「令和8年度の納税通知書を見たら、去年より固定資産税が高くなっていた」という声が、不動産オーナーの間で増えています。2024年度に評価替えが行われたばかりなのに、なぜ2026年になってもさらに税額が上がるのでしょうか。実は、この現象には固定資産税の特有の仕組みが深く関係しています。
本記事では、固定資産税が2026年に上昇した理由を基礎から丁寧に解説し、2027年度の次回評価替えに向けて投資家が押さえておくべき制度変更や対策をお伝えします。税制の仕組みを正しく理解しておけば、突然の税負担増にも慌てずに対応できるようになります。
固定資産税の評価替えは3年に一度のサイクルで行われる
固定資産税は、土地や建物を所有している人に毎年課される地方税です。この税額を決める基準となるのが「固定資産税評価額」で、土地については路線価や周辺の取引事例、建物については建築費や経年劣化を考慮して算定されます。不動産の価値は時間とともに変動するため、評価額も定期的に見直す必要があり、この見直し作業を「評価替え」と呼んでいます。
評価替えは原則として3年に一度行われます。直近では令和6年度、つまり2024年度に評価替えが実施され、次回は令和9年度(2027年度)に予定されています。評価替えが行われる年を「基準年度」と呼び、その後の2年間は「据置年度」として原則評価額が据え置かれる仕組みになっています。
ここで重要なのは、「据置年度なのに税額が変わることがある」という点です。評価額が据え置かれるのであれば税額も変わらないはずだと思われるかもしれませんが、実際には据置年度でも税額が上昇するケースがあります。これが「評価替えの年でもないのに固定資産税が上がった」という疑問の正体なのです。
2026年に固定資産税が上がった本当の理由
2026年に固定資産税が上昇した背景には、大きく分けて二つの要因があります。一つは2024年度の評価替えによる影響、もう一つは「負担調整措置」という制度の存在です。
2024年度評価替えにおける建築費高騰の影響
2024年度の評価替えでは、建物の評価額に大きな変化がありました。ウッドショックや建築資材の価格高騰を受けて、建物の評価に反映させるための補正率が設定されました。
通常、建物の評価額は築年数の経過とともに「経年減点補正率」によって下がっていきます。たとえば築4年目の木造住宅であれば、経年減点補正率は0.68程度になり、新築時の評価額から約32%減少します。しかし、建築費高騰を反映した補正率が適用されると、この減少効果が相殺されてしまいます。
ある投資家の事例では、令和6年度の固定資産税納税通知書を確認したところ、前年度と比べて約7万円も税額が上昇していたといいます。この原因を調べてみると、建築費高騰の影響で、本来であれば15%程度下がるはずの評価額が5%程度しか下がらず、結果として税額が増加していたのです。
据置年度でも税額が上がる「負担調整措置」の仕組み
もう一つの重要な要因が「負担調整措置」です。この措置は、評価替えで評価額が急騰しても税額が一気に跳ね上がらないよう、緩やかに引き上げていく制度です。前年度の課税標準額と当年度の評価額の比率(負担水準)に応じて、課税標準額を段階的に上げていく仕組みになっています。
つまり、2024年度の評価替えで評価額が大幅に上昇した物件については、2025年度、2026年度と続く据置年度においても、課税標準額が少しずつ引き上げられていくのです。これが「評価替えじゃない年なのに固定資産税が上がった」という現象の正体です。評価額自体は据え置かれていても、課税標準額が調整されることで税額は変動しうるわけです。
負担調整措置は土地の税額を急激に変動させないための救済措置ですが、逆に言えば評価額上昇の影響がジワジワと複数年にわたって続くことを意味します。2024年度の評価替えで地価上昇が反映された地域では、2026年度まで税負担の上昇が続いている可能性が高いのです。
2027年度の評価替えで変わる固定資産税制度
2027年度には次回の評価替えが予定されていますが、同時にいくつかの制度変更も実施される見込みです。投資家として押さえておくべきポイントを解説します。
家屋の免税点の引き上げ
2027年度から、家屋に対する固定資産税の免税点が引き上げられる予定です。免税点とは、評価額がその金額未満であれば固定資産税が課税されないというラインのことです。この変更により、小規模な家屋については税負担が軽減される可能性があります。
また、償却資産についても免税点が引き上げられます。一方、土地の免税点には変更がありません。小規模物件や古い建物を保有している投資家にとっては、税負担が軽減される朗報といえるでしょう。
負担調整措置の延長期限と今後の動向
負担調整措置は、近年の税制改正により延長されています。しかし、この措置の期限が2027年度の評価替えと重なるため、次回評価替え以降の取り扱いについては注目が必要です。
もし負担調整措置が廃止または縮小された場合、評価額の上昇がダイレクトに税額に反映されるようになり、急激な税負担増が発生する可能性があります。今後の税制改正の動向については、総務省や各自治体からの発表を注視していく必要があります。
地価動向と評価額への影響
2027年度の評価替えでは、2024年から2026年にかけての地価動向が評価に反映されます。国土交通省の地価公示によると、商業地・住宅地とも全国平均で上昇基調が続いており、特に都市部では顕著な上昇を示している地域が多くあります。
こうした地価上昇傾向が続けば、2027年度の評価替えで土地の評価額がさらに上昇し、固定資産税の負担増につながる可能性があります。一方、人口減少が進む地方では地価下落が続いている地域もあり、そうした地域では評価額の引き下げによる税負担軽減も期待できます。
固定資産税アップが投資家の収益に与える影響
