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賃貸借契約書ひな形の入手法と実務注意点を解説

賃貸物件のオーナーや管理会社にとって、賃貸借契約書は入居者との信頼関係を支える基本文書です。契約書を新規に作成したり更新したりする際、多くの方が既存のひな形やテンプレートを活用します。しかし、公的機関が公表する標準契約書と、民間サイトが提供する無料テンプレートには性格の違いがあり、それぞれの特徴を理解して使い分けることが重要です。この記事では、賃貸借契約書のひな形をどこで入手し、どのような点に注意して活用すべきかを、実務目線で詳しく解説します。

賃貸借契約書のひな形はどこで手に入るのか

賃貸借契約書のひな形を入手する経路は、大きく分けて二つあります。まず一つは、国土交通省が公表している「賃貸住宅標準契約書」です。これは公的機関が実務やトラブル事例をもとに整備した信頼性の高いひな形で、無料で誰でもダウンロードできます。国交省の公式ベースでは、普通借家の標準ひな形は現在も平成30年3月版を軸に運用されているのが実態です。この版は120年ぶりの大改正となった民法(債権関係)が令和2年4月に施行されたことを踏まえて作成されたものです。

もう一つの経路が、民間のテンプレート提供サイトです。たとえばテンプレートBANK(Template BANK)では、Word形式の賃貸借契約書テンプレートを無料でダウンロードできます。建物や更新、店舗、土地、マンションなど用途別のひな形が揃っており、電子契約と書面契約の両方に対応した版も用意されています。実際にテンプレートBANKの一覧では、建物賃貸借契約書の電子契約対応版が2026年1月30日に更新されており、比較的新しい内容にアップデートされていることがわかります。

両者の使い分けとして、まず標準的な内容を押さえたい場合は国交省の標準契約書を軸にするのが安心です。一方で、電子契約への対応や編集のしやすさを重視するなら、Word形式で提供される民間テンプレートが便利でしょう。ただし民間テンプレートは提供元自身が自己責任での利用を案内している点に注意が必要です。公開されたひな形をそのまま使うのではなく、自社の物件事情に合わせて個別に調整することが前提となります。

国交省の標準契約書に見る基本構成

ひな形を活用する前に、賃貸借契約書がどのような構成になっているかを理解しておくと、内容の過不足を判断しやすくなります。国交省の標準契約書では、冒頭に「頭書」と呼ばれる欄が設けられています。ここには賃貸借の目的物の概要、契約期間、賃料などの約定事項、そして貸主・借主・管理人・同居人の氏名などを一覧できるようにまとめられています。この頭書によって記載漏れを防ぎ、当事者の意思を明確にする狙いがあります。

契約期間についても押さえておきましょう。国交省の解説資料によれば、普通建物賃貸借の契約期間は最短で1年とされており、最長期間の制限はありません。一般的な居住用の賃貸借では2年間を標準とするケースが多く、実際にテンプレートBANKの建物賃貸借契約書も2年間の設定を採用しています。用途によっては学生向け物件で在学期間に合わせた期間設定を行うなど、実態に応じた調整が可能です。

敷金に関する条項も重要です。標準契約書では、借主は物件を明け渡すまでの間、敷金をもって賃料や共益費などの債務と相殺することができない建て付けになっています。そして貸主は敷金から差し引く債務の額の内訳を借主に明示しなければなりません。このように精算の透明性を確保する規定が盛り込まれている点は、退去時のトラブル防止に直結します。

連帯保証人と保証会社に関する記載

連帯保証人に関する記載は、ひな形を選ぶうえで特に注意したいポイントです。改正民法では、個人が根保証契約を結ぶ場合に極度額の設定が要件化されました。極度額とは、連帯保証人が負う責任の上限金額のことです。これを受けて、国交省の標準契約書は平成30年の改定で従来型を「連帯保証人型」として極度額の記載欄を設け、あわせて原状回復や敷金返還のルールも改定内容に反映しました。

