東京23区での不動産投資は「物件価格が高いから難しい」と敬遠されがちです。しかし実際には、人口集中や再開発の後押しで安定した賃貸需要が続いています。本記事では、投資初心者が悩みやすい「高値づかみ」「空室リスク」「資金調達」の不安に寄り添いながら、2025年12月時点のデータと制度をもとに具体的な戦略を解説します。読み進めるほど「東京23区 不動産投資」の全体像が整理でき、次の一歩を自信を持って踏み出せるはずです。
東京23区で広がる投資チャンスの背景

まず押さえておきたいのは、人口と雇用が23区に集中し続けている事実です。東京都都市整備局の推計によると、2040年までの区部総人口は微増から横ばいで推移し、単身世帯は今後も増加が見込まれます。つまりコンパクトなワンルームや1LDKの賃貸需要は、地方都市より高い水準で維持される可能性が高いのです。
再開発も追い風となります。品川・田町エリアの「東京湾岸再編プロジェクト」や、池袋駅周辺の再整備は2025年以降も段階的に完成予定で、雇用と来街者を呼び込む効果が期待されています。また、区をまたぐ地下鉄新線計画が進むことで、住宅と職場の距離がさらに縮まり、賃貸市場が広がるとの見方も強まっています。
一方で家賃相場はここ数年で緩やかな上昇にとどまっています。国土交通省の「住宅市場動向調査」では23区の平均月額募集賃料は前年比2%前後の上昇に落ち着いており、過度な家賃インフレは起きていません。投資家にとっては、家賃収入の安定性と資産価値の両立が図りやすい市場環境といえるでしょう。
まず押さえておきたいエリア選定の視点

重要なのは「利便性指標」と「開発ポテンシャル」をセットで見ることです。利便性指標とは駅徒歩分数、生活インフラ、治安など、賃借人が日常で体感する価値を数量化したものを指します。品川区や目黒区の駅近物件は表面利回りこそ4%台ですが、平均入居期間が長く、空室率は23区平均より約2ポイント低いという統計があります。
一方、荒川区や北区の一部では再開発で商業施設や大学新キャンパスが計画されており、将来の賃料上昇余地が注目されています。つまり、現時点での利回りだけで判断すると好機を逃す場合があるのです。駅徒歩10分以内で築15年以内の物件を対象に、家賃と販売価格の推移を3年分比較すると、再開発エリアでは価格上昇率が家賃上昇率をやや上回る傾向が出ています。したがって購入時は「賃料の将来性」と「出口戦略での値上がり期待」を天秤にかける姿勢が欠かせません。
具体的な調査方法としては、東京都都市整備局の都市計画情報や各区の再開発資料をオンラインで確認し、計画決定から工事完了のスケジュールを把握することが大切です。現地視察では平日夜や休日昼の人の流れを観察し、入居者像をイメージするとミスマッチを防げます。
キャッシュフローとリスク管理の基本
ポイントは「毎月の手残りキャッシュフロー」をプラスで安定させることです。表面利回りが高く見えても、管理費や修繕積立金、固定資産税を差し引くと実質利回りが2%台に落ち込むケースが少なくありません。特に築20年以上の区分マンションは配管更新や外壁補修で一時金が発生しやすいので、長期修繕計画書を必ず確認しましょう。
空室リスクに備えた保守的なシミュレーションも欠かせません。私は空室率10%、金利上昇1.5%という厳しめの前提で試算し、なおかつ毎月1万円以上の手残りをキープできる物件を基準にしています。メンテナンス費用の目安は年間家賃収入の5%程度とされますが、築年数や設備グレードで変動するため、過去の管理費改定履歴まで把握する姿勢が大切です。
さらに、災害対策としてハザードマップの確認は必須です。東京23区は台風や高潮リスクが区ごとに異なります。例えば江東区と中央区の一部は高潮浸水想定区域に該当するため、保険料が高くなる場合があります。火災保険や地震保険の補償内容と保険料を比較し、トータルコストで利回りを判断すると資金計画がぶれにくくなります。
2025年度の税制と融資環境
実は2025年度の税制改正で、不動産取得税の住宅用軽減措置が27年3月まで延長される見込みです。住宅用区分マンションを賃貸目的で取得する場合も、床面積要件を満たせば税率軽減が適用され、取得コストを抑えられます。また、登録免許税の軽減措置も継続されるため、登記費用が想定より低くなるケースがあります。
融資環境については、日本銀行が政策金利を0.1%引き上げた影響で、2025年12月時点の投資用ローン固定金利は年2.4%前後で推移しています。変動金利は1.8%台ですが、将来金利上昇リスクを見込むなら固定期間選択型を検討する価値があります。なお、金融機関の審査は物件収支に加え、個人の年収や資産背景を厳しく見る傾向が続いています。頭金を物件価格の2割以上入れると、金利優遇が受けやすいのが実情です。
補助金面では「長期優良住宅化リフォーム推進事業」(2025年度)が区分所有でも一定の性能向上工事に対して補助対象となります。断熱改修やバリアフリー化で最大100万円の補助を受けられる例もあるため、築古物件を購入して価値を高める戦略と相性が良いでしょう。ただし、申請枠には上限があり、工事前の登録が必須なのでスケジュール管理を徹底してください。
中長期で勝ち残るための運用戦略
基本的に東京23区の賃貸需要は底堅いものの、競合物件との差別化が収益を左右します。内装のデザイン性やIoT設備、ネット無料サービスは入居率向上に直結する要素です。たとえば、スマートロックと高速Wi-Fiを導入した場合、初期費用は30万円程度ですが、家賃を月2000円上げられれば3年で回収可能です。
売却戦略も同時に計画しておくとリスクを抑えられます。私が推奨するのは「保有5年目レビュー」です。周辺の新築供給量、空室率、地価指数をチェックし、期待利回りが下がり始めたタイミングで売却を検討します。国土交通省の不動産価格指数によると、築15年超えから価格下落が加速する傾向があるため、築浅のうちに出口を取る方がキャピタルロスを抑えやすいのです。
サブリース契約の利用は慎重に判断すべきです。家賃保証が魅力的に見えても、更新時に賃料が大幅に下がる例が報告されています。管理会社と直接業務委託契約を結び、賃料査定を毎年見直すほうが、長期的には手残りが多くなるケースが多いと実務で感じています。
まとめ
東京23区 不動産投資を成功させる鍵は「データに基づいたエリア選定」「保守的なキャッシュフロー試算」「税制と融資の最新動向の把握」にあります。今回紹介した調査手順と運用のコツを実践すれば、高価格帯のハードルを超え、安定した家賃収入と資産形成が両立できます。まずは気になる区の再開発計画と賃料相場を調べ、金融機関への事前相談を始めてみてください。行動を積み重ねることで、将来の選択肢は確実に広がります。
参考文献・出典
- 東京都都市整備局 人口推計データ – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/
- 国土交通省 住宅市場動向調査2025年版 – https://www.mlit.go.jp/
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp/statistics/
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/
- 日本銀行 金融システムレポート2025年10月 – https://www.boj.or.jp/