「金利が上がっているけど、今から不動産投資を始めても大丈夫だろうか」そんな不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。確かに、2024年以降の日銀の金融政策転換により、長年続いた超低金利時代は終わりを告げました。しかし、金利上昇は必ずしも不動産投資の終わりを意味するわけではありません。この記事では、金利上昇局面における不動産投資の判断基準、リスク管理の方法、そして今だからこそ注目すべき投資戦略について、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。金利環境が変わった今、正しい知識を身につけることで、むしろチャンスを掴むことができるのです。
金利上昇局面の現状を正しく理解する

2026年2月現在、日本の金利環境は大きな転換期を迎えています。日本銀行は2024年にマイナス金利政策を解除し、その後段階的な利上げを実施してきました。住宅ローン金利も変動金利で0.5〜1.0%程度、固定金利では1.5〜2.5%程度まで上昇しています。
この金利上昇を「不動産投資には不利な状況」と捉える方も多いでしょう。実は、金利上昇局面には独特のメリットも存在します。まず、金利が上がることで過熱していた不動産市場が落ち着き、物件価格が適正化される傾向があります。超低金利時代には投資マネーが不動産に集中し、価格が実需を大きく上回るケースも見られました。
国土交通省の不動産価格指数によると、2023年まで上昇を続けていた都心部のマンション価格は、2024年後半から横ばいまたは微減の傾向を示しています。これは金利上昇により、無理な価格設定での取引が減少したことを意味します。つまり、適正価格で質の良い物件を購入できる機会が増えているのです。
さらに重要なのは、金利上昇は経済の正常化を示すシグナルでもあるという点です。デフレからの脱却、賃金上昇、消費の活性化といった好循環が期待できます。実際、厚生労働省の統計では2025年の平均賃金は前年比2.5%増加しており、これは家賃相場の上昇余地を示唆しています。
金利上昇が不動産投資に与える具体的な影響

金利上昇が不動産投資に与える影響を、具体的な数字で見ていきましょう。例えば、3000万円の物件を購入する場合、金利0.5%と1.5%では月々の返済額にどれほどの差が生まれるでしょうか。
借入期間30年、元利均等返済の場合、金利0.5%なら月々の返済額は約8万9000円です。一方、金利1.5%では約10万3000円となり、月額で約1万4000円、年間では約17万円の差が生じます。30年間の総返済額では約500万円もの違いになります。
この数字だけを見ると「やはり金利が低い時に買うべきだった」と思うかもしれません。しかし、物件価格の変動も考慮する必要があります。超低金利時代には同じ物件が3500万円で取引されていた可能性があります。金利上昇により物件価格が500万円下がれば、総支払額はほぼ同じになるのです。
重要なのは、金利と物件価格の両方を見て総合的に判断することです。国土交通省の調査では、金利が1%上昇すると不動産価格は平均10〜15%下落する傾向が見られます。つまり、金利上昇局面では物件価格の下落により、実質的な購入コストが相殺される可能性があるのです。
また、キャッシュフローへの影響も見逃せません。月々の返済額が増えれば、家賃収入から返済を差し引いた手取り額は減少します。しかし、賃金上昇により家賃相場も上昇傾向にあるため、適切な物件選びをすれば十分なキャッシュフローを確保できます。実際、都心部の賃貸需要は依然として堅調で、空室率は低水準を維持しています。
今だからこそ見直すべき物件選びの基準
金利上昇局面では、物件選びの基準を従来よりも厳しく設定する必要があります。まず最優先すべきは、安定した賃貸需要が見込める立地です。駅徒歩10分以内、主要都市へのアクセスが良好、周辺に大学や企業が集積しているエリアなど、空室リスクが低い物件を選びましょう。
金利が上がると返済負担が増えるため、空室期間が長引くと収支が大きく悪化します。そのため、多少利回りが低くても、確実に入居者が見込める物件を選ぶことが重要です。不動産経済研究所のデータによると、駅徒歩5分以内の物件は10分以上の物件と比べて空室率が約40%低いという結果が出ています。
