年収1500万円という高収入は、それだけ税負担も重くなるということを意味します。所得税・住民税を合わせると、手取りが思ったより少ないと感じている方も多いのではないでしょうか。そこで注目されているのが不動産投資を活用した節税です。不動産投資には、家賃収入を得ながら合法的に税負担を軽減できる仕組みが備わっています。この記事では、年収1500万円の方が不動産投資で節税するための基本的な仕組みから、青色申告の活用法、売却時の注意点まで、初心者にも分かりやすく解説します。
年収1500万円が直面する税負担の現実

まず押さえておきたいのは、年収1500万円という収入帯がどれほどの税率に直面しているかという点です。国税庁の情報によると、総合課税の所得税率は課税所得9,000,000円から17,999,000円の範囲で33%が適用されます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm)。さらに地域によって異なりますが、住民税の所得割は都道府県民税と市区町村民税の合計で標準的な税率が課されます(新宿区 https://www.city.shinjuku.lg.jp/content/000202060.pdf)。
つまり、所得税と住民税を合わせると、課税所得の水準によっては40%を超える税率が適用される可能性があります。これは給与所得控除や各種控除を差し引いた後の「課税所得」に対して適用されるものですが、それでも高収入の方にとって税負担は非常に大きなものです。
こうした状況で注目されるのが、不動産投資による「損益通算」という仕組みです。不動産所得に赤字が生じた場合、一定の条件のもとで給与所得などと合算して税負担を軽減できます。ただし、すべての赤字が対象になるわけではなく、ルールを正しく理解することが重要です。
不動産所得の仕組みと節税の基本

不動産投資で節税を考えるうえで、まず不動産所得の計算方法を理解する必要があります。国税庁によると、不動産所得の金額は「総収入金額 − 必要経費」で計算されます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm)。総収入金額には家賃だけでなく、返還不要の敷金・保証金や、共益費名目で受け取る電気代・水道代なども含まれます。
一方、必要経費として認められる主なものには、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などがあります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm)。また、賃貸物件の取得に要した借入金の利子も必要経費に含まれます。ただし、借入金の返済額のうち元本に相当する部分は必要経費にはなりません(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2023/pdf/019.pdf)。
節税効果を生み出す大きな要因のひとつが「減価償却費」です。建物は時間の経過とともに価値が減少するとみなされ、取得費用を耐用年数にわたって分割して経費計上できます。重要なのは、この減価償却費は実際に現金が出ていくわけではないにもかかわらず、帳簿上の経費として計上できる点です。これにより、実際のキャッシュフローはプラスでも、税務上の不動産所得を圧縮できる場合があります。
なお、所得税・住民税・延滞税などは不動産所得の必要経費にはなりません(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2023/pdf/019.pdf)。経費として計上できるものとできないものをしっかり把握しておくことが、正確な節税計画の第一歩です。
減価償却を最大限に活用するポイント
減価償却は不動産投資の節税において中心的な役割を果たします。国税庁の情報によると、土地は時の経過によって価値が減少しないため減価償却の対象にはならず、建物のみが対象となります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm)。また、平成10年4月1日以後に取得した建物の償却方法は定額法のみとされています。
建物の法定耐用年数は構造によって異なります。国税庁によると、木造・合成樹脂造の住宅用建物は22年です。一方、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の住宅用建物の耐用年数は、用途によって異なり、非住宅用途では別の耐用年数が適用されます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/5404.htm)。耐用年数が短いほど毎年の減価償却費が大きくなるため、木造の中古物件は節税効果が高くなる傾向があります。
中古物件の場合は「簡便法」と呼ばれる方法で耐用年数を計算できる場合があります。法定耐用年数を全部経過した資産であれば、法定耐用年数×20%で計算した年数(最低2年)を耐用年数として使用できます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2108.htm)。たとえば法定耐用年数22年の木造建物が耐用年数を全部経過していれば、22年×20%=4年という短い耐用年数が適用され、毎年の減価償却費が大きくなります。
ただし、注意が必要なのは売却時の影響です。建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額となるため(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm)、保有中に大きな減価償却費を計上するほど、売却時の譲渡所得が増加する可能性があります。節税効果と出口戦略を合わせて考えることが大切です。
青色申告で節税効果をさらに高める
不動産投資の節税をより効果的にするために、ぜひ活用したいのが青色申告制度です。青色申告を利用するには、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。不動産の貸付けを始めた年分から青色申告をしたい場合は、開業の日から2か月以内(その年の1月15日以前に開業した場合は3月15日まで)に提出しなければなりません(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1399.htm)。
