年収がそれほど高くないと、不動産投資は遠い世界に感じられるものです。しかし、実は年収500万でもアパート経営を始める道は十分に開けています。本記事では「年収500万 アパート経営 始め方」という疑問に寄り添い、資金計画から物件選び、融資、運営、最新の支援制度までを順序立てて解説します。読み進めれば、自分にも実行できる現実的なステップがわかるはずです。
投資戦略を描く前に確認したい資金計画

まず押さえておきたいのは、自己資金と返済余力のバランスです。年収500万の場合、金融機関が重視するのは「年間返済額が年収の35%以内」という指標になります。これは日本国内で一般的に用いられる返済負担率で、手取りに換算すれば月々の返済上限はおおむね10万円前後に収まる計算です。
次に必要なのが、初期費用を含めた総予算の算出です。物件価格のほか、仲介手数料や登記費用、火災保険など諸費用は物件価格の7〜9%程度が目安になります。例えば3000万円のアパートを購入する場合、諸費用だけで200万円以上かかるため、貯蓄から捻出する計画が欠かせません。
さらに、想定外の修繕費や空室期間に備える「運転資金」を別枠で用意することが重要です。国土交通省の調査では、築15年を超える木造アパートの平均修繕費は年間家賃収入の10%前後に達しています。こうした数字をもとに、手元に100万〜150万円の予備費を確保しておくと安心です。
最後に、自己資金割合について考えてみましょう。金融機関の審査では自己資金10%でも融資を受けられるケースがありますが、20%程度を投入すると金利が下がることもあります。つまり、自己資金と借入額のバランスこそが、後々のキャッシュフローを左右するカギになるのです。
物件選びで押さえるべき三つの視点

ポイントは立地、築年数、そして間取りのマッチングです。全国アパート空室率は2025年10月時点で21.2%(国土交通省住宅統計)と依然高止まりしていますが、駅徒歩10分以内の物件に限ると空室率は10%台前半まで下がります。駅近物件は価格が高い反面、安定稼働につながりやすい点が魅力です。
築年数に目を向けると、築20年を超えた木造アパートは減価償却費が大きく取れるため、手取りベースでの節税効果があります。一方で修繕コストや金融機関の評価が下がるデメリットもあるため、購入後5年以内に大規模修繕が必要な場合は想定収支に織り込む姿勢が欠かせません。
間取りについては単身向け1Kが供給過多になりつつあります。近年はテレワーク需要の高まりを受け、20㎡以上・ロフト付きなど、少し広めの間取りが選ばれる傾向です。実際、東京都心の一部エリアでは20㎡超物件の平均入居期間が1Kより半年長いという民間調査結果も出ています。
物件選びを通して大切なのは、表面利回りだけで決めないことです。管理費や修繕積立金、固定資産税を差し引いた実質利回りで7%前後を確保できるかが判断基準となります。つまり、数字の裏にある地域動向と物件個別要因を読み解く力が、成功への分岐点になるのです。
融資を引くための信用力アップ術
実は、年収500万でも融資の門戸は閉ざされていません。住宅金融支援機構の2025年度調査では、投資用ローン利用者の約3割が年収600万未満でした。金融機関が注目するのは、個人の信用情報と安定した勤続年数です。勤続3年以上でクレジットやローン遅延がない場合、金利1.8%台での融資事例も珍しくありません。
信用力を高めるには、手元のローン残高を整理することが近道です。車のローンやカードリボを完済し、月々の返済比率を下げると審査が通りやすくなります。また、直近2年分の源泉徴収票と確定申告書を整備し、副業収入がある場合は正確に申告しておくと評価がプラスに働きます。
金融機関の選択も結果を左右します。都市銀行は物件規模の大きさや自己資金を要求する傾向がある一方、地方銀行や信用金庫はエリア重視で柔軟な審査を行うことがあります。さらに、保証協会付きローンやプロパーローンなど商品特性もさまざまなので、複数行で金利と融資条件を比較する視点が大切です。
