不動産投資を検討している方のあいだで、マンスリーマンションや短期賃貸への関心が高まっています。「通常の賃貸とどこが違うのか」「本当に需要はあるのか」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。実はコロナ禍を経て、マンスリーマンション市場は従来とは異なるかたちで回復と拡大を続けています。全国賃貸住宅新聞によると、大手運営会社のリブ・マックスでは2023年2月以降、毎月前年同月比で平均5%ずつ売上が増加しているとのことです。この記事では、マンスリーマンション需要を押し上げている背景から、投資家として知っておくべき収益性やリスク、そして成功するための具体的な戦略まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
マンスリーマンション需要を押し上げる3つの背景
マンスリーマンション市場が活況を呈している背景には、社会構造の大きな変化があります。重要なのは、この成長が一過性のブームではなく、働き方や暮らし方の根本的な転換に支えられている点です。需要拡大の要因を3つの観点から整理してみましょう。
テレワーク・ハイブリッドワークの定着
働き方改革とコロナ禍を経て、リモートワークやハイブリッドワークは多くの企業で定着しました。都心のオフィス近くに住む必要性が薄れた結果、「季節や目的に応じて住む場所を変える」というライフスタイルが広がりつつあります。こうした動きは「マルチハビテーション」とも呼ばれ、1ヶ月から3ヶ月程度の短期滞在を繰り返す層が増加しています。
船井総研の調査でも、テレワーク定着がマンスリーマンション需要の多様化を後押ししていると指摘されています。とりわけ自宅以外に仕事スペースを求めて短期でマンスリーマンションを利用するケースが増えており、「高速Wi-Fi」「ワークデスク」「快適な椅子」といった設備の充実度が物件選びの決め手になっています。こうしたリモートワーク拠点としての需要は、今後も底堅く推移すると見られています。
インバウンド観光の本格回復とホテル不足
訪日外国人観光客数はコロナ禍前の水準を上回る勢いで回復しており、観光地や都市部ではホテル不足が顕在化しています。こうした状況を背景に、ホテルよりも割安で生活感のあるマンスリーマンションへの需要が高まっています。特に欧米からの観光客を中心に、2週間から1ヶ月程度の「ロングステイ型観光」が増えており、「暮らすような旅」を求める層がマンスリーマンションを選ぶケースが目立つようになりました。
全国賃貸住宅新聞によれば、関西地方で賃貸物件を管理する事業者では、高い稼働率を維持し、インバウンド需要を見込んで多言語対応の予約サイトを公開したとのことです。海外向けには直前キャンセルなどのリスクを踏まえ、通常より3割高い料金設定をしているといいます。こうした事業者の動きからも、インバウンド需要の取り込みが収益拡大のカギになっていることがうかがえます。
法人需要の復活と企業人材戦略の変化
コロナ禍で一時的に落ち込んでいた法人の出張・研修需要が復活しています。プロジェクトベースでの人材配置や地方拠点への短期派遣が増えるなか、企業が社員用の短期住居としてマンスリーマンションを活用するケースが増加しました。社宅を保有するよりもコスト効率が良く、柔軟な人材配置が可能になる点が評価されています。
特に3ヶ月から6ヶ月程度の中期契約が好まれる傾向にあり、法人需要はマンスリーマンション市場における最大のボリューム層ともいわれています。船井総研の記事でも、法人出張者・転勤者向けには請求書払い対応や法人専用ページの整備が有効な集客施策として挙げられています。こうした法人ニーズを確実に取り込むことが、安定した稼働率の維持につながります。
ターゲット顧客の分類と対策
マンスリーマンションの需要層は多様化しており、ターゲットごとに有効なアプローチが異なります。法人出張者やリモートワーカー、インバウンド観光客、そして移住検討者といった主要な顧客セグメントを理解し、それぞれに合った戦略を立てることが成功への近道です。
法人出張者・転勤者向けの対策
法人需要を獲得するためには、まず企業担当者が利用しやすい仕組みを整えることが重要です。具体的には、請求書払いや法人契約への対応、見積書の迅速な発行、さらに法人専用ページの整備などが効果的とされています。研修や長期出張で複数名の宿泊が必要になるケースもあるため、まとまった部屋数を確保できる体制も求められます。
法人契約では、個人利用に比べて長期間・安定的に借りてもらえる傾向があります。一方で、審査や契約手続きが煩雑になる場合もあるため、スムーズな対応ができるよう社内体制を整えておくことが大切です。こうした法人向けサービスの充実が、他物件との差別化ポイントになります。
リモートワーカー・ノマドワーカー向けの対策
テレワーカーやノマドワーカーは、仕事環境の快適さを重視する傾向があります。高速Wi-Fi(100Mbps以上が目安)はもちろん、広めのデスクや疲れにくい椅子、複数のコンセント、良好な照明環境など、ホームオフィスとして機能する設備が求められます。こうした層は口コミやSNSでの評判を重視する傾向があるため、レビュー対応にも気を配りましょう。
