消防設備点検で是正命令を受けてしまい、どう対応すればいいのか不安を感じていませんか。突然の命令に戸惑うのは当然のことです。しかし、適切な手順を踏めば必ず解決できます。この記事では、是正命令の意味から具体的な対応方法、期限内に完了させるためのポイントまで、初心者の方にも分かりやすく解説します。消防法違反のリスクを回避し、安全な建物管理を実現するための知識を身につけましょう。
消防設備点検の是正命令とは何か

是正命令とは、消防法に基づいて消防署長が建物所有者や管理者に対して発する法的な命令です。消防設備に不備や欠陥が見つかった場合、一定期間内に改善することを求められます。
消防設備点検は、建物の用途や規模に応じて年1回または年2回の実施が義務付けられています。この点検で不備が発見されると、まず「指導」という形で改善を促されます。指導の段階では法的拘束力はありませんが、改善されない場合や重大な欠陥がある場合には「是正命令」に格上げされます。
是正命令が出される主な理由には、消火器の期限切れや設置不足、自動火災報知設備の故障、誘導灯の不点灯、スプリンクラーの作動不良などがあります。総務省消防庁の調査によると、2024年度の消防設備点検で約15%の建物に何らかの不備が見つかっており、そのうち約3%が是正命令の対象となっています。
是正命令を無視すると、消防法第5条の3に基づき、30万円以下の罰金または拘留の罰則が科される可能性があります。さらに、火災が発生した際には管理責任を問われ、民事上の損害賠償責任も発生します。つまり、是正命令は単なる行政指導ではなく、法的義務として必ず対応しなければならない重要な命令なのです。
是正命令を受けたらまず確認すべきこと

是正命令書が届いたら、まず冷静に内容を確認することが重要です。命令書には、具体的な不備の内容、是正期限、必要な措置が明記されています。
最初に確認すべきは是正期限です。通常、軽微な不備であれば1〜3ヶ月、重大な欠陥の場合は即時対応が求められることもあります。期限を過ぎると罰則の対象となるため、カレンダーに記入して管理しましょう。国土交通省の指針では、是正期限は不備の重大性に応じて設定されるとされています。
次に、指摘された不備の内容を正確に把握します。専門用語が多く理解しにくい場合は、命令を出した消防署に問い合わせることをお勧めします。消防署の担当者は、具体的にどの設備のどの部分に問題があるのか、どのような工事や交換が必要なのかを丁寧に説明してくれます。
また、是正に必要な費用の概算を把握することも大切です。消火器の交換であれば数万円程度ですが、自動火災報知設備の全面改修となると数百万円かかることもあります。複数の消防設備業者から見積もりを取り、適正価格を確認しましょう。
建物が賃貸物件の場合は、オーナーと管理会社、テナントの責任範囲を明確にする必要があります。一般的に、建物の消防設備はオーナーの責任ですが、テナントが増設した設備はテナント負担となることが多いです。契約書を確認し、必要に応じて弁護士に相談することも検討してください。
是正工事を依頼する業者の選び方
是正命令に対応するには、信頼できる消防設備業者を選ぶことが不可欠です。適切な業者選びが、期限内の是正完了と費用の適正化につながります。
まず確認すべきは、消防設備士または消防設備点検資格者の資格を持つ技術者が在籍しているかどうかです。消防法では、消防設備の工事や点検は有資格者が行うことが義務付けられています。業者のホームページや見積書で資格者の有無を確認し、不明な場合は直接問い合わせましょう。
実績と評判も重要な判断材料です。同じ用途の建物での施工実績が豊富な業者は、効率的な是正方法を提案してくれます。インターネットの口コミサイトや、地域の建物管理者からの紹介も参考になります。消防設備業協会に加盟している業者は、一定の品質基準を満たしていると考えられます。
見積もりは必ず3社以上から取得してください。価格だけでなく、工事内容の詳細、使用する機器のメーカーや型番、工事期間、保証内容を比較します。極端に安い見積もりは、必要な工事が含まれていない可能性があるため注意が必要です。一般社団法人日本消防設備安全センターの調査では、適正価格の見積もりを取ることで、平均20〜30%のコスト削減が可能とされています。