不動産投資家にとって、固定資産税は純営業収益(NOI)に直結する重要な経費項目です。年間の税額が数万円変わるだけでも、利回りの見え方は大きく変わってきます。
具体的な例で考えてみましょう。表面利回り8%、年間家賃収入120万円の物件があるとします。この物件の固定資産税が年間5万円増加した場合、経費控除後の収入は5万円減少します。これを物件価格1,500万円で割り直すと、実質利回りは約0.3%低下する計算になります。
「たかが0.3%」と思われるかもしれませんが、複数物件を保有している投資家や、ローン返済と家賃収入のバランスがギリギリの物件では、この差が経営を圧迫するリスクがあります。特に、物件購入時に固定資産税を過小見積もりしていた場合、想定していた収支計画が狂ってしまう恐れがあります。
また、新築住宅には固定資産税の減額措置があり、一定期間(通常5年間)は税額が2分の1に軽減されます。しかし、この軽減期間が終了すると税額が一気に倍増するため、「6年目の壁」と呼ばれる税負担増に直面する投資家も少なくありません。減額措置の終了時期を把握し、事前にキャッシュフローを再計算しておくことが重要です。
投資家が今すぐ取るべき固定資産税対策
固定資産税の上昇リスクに備えるため、投資家が今から実践できる具体的な対策を解説します。
納税通知書と課税明細書の内容を確認する
まず行うべきは、毎年届く納税通知書の内容を詳しく確認することです。納税通知書に添付されている課税明細書には、土地・建物それぞれの評価額、課税標準額、税率、そして適用されている特例措置が記載されています。前年度の明細書と比較して、大きな変動がないか、計算に不審な点がないかをチェックしましょう。
固定資産税の課税に関しては、多くの自治体で課税誤りが発生する可能性があります。誤りのパターンとしては、住宅用地の特例が正しく適用されていない、建物の面積や構造が誤って登録されている、経年減点補正率の計算が間違っているなどが挙げられます。自分の物件について、こうした誤りがないか確認しておくことは決して無駄ではありません。
住宅用地特例の適用状況を確認する
賃貸住宅を所有している投資家にとって特に重要なのが、「住宅用地の特例」が正しく適用されているかどうかです。住宅が建っている土地については、200平方メートル以下の部分は「小規模住宅用地」として課税標準額が評価額の6分の1に、200平方メートルを超える部分は「一般住宅用地」として3分の1に軽減されます。都市計画税についてもそれぞれ3分の1、3分の2の軽減があります。
この特例が適用されていなければ、土地の税負担は最大で6倍にもなります。物件を取得した際や、建替えを行った後に特例が正しく適用されているか、課税明細書で確認してください。また、2023年の法改正により、管理不全な空き家については住宅用地特例の対象外となる場合があります。放置している物件がある方は注意が必要です。
次回評価替えに向けた税額シミュレーションを行う
2027年度の評価替えに備えて、将来の税額をシミュレーションしておくことも大切です。現在の評価額をベースに、地価動向や建築費の推移を考慮しながら、次回評価替え後の税額がどの程度になりそうかを試算してみましょう。
シミュレーションの結果、税負担増によってキャッシュフローが悪化する見込みであれば、家賃の見直しや経費削減策を検討する、あるいは物件の売却や入れ替えを視野に入れるなど、早めに対策を講じることができます。税理士や不動産コンサルタントに相談して、専門家の視点からアドバイスを受けるのも効果的です。
評価額に疑問がある場合は審査申出を検討する
評価額が周辺の相場と比べて明らかに高い、または計算方法に問題があると感じた場合は、「固定資産評価審査申出」という制度を利用できます。これは納税通知書を受け取った日から3か月以内に、市町村の固定資産評価審査委員会に対して評価額の見直しを求める手続きです。
審査申出には、評価額が不適切だと考える根拠と裏付け資料(不動産鑑定士の意見書、周辺取引事例など)を添付する必要があります。すべての申出が認められるわけではありませんが、明らかな計算ミスや評価方法の誤りがあれば是正される可能性があります。正式な手続きの前に、まずは自治体の担当者に相談してみることをおすすめします。
まとめ
2026年に固定資産税が上がった理由は、2024年度の評価替えにおける建築費高騰の影響と、負担調整措置による課税標準額の段階的な引き上げにあります。評価替えの年でなくても税額が変動しうるのは、この負担調整措置の仕組みによるものです。
2027年度の次回評価替えでは、家屋の免税点引き上げや負担調整措置の延長といった制度変更が予定されています。また、地価動向によっては土地の評価額がさらに上昇し、税負担増につながる可能性もあります。
投資家として重要なのは、納税通知書の内容を詳しく確認し、住宅用地特例が正しく適用されているかをチェックすること、そして次回評価替えに向けた税額シミュレーションを行い、収支計画を見直しておくことです。固定資産税は毎年の収益に直結する経費ですから、制度の仕組みを正しく理解し、適切な対策を講じていきましょう。
参考文献・出典
- 総務省 固定資産税制度 – https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_08.html
- 総務省 固定資産評価基準 – https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_09.html
- 国土交通省 地価公示 – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk2_000043.html
- 総務省 地方税制度 – https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790.html