アパート経営に興味はあるものの、「空室が続いたらどうしよう」「初期費用はどれくらい必要だろう」と不安を抱える方は少なくありません。都心に近く人口増加が続く江戸川区なら、そうした悩みを和らげつつ安定収益を狙えます。本記事では、2025年12月時点の最新データを基に、エリア選定から資金調達、運営管理までを体系的に解説します。読み終えた頃には、江戸川区でアパート経営を始める具体的な手順と判断基準が得られるはずです。
江戸川区が投資先として注目される理由

まず押さえておきたいのは、江戸川区が投資家から支持される背景です。人口動態、交通利便性、行政サービスの三つがそろうことで、賃貸需要が底堅くなっています。
最初に人口を見てみると、総務省の住民基本台帳によれば2025年1月時点の江戸川区人口は約71万人で、ここ10年間で約2.4%増えました。東京都23区全体の伸び率が0.8%にとどまる中で、同区の増加幅は際立ちます。20〜40代が半数超を占める構成も、賃貸需要の厚さを示す材料です。
次に交通網です。JR総武線や都営新宿線に加え、2024年開業のBRT「東京ベイシャトル」によって、東京駅・新宿駅まで30分圏内となるエリアが拡大しました。通勤利便性が向上すると、単身者だけでなく共働きファミリーの流入も期待できます。
さらに江戸川区は「子育て先進区」と呼ばれるほど保育園整備が進み、待機児童ゼロを継続しています。家族世帯が転出しにくい環境が整うため、2DK〜3LDKタイプの長期入居率が高い点も強みです。これらの要素が相まって、同区の平均空室期間は都内平均より17日短いという民間調査結果もあります。
収益を左右するエリア選定と賃料相場

ポイントは、同じ江戸川区でも駅周辺とバス便地域では収益性が大きく異なることです。賃料水準と入居者層を把握し、利回りと安定性のバランスを取る必要があります。
国土交通省の不動産取引価格情報(2025年上期)を基にすると、区内主要エリアの2025年平均月額賃料は次のとおりです。
- 西葛西駅周辺(築10年・1K):8.3万円
- 小岩駅周辺(築10年・1K):7.5万円
- 瑞江駅周辺(築10年・1K):7.1万円
西葛西はインド人コミュニティが形成されるなど多国籍な需要があり、賃料が高めでも空室率が低く推移しています。一方、小岩は再開発に伴い2026年春に駅ビルが完成予定で、中期的な賃料上昇が見込めます。瑞江は都営新宿線沿線の中では賃料が抑えめで、初期投資を縮小したい初心者に適したエリアです。
区全体の表面利回りは平均5.6%ですが、駅徒歩15分超の物件でも管理を徹底すれば6%台を狙えます。2025年10月の全国アパート空室率が21.2%(国交省)であるのに対し、江戸川区は18.4%にとどまります。つまり適切なエリア選定さえ行えば、全国平均より低い空室リスクで運用できる点が魅力です。
ファミリー向けか単身者向けか、間取り戦略
基本的に、区内では単身者向け1Kとファミリー向け2LDKのどちらにも一定の需要があります。重要なのは、自身の投資目的と保有期間を踏まえ、どの層を主要顧客に据えるかを明確にすることです。
単身者向けは回転率が高いため、礼金・更新料によるキャッシュインが期待できます。築7年で1K20戸の物件を管理する筆者の事例では、平均入居期間は2.6年ですが更新率は58%に達し、年間家賃収入の8%を更新料が占めています。ただし退去時のリフォーム費用をコントロールできなければ、手残りが圧迫される点に注意が必要です。
一方、ファミリー向けは長期入居が見込める分、一次的な空室が発生すると募集期間が長くなりがちです。江戸川区の場合、公園や学校が徒歩圏に揃う葛西・船堀エリアでは、2LDKの平均入居期間が6.4年と都内トップクラスです。退去後にフルリノベーションを施しても、費用回収期間を長めに設定できるメリットがあります。
間取り選択で迷ったときは、土地形状や建ぺい率から逆算して総戸数を試算し、総収入の最大化を図ると判断しやすくなります。つまり、家賃単価だけでなく戸数と稼働率の組み合わせを見ることで、より精緻なキャッシュフロー予測が可能になるわけです。
資金計画と融資の最新事情
