不動産投資を始めようとしている方の中には、「この物件、価格が安いけど大丈夫かな」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。実は、相場より安い物件には違法建築の可能性が潜んでいることがあります。違法建築物件を購入してしまうと、融資が受けられない、売却できない、最悪の場合は是正命令や取り壊しを命じられるなど、投資どころか大きな損失を被る可能性があります。この記事では、不動産投資初心者の方でも実践できる違法建築の確認方法を、具体的な手順とともに詳しく解説していきます。購入前にしっかりチェックすることで、安心して不動産投資をスタートできるようになります。
違法建築とは何か?基本を理解する

違法建築とは、建築基準法やその他の関連法規に違反して建てられた建物のことを指します。建築確認を受けずに建てられた建物や、確認申請の内容と異なる建物、増改築時に必要な手続きを経ていない建物などが該当します。
国土交通省の調査によると、2024年度に全国で発覚した違法建築は約8,500件にのぼり、そのうち約30%が賃貸用の集合住宅や投資用物件でした。つまり、不動産投資の対象となる物件の中に、一定数の違法建築が紛れ込んでいる現実があるのです。
違法建築には大きく分けて2つのタイプがあります。1つ目は「建築時から違法」なケースで、建築確認を受けずに建てられたり、確認内容と異なる建物を建てたりした場合です。2つ目は「後から違法になった」ケースで、増築や用途変更を無許可で行った場合などが該当します。特に古い物件では、過去の所有者が無許可で増築していることも珍しくありません。
違法建築を購入してしまうと、金融機関から融資を受けられないだけでなく、行政から是正命令が出される可能性もあります。是正には多額の費用がかかり、場合によっては建物を取り壊さなければならないこともあります。さらに、違法建築であることが判明すれば、将来的に売却することも極めて困難になります。このように、違法建築物件への投資は、投資としての価値がほとんどないと言っても過言ではありません。
建築確認済証と検査済証の確認方法

違法建築かどうかを見極める最も基本的な方法は、建築確認済証と検査済証の有無を確認することです。この2つの書類は、建物が法律に適合して建てられたことを証明する重要な書類になります。
建築確認済証は、建築前に設計図が建築基準法に適合していることを確認した証明書です。一方、検査済証は、実際に建てられた建物が設計図通りに建築され、法律に適合していることを証明する書類です。この2つが揃って初めて、その建物が適法に建てられたことが証明されます。
売主や不動産会社に対して、必ずこれらの書類の提示を求めましょう。特に検査済証は重要で、国土交通省の統計では、1998年以前に建てられた建物の約40%が検査済証を取得していないというデータがあります。古い物件ほど注意が必要です。
もし売主が書類を紛失している場合でも、確認する方法があります。建築確認台帳記載事項証明書を、物件所在地の特定行政庁(市区町村の建築指導課など)で取得できます。この証明書には、建築確認の有無や検査済証の交付状況が記載されています。手数料は自治体によって異なりますが、一般的に300円から500円程度で取得可能です。
ただし、検査済証がない物件がすべて違法建築というわけではありません。1998年以前は検査を受けない慣習があった地域も存在します。しかし、検査済証がない場合は、より慎重な調査が必要になることを理解しておきましょう。金融機関も検査済証のない物件への融資には消極的な傾向があります。
登記簿と現況の照合で見つける違法性
登記簿謄本に記載されている建物の情報と、実際の建物の状態を照合することで、違法建築の可能性を発見できます。この確認作業は、誰でも実施できる効果的な方法です。
登記簿謄本は法務局で取得でき、オンライン請求なら1通480円、窓口請求でも600円で入手できます。登記簿には建物の構造、床面積、建築年月日などが記載されています。まずこの情報を確認し、実際に物件を見学した際の状態と比較してください。
特に注意すべきポイントは床面積です。登記簿に記載された床面積と実際の床面積が大きく異なる場合、無許可で増築されている可能性があります。たとえば、登記簿では1階50平方メートル、2階50平方メートルの合計100平方メートルとなっているのに、実際には1階に10平方メートルのサンルームが増築されているケースなどです。
建物の構造も重要な確認ポイントです。登記簿上は木造2階建てとなっているのに、実際には3階建てになっている、あるいは鉄骨造に改築されているといった場合は、明らかに違法建築の疑いがあります。このような大規模な変更は、必ず建築確認が必要になるためです。
