不動産投資を始めようと考えたとき、多くの方が「金利は固定と変動、どちらを選ぶべきか」という疑問に直面します。特に将来の金利上昇リスクを考えると、固定金利で安定した返済計画を立てたいと思うのは自然なことです。しかし、投資ローンでは住宅ローンと異なる条件が適用されるため、固定金利の選択肢や特徴をしっかり理解しておく必要があります。この記事では、投資ローンにおける固定金利の仕組みから、変動金利との比較、そして自分に合った金利タイプの選び方まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
投資ローンで固定金利は選択できるのか

結論から言えば、投資ローンでも固定金利を選ぶことは可能です。ただし、住宅ローンと比較すると選択肢が限られており、金融機関によって取り扱い状況が大きく異なります。
多くの金融機関では、投資ローンに対して変動金利を主力商品として提供しています。これは不動産投資が事業性融資の一種として扱われるため、金融機関側もリスクに応じた柔軟な金利設定を求めるからです。しかし、近年では投資家のニーズに応えて、固定金利期間選択型や全期間固定金利型を用意する金融機関も増えてきました。
固定金利期間選択型では、3年、5年、10年といった一定期間の金利を固定できます。2026年2月現在、10年固定の投資ローン金利は2.5〜3.0%程度が相場となっています。一方、変動金利は1.5〜2.0%程度で推移しており、固定金利との金利差は約1.0〜1.5%程度です。この金利差をどう捉えるかが、選択の重要なポイントになります。
全期間固定金利を提供する金融機関は限られていますが、長期的な安定性を重視する投資家には魅力的な選択肢です。ただし、金利水準は変動金利よりも高く設定されるため、収支シミュレーションを慎重に行う必要があります。
固定金利と変動金利の基本的な違い

固定金利と変動金利の最も大きな違いは、返済期間中の金利変動リスクの有無です。この違いを理解することが、適切な選択への第一歩となります。
固定金利は、契約時に定めた金利が一定期間または全期間にわたって変わりません。つまり、市場金利が上昇しても返済額は変わらないため、将来の収支計画を立てやすいというメリットがあります。例えば、月々の返済額が10万円と決まっていれば、その金額を確実に確保できる収益物件を選べば良いという明確な基準ができます。
一方、変動金利は市場の金利動向に応じて定期的に見直されます。一般的には半年ごとに金利が見直され、5年ごとに返済額が変更される仕組みが採用されています。金利が下がれば返済負担が軽くなりますが、上昇すれば返済額が増加するリスクを抱えることになります。
実際の数字で比較してみましょう。3000万円を30年で借り入れた場合、固定金利3.0%なら月々の返済額は約12.6万円です。変動金利1.8%なら約10.8万円となり、月々1.8万円、年間で約21.6万円の差が生じます。この差額をどう評価するかが、選択の分かれ目になります。
重要なのは、金利タイプによってリスクとリターンのバランスが異なるという点です。固定金利は安定性を、変動金利は当初の低金利というメリットを提供します。自分の投資スタイルやリスク許容度に合わせて選ぶことが大切です。
固定金利を選ぶメリットとデメリット
固定金利を選択する最大のメリットは、将来の返済計画が立てやすいという安心感です。不動産投資では長期的な視点が重要になるため、この予測可能性は大きな価値を持ちます。
まず収支計画の安定性が挙げられます。毎月の返済額が確定していれば、必要な家賃収入の目標も明確になります。空室率や修繕費用といった他の変動要素に集中して対策を立てられるため、投資全体のリスク管理がしやすくなります。特に初めて不動産投資を行う方にとって、金利変動という不確定要素を排除できることは大きな安心材料となるでしょう。
金利上昇リスクへの備えという点も見逃せません。歴史的に見れば、金利は上昇と下降を繰り返してきました。現在は比較的低金利の時代が続いていますが、将来的に金利が上昇する可能性は常に存在します。固定金利を選んでおけば、仮に市場金利が大幅に上昇しても、自分の返済額は変わらないという保険的な効果が得られます。
しかし、デメリットも理解しておく必要があります。最も大きいのは、変動金利と比較して当初の金利が高く設定される点です。前述の例では月々1.8万円の差がありましたが、これは年間で約21.6万円、10年間では216万円にもなります。この差額は投資の収益性に直接影響を与えます。
