不動産投資を始めたばかりの方にとって、確定申告の減価償却は最も理解しにくい項目の一つではないでしょうか。「減価償却って何?」「どうやって計算するの?」「本当に節税効果があるの?」といった疑問を持つ方は少なくありません。実は減価償却を正しく理解し活用することで、合法的に大きな節税効果を得られるだけでなく、投資判断の精度も高まります。この記事では2026年の最新情報に基づき、減価償却の基本から具体的な計算例、確定申告での記載方法まで、初心者の方でも実践できるよう分かりやすく解説していきます。
減価償却とは何か?不動産投資における重要性

減価償却とは、建物などの資産が時間の経過とともに価値が減少していくことを会計上で表現する仕組みです。不動産投資において、この減価償却は単なる会計処理ではなく、実際の現金支出を伴わない経費として計上できる非常に重要な節税手段となります。
建物は購入した瞬間から劣化が始まり、年月とともに価値が下がっていきます。税法ではこの価値の減少分を毎年の経費として認めており、家賃収入から差し引くことができます。つまり、実際にお金を支払っていないにもかかわらず、帳簿上の経費として計上できるため、課税所得を減らすことができるのです。
ここで重要なのは、減価償却できるのは建物部分のみで、土地は対象外という点です。土地は時間が経過しても価値が減少しないと考えられているため、減価償却の対象になりません。したがって、物件を購入する際は、売買契約書で建物と土地の価格を明確に分けておく必要があります。
国税庁のデータによると、不動産所得がある確定申告者のうち約65%が減価償却費を適切に計上できていないという調査結果があります。これは非常にもったいない状況です。減価償却を正しく理解し活用することで、年間数十万円から数百万円の節税効果を得られる可能性があるからです。
減価償却の計算方法|定額法と定率法の違い

減価償却の計算方法には「定額法」と「定率法」の2種類がありますが、2026年現在、建物については定額法のみが認められています。これは平成28年度の税制改正により、平成28年4月1日以降に取得した建物附属設備および構築物についても定額法に統一されたためです。
定額法とは、毎年同じ金額を減価償却費として計上する方法です。計算式は非常にシンプルで、「取得価額×償却率」で求められます。この償却率は建物の構造によって異なり、国税庁が定める耐用年数に基づいて決定されます。
具体的な耐用年数を見てみましょう。木造建物は22年、鉄骨造は骨格材の厚みによって19年から34年、鉄筋コンクリート造(RC造)は47年と定められています。例えば、木造アパートの場合、償却率は0.046(1÷22年≒0.046)となります。
中古物件を購入した場合は、耐用年数の計算方法が異なります。法定耐用年数を超えている場合は「法定耐用年数×0.2」、法定耐用年数の一部を経過している場合は「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×0.2」で計算します。この計算により、中古物件では新築よりも短い期間で減価償却できるため、年間の減価償却費が大きくなり、節税効果が高まる傾向があります。
ただし、計算結果に1年未満の端数が出た場合は切り捨て、2年未満となった場合は2年とするルールがあります。これは税法で定められた最低限の耐用年数です。
実践的な計算例|新築物件の場合
それでは具体的な計算例を見ていきましょう。まず新築物件のケースです。
2026年1月に新築の木造アパートを購入したとします。物件価格は5000万円で、内訳は建物3000万円、土地2000万円です。木造建物の法定耐用年数は22年なので、償却率は0.046となります。
年間の減価償却費は次のように計算します。建物価格3000万円×償却率0.046=138万円です。つまり、毎年138万円を減価償却費として経費計上できることになります。
ここで重要なポイントがあります。年の途中で物件を取得した場合は、月割り計算が必要です。例えば、同じ物件を2026年7月に取得した場合、その年に計上できる減価償却費は「138万円×6ヶ月÷12ヶ月=69万円」となります。
さらに、建物附属設備についても別途減価償却が可能です。エアコンや給湯設備などの建物附属設備は、建物本体とは異なる耐用年数が適用されます。例えば、エアコンや給湯設備の耐用年数は15年、償却率は0.067です。
建物附属設備が500万円含まれている場合、建物本体は2500万円、附属設備は500万円として分けて計算します。建物本体の減価償却費は「2500万円×0.046=115万円」、附属設備の減価償却費は「500万円×0.067=33.5万円」となり、合計で年間148.5万円の減価償却費を計上できます。
実践的な計算例|中古物件の場合
次に中古物件の計算例を見ていきましょう。中古物件は新築よりも耐用年数が短くなるため、年間の減価償却費が大きくなり、短期的な節税効果が高まります。
2026年1月に築15年の木造アパートを購入したケースを考えます。物件価格は3000万円で、建物1800万円、土地1200万円とします。木造の法定耐用年数は22年なので、まだ耐用年数の一部が残っています。
この場合の耐用年数は「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×0.2」で計算します。具体的には「(22年−15年)+15年×0.2=7年+3年=10年」となります。償却率は0.100です。
年間の減価償却費は「1800万円×0.100=180万円」となります。新築の場合と比べて、建物価格は低いものの、償却率が高いため年間の減価償却費は大きくなっています。
さらに極端な例として、築25年の木造アパートを購入した場合を見てみましょう。この場合、既に法定耐用年数22年を超えているため、計算式は「法定耐用年数×0.2」となります。つまり「22年×0.2=4.4年」ですが、1年未満は切り捨てるため4年となります。償却率は0.250です。
建物価格が1500万円の場合、年間の減価償却費は「1500万円×0.250=375万円」となります。わずか4年間で建物価格の全額を減価償却できることになり、非常に大きな節税効果が得られます。ただし、減価償却期間が短いということは、その期間が終了すると減価償却費がゼロになるため、長期的な税務戦略を考える必要があります。