契約前には、是正報告書の作成と消防署への提出まで対応してくれるか確認しましょう。工事完了後の報告書提出は是正命令対応の最終ステップであり、これを怠ると命令が解除されません。報告書作成を含めたトータルサポートを提供する業者を選ぶことで、確実に是正手続きを完了できます。
是正工事の実施から完了報告までの流れ
業者が決まったら、速やかに是正工事のスケジュールを組みます。期限に余裕を持って工事を開始することが、トラブル回避の鍵となります。
工事開始前には、建物の利用者やテナントへの事前通知が必要です。工事中は一部エリアへの立ち入り制限や、火災報知設備の一時停止が発生する可能性があります。少なくとも1週間前には書面で通知し、工事日時、影響範囲、緊急連絡先を明確に伝えましょう。
工事当日は、可能な限り立ち会いをお勧めします。工事の進捗状況を確認し、追加の不備が見つかった場合にも迅速に対応できます。また、工事完了時には必ず動作確認を行い、すべての設備が正常に機能することを確認してください。消火器であれば設置位置と本数、自動火災報知設備であれば各感知器の作動確認が必要です。
工事完了後、業者は是正報告書を作成します。報告書には、是正前の状況、実施した工事内容、是正後の状況を示す写真や図面が含まれます。この報告書を消防署に提出することで、是正命令が解除されます。提出期限は是正期限と同じであることが多いため、工事完了から報告書提出までの時間も考慮してスケジュールを組みましょう。
消防署への報告書提出後、担当者による確認検査が行われることがあります。検査日時は事前に連絡がありますので、必ず対応できるよう調整してください。検査で問題がなければ、是正命令は正式に解除され、一連の手続きが完了します。消防庁の統計では、適切に対応した場合、約95%のケースで初回検査で是正が認められています。
是正費用を抑えるための工夫
是正工事には相応の費用がかかりますが、工夫次第でコストを抑えることが可能です。ただし、安全性を犠牲にしない範囲での対策が前提となります。
まず検討すべきは、複数の不備を一度にまとめて是正することです。別々に工事を発注すると、その都度出張費や基本料金が発生します。消防設備全体を点検し、将来的に交換が必要になる設備も含めて一括で工事することで、トータルコストを20〜30%削減できることがあります。
設備の選定でもコスト削減が可能です。消防法の基準を満たしていれば、必ずしも最高級の機器を選ぶ必要はありません。業者に複数のメーカーや機種を提案してもらい、性能と価格のバランスが良い製品を選びましょう。ただし、安価すぎる製品は耐久性に問題がある場合もあるため、保証期間や実績を確認することが大切です。
補助金や助成金の活用も検討してください。2026年度現在、一部の自治体では防火対策強化のための補助金制度を設けています。例えば、東京都では中小企業向けに消防設備改修費用の一部を補助する制度があります。自治体の消防署や商工会議所に問い合わせて、利用可能な制度がないか確認しましょう。
リース契約という選択肢もあります。高額な設備の場合、一括購入ではなくリース契約にすることで、初期費用を抑えられます。月々の支払いは発生しますが、キャッシュフローの観点からは有利になることがあります。ただし、総支払額は購入より高くなる傾向があるため、長期的な視点で判断してください。
是正命令を受けないための予防策
是正命令を受けないためには、日頃からの適切な管理と定期的なメンテナンスが不可欠です。予防的な対策が、結果的に時間とコストの節約につながります。
定期点検を確実に実施することが最も基本的な予防策です。消防法では、延べ面積1000平方メートル以上の建物や特定用途の建物に対して、年1回または年2回の点検を義務付けています。点検は有資格者に依頼し、報告書を消防署に提出することで、不備を早期に発見できます。総務省消防庁のデータによると、定期点検を確実に実施している建物では、是正命令の発生率が約80%低いことが分かっています。