また、市場金利が下がった場合でも恩恵を受けられないという機会損失も考慮すべきです。変動金利なら金利低下の恩恵を受けて返済負担が軽くなりますが、固定金利では契約時の金利で払い続けることになります。ただし、固定期間終了後に金利タイプを見直せる商品もあるため、金融機関の条件をよく確認することが大切です。
変動金利を選ぶメリットとデメリット
変動金利の最大の魅力は、当初の金利が低く設定されている点です。これにより初期の返済負担を抑えられ、キャッシュフローに余裕を持たせることができます。
投資の初期段階では、物件の購入費用や諸費用、さらには予期せぬ修繕費用など、様々な出費が発生します。変動金利を選ぶことで月々の返済額を抑えられれば、これらの費用に対応しやすくなります。また、浮いた資金を次の物件購入の頭金に回すなど、投資規模の拡大を早めることも可能です。
市場金利が下降トレンドにある場合、さらなる金利低下の恩恵を受けられる可能性もあります。実際、過去20年間を見ると、日本の金利は全体として低下傾向にありました。この期間に変動金利を選んでいた投資家は、固定金利を選んだ場合と比較して大幅に返済総額を抑えられたことになります。
一方で、金利上昇リスクは常に意識しておく必要があります。仮に金利が1%上昇すれば、3000万円の借入で月々の返済額は約2万円増加します。これは年間24万円、30年間では720万円もの差になります。空室が続いたり大規模修繕が必要になったりしたタイミングで金利が上昇すれば、資金繰りが厳しくなる可能性があります。
返済計画の不確実性も考慮すべき点です。将来の返済額が確定していないため、長期的な収支計画を立てにくいという側面があります。特に複数の物件を所有する場合、すべてが変動金利だと金利上昇時の影響が大きくなるため、リスク分散の観点からも注意が必要です。
自分に合った金利タイプの選び方
金利タイプを選ぶ際は、自分の投資スタイルや状況に合わせて判断することが重要です。画一的な正解はなく、それぞれの状況に応じた最適解を見つける必要があります。
まず投資の目的と期間を明確にしましょう。短期的に物件を売却する予定なら、当初の返済負担が軽い変動金利が有利です。一方、長期保有を前提とした安定収入を目指すなら、固定金利で確実な収支計画を立てる方が適しています。例えば、老後の年金代わりに家賃収入を得たいという目的なら、固定金利で安定性を確保する選択が理にかなっています。
リスク許容度も重要な判断基準です。金利上昇による返済額の増加に耐えられる余裕資金があるか、他に収入源があるかといった点を考慮します。本業の収入が安定していて、多少の返済額増加にも対応できるなら変動金利を選ぶ余地があります。しかし、不動産投資の収入に大きく依存する場合は、固定金利で安定性を優先すべきでしょう。
物件の収益性と金利負担のバランスも見極める必要があります。利回りが高い物件なら、多少金利が高くても十分な収益が見込めるため、固定金利を選んでも問題ありません。逆に利回りが低めの物件では、少しでも金利負担を抑えたいため変動金利が選択肢になります。ただし、この場合は金利上昇リスクをより慎重に評価する必要があります。
実際には、固定金利と変動金利を組み合わせるミックスプランも検討する価値があります。例えば、借入額の半分を固定金利、残り半分を変動金利にすることで、安定性と低金利のメリットを両立できます。複数の物件を所有する場合は、物件ごとに異なる金利タイプを選ぶことでリスク分散を図ることも可能です。
金融機関選びと交渉のポイント
投資ローンの条件は金融機関によって大きく異なるため、複数の選択肢を比較検討することが欠かせません。適切な金融機関を選ぶことで、より有利な条件で融資を受けられる可能性が高まります。
メガバンク、地方銀行、信用金庫、ノンバンクなど、それぞれに特徴があります。メガバンクは金利が比較的低い傾向にありますが、審査基準が厳しく、年収や自己資金の要件が高めに設定されています。地方銀行や信用金庫は地域密着型で、地元の物件に対して積極的に融資する傾向があります。ノンバンクは審査が柔軟な反面、金利が高めに設定されることが一般的です。
固定金利の取り扱い状況も金融機関によって異なります。ある銀行では10年固定しか用意していない一方、別の銀行では全期間固定も選択できるといった違いがあります。事前に各金融機関のウェブサイトや窓口で商品ラインナップを確認し、自分のニーズに合った選択肢を持つ金融機関をリストアップしましょう。