次に注目すべきは、物件の収益性です。表面利回りだけでなく、実質利回りを正確に計算しましょう。実質利回りは、家賃収入から管理費、修繕積立金、固定資産税などの経費を差し引いた純収益を物件価格で割ったものです。金利上昇局面では、実質利回りが最低でも3〜4%以上ある物件を選ぶことが望ましいでしょう。
建物の状態も重要な判断基準です。金利が高い時期は、購入後の大規模修繕費用が収支を圧迫しやすくなります。築年数が浅い物件、または適切にメンテナンスされている物件を選ぶことで、予期せぬ出費を抑えられます。特に、新耐震基準を満たしている1981年以降の物件は、融資も受けやすく資産価値も維持しやすい傾向があります。
金利上昇リスクに備えた資金計画の立て方
金利上昇局面で不動産投資を成功させるには、綿密な資金計画が不可欠です。まず、自己資金比率を高めることを検討しましょう。物件価格の30〜40%を自己資金で用意できれば、借入額が減り月々の返済負担を軽減できます。また、金融機関の審査も通りやすくなり、より有利な条件で融資を受けられる可能性が高まります。
変動金利と固定金利の選択も重要な判断ポイントです。変動金利は現時点では低めですが、今後さらに上昇するリスクがあります。一方、固定金利は当初の金利は高めですが、将来の金利上昇リスクを回避できます。自分のリスク許容度と投資期間を考慮して選択しましょう。
具体的には、5年以内に売却を考えている短期投資なら変動金利、10年以上保有する長期投資なら固定金利が適している場合が多いです。また、変動金利を選ぶ場合は、金利が2〜3%上昇しても返済可能なシミュレーションを必ず行いましょう。
予備資金の確保も忘れてはいけません。金利上昇により返済額が増加した場合や、予期せぬ修繕が必要になった場合に備えて、最低でも年間家賃収入の6ヶ月分程度の現金を手元に残しておくことをお勧めします。これは投資用物件とは別の、すぐに引き出せる預金として確保しておきましょう。
返済計画は保守的に立てることが大切です。満室想定ではなく、空室率20%程度を見込んだ収支計画を作成します。また、家賃は現状維持または微減を想定し、楽観的な家賃上昇は見込まないようにします。このような保守的な計画でも収支がプラスになる物件であれば、金利上昇局面でも安心して投資できるでしょう。
金利上昇局面で有利な投資戦略とは
金利上昇局面では、従来とは異なる投資戦略が求められます。まず注目したいのが、中古物件への投資です。新築物件は価格に広告費や販売経費が上乗せされているため、購入直後から資産価値が下がる傾向があります。一方、築10〜15年程度の中古物件は、価格が安定しており実質利回りが高い傾向があります。
国土交通省の調査によると、築10年のマンションは新築時の70〜80%程度の価格で取引されることが多く、適切にメンテナンスされていれば十分な収益性を確保できます。さらに、中古物件は実際の賃貸実績を確認できるため、収益予測の精度が高いというメリットもあります。
地方都市の物件も検討する価値があります。東京や大阪などの大都市圏は物件価格が高く、利回りが低い傾向があります。一方、札幌、仙台、広島、福岡などの地方中核都市は、物件価格が比較的手頃でありながら、大学や企業の集積により安定した賃貸需要があります。
特に、地方都市の駅近物件は狙い目です。地方では車社会のため、駅から離れた物件の需要は低いですが、駅徒歩5分以内の物件は学生や単身者からの需要が高く、空室リスクが低い傾向があります。総務省の統計では、地方中核都市の単身世帯数は今後10年間で10〜15%増加すると予測されています。
また、区分マンション投資も金利上昇局面では有効な選択肢です。一棟物件と比べて初期投資額が少なく、複数の物件に分散投資することでリスクを軽減できます。例えば、3000万円の予算があれば、1000万円程度の区分マンションを3戸購入し、地域や物件タイプを分散させることで、空室リスクや災害リスクを分散できます。
金融機関との交渉で押さえるべきポイント
金利上昇局面では、金融機関との交渉がより重要になります。まず、複数の金融機関に融資の相談をすることが基本です。メガバンク、地方銀行、信用金庫、ノンバンクなど、それぞれ融資条件や審査基準が異なります。少なくとも3〜4社に相談し、条件を比較検討しましょう。