実は、融資条件が物件の収益性を左右する割合は想像以上に大きいものです。2025年度は長期金利の上昇が小幅にとどまり、地元信用金庫や投資用不動産に積極的な都内地銀が競合する状況にあります。
具体的には、自己資金20%を投入し、融資期間25年・金利1.9%で1億円の木造アパートを購入した場合、年間返済額は約505万円です。金利が0.3ポイント上がるだけで返済額は約25万円増え、実質利回りが0.3%下がる計算になります。したがって金利交渉と固定金利選択のタイミングが収支に直結します。
2025年度も継続する「住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置」は、直系尊属からの資金援助を受ける際に最大1,000万円まで非課税となります。居住用を条件としますが、将来的に賃貸へ転用するプランを組めば相続対策に活用できます。また、賃貸業者が利用できる「小規模企業共済等掛金控除」や、青色申告による65万円控除も健在です。これらの制度を組み合わせることで、実効税率を抑制しキャッシュフローを改善できます。
融資相談時は、区内家賃相場の推移や空室率のデータを添えた事業計画書を提出すると審査がスムーズです。江戸川区は統計情報が比較的豊富で、区役所や東京都都市整備局の公開データを引用しやすいメリットがあります。数値を示してリスク説明を行えば、金融機関との信頼関係も築きやすくなります。
運営を安定させる管理と空室対策
重要なのは、購入後の運営フェーズで収益のブレを最小限に抑えることです。管理品質が入居者満足度を左右し、ひいては退去率を左右します。
江戸川区では外国籍入居者の比率が12%(2025年区統計)を超えています。多言語対応のコールセンターを備えた管理会社を選べば、トラブルが減ってクレーム対応コストを抑えられます。筆者の管理物件では、入居者向けアプリでゴミ出しルールを配信したところ、共用部の清掃回数が月2回から1回に減り、年間で約6万円のコスト削減につながりました。
空室対策として、インターネット無料設備の導入は依然として効果的です。導入コストは1戸あたり月額2,500円前後ですが、家賃を2,000円上乗せできれば即時にイーブンになります。2025年4月施行の「賃貸建物省エネ性能表示制度」に合わせ、LED共用灯や断熱サッシを採用すれば、エネルギー性能表示★2以上を取得でき、エコ志向の入居者を呼び込みやすくなります。
退去後のリフォームは、ターゲットに応じて仕様を変えることで費用対効果が高まります。単身者向けはスマートロックや宅配ボックス、ファミリー向けは防音カーペットや大型収納を入れるなど、設備差別化で賃料維持を図る発想が有効です。長期的には、物件ブランディングと管理品質の両輪で稼働率を高水準に保つことが、江戸川区でのアパート経営を成功へ導く鍵となります。
まとめ
本記事では、江戸川区の人口動態や交通インフラを踏まえた賃貸需要の強さ、エリア別賃料水準と間取り戦略、2025年度の融資・税制の最新情報、さらに管理と空室対策の実践例までを解説しました。要するに、需要の濃いエリアを選定し、適切な融資条件を引き出し、ターゲットに合わせた設備投資と管理を行えば、全国平均より低い空室リスクで安定収益を狙えます。まずは区の公開統計を使って家賃相場を調べ、金融機関へ事業計画を提示するところから始めてみてください。行動に移すことで、江戸川区でのアパート経営が現実的な資産形成手段へと変わります。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 2025年版 – https://www.mlit.go.jp/
- 東京都都市整備局 住宅市場動向調査2025 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/
- 総務省 住民基本台帳人口移動報告 2025年1月 – https://www.soumu.go.jp/
- 江戸川区 統計データポータル 2025 – https://www.city.edogawa.tokyo.jp/
- 日本政策金融公庫 融資利率情報 2025年12月 – https://www.jfc.go.jp/
- 国税庁 タックスアンサー 所得税・資産税 2025年度版 – https://www.nta.go.jp/