日常的な自主点検も重要です。消火器の設置位置や使用期限、誘導灯の点灯状況、避難経路の確保など、専門知識がなくても確認できる項目は多くあります。月に1回程度、チェックリストを作成して確認する習慣をつけましょう。不備を発見したら、すぐに専門業者に連絡して対応することで、大きな問題に発展する前に解決できます。
消防設備の更新計画を立てることも予防策として効果的です。消火器は10年、自動火災報知設備は15〜20年が交換の目安とされています。計画的に更新することで、突然の故障や不備を防ぎ、是正命令のリスクを減らせます。また、予算の平準化にもつながり、一度に大きな出費が発生することを避けられます。
消防署との良好な関係を築くことも大切です。定期的に相談に訪れたり、防火講習会に参加したりすることで、最新の法令情報や地域の防火対策について学べます。消防署の担当者と顔見知りになることで、不明点があった際にも気軽に相談できる関係が構築できます。
是正命令違反のリスクと罰則
是正命令に従わない場合、法的な罰則だけでなく、様々なリスクが発生します。これらのリスクを正しく理解することが、適切な対応への動機付けとなります。
消防法第5条の3に基づき、是正命令違反には30万円以下の罰金または拘留が科されます。さらに、悪質な場合や繰り返し違反した場合には、建物の使用停止命令が出されることもあります。使用停止命令が出ると、建物での営業や居住ができなくなり、事業や生活に深刻な影響を及ぼします。
火災が発生した場合のリスクはさらに深刻です。消防設備の不備が原因で被害が拡大した場合、建物所有者や管理者は民事上の損害賠償責任を負います。過去の判例では、是正命令を無視していた建物で火災が発生し、数億円の賠償命令が出たケースもあります。また、刑事責任として業務上過失致死傷罪に問われる可能性もあります。
保険の観点からも問題があります。火災保険の多くは、消防法違反の状態で発生した火災については、保険金の支払いを制限または拒否する条項を設けています。つまり、是正命令を無視していると、万が一の際に保険が適用されず、全額自己負担となるリスクがあるのです。
社会的信用の失墜も無視できません。是正命令違反や火災事故が報道されると、企業や建物の評判は大きく損なわれます。テナントの退去や新規入居者の減少、取引先からの信用低下など、長期的なビジネスへの影響は計り知れません。国土交通省の調査では、消防法違反が公表された建物の資産価値は平均15〜20%低下するとされています。
まとめ
消防設備点検で是正命令を受けた場合、まず命令書の内容と期限を正確に確認し、速やかに対応を開始することが重要です。信頼できる消防設備業者を選び、複数の見積もりを比較しながら、期限内に確実に是正工事を完了させましょう。工事完了後は報告書を消防署に提出し、必要に応じて検査を受けることで、是正命令が解除されます。
是正命令は法的義務であり、無視すると罰則や損害賠償のリスクが発生します。しかし、適切な手順を踏めば必ず解決できる問題です。日頃から定期点検を実施し、消防設備を適切に管理することで、是正命令を受けるリスクを大幅に減らせます。
建物の安全は、そこで働く人々や訪れる人々の命を守ることに直結します。是正命令を前向きに捉え、より安全な建物管理を実現する機会としてください。不明な点があれば、消防署や専門業者に相談し、確実に対応を進めていきましょう。
参考文献・出典
- 総務省消防庁 – https://www.fdma.go.jp/
- 消防法(e-Gov法令検索)- https://elaws.e-gov.go.jp/
- 国土交通省 建築物の防火安全対策 – https://www.mlit.go.jp/
- 一般社団法人日本消防設備安全センター – https://www.fesc.or.jp/
- 東京消防庁 消防用設備等の点検・報告制度 – https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/
- 一般財団法人日本消防設備安全センター 消防設備士制度 – https://www.fesc.or.jp/
- 公益財団法人日本防火・防災協会 – https://www.n-bouka.or.jp/