコロナ禍以前より緩和されていますが、防火・衛生基準の改修コストを十分に見積もる必要があります。
価格帯とキャッシュフローの現実
重要なのは、想定利回りだけで判断せず毎月の手残りを具体的に試算することです。港区 収益物件の平均的な実質利回りは、管理費・修繕積立金・固定資産税を差し引くと2.5〜3.0%に落ち着きます。
例えば価格7,000万円の区分マンションを年利1.8%・30年元利均等で9割融資すると、月返済額は約23万円です。一方で家賃が28万円、管理費等が3万円なら、手残りは月2万円前後にとどまります。自己資金を増やし返済額を月18万円程度まで下げられれば、手残りは7万円台に改善し、長期保有でも資金繰りが安定します。
一棟物の場合、融資金利は1.5%前後と区分より有利でも、賃料が数戸同時に下落するとキャッシュフローが急減します。そのため空室率10%、賃料下落5%のストレスシナリオでシミュレーションを行い、手残りが黒字を維持できるか確認するのが安全策です。東京都住宅政策本部の統計では、港区の平均空室率は近年4%台で推移していますが、築年数が20年を超えると空室リスクが高まる傾向があります。
物件選びで注意すべき法規制と2025年度税制
まず、不動産取得税や登録免許税の軽減措置は2025年度も継続が決定しています。新築または築後20年以内(耐火建築物は25年以内)の住宅用途なら、固定資産税が当初3年間半額になる特例も利用可能です。一棟物の購入時には土地面積200㎡までが評価額1/6になるため、都心部でも税負担を抑えられます。
一方で港区は商業地域が多く、建ぺい率・容積率が高い代わりに、防火地域として耐火建築物規制が厳格に適用されます。木造三階建て以上の新築は事実上不可となり、用途変更でも耐火性能の確保が求められます。また、準工業地域の一部では2025年度から騒音規制が強化され、店舗併用型ビルの深夜営業が制限されるケースもあるため、賃貸契約の更新時に収入が減るリスクを把握すべきです。
税制面では、2025年度の住宅ローン減税が投資用物件には適用されませんが、登録免許税の軽減措置を受けるためには耐震基準適合証明が必要です。築古物件を取得する場合は、購入前に耐震診断と必要に応じた改修費を試算し、減税額と比較して採算を確認しましょう。
失敗しない購入プロセス
実は、物件そのものよりも資金調達と運営体制の構築が成功の鍵を握ります。まず融資はメガバンクだけでなく、都内に支店を持つ信用金庫や信託銀行も比較し、返済期間と自己資金割合のバランスを取ることが重要です。港区物件は担保評価が高く、金利1%台前半を提示されるケースも増えています。
次に管理会社の選定では、港区での管理実績と外国籍入居者への対応力を確認しましょう。同区では居住者の約8%が外国籍であり、英語対応のコールセンターや多言語契約書を用意できる管理会社は入居率の面で有利です。
購入から運営までの情報共有をスムーズにするため、税理士と司法書士を早い段階でチームに加えると、各種税務手続きや賃貸契約更新時の法的リスクを低減できます。特にインボイス制度が始まった今、課税事業者登録をどうするかは家賃収入が1,000万円を超える見込みのある投資家にとって大きな検討ポイントです。
最後に出口戦略として、将来的に売却益を狙うのか、相続対策として長期保有するのかを明確にします。長期保有を前提とする場合、2025年度の相続税評価見直しで借地権割合が変更される可能性があるため、税理士と試算を行い保有期間中の収支だけでなく、資産継承時の負担も把握しておくと安心です。
まとめ
港区 収益物件は価格の高さがハードルになる一方で、安定した賃貸需要と強い資産価値が大きな魅力です。物件タイプごとの収益性の違い、税制優遇や法規制を踏まえた資金計画、そして適切な運営体制の構築が成功のカギになります。まずは自己資金と融資条件を固め、空室リスクや税負担を織り込んだシミュレーションを行いましょう。将来の出口戦略まで描けば、都心の一等地で着実なキャッシュフローと資産形成の両立を目指せます。あなたの投資が長期的な安定収益につながることを願っています。
参考文献・出典
- 東京都総務局統計部 – https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp
- 東京都都市整備局「都市計画情報提供サービス」 – https://www2.wagmap.jp/tokyo_tokei/
- 国土交通省 住宅局「住宅・土地統計」 – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo
- 港区役所 都市計画課 – https://www.city.minato.tokyo.jp
- 財務省「租税特別措置等説明資料 2025年度版」 – https://www.mof.go.jp