最後に、購入予定物件の収支シミュレーションを詳細に提出すると交渉がスムーズになります。具体的には、家賃下落率1%・空室率15%といった厳しめの前提で試算し、なお黒字化できる数字を示すことで、銀行担当者の信頼を得やすくなります。
運営開始後のキャッシュフロー管理
基本的に、アパート経営は「入居率」と「経費コントロール」の両輪で成り立ちます。家賃収入からローン返済、管理委託料、税金、修繕費を差し引き、毎月プラスが残るかを定点観測する習慣が不可欠です。家賃の振込日を基準にキャッシュフロー表を更新し、半年ごとに見直すと資金繰りの見落としを防げます。
入居率を上げる施策として、オンライン内見やスマートロックの導入は効果的です。総務省の家計調査によると、20代単身世帯の約6割がスマホ経由で物件検索を完結させています。写真や動画を整備し、即時内見できる環境を提供するだけで競合物件との差別化が進みます。
経費の削減では、管理会社との委託契約見直しが第一歩です。管理料は家賃の5%が相場ですが、複数物件を委託すると3〜4%まで下げられることがあります。また、水道メーターの遠隔検針を導入すれば共用部の検針コストが年間数万円削減できるケースも確認されています。
資金繰りの余裕ができたら、繰り上げ返済よりも設備投資を優先する選択肢も有効です。エアコンや宅配ボックスの更新は月額家賃を2000円上げられる可能性があり、ROI(投資利益率)が5年以内で回収できるなら実施価値があります。つまり、収益拡大とコスト削減を同時に狙う視点が、長期安定経営を支えるのです。
2025年度も使える支援制度と税メリット
重要なのは、活用できる制度を押さえたうえで節税を図ることです。2025年度も継続される「住宅省エネ改修補助制度」は、賃貸アパートの断熱窓や高効率給湯器の設置に対し、1戸あたり最大30万円が交付されます。申請期限は2026年3月末までと発表されているため、早期の計画立案が求められます。
併せて検討したいのが、固定資産税の減額制度です。新築アパートは建築後3年間、固定資産税が1/2になる措置が引き続き適用されます。年収500万の投資家にとって、税負担を抑えながら初期キャッシュフローを改善できる点は大きなメリットです。
税務面では、木造アパートなら最短4年で減価償却できる「一括償却資産」に該当する設備が多く、所得税の圧縮効果があります。言い換えると、実質手取りが増えることで次の投資資金を蓄えやすくなるわけです。
こうした制度や税メリットを得るには、税理士や行政書士との連携が欠かせません。申請書類の不備や期限遅れは交付取り消しにつながるため、専門家報酬を支払っても十分ペイする可能性があります。つまり、制度活用と専門家の併用が、年収500万クラスの投資家にとっては効率的な近道になるのです。
まとめ
ここまで、年収500万でも実現できるアパート経営の始め方を資金計画、物件選び、融資戦略、運営、支援制度の五つの視点で整理しました。要は、自己資金と返済比率を冷静に計算し、立地と間取りを慎重に選び、複数金融機関を比較して融資条件を引き出すプロセスが成功への王道です。さらに、制度を味方につけ、定期的なキャッシュフロー管理を行えば、無理のない規模でも着実に資産を増やせます。まずは自分の家計と目標を可視化し、次の一歩として物件情報の収集と金融機関への相談を始めてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 2025年10月速報版 – https://www.mlit.go.jp/statistics/
- 住宅金融支援機構 民間住宅ローン利用実態調査2025 – https://www.jhf.go.jp/
- 総務省 家計調査年報2024 – https://www.stat.go.jp/
- 日本銀行 短観 2025年9月 – https://www.boj.or.jp/
- 不動産証券化協会 J-REIT市況レポート2025 – https://www.ares.or.jp/