不動産投資を始めたいけれど、どこに物件を持つべきか決め切れない――そんな悩みを抱える方は多いものです。特に江東区は再開発が進み、家賃水準も安定しているため、アパート経営の候補として注目を集めています。本記事では、江東区 アパート経営の魅力とリスクを数字と事例で整理し、資金計画から運営までのポイントを具体的に解説します。読み終わるころには、江東区での投資判断を自分の言葉で説明できるようになるはずです。
江東区の市場動向とエリアの魅力

まず押さえておきたいのは、市場全体の空室率と人口動態です。国土交通省の住宅統計によると、2025年10月時点の全国アパート空室率は21.2%で、前年比0.3ポイント改善しました。一方、東京都都市整備局の調査では、江東区の木造アパート空室率は18%前後と全国平均を下回っています。
江東区は湾岸部と内陸部で性格が異なります。豊洲や有明はタワーマンションが林立し、単身ビジネスパーソンが多いエリアです。対して亀戸や大島は昔ながらの住宅街が広がり、アパート需要はファミリーや高齢者が中心となります。つまり、同じ区内でもターゲットを明確にすれば、空室リスクを抑えた運営が可能です。
また、江東区の人口は2025年7月時点で約53万3千人と10年前より7%増加しています。子育て世帯の流入が続くことで賃貸需要が底堅い点も見逃せません。区全体の平均家賃は月9.2万円ですが、築浅物件では11万円を超える事例も少なくありません。家賃相場が上昇傾向であることは、キャッシュフロー安定化の追い風となります。
重要なのは、再開発計画との距離感です。例えば、豊洲五丁目の新バスターミナル計画は2030年稼働予定で、周辺地価を緩やかに押し上げています。将来の売却益まで視野に入れるなら、インフラ計画の工程表に目を通し、竣工時期と自分の投資期間を重ねて考える必要があります。
収益シミュレーションの基本

ポイントは、表面利回りだけに頼らず、実質利回りとキャッシュフローを同時に確認することです。江東区の築20年木造アパート(総戸数6戸、年間家賃収入662万円、購入価格7,800万円)を例に計算してみましょう。
まず、管理費と修繕積立を合わせて年収の15%を差し引くと、実質収入は562万円です。ここから固定資産税40万円と火災保険9万円を引き、残りは513万円となります。金利1.4%、期間30年の元利均等返済(借入7,000万円)を適用すると、年間返済額は約288万円です。差し引き225万円が年間キャッシュフローとなり、実質利回りはおよそ2.9%になります。
実は、この数値は空室ゼロを前提にしています。国の住宅統計の平均空室率21.2%を適用すると、年間家賃収入は521万円に下がり、キャッシュフローは約120万円に縮小します。こうした悲観シナリオも試算しておくことで、実際の返済余力を冷静に判断できます。
一方、築10年以内のRC造アパートにすると価格は上がるものの、修繕費が抑えられ空室率も低めです。投資額ごとに複数のシミュレーションを用意し、長期の出口戦略と合わせて比較する姿勢が不可欠です。
物件選定で押さえるエリア特性
実は、江東区 アパート経営で最も差がつくのは立地選びです。都営新宿線沿線は駅徒歩10分以内でも未だに相場より1〜2割安い物件が散見され、利回り重視の投資家に人気があります。対して有楽町線やゆりかもめ沿線は家賃が高いものの購入価格も跳ね上がり、利回りは下がる傾向です。
ここで注目したいのが周辺の競合供給量です。レインズマーケット情報によれば、2025年上期の江東区内新規賃貸募集戸数は前年同期比6.5%減でした。特に木場、門前仲町エリアは新築マンションの供給が減少し、築浅アパートの空室期間も平均25日まで短縮しています。こうしたデータは実際の募集賃料と連動するため、物件選定の有力な判断材料となります。
さらに、区が公開しているハザードマップで浸水リスクを確認することも重要です。江東区はゼロメートル地帯を多く抱えるため、1.0メートル以上の浸水想定区域では避難経路や宅地盤の高さを必ず確認しましょう。これらの情報は入居者の安全意識向上だけでなく、保険料の算定にも影響を及ぼします。
