不動産投資を検討しているとき、「木造物件は安いけど大丈夫なの?」と不安を感じる方は多いのではないでしょうか。RC造(鉄筋コンクリート造)と比べて耐久性が低いイメージがある一方、価格の安さや利回りの高さに魅力を感じている方もいるはずです。この記事では、木造物件への投資を考えている初心者の方に向けて、メリットとデメリットを正直にお伝えします。税務上の扱いや融資の特徴、維持管理のポイントまで幅広く解説しますので、ぜひ最後まで読んで、自分に合った投資判断の参考にしてください。
木造物件が投資対象として注目される理由

まず押さえておきたいのは、木造物件が不動産投資の世界でなぜ根強い人気を持つのか、という点です。その最大の理由は、建築コストの低さにあります。
RC造やSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)、S造(鉄骨造)と比べると、木造は材料費も施工費も抑えられるため、同じ立地・同じ規模の建物を建てる場合でも、初期投資額を大幅に抑えることができます。これは購入価格の低さにも直結するため、手元資金が限られている投資初心者にとって、参入しやすい選択肢となっています。
また、木造は加工性が非常に高いという特徴があります。SUUMOの構造比較によると、木造はリフォームのしやすさという点でRC造などより優れており、間取り変更や設備の入れ替えも比較的容易です。さらに、材料が軽量なため、奥まった土地や狭小地、変形した敷地でも施工しやすいという利点があります(SUUMO)。つまり、RC造では建てられないような条件の土地でも、木造であれば活用できる可能性があるのです。
利回りという観点でも、木造物件は有利に働くことが多いです。物件価格が低い分、同じ家賃収入でも表面利回りが高くなりやすく、収益性の高い投資として計算しやすいという面があります。もちろん、利回りだけで判断するのは危険ですが、投資の入口として魅力的な数字が出やすいのは事実です。
知っておくべき木造物件のデメリット

一方で、木造物件への投資には無視できないデメリットも存在します。メリットだけを見て飛びつくのではなく、リスクをしっかり理解した上で判断することが大切です。
まず挙げられるのが、防音・耐火・耐震性能の問題です。SUUMOの構造別比較では、木造はRC造やSRC造と比べて防音性・耐火性・耐震性のいずれも評価が低くなっています。防音性が低いと入居者からのクレームにつながりやすく、空室リスクの上昇を招く可能性があります。また、耐火性の低さは火災保険料の負担増にも影響することがあります。
次に、融資条件の厳しさという問題があります。国土交通省の資料(2025年3月27日時点版)によると、金融機関における木造建築物への融資判断では、現状は償却期間が短いものとして取り扱われ、融資期間が短く設定される、あるいは融資が実行されにくい事案が発生しかねないとされています。融資期間が短くなると月々の返済額が増え、キャッシュフローが悪化するリスクがあります。
ただし、融資条件は金融機関によって大きく異なります。金融機関によって、木造物件に対する融資期間の計算方法や設定期間に差があり、比較的短い期間を設定する金融機関もあれば、より長い期間を設定する金融機関も存在します。つまり、どの金融機関に相談するかによって、借入条件は大きく変わる可能性があるということです。
税務上の扱いと減価償却の考え方
木造物件への投資を考える上で、税務上の扱いを理解しておくことは非常に重要です。特に「減価償却」という概念は、収益計算に直接影響するため、しっかり把握しておきましょう。
国税庁の耐用年数表によると、木造・合成樹脂造の建物のうち、店舗用・住宅用のものの法定耐用年数は22年と定められています(国税庁)。これはRC造の47年と比べると大幅に短く、同じ建物価格であれば毎年の減価償却費が大きくなることを意味します。
減価償却費が大きいことは、一見するとデメリットのように思えますが、実は節税効果という観点ではメリットになる場合があります。減価償却費は帳簿上の経費として計上できるため、課税所得を圧縮する効果があります。特に給与所得が高い会社員の方にとっては、不動産所得との損益通算によって所得税・住民税の節税につながるケースがあります。
ただし、国土交通省の資料(2025年3月27日時点版)では、木造の短い償却期間がREIT(不動産投資信託)の場合に年あたりの減価償却費を大きくし、会社法上の配当金の原資を減らして投資インセンティブにネガティブに働く場合があると指摘されています。個人投資家の場合とは異なる影響が出ることもあるため、自分の投資スタイルに合わせた判断が必要です。なお、税務上の取り扱いは個別の状況によって異なりますので、詳細は税理士などの専門家にご相談ください。