また、用途の確認も忘れてはいけません。登記簿上は「居宅」となっているのに、実際には店舗や事務所として使用されている場合、用途変更の手続きが必要です。特に住宅地域で店舗として使用している場合は、用途地域の制限に違反している可能性もあります。現地調査の際は、メジャーを持参して主要な部分の寸法を測定し、登記簿の情報と照合することをおすすめします。
用途地域と建ぺい率・容積率の確認
物件が建っている土地の用途地域を確認し、建ぺい率や容積率が適法かどうかをチェックすることも重要です。これらの規制は、その土地にどのような建物をどの程度の規模で建てられるかを定めています。
用途地域は、都市計画法によって定められた土地の使い方のルールです。住宅専用地域、商業地域、工業地域など、全部で13種類あります。各用途地域には、建てられる建物の種類や規模に制限があります。たとえば、第一種低層住居専用地域では、3階建て以上の共同住宅は原則として建てられません。
用途地域の確認は、市区町村の都市計画課や建築指導課で行えます。最近では、多くの自治体がインターネット上で都市計画情報を公開しており、住所を入力するだけで用途地域を確認できるようになっています。東京都や大阪市など主要都市では、詳細な都市計画情報をオンラインで閲覧可能です。
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合のことです。たとえば、100平方メートルの土地で建ぺい率が60%の場合、建物の1階部分は最大60平方メートルまでしか建てられません。容積率は、敷地面積に対する延床面積の割合で、建物全体の規模を制限します。同じ100平方メートルの土地で容積率が200%なら、延床面積は最大200平方メートルまでです。
実際の確認方法としては、まず用途地域を調べて、その地域の建ぺい率と容積率の上限を確認します。次に、登記簿や建築確認済証に記載された建築面積と延床面積が、この上限を超えていないかチェックします。もし上限を超えている場合は、違法建築の可能性が高くなります。特に古い物件では、建築当時の規制と現在の規制が異なることもあるため、建築時の規制も確認する必要があります。
現地調査で見つける違法建築のサイン
実際に物件を訪れて現地調査を行うことで、書類だけでは分からない違法建築のサインを発見できることがあります。プロの建築士でなくても、いくつかのポイントに注目すれば、違法性の疑いを見つけることが可能です。
まず外観から確認しましょう。建物の外壁や屋根に明らかな継ぎ目がある場合、後から増築された可能性があります。特に、外壁の色や素材が部分的に異なる、屋根の形状が不自然に変わっているといった場合は要注意です。また、隣地との境界ギリギリに建物が建っている場合も、建築基準法で定められた隣地境界線からの離隔距離を守っていない可能性があります。
建物内部では、間取りの不自然さに注目してください。たとえば、天井の高さが部屋によって大きく異なる、柱や梁の位置が不規則、階段の位置が不自然といった場合は、無許可で間取り変更が行われている可能性があります。特にワンルームマンションを複数の部屋に分割している場合は、違法な用途変更に該当することがあります。
設備面では、電気やガスのメーターの数にも注意が必要です。登記上は1戸の建物なのに、メーターが複数ある場合は、無許可で部屋を分割して賃貸している可能性があります。また、避難経路や非常口の設置状況も確認しましょう。一定規模以上の共同住宅では、2方向避難が義務付けられていますが、これが確保されていない物件も存在します。
周辺環境の確認も重要です。近隣の建物と比べて明らかに高い、あるいは敷地いっぱいに建っている場合は、建ぺい率や容積率、高さ制限などに違反している可能性があります。また、近隣住民から「あの建物は問題がある」といった話を聞くことができれば、違法建築の重要な手がかりになります。現地調査の際は、写真を多く撮影し、気になる点をメモしておくことをおすすめします。
専門家による調査の活用方法
自分で確認できる範囲には限界があるため、専門家による調査を活用することも検討すべきです。特に高額な物件や築年数の古い物件では、専門家のチェックが安心につながります。
建築士によるインスペクション(建物状況調査)は、違法建築の有無を含めた建物の状態を総合的に調査するサービスです。費用は物件の規模によって異なりますが、一般的な投資用ワンルームマンションで5万円から10万円程度、一棟アパートでは15万円から30万円程度が相場です。調査では、建築確認済証や検査済証の確認、現況と図面の照合、構造的な問題の有無などを専門的な視点でチェックしてもらえます。
不動産鑑定士による調査も有効です。不動産鑑定士は、物件の適法性だけでなく、投資価値全体を評価してくれます。違法建築の疑いがある場合、それが物件価値にどの程度影響するかも判断してもらえます。費用は20万円から50万円程度と高額ですが、数千万円の投資を行う場合は、この費用を惜しむべきではありません。