最後に、ターゲット層を明確にした設備の導入が必要です。ファミリー向けなら宅配ボックスよりも防犯カメラの方が反響を得やすい一方、単身者向けにはインターネット無料が必須サービスとなりつつあります。設備投資は初期費用がかさむものの、家賃アップに直結しやすく、長期の利回り改善に貢献します。
融資と税制優遇を活用するコツ
基本的に、アパート融資は自己資金の割合と返済余力が鍵です。日本政策金融公庫の「中小企業向け資産取得貸付」では、2025年度も最長20年・固定金利2.0%台前半のメニューが用意されています。自己資金が2割以上あれば、都市銀行よりも低い金利が引き出せるケースがあります。
税制面では、新築アパートを建てた場合の固定資産税が3年間半額になる措置が2025年度も継続しています。加えて、賃貸住宅を都市再生特区内に建設し、セーフティネット登録を行うと、建築費の一部を補助する制度も予算枠内で利用できます。期限や対象条件は毎年見直されるため、区の住宅課や国交省の最新情報を必ず確認しましょう。
融資審査では、家賃収入と給与所得の双方が評価される「総合審査方式」が一般的です。金融機関は江東区の家賃相場を把握しており、将来の空室リスクと修繕費を織り込んでDSCR(債務返済余裕比率)を計算します。つまり、空室率15%のシナリオでも返済比率が1.2倍を保てる計画でなければ、融資承認は難しくなります。
なお、家族信託を活用して資産承継する動きも広がっています。信託設定により、所得税と相続税の軽減効果が期待できる反面、司法書士費用や信託報酬がかかります。制度の細部は専門家へ相談し、費用対効果を必ず検討してください。
運営と空室対策で差をつける
重要なのは、購入後の運営体制です。管理会社任せにせず、週1回はポータルサイトで類似物件の募集状況をチェックする習慣をつけましょう。家賃を下げる前に、写真の更新や募集文の改善で問い合わせ数が伸びることも少なくありません。
また、空室が2部屋連続したら、リフォーム費を抑えたアクセントクロスやスマートロックの導入を検討します。工事費用は1室あたり10万円前後ですが、平均家賃を月5千円上げられれば2年で回収できます。小さな改善を積み重ねることが、長期的な収益安定につながります。
江東区は外国人労働者や学生の流入も多く、多言語対応のサポート体制が整った管理会社を選ぶと差別化が図れます。2025年の区統計によると、外国人居住者は人口の6.4%まで増えており、多様なニーズに応える柔軟性が求められます。
最後に、修繕積立の積み上げ方にも工夫が必要です。築年数が進むほど大規模修繕の費用は跳ね上がります。毎月のキャッシュフローの20%を別口座に積み立てるルールを作れば、突然の屋根補修にも慌てず対応できます。
まとめ
ここまで、江東区 アパート経営の市場動向、シミュレーション、物件選び、融資、運営の五つの視点を整理しました。江東区は人口増と再開発で賃貸需要が堅調ですが、立地やターゲットを誤ると全国平均以上の空室率にさらされる可能性もあります。実質利回りと長期の修繕費を織り込んだ計画を立て、金融機関や専門家の知見を活用しながらリスクを分散することが成功への近道です。まずは区の最新統計を確認し、希望エリアで現地調査を行う一歩から始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査2025年版 – https://www.mlit.go.jp/statistics
- 東京都都市整備局 住宅市場動向調査2025 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
- 江東区 区政情報システム 人口統計2025 – https://www.city.koto.lg.jp
- 財務省 2025年度税制改正の概要 – https://www.mof.go.jp
- 日本政策金融公庫 資金調達ガイド2025 – https://www.jfc.go.jp
- レインズマーケットインフォメーション2025 – https://www.reins.or.jp