極度額をいくらに設定するか迷う場合、国交省が公表している参考資料が判断の助けになります。この資料では、家賃債務保証業者が実際に支払った損害額について、10万円未満が44.5%、30万円未満が80.0%を占め、中央値は11.5万円、平均値は17.7万円、最高額は178.4万円というデータが示されています。こうした実額の分布を踏まえて、過度に高すぎず低すぎない金額を検討することが実務上のコツです。

近年は個人の連帯保証人に代えて保証会社を利用するケースが増えています。標準契約書でも、新規契約の約6割が機関保証を利用している実態を踏まえ、平成30年の改定で「家賃債務保証業者型」が新たに作成されました。契約書に記載する内容も、連帯保証人を立てる場合は氏名や住所、保証する極度額を記載し、家賃保証会社を利用する場合はその会社の名称、事務所の所在地、登録番号などを記載する形が案内されています。どちらの方式を採用するかに応じて、対応するひな形を選ぶことが大切です。

原状回復と修繕負担をめぐる基本ルール

原状回復は賃貸借契約における最大のトラブル要因であり続けています。退去時にどこまでが借主の負担となるのかという線引きをめぐって争いになるケースは少なくありません。ここで押さえておくべき原則は、国交省のガイドラインが原状回復を「借りた当時の状態に戻すこと」ではないと明確に定義している点です。ガイドラインでは、原状回復を借主の故意・過失や善管注意義務違反、通常の使用を超える使用による損耗を復旧することと位置づけています。

標準契約書の原状回復条項も同じ考え方に立っています。借主は通常の使用に伴い生じた損耗を除いて原状回復する義務を負い、建物や設備の自然な劣化・損耗である経年変化や、通常の使用によって生じる通常損耗については貸主が負担すべき費用とされています。つまり、普通に暮らして生じる傷みや汚れまで借主に請求することは原則としてできません。テンプレートBANKの建物賃貸借契約書のように、原状回復条項に壁紙・床の張替えを明記しているひな形もありますが、その記載が経年変化分まで借主に負担させる趣旨でないか、実際の運用と整合しているかを確認する必要があります。

修繕についても責任の区分が定められています。標準契約書では、借主が物件を使用するために必要な修繕は原則として貸主が行い、借主の故意または過失によって必要となった修繕費用は借主が負担するとされています。一方で、借主が貸主の承諾を得ずに自費で行える軽微な修繕の例として、畳表の取替えや裏返し、障子紙・ふすま紙の張替え、電球・蛍光灯・LED照明の取替え、給水栓・排水栓の取替えなどが例示されています。日常的な小修繕まで貸主に連絡する手間を省ける実務的な工夫といえます。

なお国交省は、契約書本体だけでなく、入退去時の物件状況および原状回復確認リストの例、契約書に添付する原状回復条件の様式例、精算明細の様式例なども用意しています。これらの様式を併用することで、入居時と退去時の状態を客観的に記録でき、後日の争いを大幅に減らせます。ひな形を導入する際は、契約書単体ではなくこうした付属様式もあわせて整えることをおすすめします。

電子契約に対応したひな形の選び方

デジタル化の進展を受けて、電子契約に対応したひな形の需要が高まっています。不動産取引書面の電子提供は2022年5月18日から本格施行され、提供方法として電子メール、Webページからのダウンロード形式、USBメモリなどの交付が公式に例示されました。これにより、重要事項説明書や契約締結時書面などを電磁的方法で提供することが可能になっています。

電子提供にあたっては満たすべき基準があります。国交省が示す基準では、提供する書面を出力できること、そして電子署名などによって改変が行われていないかどうかを確認できることなどが求められています。ひな形を選ぶ際は、こうした要件に対応した設計になっているかを確認しましょう。実際にテンプレートBANKでは、電子契約と書面契約の両方に対応した賃貸借契約書や更新契約書が提供されており、状況に応じて使い分けられるようになっています。

また、2022年5月18日施行の宅地建物取引業法改正では、契約締結時書面への宅地建物取引士の押印が不要になりました。これを受けて国交省の標準契約書では、宅地建物取引業者および宅地建物取引士の押印欄が削除されています。古いひな形をそのまま使い続けると不要な押印欄が残ってしまうため、こうした改正に対応した最新版を選ぶことが望まれます。