青色申告特別控除の金額は、不動産貸付けの規模によって異なります。国税庁によると、不動産貸付けが「事業的規模」と認められる場合、正規の簿記(複式簿記)による記帳などの要件を満たすことで最高55万円の控除が受けられます。さらに電子帳簿保存またはe-Taxによる申告を行えば、最高65万円の控除が適用されます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm)。事業的規模に満たない場合でも、最高10万円の控除は受けられます。
では「事業的規模」とはどのような基準でしょうか。国税庁の情報によると、貸間・アパート等であればおおむね10室以上、独立家屋であればおおむね5棟以上が目安とされています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1373.htm)。年収1500万円の方が本格的に節税を目指すなら、この規模を意識した物件取得計画を立てることも選択肢のひとつです。
事業的規模で不動産貸付けを開始した場合は、開業の日から1か月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出も必要です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1399.htm)。手続きを忘れると青色申告の恩恵を受けられなくなる可能性があるため、早めに対応することが重要です。
損益通算と売却時の税金を正しく理解する
不動産所得に赤字が生じた場合、損益通算によって給与所得などと合算し、全体の課税所得を減らすことができます。これが年収1500万円の方にとって大きな節税効果をもたらす仕組みです。ただし、国税庁によると、不動産所得の損失のうち土地を取得するために要した負債の利子に相当する部分は、他の所得から控除できないというルールがあります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2250.htm)。
また、令和3年分以後は、国外中古建物から生じた不動産所得の損失のうち、簡便法等で計算した減価償却費に相当する部分については損益通算が認められなくなっています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2250.htm)。国内物件と国外物件ではルールが異なる点に注意が必要です。
売却時の税金についても事前に理解しておくことが大切です。土地・建物の譲渡所得は他の所得と合算せず、分離課税で計算されます。所有期間が譲渡した年の1月1日現在で5年を超える場合は長期譲渡所得となり、税率は所得税15%・住民税5%に加えて復興特別所得税0.315%が課され、合計20.315%です。一方、5年以下の場合は短期譲渡所得となり、所得税30%・住民税9%に復興特別所得税0.63%を加えた合計39.63%と大幅に高くなります(復興特別所得税は令和19年まで課税されます)(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm、https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm)。
保有期間をしっかり管理し、長期譲渡所得の適用を受けられるタイミングで売却を検討することが、出口戦略における基本的な考え方です。節税を目的に短期間で売却すると、かえって税負担が増えてしまうケースもあるため、長期的な視点で計画を立てることが重要です。
まとめ
年収1500万円の方にとって、不動産投資は合法的な節税手段として有効な選択肢のひとつです。減価償却費の活用による不動産所得の圧縮、損益通算による給与所得との相殺、青色申告特別控除の活用など、複数の仕組みを組み合わせることで節税効果を高めることができます。一方で、土地取得に係る借入利子の損益通算制限や、売却時の譲渡所得への影響など、注意すべきルールも存在します。税制は個人の状況によって効果が大きく異なるため、具体的な節税計画を立てる際は税理士などの専門家に相談することを強くおすすめします。まずは基本的な仕組みを理解したうえで、自分に合った投資計画を一歩ずつ検討してみてください。
参考文献・出典
- 国税庁 No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
- 国税庁 No.2250 損益通算 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2250.htm
- 国税庁 No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1373.htm
- 国税庁 No.2072 青色申告特別控除 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
- 国税庁 No.1399 新たに不動産の貸付けを始めたときの届出など — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1399.htm
- 国税庁 No.2100 減価償却のあらまし — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- 国税庁 No.5404 減価償却資産の耐用年数 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/5404.htm
- 国税庁 No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2108.htm
- 国税庁 No.2260 所得税の税率 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
- 国税庁 No.3252 取得費となるもの — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm
- 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm
- 新宿区 令和7年度版 東京23区の住民税 — https://www.city.shinjuku.lg.jp/content/000202060.pdf