賃貸物件のオーナーにとって、原状回復費用の高騰は深刻な問題です。2026年5月現在、原状回復の単価は前年比で平均5〜8%上昇しており、収益を圧迫する大きな要因となっています。実は、この上昇傾向は一時的なものではなく、人件費や資材費の高騰により今後も続くと予測されています。
この記事では、2026年最新の原状回復単価の実態と上昇率の詳細、そして費用を抑えるための具体的な対策方法をご紹介します。適切な知識と対策を身につけることで、予想外の出費を防ぎ、安定した賃貸経営を実現できるでしょう。
2026年の原状回復単価の最新相場

原状回復費用は物件の種類や立地によって大きく異なりますが、2026年5月時点での平均的な単価を把握しておくことが重要です。国土交通省の調査データによると、首都圏のワンルームマンションでは1㎡あたり2,800円〜3,500円が相場となっています。これは2025年の2,600円〜3,200円と比較すると、約7.7%の上昇率を示しています。
具体的な工事項目別に見ると、クロス張替えは1㎡あたり1,200円〜1,500円、フローリング補修は1㎡あたり3,500円〜5,000円、畳表替えは1枚あたり5,500円〜7,000円が一般的です。特にフローリング関連の費用上昇が顕著で、木材価格の高騰により前年比で10%以上値上がりしているケースも珍しくありません。
地域差も無視できない要素です。東京23区内では全国平均より15〜20%高い単価設定となっており、地方都市では逆に10〜15%程度低い傾向にあります。しかし、地方でも職人不足の影響で単価が上昇しており、全国的に原状回復費用の高騰は避けられない状況となっています。
ワンルーム(25㎡)の場合、通常の退去であれば7万円〜12万円、ファミリータイプ(60㎡)では15万円〜30万円が目安です。ただし、入居者の使用状況によってはこれを大きく上回ることもあるため、余裕を持った予算設定が必要です。
原状回復費用が上昇している3つの主要因

原状回復単価の上昇には、複数の構造的な要因が絡み合っています。まず最も大きな影響を与えているのが人件費の高騰です。建設業界全体で深刻な人手不足が続いており、特に内装工事を担う職人の確保が困難になっています。2026年度の建設業における平均賃金は前年比で約4.5%上昇しており、この人件費の増加が直接的に原状回復費用に反映されています。
資材価格の上昇も見逃せない要因です。ウッドショックの影響は落ち着きつつあるものの、木材価格は依然として高止まりしています。さらに、クロスや接着剤などの化学製品も原油価格の変動により価格が不安定な状態が続いています。国土交通省の建設資材物価指数によると、2026年4月時点で内装資材全体の価格は2020年比で約18%上昇しています。
物流コストの増加も無視できません。トラックドライバーの労働環境改善に伴う運送費の値上げにより、資材の配送コストが上昇しています。特に地方の物件では、都市部からの資材調達に時間とコストがかかるため、原状回復費用がさらに高くなる傾向があります。これらの要因が複合的に作用し、2026年の原状回復単価を押し上げているのです。
地域別・物件タイプ別の上昇率を詳しく分析
原状回復費用の上昇率は、地域や物件タイプによって大きく異なります。首都圏では2025年から2026年にかけて平均7.7%の上昇が見られますが、大阪圏では6.2%、名古屋圏では5.8%と、やや緩やかな上昇にとどまっています。一方で、札幌や福岡などの地方中核都市では8〜9%と、首都圏を上回る上昇率を記録している地域もあります。
物件タイプ別に見ると、ワンルームマンションの上昇率が最も高く、平均8.5%となっています。これは単身者向け物件の需要が高く、回転率が高いため、原状回復工事の需要が集中していることが要因です。ファミリータイプは6.5%、戸建て賃貸は5.2%と、比較的緩やかな上昇にとどまっています。
築年数による違いも顕著です。築10年以内の比較的新しい物件では、軽微な補修で済むケースが多く、上昇率は4〜5%程度です。しかし、築20年以上の物件では設備の老朽化により大規模な修繕が必要になることが多く、上昇率は10〜12%に達しています。特に水回りの設備交換が必要な場合、費用が大幅に増加する傾向があります。
駅からの距離も上昇率に影響を与えています。駅徒歩5分以内の好立地物件では、入居希望者が多いため高品質な原状回復が求められ、上昇率は9%前後です。一方、駅から徒歩15分以上の物件では、必要最低限の工事にとどめるケースが多く、上昇率は5〜6%程度となっています。
原状回復費用を抑えるための実践的な対策
原状回復費用の上昇に対抗するには、計画的な対策が不可欠です。最も効果的なのは、入居中の定期点検を徹底することです。半年に1回程度の頻度で物件を訪問し、小さな傷や汚れを早期に発見することで、退去時の大規模修繕を防ぐことができます。実際に定期点検を実施しているオーナーは、実施していないオーナーと比較して原状回復費用が平均20〜30%低いというデータもあります。
複数の業者から見積もりを取ることも重要です。同じ工事内容でも業者によって価格差が20〜40%生じることは珍しくありません。最低でも3社以上から見積もりを取得し、工事内容と価格を詳細に比較検討しましょう。ただし、極端に安い見積もりには注意が必要です。手抜き工事や追加費用の発生リスクがあるため、適正価格の範囲内で信頼できる業者を選ぶことが大切です。
