不動産投資を始めたいものの、「物価高でも採算は合うのか」「空室が出たらどうしよう」と悩む方は多いはずです。特に埼玉県随一の人口を抱えるさいたま市は魅力的に見える一方、実際の市況や資金計画を知らずに動くと収支がぶれやすいのも事実です。本記事では、さいたま市でアパート経営を検討する初心者へ向けて、市場動向から物件選び、運営術までを網羅的に解説します。読み終えるころには、投資判断に必要な数字と具体策が手の内に入り、次の一歩を踏み出す自信が得られるでしょう。
さいたま市の賃貸市場を読み解く鍵

まず押さえておきたいのは、さいたま市の賃貸ニーズが依然として堅調だという点です。総務省の2025年10月推計では、市の人口は132万人を超え、10年連続で微増しています。若年単身層と子育て世帯がバランス良く流入しているため、1Kから2LDKまで幅広い間取りに需要があります。
一方、国土交通省住宅統計による全国平均空室率は2025年10月時点で21.2%ですが、さいたま市は18.4%にとどまります。都心への通勤利便性と生活コストのバランスが評価され、相対的に空室リスクが低いことが数字で裏付けられます。つまり、適切な立地と賃料設定を行えば長期的に安定した入居を期待しやすい市場と言えます。
しかし、鉄道駅から徒歩15分を超えるエリアや築30年以上の木造アパートは成約までに平均60日以上かかる傾向がある点には注意が必要です。競合が激しいエリアでは、設備更新やネット無料化などの付加価値を検討しなければ収益力が目減りします。ニーズの変化を把握し、先回りして改善策を講じる姿勢が求められます。
成功率を高める立地と物件タイプの選び方

ポイントは、路線別の通勤時間と地域コミュニティの成熟度を同時に見ることです。京浜東北線沿線の大宮・浦和は定番ですが、物件価格が高騰しています。利回りを確保したい場合、埼京線の与野本町や武蔵野線の東浦和など、賃料相場と土地値が適切にバランスする駅を狙うと投資効率が上がります。
立地だけでなく物件種別にも着目しましょう。RC造(鉄筋コンクリート)の新築は賃料が高く取れる反面、初期投資が大きいため、自己資金が潤沢でない初心者にはハードルが高いことが多いです。実は、築15〜20年の木造や軽量鉄骨アパートを適正価格で仕入れ、内装を刷新する「バリューアップ型」のほうがキャッシュフローを出しやすいケースが目立ちます。
例えば、土地100㎡・延べ床160㎡の築18年木造アパートを7,800万円(表面利回り8.1%)で取得し、150万円のリフォームを実施した実例では、入居率95%超を維持しながら実質利回りは7.2%で落ち着きました。さいたま市の平均実質利回り6.4%(LIFULL HOME’S投資分析 2025年9月)を上回る水準です。適合する物件を丁寧に探すことで、市場平均より高い収益を狙えることが分かります。
無理のない資金計画と2025年度の融資環境
重要なのは、自己資金と借り入れのバランスを最初に固めることです。日本政策金融公庫の2025年度データによると、同公庫を利用した賃貸住宅向け融資の平均自己資金比率は23%でした。さいたま市で7,000万円規模のアパートを取得する場合、少なくとも1,600万円前後を手元で用意すると毎月の返済負担が抑えられます。
また、民間銀行では変動金利が年1.2%台、固定20年で1.7%台が主流です。金利差0.5%は30年返済で総返済額に約700万円の差を生みます。複数行から見積もりを取り、金利だけでなく融資手数料や団体信用生命保険の内容も比較すると総コストを削減できます。
2025年度の住宅投資減税は、個人が賃貸住宅を取得した場合でも、耐震・断熱性能を満たすと固定資産税が3年間半額になる特例が適用できます。ただし、市が発行する「長期優良住宅認定証」を事前に取得する必要があるため、物件を探す段階から工務店や設計事務所と連携しておくと手続きがスムーズです。
維持管理と入居者満足を高める運営術
まず、管理会社選びが収益の安定に直結します。さいたま市内には、家賃集金と入居者対応のみを行う「集金代行型」と、原状回復費の交渉やリフォーム提案までカバーする「一括管理型」が混在しています。初心者にはトラブル時の対応力が高い後者が安心です。手数料は家賃の5〜7%が相場ですが、空室ダメージを軽減できると結果的に手取りが増えるケースも少なくありません。
入居者満足を高める設備投資も欠かせません。国土交通省「賃貸住宅市場実態調査2025」によると、単身者はインターネット無料、ファミリーは宅配ボックスの有無を重視する傾向が強まっています。初期投資として各10〜20万円程度で導入できる設備でも、募集期間の短縮と賃料維持に大きく貢献します。
さらに、年間修繕計画を立てることで資金繰りを平準化できます。外壁塗装や屋根防水は12〜15年周期で実施し、毎月家賃収入の10%前後を修繕積立に回すと、大規模修繕時の一時的な出費を避けられます。予防保全の視点を持ち、物件の資産価値を落とさないことが長期投資を成功させるコツです。
リスク対策と出口戦略を同時に描く
一方で、地震や水害など自然災害リスクも軽視できません。さいたま市のハザードマップでは、見沼区や岩槻区の一部が洪水浸水想定区域に該当します。保険は火災保険に加え、家財補償と水災補償を組み合わせたプランを選ぶと修繕費用や家賃補償のカバー率が高まります。
また、人口動態や再開発計画を踏まえた出口戦略が必要です。大宮駅東口では2026年以降も再開発が予定され、地価上昇が見込まれます。10年後に売却益を狙うなら、このエリアでRC造の築浅物件を保有し、建物価値が高いうちに転売する選択肢が有効でしょう。逆に、安定運営を重視するなら、浦和美園や宮原のように地価上昇は緩やかでも賃料下落が小さいエリアで長期保有を狙うほうが安全です。
結論として、リスクを完全に排除することは不可能ですが、保険・設備投資・地域選定を組み合わせることで影響を最小限に留められます。未来の出口を描きつつ、現実的な運営手順を積み重ねる姿勢が最終的なリターンを大きく左右します。
まとめ
ここまで、さいたま市でアパート経営を成功させるための五つの視点を解説しました。市場は全国平均より空室率が低く、適切な立地と物件タイプを選べば高い入居率が期待できます。自己資金と金利を意識した資金計画、入居者ニーズを先読みした設備投資、災害と将来の売却を見据えたリスク管理を組み合わせることが、安定収益の鍵です。読み終えた今こそ、気になるエリアを実際に歩き、数字を確認し、融資の事前相談を始めてみてください。行動を重ねるほど、理想のアパート経営が近づいてきます。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査2025年版 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 人口推計2025年10月 – https://www.stat.go.jp
- さいたま市 都市計画情報 2025 – https://www.city.saitama.jp
- 日本政策金融公庫 融資実績レポート2025 – https://www.jfc.go.jp
- 埼玉県 地価調査2025 – https://www.pref.saitama.lg.jp
- LIFULL HOME’S 投資分析レポート2025 – https://www.homes.co.jp