弁護士への相談も選択肢の一つです。特に、違法建築の疑いが濃厚で、売主との交渉が必要になりそうな場合は、不動産取引に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。初回相談は無料または5,000円から1万円程度で受けられる法律事務所も多くあります。
専門家を選ぶ際のポイントは、不動産投資物件の調査経験が豊富かどうかです。一般住宅と投資用物件では、チェックすべきポイントが異なります。また、調査報告書を書面で提出してくれるかどうかも重要です。後々、融資の審査や売主との交渉で必要になることがあるためです。複数の専門家に見積もりを依頼し、費用と調査内容を比較検討することをおすすめします。
違法建築が判明した場合の対処法
もし購入を検討している物件が違法建築だと判明した場合、どのように対処すべきでしょうか。状況に応じた適切な判断が、大きな損失を防ぐことにつながります。
基本的には、違法建築物件の購入は避けるべきです。どんなに価格が安くても、将来的なリスクを考えると投資対象として適切ではありません。金融機関からの融資も受けられず、売却も困難になるため、出口戦略が描けない投資になってしまいます。購入前に違法性が判明したことは、むしろ幸運だったと考えるべきでしょう。
ただし、違法性の程度によっては、是正可能な場合もあります。たとえば、小規模な増築部分を撤去すれば適法になる、用途変更の手続きを行えば問題が解決するといったケースです。この場合、是正にかかる費用を正確に見積もり、その費用を差し引いた価格で購入できるか売主と交渉する方法があります。
是正費用の見積もりは、必ず複数の建築業者から取得してください。一般的に、違法部分の撤去には50万円から200万円程度、用途変更の手続きには30万円から100万円程度かかることが多いですが、建物の状況によって大きく異なります。また、是正工事中は物件を使用できないため、その期間の機会損失も考慮に入れる必要があります。
売主が違法建築の事実を隠していた場合は、契約不適合責任を追及できる可能性があります。売買契約書に「現況有姿」と記載されていても、売主が違法性を知りながら告知しなかった場合は、損害賠償請求や契約解除ができることがあります。このような場合は、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
既に購入してしまった後で違法建築が判明した場合は、まず行政の建築指導課に相談しましょう。自主的に是正する意思を示すことで、行政処分を避けられる可能性があります。また、売主に対して契約不適合責任を追及することも検討すべきです。ただし、契約不適合責任には期間制限があるため、早急な対応が必要です。
まとめ
違法建築物件への投資は、不動産投資における最大のリスクの一つです。しかし、購入前にしっかりと確認することで、このリスクは十分に回避できます。
まず基本となるのは、建築確認済証と検査済証の確認です。これらの書類がない場合は、特定行政庁で建築確認台帳記載事項証明書を取得しましょう。次に、登記簿謄本の情報と現況を照合し、床面積や構造に違いがないかチェックします。用途地域や建ぺい率、容積率の確認も忘れてはいけません。
現地調査では、外観の継ぎ目、間取りの不自然さ、設備の状況などに注目してください。自分での確認に不安がある場合は、建築士によるインスペクションや不動産鑑定士の調査を活用することをおすすめします。費用はかかりますが、数千万円の投資を守るための必要経費と考えるべきです。
もし違法建築が判明した場合は、基本的には購入を見送るべきです。是正可能な場合でも、費用と手間を十分に考慮し、慎重に判断してください。違法建築物件を避けることは、安全で確実な不動産投資への第一歩です。
不動産投資は長期的な資産形成の手段です。目先の安さに惑わされず、適法で安全な物件を選ぶことが、最終的には最も高いリターンをもたらします。この記事で紹介した確認方法を実践し、安心して不動産投資をスタートさせてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 建築基準法の概要 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000043.html
- 国土交通省 建築確認検査制度 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/kensaSeido.html
- 法務局 登記事項証明書の請求 – https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/toukisyoumei.html
- 東京都都市整備局 用途地域等の指定状況 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/
- 公益社団法人 日本建築士会連合会 建物状況調査(インスペクション) – https://www.kenchikushikai.or.jp/