また、1週間から1ヶ月程度の短期滞在を繰り返すケースが多いため、最低契約期間を柔軟に設定することで予約機会を増やせます。「テレワーク マンスリーマンション」「リモートワーク拠点」といったキーワードでの検索流入を意識した情報発信も有効です。
インバウンド(外国人長期滞在者)向けの対策
訪日外国人の長期滞在需要を取り込むには、多言語対応が不可欠です。英語版の予約サイトや物件説明書、設備の使い方マニュアルなどを用意することで、言語の壁を低くできます。スマートロックシステムの導入も、鍵の受け渡しをスムーズにするうえで効果的です。
海外からの利用者は直前キャンセルや為替リスクへの対応も課題となります。そのため、一部の事業者では通常より2〜3割高い料金設定をすることでリスクヘッジを図っています。Airbnbなど海外で認知度の高いプラットフォームへの掲載も検討する価値があるでしょう。
移住検討者・お試し移住向けの対策
地方移住への関心が高まるなか、「お試し移住」としてマンスリーマンションを利用する層も増えています。1〜3ヶ月ほど実際に住んでみて、地域との相性を確かめたいというニーズに応えるかたちです。こうした層には、地域の生活情報や周辺環境の案内など、移住を後押しする情報提供が効果的です。
地方のマンスリーマンション市場は、都市部に比べて情報発信が不足している傾向があります。近年、「マンスリーマンション」「ウィークリーマンション」の検索量が増加しており、地方でも複数の県で検索数が大幅に伸びているといいます。つまり、地方には需要があるにもかかわらず物件情報が届いていない可能性があり、SEO対策やポータルサイト掲載によって潜在顧客にリーチできる余地が大きいといえます。
都市部と地方で異なる需要特性
マンスリーマンション市場は、都市部と地方で需要構造が大きく異なります。投資エリアを選ぶ際には、それぞれの特性を理解したうえで戦略を立てることが重要です。
都市部は高稼働だが競争も激化
東京、大阪、名古屋といった大都市圏では、ビジネス需要と観光需要の両方が見込めるため、マンスリーマンションの稼働率は総じて高い水準にあります。大手ポータルサイトの掲載データによると、全国の物件のうち東京都内に大きな供給が集中しています。
一方で、物件数が多い分だけ競争も激しく、差別化が難しい面があります。駅近で設備が充実した物件は稼働率80%以上を維持できる傾向がありますが、駅から遠い物件や設備が古い物件は苦戦することもあります。都市部で投資する場合は、立地選びと設備のアップデートに十分な注意を払う必要があるでしょう。
地方は未開拓市場としてのチャンスあり
地方都市では、マンスリーマンションの供給が需要に追いついていないケースが多く見られます。検索需要は増えているのに、ポータルサイトへの掲載件数が少ない、あるいは掲載自体がないエリアも存在します。こうした地域では、先行者利益を得られる可能性があります。
福岡、札幌、仙台、広島といった政令指定都市では、リモートワーカーの「お試し移住」需要や地域企業の出張需要が確認されています。物件取得価格が都心の半分程度に抑えられる一方、稼働率70〜75%程度を維持できるケースもあり、初期投資を抑えたい投資家にとって有力な選択肢となっています。地方展開を検討する際は、まず検索ボリュームや競合状況を調査し、需給ギャップを見極めることが大切です。
マンスリーマンション投資の収益性とコスト構造
短期賃貸投資を検討するうえで、収益性の見極めは欠かせません。マンスリーマンションは通常の賃貸物件より高い賃料を設定できる可能性がありますが、運営コストや空室リスクも考慮する必要があります。
賃料設定と期待利回り
マンスリーマンションの最大の魅力は、賃料設定の柔軟性にあります。通常の賃貸で月額10万円の部屋でも、家具家電付きのマンスリー物件として貸し出せば月額15万〜18万円程度の設定が可能です。入居者にとっては初期費用(敷金・礼金・家具購入費)が不要になるメリットがあり、割高でも需要が見込めるのです。
ただし、高い賃料を維持するためには稼働率の確保が欠かせません。一般的に、年間稼働率80%以上を維持できれば通常賃貸を上回る収益が期待できるとされています。逆に稼働率が70%を下回ると、収益が通常賃貸以下になるリスクもあります。立地や設備、集客力が収益を大きく左右する点を理解しておきましょう。
運営コストの内訳
マンスリーマンションでは、通常賃貸にはない運営コストが発生します。まず、家具家電の初期投資として相応の費用が必要です。ベッド、ソファ、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、調理器具、食器類など、入居者がすぐに生活を始められる環境を整えなければなりません。
退去のたびに発生する清掃費用も見逃せません。清掃代行を利用する場合、1回あたり2万〜3万円程度が相場です。リネン類の交換や消耗品の補充もあり、これらの運営コストを月額収益の15〜20%程度として見積もっておくと安心です。さらに、家具家電は入退去の頻度が高い分だけ劣化が早く、3〜5年での入れ替えを想定した資金計画が求められます。
投資リスクと対策