更新・定期借家・特約で気をつけたいこと

契約の更新については、専用のひな形を用意しておくと手続きがスムーズです。テンプレートBANKの更新契約書は、既契約と同一条件で更新する前提で、対象となる建物や合意内容、更新料の金額・支払方法・期日、保証金の扱いまで定める内容になっています。更新料は地域慣習や物件によって扱いが異なるため、金額や支払時期を明確に記載しておくことがトラブル防止につながります。

更新のない契約を望む場合は定期建物賃貸借を選択します。国交省の説明によれば、定期建物賃貸借は契約で定めた期間が満了することで、更新されることなく確定的に賃貸借契約が終了する制度です。この契約を有効に成立させるには、契約期間を定めること、公正証書などの書面により契約を締結すること、そして貸主が契約書とは別に事前説明文書を借主に交付して事前説明を行うことが必要とされています。ひな形を使う場合も、この事前説明文書の交付を省略しないよう注意しなければなりません。

定期借家では中途解約の扱いも押さえておきましょう。居住用で床面積が200平方メートル未満の建物については、転勤などのやむを得ない事情があるとき、借主は1か月前に申入れを行うことで解約できるとされています。この点を契約書に反映しておくことで、借主・貸主双方が予期せぬ事態に対応しやすくなります。

個別の事情に応じた取り決めを行う特約についても、ひな形をベースにしながら慎重に検討する必要があります。国交省は令和6年12月に、死後事務委任契約の締結を前提とした賃貸借契約を締結する際の特約項目の記載例を、標準契約書の作成にあたっての注意点および解説コメントに追加しました。単身高齢者の入居が増えるなかで、こうした新しい実務ニーズにも対応が進んでいます。特約を設ける際は、消費者契約法や借地借家法に反して借主に一方的に不利な内容とならないよう配慮することが欠かせません。

ひな形を安全に活用するためのポイント

ここまで見てきたように、賃貸借契約書のひな形には公的な標準契約書と民間のテンプレートがあり、それぞれに強みがあります。実務でひな形を活用する際に確認すべき項目として、テンプレートBANKの解説記事では、物件の名称や所在、付帯設備や付属施設、契約期間・賃料、連絡先、契約の解約、設備の交換や修繕の負担、原状回復費やクリーニング費用の負担などが挙げられています。これらの項目に漏れや曖昧さがないかを一つずつ点検することが第一歩です。

重要なのは、無料で入手できるひな形をそのまま流用しないという姿勢です。民間テンプレートの提供元も自己責任での利用を案内している通り、公開ひな形は出発点にすぎません。物件の種類や地域の慣習、当事者の要望に応じて内容をカスタマイズすることで、はじめて実効性の高い契約書になります。また、国交省が2026年に新たな標準契約書本文を公表したという事実は今回確認できておらず、民間テンプレートの更新と公的な改訂を混同しないよう注意が必要です。最新の公式情報は各公的機関の公式サイトで確認してください。

適切な契約書の整備は、貸主と借主双方の権利を守り、長期的に良好な関係を築く基盤となります。ひな形の内容に不明な点がある場合や、複雑な特約を設ける場合には、弁護士や不動産の専門家に相談することをおすすめします。トラブルが起きてから契約書の不備に気づくのでは遅すぎます。信頼できるひな形を土台に、自社の実情に合わせた契約書を整えることが、安定した賃貸経営への確かな一歩となるはずです。

参考文献・出典

  • 国土交通省「『賃貸住宅標準契約書』について」 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000023.html
  • 国土交通省「民法改正等を踏まえ『賃貸住宅標準契約書』等を改定しました」 – https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000121.html
  • 国土交通省「賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)について」 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001493380.pdf
  • 国土交通省「『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』について」 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html
  • 国土交通省「『民間賃貸住宅に関する相談対応事例集』について」 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000117.html
  • 国土交通省「定期建物賃貸借」 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000059.html
  • 国土交通省「定期建物賃貸借 Q&A」 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000060.html
  • 国土交通省「不動産取引時の書面が電子書面で提供できるようになります」 – https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00036.html

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