交渉の際は、自分の信用力をアピールすることが重要です。安定した収入、十分な自己資金、他の借入がないことなどは、金利引き下げの交渉材料になります。また、すでに取引のある金融機関なら、既存の関係性を活かして有利な条件を引き出せる可能性があります。給与振込口座や定期預金などの取引実績は、意外と大きな武器になります。
複数の金融機関から見積もりを取ることも効果的です。他行の条件を提示することで、金利や手数料の引き下げ交渉がしやすくなります。ただし、あまりに多くの金融機関に同時に申し込むと、信用情報に記録が残り、かえって審査に不利になる可能性があるため、3〜4行程度に絞ることをお勧めします。
固定金利選択時の注意点とシミュレーション
固定金利を選ぶ際は、契約内容を細かく確認し、長期的な視点でシミュレーションを行うことが大切です。表面的な金利だけでなく、総合的なコストを把握する必要があります。
まず固定期間終了後の取り扱いを確認しましょう。固定期間選択型の場合、期間終了後は変動金利に移行するのか、再度固定金利を選べるのか、その際の金利はどう決まるのかといった点を明確にしておきます。一部の金融機関では、固定期間終了後の金利が当初より大幅に高くなる設定になっていることもあるため、注意が必要です。
繰上返済の条件も重要なチェックポイントです。固定金利期間中に繰上返済を行う場合、高額な手数料が発生することがあります。例えば、繰上返済額の2〜3%を手数料として支払う必要がある場合、100万円の繰上返済で2〜3万円のコストがかかります。将来的に繰上返済を検討している場合は、この点を考慮に入れる必要があります。
実際の収支シミュレーションでは、複数のシナリオを想定することが重要です。基本シナリオとして、想定通りの家賃収入が得られる場合の収支を計算します。次に、空室率が20%になった場合、大規模修繕で200万円の出費が発生した場合など、厳しい条件でも返済を続けられるかを確認します。
具体的な例で見てみましょう。3000万円を30年、固定金利3.0%で借りた場合、月々の返済額は約12.6万円です。想定家賃収入が月15万円なら、返済後の手取りは2.4万円となります。ここから管理費、修繕積立金、固定資産税などを差し引くと、実質的なキャッシュフローはさらに少なくなります。この状態で空室が発生したり、突発的な修繕が必要になったりしても対応できるか、慎重に検討する必要があります。
まとめ
投資ローンで固定金利を選ぶことは可能であり、それぞれの投資家の状況に応じて適切な選択肢となり得ます。固定金利は返済計画の安定性という大きなメリットを提供する一方、当初の金利が高いというデメリットもあります。変動金利は低金利というメリットがありますが、将来の金利上昇リスクを抱えることになります。
重要なのは、自分の投資目的、リスク許容度、物件の収益性などを総合的に考慮して判断することです。短期的な視点だけでなく、10年、20年先を見据えた長期的な計画を立てることが、不動産投資の成功につながります。また、複数の金融機関を比較し、条件交渉を行うことで、より有利な融資を受けられる可能性が高まります。
固定金利を選ぶにしても変動金利を選ぶにしても、最も大切なのは収益性の高い物件を選ぶことです。どんなに有利な金利条件でも、物件自体の収益力が低ければ投資は成功しません。金利タイプの選択は重要ですが、それはあくまで投資全体の一要素に過ぎないことを忘れないでください。
これから不動産投資を始める方は、まず信頼できる金融機関に相談し、自分の状況に合った金利タイプを検討することから始めましょう。専門家のアドバイスを受けながら、慎重に判断を進めることが、長期的な投資成功への第一歩となります。
参考文献・出典
- 全国銀行協会 – https://www.zenginkyo.or.jp/
- 国土交通省 不動産市場動向 – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
- 日本銀行 金融市場局 – https://www.boj.or.jp/
- 住宅金融支援機構 – https://www.jhf.go.jp/
- 金融庁 金融サービス利用者相談室 – https://www.fsa.go.jp/receipt/soudansitu/index.html
- 不動産投資連合会 – https://www.re-i.jp/