金融機関を選ぶ際は、金利だけでなく融資期間や返済方法も重要な判断材料です。金利が0.2%低くても、融資期間が5年短ければ月々の返済額は大きく増えます。また、繰り上げ返済の手数料や条件も確認しておきましょう。将来的に余裕資金ができた時に、柔軟に繰り上げ返済できる金融機関を選ぶことが重要です。
審査を有利に進めるためには、事前準備が欠かせません。自己資金の証明、収入証明、他の借入状況などの資料を整理しておきます。また、購入予定物件の収益性を示す資料(周辺の家賃相場、空室率、将来の人口動態など)を用意することで、融資担当者に投資の妥当性を説明しやすくなります。
金融機関との交渉では、長期的な関係構築を意識することも大切です。最初の物件で良好な返済実績を作れば、2件目以降の融資がスムーズになります。また、定期的に収支報告を行うなど、金融機関との信頼関係を築くことで、将来的により有利な条件での借り換えや追加融資の可能性が広がります。
今後の金利動向と不動産市場の見通し
今後の金利動向を予測することは困難ですが、いくつかのシナリオを想定しておくことは重要です。日本銀行は段階的な利上げを継続する方針を示していますが、そのペースは経済状況により変動します。2026年度中には政策金利が1.0〜1.5%程度まで上昇する可能性があると、多くのエコノミストが予測しています。
ただし、急激な利上げは経済に悪影響を与えるため、日銀は慎重な姿勢を維持すると考えられます。また、世界経済の動向や為替相場の変動も金利政策に影響を与えます。つまり、金利は上昇傾向にあるものの、そのペースは緩やかになる可能性が高いのです。
不動産市場については、金利上昇により短期的には取引量が減少する可能性があります。しかし、中長期的には賃金上昇や人口の都市集中により、優良物件の需要は堅調に推移すると予測されます。特に、リモートワークの普及により、都心部だけでなく郊外の利便性の高いエリアにも注目が集まっています。
国土交通省の将来推計では、東京圏の人口は2030年まで増加を続け、その後も緩やかな減少にとどまるとされています。また、単身世帯や高齢者世帯の増加により、賃貸住宅の需要は今後も一定水準を維持すると見込まれます。つまり、適切な物件選びをすれば、金利上昇局面でも十分な収益を確保できる環境は続くと考えられます。
重要なのは、短期的な市場変動に一喜一憂せず、長期的な視点で投資判断を行うことです。不動産投資は10年、20年という長期スパンで考えるべき投資です。金利が多少上昇しても、優良な物件を適正価格で購入し、適切に管理すれば、安定した収益を得ることができるのです。
まとめ
金利上昇局面でも不動産投資は十分に可能です。むしろ、物件価格の適正化により、質の良い物件を適切な価格で購入できるチャンスとも言えます。重要なのは、金利上昇のリスクを正しく理解し、それに対応した投資戦略を立てることです。
具体的には、安定した賃貸需要が見込める立地の物件を選び、保守的な資金計画を立て、複数の金融機関と交渉して有利な融資条件を引き出すことが成功の鍵となります。また、変動金利を選ぶ場合は、金利がさらに上昇した場合のシミュレーションを必ず行い、十分な予備資金を確保しておきましょう。
不動産投資は長期的な視点が重要です。短期的な金利変動に惑わされず、10年後、20年後を見据えた投資判断を行うことで、金利上昇局面でも安定した収益を得ることができます。今こそ、正しい知識を身につけ、慎重かつ大胆に不動産投資の第一歩を踏み出す好機と言えるでしょう。
参考文献・出典
- 日本銀行 – 金融政策に関する情報 – https://www.boj.or.jp/
- 国土交通省 – 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp/
- 厚生労働省 – 毎月勤労統計調査 – https://www.mhlw.go.jp/
- 総務省統計局 – 人口推計・世帯数の将来推計 – https://www.stat.go.jp/
- 不動産経済研究所 – 不動産市場動向調査 – https://www.fudousankeizai.co.jp/
- 国土交通省 – 住宅市場動向調査 – https://www.mlit.go.jp/
- 金融庁 – 金融機関の融資動向に関する調査 – https://www.fsa.go.jp/