木造物件の耐久性と維持管理のポイント
「木造は古くなるとすぐに傷む」というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、適切な維持管理を行えば、長期にわたって資産価値を保つことができます。
国土交通省は2024年3月に、木造建築物の耐久性評価に関するガイドラインを公表しました。その内容によると、適切な雨水浸入防止・排出・防腐防蟻処理が講じられれば、通常想定される自然条件と維持管理条件のもとで50年以上の耐久性確認が可能だとされています(国土交通省)。つまり、法定耐用年数の22年を超えても、きちんとメンテナンスを続ければ実際の建物寿命はずっと長くなり得るということです。
実際の維持管理で特に重要とされるのは、屋根・外壁の防水処理と、シロアリ対策(防蟻処理)です。木材は水分と害虫に弱いため、これらへの対策を怠ると建物の劣化が急速に進む可能性があります。定期的な点検と適切なタイミングでの修繕を計画に組み込んでおくことが、長期投資の成功につながります。
また、維持管理コストを事前に見積もっておくことも大切です。修繕費用の目安は物件の築年数や立地条件によって大きく異なりますが、一般的には年間の家賃収入の一定割合を修繕積立として確保しておくことが推奨されています。具体的な金額は物件の状態によって異なりますので、購入前に専門家による建物調査(インスペクション)を受けることをおすすめします。
木造投資に向いている人・向いていない人
木造物件への投資が自分に合っているかどうかを判断するために、投資家像の観点から整理してみましょう。
木造投資に向いているのは、まず初期資金が限られていて、できるだけ少ない自己資金で不動産投資を始めたい方です。物件価格が低い分、頭金の絶対額も小さくなりやすく、投資の第一歩を踏み出しやすいという特徴があります。また、節税効果を重視している給与所得者の方にとっても、減価償却費を活用した税務戦略が立てやすいという点で魅力的です。さらに、リフォームや改装を積極的に行って物件の付加価値を高めたいと考えている方にも、加工性の高い木造は適しています。
一方で、木造投資に慎重になるべき方もいます。長期の融資を前提にキャッシュフローを安定させたいと考えている方は、融資期間が短くなりやすい木造物件では月々の返済負担が重くなる可能性があります。また、防音性や耐火性を重視する入居者が多いエリアでは、木造物件は競合するRC造物件と比べて入居付けが難しくなることもあります。出口戦略として売却を重視している方も、築年数が進んだ木造物件は買い手が限られる場合があることを念頭に置いておく必要があります。
重要なのは、木造物件が「良い」か「悪い」かという二択ではなく、自分の投資目的・資金力・リスク許容度に合っているかどうかを冷静に判断することです。
まとめ
木造物件への投資は、低コストでの参入しやすさや節税効果という大きなメリットがある一方、防音・耐火性能の低さや融資条件の厳しさというデメリットも抱えています。国税庁が定める法定耐用年数は22年ですが、国土交通省のガイドラインが示すように、適切な維持管理を行えば50年以上の耐久性を確保できる可能性もあります。大切なのは、メリットとデメリットを正確に理解した上で、自分の投資スタイルに合った判断をすることです。まずは複数の金融機関に融資条件を確認し、税理士や不動産の専門家に相談しながら、一歩ずつ着実に進めていきましょう。
参考文献・出典
- 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2021/pdf/037.pdf
- 国税庁「No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2108_qa.htm
- 国土交通省「木造建築物の耐久性に係る第三者評価の枠組みを構築(報道発表資料)」 — https://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_001253.html
- 国土交通省「木造建築物の耐久性に係る評価スキームの構築について(2025年3月27日時点版)」 — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001881353.pdf
- SUUMO「RC造(鉄筋コンクリート造)とは?耐用年数や防音性は?メリット・デメリットを解説」 — https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/chintai/fr_room/fr_roomkouzou/