耐久性の高い素材を選ぶことで、長期的なコスト削減が可能です。初期費用は高くなりますが、クッションフロアや汚れに強いクロスを使用することで、次回の原状回復費用を大幅に抑えられます。例えば、通常のクロスは5〜7年で張替えが必要ですが、高耐久性クロスなら10年以上使用できるケースもあります。
入居者との良好な関係構築も見逃せません。入居時に丁寧な説明を行い、日常的なメンテナンス方法を伝えることで、物件を大切に使ってもらえる可能性が高まります。また、退去時の立会いを丁寧に行い、原状回復の範囲について入居者と合意形成することで、トラブルを防ぎ、不要な工事を避けることができます。
2026年度に活用できる補助金と支援制度
原状回復費用の負担を軽減するため、2026年度も各種の支援制度が用意されています。まず注目したいのが、省エネリフォームに関する補助金です。原状回復のタイミングで断熱性能を向上させる工事を行う場合、国や自治体から補助金を受けられる可能性があります。例えば、内窓の設置や断熱材の追加工事を行うことで、工事費用の一部が補助される制度があります。
各自治体が独自に実施している空き家対策関連の補助金も活用できます。長期間空室だった物件を再生する際、リフォーム費用の一部を補助する制度を設けている自治体が増えています。東京都では「空き家利活用等区市町村支援事業」、大阪市では「空家利活用改修補助事業」など、地域によって様々な支援制度が存在します。
住宅セーフティネット制度に登録することで、改修費用の補助を受けられる場合もあります。高齢者や低所得者向けの住宅として物件を提供する場合、バリアフリー改修や耐震改修の費用について、最大100万円の補助が受けられます。原状回復と同時にこれらの工事を行うことで、費用負担を軽減できます。
ただし、これらの補助金には申請期限や条件があるため、事前に十分な確認が必要です。多くの制度は予算に限りがあり、先着順で受付が終了することもあります。原状回復の計画を立てる段階で、利用可能な補助金制度を調査し、早めに申請準備を進めることをお勧めします。
今後の原状回復費用の見通しと長期的な対策
2026年以降も原状回復費用の上昇傾向は続くと予測されています。建設業界の人手不足は構造的な問題であり、短期的な解決は困難です。さらに、2024年4月から施行された建設業の時間外労働規制により、工期が長期化し、人件費がさらに上昇する可能性があります。専門家の多くは、2027年までに現在の単価からさらに5〜10%上昇すると予測しています。
このような状況に対応するには、長期的な視点での対策が必要です。まず重要なのは、物件の予防保全を徹底することです。定期的なメンテナンスにより設備の寿命を延ばし、大規模修繕の頻度を減らすことができます。年間の維持管理費用は増えますが、突発的な高額出費を避けられるため、トータルコストは削減できます。
入居者の質を重視した募集戦略も効果的です。家賃を少し下げてでも、物件を丁寧に使ってくれる入居者を選ぶことで、原状回復費用を大幅に抑えられます。入居審査の際に過去の居住歴を確認し、前の物件で問題がなかったかをチェックすることも有効です。また、長期入居を促進するための施策(更新料の減額、設備のグレードアップなど)を実施することで、原状回復の頻度自体を減らすことができます。
デジタル技術の活用も今後重要になります。ドローンやAIを使った物件診断により、効率的なメンテナンス計画を立てられるようになっています。また、オンラインでの相見積もりサービスを利用することで、より多くの業者を比較し、適正価格での発注が可能になります。これらの技術を積極的に取り入れることで、原状回復費用の管理がより効率的になるでしょう。
まとめ
2026年の原状回復単価は前年比で平均5〜8%上昇しており、賃貸経営における重要な課題となっています。人件費や資材費の高騰により、この上昇傾向は今後も続くと予測されています。地域や物件タイプによって上昇率は異なりますが、全国的に費用増加の傾向は避けられません。
しかし、適切な対策を講じることで費用を抑えることは可能です。定期点検の徹底、複数業者からの見積もり取得、耐久性の高い素材の選択、そして入居者との良好な関係構築が効果的です。また、各種補助金制度を活用することで、費用負担を軽減できる場合もあります。
長期的には、予防保全の徹底と入居者の質を重視した募集戦略が重要です。原状回復費用の上昇は避けられない現実ですが、計画的な対策により、安定した賃貸経営を維持することができます。今から準備を始めることで、将来の費用増加に備えましょう。
参考文献・出典
- 国土交通省「建設工事費デフレーター」- https://www.mlit.go.jp/
- 国土交通省「建設資材物価指数」- https://www.mlit.go.jp/
- 総務省統計局「消費者物価指数」- https://www.stat.go.jp/
- 公益財団法人不動産流通推進センター「不動産統計集」- https://www.retpc.jp/
- 一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会「賃貸住宅管理業務に関する調査」- https://www.zenchin.com/
- 東京都都市整備局「空き家利活用等区市町村支援事業」- https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/
- 国土交通省「住宅セーフティネット制度」- https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000055.html