家賃下落が不安、空室が怖い。それでも給与以外の収入源をつくりたい──そんな思いでワンルーム投資を調べ始めた方は多いでしょう。とくに目黒区は都心へのアクセスと落ち着いた住環境を両立し、単身者の転入が途切れにくいエリアとして注目されています。本記事では、目黒区の市場動向から物件選び、数字の組み立て方、さらに2025年度に利用できる税制や融資までを、初心者にも分かる言葉で解説します。読み終わるころには、最初の一歩を踏み出す具体的なイメージがつかめるはずです。
目黒区が投資エリアとして注目される背景

まず押さえておきたいのは、目黒区が単身者向け住宅の安定需要を持つことです。人口構成と交通利便性がこの安定を支えています。
東京都都市整備局の人口推計では、目黒区の総人口は2025年時点で約30万人、そのうち20〜39歳が3割を超えています。この年齢層は転勤や転職で移動が多く、ワンルームを好む比率が高いことが特徴です。つまり区外に住む同世代よりも賃貸需要が底堅く、長期的に空室リスクを抑えやすい環境が整っています。
交通面でも強みがあります。東急東横線やJR山手線を使えば渋谷、新宿、品川へ10分前後で到着し、都心主要駅への通勤ストレスが小さいです。また、副都心線直通で埼玉方面にも一本で行けるため、勤務地が変わっても引っ越さずに済むケースが多い点もメリットと言えます。
さらに目黒区は商業地と住宅地のバランスが良く、深夜営業の店が限定的な地域もあるため、治安の良さが人気を下支えします。警視庁の犯罪統計によると、2024年の刑法犯認知件数は23区中5番目に少なく、単身女性のニーズを取り込みやすい点も利回りの安定に寄与します。
最後に供給側の視点です。国土交通省の住宅着工統計では、2024年度の目黒区における新設貸家着工戸数は前年比2.1%増にとどまりました。過剰供給の兆候が見られず、今後も緩やかな需給バランスが続く見込みです。実はこの穏やかな供給曲線こそ、家賃の下値を支える大きな要因となります。
ワンルーム投資のメリットとリスク

ポイントは、手軽さと収益安定のバランスをどう評価するかです。ワンルームは参入障壁が低い一方で、特有のリスクも存在します。
ワンルームの最大の利点は資金規模のコンパクトさです。目黒区の中古区分ワンルーム相場は2025年上期で2,500万〜3,500万円が中心帯となり、自己資金を500万円前後に抑えてローンを組めるケースが多いです。また、区分所有は建物管理を管理組合に委託できるため、日常的な手間が少ないことも副収入をめざす会社員には魅力となります。
一方で空室が出たときの影響は大きいです。戸数を増やして分散するまでの間は、一部屋が空くだけで収入がゼロになる点を忘れてはいけません。さらに、区分マンションは修繕積立金や管理費が毎月発生し、築年数の経過とともにこれらのコストは上昇傾向にあります。日本マンション管理センターの調査によると、築30年時点の管理費は新築の約1.3倍、修繕積立金は2倍に膨らむ例も報告されています。
加えて、2025年の賃貸業界ではサブスク型の家具付きサービスや在宅ワーク向けWi-Fi完備物件が人気を集めています。これらの設備を後付けで対応できない区分マンションは競争力を欠く恐れがあります。つまり、初期の利回りだけでなく、3年後・5年後も選ばれる居室かどうかを見極める必要があるわけです。
成功する物件選びのポイント
重要なのは、「立地」「築年数」「管理体制」の三拍子が揃っているかどうかです。この3点を総合的に判断することで、長期にわたりキャッシュフローを安定させやすくなります。
まず立地です。同じ目黒区内でも山手線内側に近い中目黒、恵比寿寄りは賃料が高いものの物件価格も高騰し、想定利回りが4%台前半にとどまるケースが増えています。一方、学芸大学や祐天寺周辺は駅徒歩7分以内であれば家賃水準を保ちつつ、購入価格を抑えられるため5%台に乗せやすい傾向があります。この差は長期の収入に直結するため、地図上での距離だけでなく家賃相場データを掛け合わせて検討しましょう。
次に築年数です。金融機関は鉄筋コンクリート造の法定耐用年数47年をベースに融資期間を決めます。築20年を超えると融資年数が短くなり、毎月の返済額が上がる点に注意が必要です。ただし、築後15年前後で大規模修繕が完了していれば、ランニングコストがしばらく落ち着くため、購入後の想定支出を読みやすいメリットがあります。耐震基準が新しくなる1981年以降竣工であることは最低条件と考えてください。
