不動産投資に興味はあるものの、「賃貸管理って何から手を付ければいいのか分からない」と悩む方は多いはずです。家賃収入を得る仕組みが見えづらいだけでなく、空室リスクや修繕費用など不安材料も尽きません。本記事では、15年以上現場で物件を運営してきた立場から、賃貸経営の全体像と具体的な「始め方 賃貸管理」の手順を丁寧に解説します。読むことで、物件選定から管理方式の決定、2025年度の最新制度の活用方法まで一気に把握できるので、投資デビューの第一歩を自信を持って踏み出せるでしょう。
賃貸管理を始める前に知るべき市場の現状

まず押さえておきたいのは、賃貸市場が「需要の二極化」に向かっている事実です。国土交通省の住宅市場動向調査(2024年版)によると、都心三区の空室率は3%台にとどまる一方、地方圏では10%を超える市町村も珍しくありません。このギャップは今後さらに広がる見通しで、立地選びが以前にも増して重要になります。
こうした背景には、単身世帯の増加とテレワークの定着が同時に進んでいることが挙げられます。内閣府の家計構造調査では、2025年に単身世帯が全世帯の38%を突破する見込みです。つまり、ワンルームや1LDKへの需要は高水準を維持するものの、駅遠・築古物件は敬遠されやすくなっているのです。
一方で、築20年超でもリノベーション済みや家具付き物件は賃料を維持しやすい傾向があります。実際、MLITの賃貸住宅実態調査によると、付加価値設備を導入した物件は空室期間が平均23日短縮されることが分かりました。投資額を抑えながら差別化する戦略が、2025年以降の勝ち筋と言えるでしょう。
物件選びで押さえておきたいポイント

ポイントは、資金計画と出口戦略をセットで考えることです。賃貸管理は長期戦となるため、購入価格だけでなく将来の売却可能性まで視野に入れる必要があります。
最初に自己資金を決めたうえで、物件価格の25%前後を頭金に充てると融資審査が通りやすくなります。また、購入諸費用として物件価格の7%程度を見込んでおくと、登記費用や火災保険料に慌てずに済みます。さらに、入居募集前には小規模な原状回復が必ず発生するため、50万〜100万円の予備費を別枠で確保しておきましょう。
立地については、駅から徒歩10分以内かつ周辺にスーパーやドラッグストアがあるエリアが堅実です。家賃を1万円下げても入居が決まりにくい郊外より、賃料を維持しやすい場所を選ぶほうがキャッシュフローを安定させやすいからです。もし郊外を検討する場合は、大学や工業団地といった雇用需要の核が近いかどうかを必ず確認してください。
出口戦略では、築年数25年以内で売却益を狙う“短中期型”と、築古を安く仕入れて長期保有する“ストック型”に大別されます。自分のリスク許容度と年齢、融資期間を照らし合わせ、どちらのモデルが向いているかを見極めることで、将来の資金繰りに余裕が生まれます。
管理方式の選択と費用構造
実は、賃貸管理の成否は「誰が現場を回すか」で大きく変わります。2021年に完全施行された賃貸住宅管理業法により、管理戸数200戸以上の業者は国土交通大臣への登録が必須となりました。これにより業界の透明性が高まり、管理委託のハードルは下がっています。
管理方式は、(1)自己管理、(2)部分委託、(3)一括委託の三つに大別されます。自己管理はコストを最小化できる一方、滞納督促やクレーム対応で本業が圧迫されがちです。部分委託は募集だけ、清掃だけ、といった組み合わせが可能で、月額賃料の3%前後が相場です。一括委託はフルサポート型で、手数料は5〜8%が一般的ですが、時間的負担がほぼなくなる点が魅力と言えます。
費用構造を把握するうえで欠かせないのが、更新料や退去時精算の取り扱いです。管理会社によっては更新料の半分を収益として計上する場合があり、オーナー側の取り分が減るケースもあります。契約書で割合が明文化されているかを必ずチェックしてください。
加えて、定期清掃や消防点検などの法定業務は、管理委託料に含まれる場合と別途請求される場合があります。見積書に「法定点検実費」とだけ書かれていると、後で追加請求が来る可能性もあるため、月額固定か都度請求かを明確にしておくと安心です。
実務で失敗しない運営のコツ