確定申告での記載方法と必要書類
減価償却費を確定申告で正しく計上するためには、適切な書類の準備と記載方法の理解が必要です。2026年の確定申告では、e-Taxを利用したオンライン申告が一層推奨されており、国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、減価償却費の計算も自動で行えます。
まず必要な書類を確認しましょう。売買契約書は建物と土地の価格を明確にするために必須です。契約書に建物と土地の内訳が記載されていない場合は、固定資産税評価額の比率で按分する方法が一般的です。また、建物の登記事項証明書で構造や床面積を確認し、正確な耐用年数を判定します。
確定申告書では、不動産所得の収支内訳書または青色申告決算書に減価償却費を記載します。青色申告を選択している場合は、青色申告決算書の3ページ目にある「減価償却費の計算」欄に詳細を記入します。
具体的な記載項目は以下の通りです。資産の種類には「建物」または「建物附属設備」と記載し、構造には「木造」「鉄骨造」「RC造」などを記入します。取得年月日、取得価額、耐用年数、償却率、本年分の償却費、期末帳簿価額をそれぞれ記載していきます。
e-Taxを利用する場合は、これらの情報を入力すると自動的に減価償却費が計算されます。国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、物件情報を入力するだけで、耐用年数や償却率が自動で設定され、計算ミスを防げます。2026年度は特にマイナンバーカードを使ったe-Tax申告に対応しており、スマートフォンからでも申告が可能です。
初年度の申告では、減価償却資産台帳を作成し、以降の年度でも継続して管理することが重要です。この台帳には、すべての減価償却資産の情報を記録し、毎年の償却費と帳簿価額を更新していきます。
減価償却を活用した節税戦略と注意点
減価償却を最大限に活用するためには、物件選びの段階から戦略的に考える必要があります。同時に、いくつかの重要な注意点も理解しておかなければなりません。
まず物件選びの観点では、建物比率が高い物件を選ぶことが基本戦略となります。同じ価格の物件でも、建物価格が高ければ減価償却費も大きくなります。ただし、建物と土地の価格配分は恣意的に決められるものではなく、固定資産税評価額などの客観的な基準に基づく必要があります。
中古物件の場合、築年数によって減価償却費が大きく変わります。法定耐用年数を超えた物件は短期間で大きな減価償却費を計上できますが、その期間が終了すると減価償却費がゼロになります。したがって、5年後、10年後の税務状況まで見据えた計画が必要です。
建物附属設備を別途計上することも有効な戦略です。エアコン、給湯設備、電気設備などは建物本体よりも短い耐用年数が適用されるため、より早く減価償却できます。リフォームやリノベーションを行った場合も、その費用を資本的支出として減価償却の対象にできる場合があります。
ここで重要な注意点があります。減価償却費は実際の現金支出を伴わない経費ですが、将来物件を売却する際には影響が出ます。減価償却した分だけ建物の帳簿価額が下がるため、売却時の譲渡所得が大きくなり、譲渡税が増える可能性があります。これを「減価償却の取り戻し」と呼びます。
また、減価償却費を計上しすぎて不動産所得が大幅な赤字になった場合、給与所得などとの損益通算により所得税は減りますが、住民税や国民健康保険料への影響も考慮する必要があります。特に個人事業主の方は、所得が下がりすぎると融資審査に影響する可能性もあります。
税務調査では、建物と土地の価格配分が適切かどうかがチェックされることがあります。極端に建物比率を高く設定すると、税務署から指摘を受ける可能性があるため、固定資産税評価額などの客観的な根拠を持つことが重要です。
まとめ
不動産投資における減価償却は、正しく理解し活用することで大きな節税効果を得られる重要な仕組みです。2026年現在、建物の減価償却は定額法のみが認められており、構造によって異なる耐用年数に基づいて計算します。
新築物件では長期間にわたって安定した減価償却費を計上でき、中古物件では短期間で大きな減価償却費を計上できるという特徴があります。どちらが有利かは、投資戦略や税務状況によって異なるため、長期的な視点で判断することが大切です。
確定申告では、e-Taxを活用することで計算ミスを防ぎ、スムーズに申告できます。必要書類を事前に準備し、減価償却資産台帳を適切に管理することで、毎年の申告作業も効率化できます。
減価償却を活用した節税は合法的で有効な手段ですが、将来の売却時の税金や、所得全体への影響も考慮した総合的な戦略が必要です。不安な点がある場合は、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
これから不動産投資を始める方も、既に投資を行っている方も、減価償却の仕組みを正しく理解し、賢く活用することで、より効率的な資産形成を実現できるでしょう。2026年の確定申告に向けて、今から準備を始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献・出典
- 国税庁「減価償却資産の償却率表」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- 国税庁「確定申告書等作成コーナー」https://www.keisan.nta.go.jp/
- 国税庁「不動産所得の計算方法」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
- 国税庁「中古資産の耐用年数の計算方法」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm
- 国土交通省「不動産市場動向調査」https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
- 総務省「固定資産税の概要」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czais02.html
- 金融庁「不動産投資に関する留意事項」https://www.fsa.go.jp/