高収益が期待できるマンスリーマンション投資ですが、通常の賃貸投資とは異なるリスクも存在します。主なリスクを把握し、適切な対策を講じることが成功への鍵となります。
稼働率の変動リスク
短期賃貸は季節や経済状況によって需要が変動しやすい特性があります。ビジネス需要が中心の物件では年末年始やゴールデンウィークに稼働率が下がる傾向があり、観光需要が中心の物件では閑散期に苦戦することもあります。
対策としては、複数の需要層を取り込める立地を選ぶことが有効です。ビジネス街に近く、かつ観光地へのアクセスも良い物件であれば、需要の平準化が図れます。また、最低契約期間を1ヶ月から2週間に短縮したり、複数の予約サイトに掲載したりすることで、幅広い層にアプローチできます。
設備劣化と修繕コスト
入退去の頻度が高いマンスリーマンションでは、設備の劣化スピードが通常賃貸の3〜5倍ともいわれています。特に水回りや家具、家電の消耗が激しく、小さな不具合を放置すると入居者の満足度低下やクレームにつながります。
初期投資の段階で耐久性の高い設備を選ぶことと、定期的なメンテナンス計画を立てることが重要です。修繕費用を収益の一定割合として確保しておけば、大規模修繕が発生しても慌てずに対応できます。
法規制リスク
マンスリーマンションに関する規制は自治体によって異なり、住宅宿泊事業法(民泊新法)との関係で運営ルールが変更される可能性もあります。投資前には必ず自治体の条例を確認し、必要に応じて管理会社や専門家に相談することが大切です。業界団体への加盟も、最新情報を入手するうえで有効な手段となります。
成功するための具体的なステップ
マンスリーマンション投資を始める際、適切な手順を踏むことで失敗のリスクを抑えられます。初心者の方でも実践できる、具体的な進め方を解説します。
投資スタイルの決定
まず、自分の投資スタイルを明確にしましょう。物件の選定から集客、清掃、入居者対応まで自分で行う「自己管理型」と、管理会社に委託する「委託型」の2つがあります。自己管理型は利益率が高い反面、時間と労力がかかります。本業を持つ方であれば、手数料を支払ってでも委託型を選ぶほうが無理なく運営できるでしょう。
物件選びのポイント
短期賃貸では立地がすべてといっても過言ではありません。初めての投資であれば、主要駅から徒歩7分以内、周辺にコンビニやスーパーがある、治安が良いエリアという3つの条件を満たす物件を探すことをおすすめします。都心部で2,500万〜3,500万円程度のワンルームまたは1Kが、初期投資とリターンのバランスが良い価格帯です。
集客戦略の構築
自己管理の場合は、複数の予約サイトに登録することで露出を増やせます。国内向けにはマンスリーマンション専門ポータル、海外向けにはAirbnbやBooking.comなどが有力です。プロによる写真撮影を依頼し、部屋の魅力を最大限に伝えることも大切です。高評価のレビューを積み重ねることで予約率が向上するため、清潔さの維持と迅速な対応を心がけましょう。
大型イベントと特需のチャンス
マンスリーマンション市場では、大型イベントが需要を大きく押し上げることがあります。2025年の大阪万博はその代表例です。全国賃貸住宅新聞によると、万博会場の建設に関わる従業員や会場スタッフの宿泊所として、関西エリアのマンスリー需要が急増しているとのことです。開催期間は6ヶ月間に及ぶため、中長期契約の需要も見込めます。
こうした特需は一時的なものですが、地域全体の稼働率と賃料相場を押し上げる効果があります。イベント情報をいち早くキャッチし、需要が高まるエリアに先行投資することで、大きなリターンを得られる可能性があります。今後も大型国際会議やスポーツイベントなどの動向に注目しておくとよいでしょう。
まとめ
マンスリーマンション市場は、テレワーク定着、インバウンド回復、法人需要の復活という3つの大きな潮流に支えられ、着実に成長を続けています。通常の賃貸投資と比較して高い収益性が期待できる一方、稼働率の変動リスクや設備の劣化コスト、法規制の変化といった特有の課題もあります。
成功のカギは、需要の高い立地を選び、ターゲット顧客に合った設備とサービスを整えること。そして、自分に合った運営スタイルを確立することです。都市部の駅近物件であれば安定した需要が見込めますし、地方都市でも適切な戦略をとれば十分な収益を上げることができます。
まずは小規模な物件から始め、市場を理解しながら経験を積んでいくことをおすすめします。マンスリーマンション投資は、不動産投資の新しい選択肢として今後もさらなる成長が期待される分野です。この記事で紹介した知識を活かし、あなたに合った投資戦略を検討してみてください。
参考文献・出典
- 全国賃貸住宅新聞 – マンスリーマンション市場動向 – https://www.zenchin.com/
- 船井総研 – マンスリーマンション集客戦略 – https://housing.funaisoken.co.jp/
- 国土交通省 – 住宅経済関連データ – https://www.mlit.go.jp/
- 日本政府観光局(JNTO) – 訪日外客統計 – https://www.jnto.go.jp/