重要なのは、空室対策と修繕計画をセットで捉える視点です。入居が決まらない物件には必ず理由があり、物件力とマーケティングの両面から改善策を講じる必要があります。
物件力を高める手段として、スマートロックや高速インターネットの導入が挙げられます。総務省の通信利用動向調査では、固定回線の下り速度が100Mbpsを下回ると約6割の入居希望者が「検討をやめる」と回答しました。コストは月額1500円程度でも、長期入居に直結するため投資対効果が高い設備です。
マーケティング面では、ポータルサイト掲載だけに頼らず、SNS広告や内見動画を活用すると反響が伸びやすくなります。特にZ世代は動画で物件を探す比率が高いとされ、短尺動画で生活導線を見せると閲覧数が2倍以上になる事例もあります。これらの施策は管理会社と協力しながら試行錯誤することで、効果を数字で検証しやすくなります。
一方、修繕計画は「予防保全」が鍵です。国交省の長寿命化ガイドラインでは、共用部の大規模修繕を12年周期で実施することを推奨しています。外壁や屋上防水を後回しにすると雨漏りリスクが高まり、内部クロスや床材が劣化し、結果的に高額な工事費を短期間で負担する羽目になります。毎年家賃収入の10%を修繕積立として別口座にプールする習慣を付ければ、計画外の出費にも慌てず対応できるでしょう。
2025年度に活用できる制度と税制
まず押さえておきたいのは、2025年度も継続される「住宅セーフティネット法に基づく登録住宅改修補助金」です。高齢者や子育て世帯向けに、手すり設置や段差解消工事を行う場合、工事費用の1/3(上限100万円)が補助されます。手厚い分、自治体予算が尽きると募集停止となるため、早めの申請が肝心です。
税制では、青色申告特別控除65万円が引き続き適用されます。電子帳簿保存とe-Tax提出が条件ですが、家賃収入から丸ごと控除できるため、利益圧縮効果は大きいと言えます。さらに、固定資産税の軽減措置として小規模住宅用地特例も継続中で、200㎡以下の部分について課税標準が6分の1になる点は見逃せません。
また、賃貸住宅管理業法の登録免許税については、2025年度も「法定料の半額措置」が継続予定です。個人オーナーが法人化して管理業に参入する際、コストを抑えられる利点があります。言い換えると、法人化による損益通算や相続対策まで視野に入れることで、長期的な税負担をさらに軽減できるのです。
最後に、2025年度の省エネ改修減税も活用余地があります。外壁断熱や高効率給湯器を導入すると、投資型減税として工事費用の10%を所得税額から直接控除できます。入居者は光熱費が下がり、オーナーは税額控除を受けつつ賃料を据え置けるため、空室対策と節税を同時に実現できる施策と言えるでしょう。
まとめ
ここまで、「始め方 賃貸管理」を軸に、市場動向の把握、物件選定、管理方式、運営ノウハウ、そして2025年度の制度活用まで一気に解説しました。賃貸経営は立地選びと資金計画を土台に、管理手法と空室対策を継続的にブラッシュアップすることで安定します。まずは自己資金とリスク許容度を明確にし、信頼できる管理会社とチームを組むところから始めてください。行動に移すことでしか見えない課題も多いですが、一歩踏み出せばキャッシュフローという形で成果が返ってきます。今日学んだステップを参考に、ぜひ自分の目標に合った物件探しをスタートさせましょう。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅市場動向調査2024年版 – https://www.mlit.go.jp
- 内閣府 家計構造調査2024 – https://www.cao.go.jp
- 総務省 通信利用動向調査2024 – https://www.soumu.go.jp
- 国土交通省 賃貸住宅実態調査2023 – https://www.mlit.go.jp
- 賃貸住宅管理業法 施行規則 – https://www.mlit.go.jp
- 住宅セーフティネット法関連補助金 2025年度概要 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省 長寿命化ガイドライン2023改訂版 – https://www.mlit.go.jp