最後に管理体制です。修繕積立金が不足しているマンションは将来の一時金徴収リスクが高まります。総会議事録を確認し、長期修繕計画が25年以上で策定され、積立金が計画の70%以上確保されているかをチェックすることが欠かせません。言い換えると、購入前の「書類読み込み」が運用後のキャッシュフローを守る盾になるのです。
収支シミュレーションで押さえるべき数字
実はシミュレーションの精度が、投資成否の半分を決めます。現実に近い前提を置き、複数のシナリオを用意することが肝心です。
まず表面利回りだけで判断するのは危険です。例えば購入価格3,000万円、年間家賃収入144万円の物件は表面利回り4.8%となります。しかし管理費・修繕積立金で年24万円、固定資産税で7万円、空室損失を年収の5%と仮定すると、実質利回りは3.2%に下がります。この数字とローン金利を比べ、手残りキャッシュフローがプラスかどうかを確認してください。
次に空室率のシナリオです。東京都住宅政策本部の統計では、2024年の目黒区の平均空室率は18.1%ですが、築15年以内の単身向けに限ると9.4%にとどまります。最低でもこれら二つの水準を想定し、金利も現行1.5%と上昇後3%の両方で試算すると堅実です。
ローンの元利均等返済では、毎月返済額の元本部分もキャッシュフローから出ていきます。それでも元本は負債減少という形で残ります。つまり「収支」と「資産増加」を両輪で見ることで、手元キャッシュが薄くても資産が増える構造を理解できるはずです。シミュレーション表を作る際は、返済額と元本残高の推移を同じシートで管理すると把握しやすくなります。
2025年度の税制優遇と資金調達のコツ
まず押さえておきたいのは、2025年度も継続される新築貸家の固定資産税減額特例です。ワンルームを含む新築賃貸住宅は、最初の3年間、固定資産税が2分の1に軽減されます(2025年12月31日取得分まで)。ただし区分中古には適用されないため、築浅を狙うか新築に投資する場合のみ恩恵を受けられます。
資金調達では、金融機関による評価方法を理解することが重要です。都市銀行は賃料収入に対する返済比率50%以下を目安に審査を行う傾向があります。一方、地方銀行や信用金庫は担保力を重視し、物件評価額の80%まで融資するケースもありますが、金利が0.2〜0.3ポイント高くなることが多いです。複数行に事前相談し、金利・期間・融資割合の組み合わせを比較しましょう。
さらに、2025年度税制では「所得税の損益通算」が引き続き認められています。減価償却費やローン利息を計上し、給与所得と合算することで、所得税の還付を受けられる可能性があります。ただし赤字を出し続けると金融機関評価が下がるリスクがあるため、黒字化のタイミングをシミュレーションに組み込むことが欠かせません。
最後に融資実行後の運用です。2025年から金融機関は賃貸経営計画書の提出を求めるケースが増えています。家賃下落対策や修繕計画を事前に示すことで、追加融資や複数棟目の取得が有利になる流れが生まれています。つまり最初の投資ほど丁寧な計画書づくりが将来のレバレッジを左右するのです。
まとめ
目黒区のワンルーム市場は若年単身者の安定需要、穏やかな供給増、そして良好な治安によって支えられています。立地・築年数・管理体制を総合評価し、実質利回りとリスクを正しくシミュレーションすることで、家賃下落や空室の不安を最小限に抑えられます。2025年度も活用できる固定資産税減額特例や損益通算を取り込みつつ、複数の金融機関を比較して最適な融資条件をつかむことが成功の近道です。まずは気になるエリアの相場をチェックし、信頼できる不動産会社に収支シミュレーションを依頼する一歩から始めてみてください。
参考文献・出典
- 東京都都市整備局「東京都の人口推計」 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
- 国土交通省 住宅着工統計 2024年度 – https://www.mlit.go.jp
- 警視庁 犯罪統計資料 2024年 – https://www.keishicho.metro.tokyo.jp
- 日本マンション管理センター「管理費・修繕積立金の実態調査2024」 – https://www.mankan.or.jp
- 東京都住宅政策本部「住宅市場動向調査2024」 – https://www.jutaku.metro.tokyo.jp