不動産投資に興味を持ち始めると、「減価償却を使えば節税できる」という話を耳にする機会が増えてきます。しかし、具体的にどのような仕組みなのか、どれくらいの節税効果があるのか、そして何かわからないことがあったときに誰に相談すればよいのかが、なかなかわからないという方も多いのではないでしょうか。この記事では、不動産投資における減価償却の基本的な仕組みから節税効果の考え方、さらに信頼できる相談先の選び方まで、初心者の方でも理解しやすいように丁寧に解説します。正しい知識を身につけることで、不動産投資をより安心して進められるようになるはずです。
減価償却とは何か、なぜ節税につながるのか

不動産投資で「減価償却」という言葉が頻繁に登場する理由は、それが節税の中心的な仕組みだからです。まずこの基本を押さえておくことが、不動産投資の税務を理解するうえで欠かせません。
減価償却とは、建物や設備などの資産が時間の経過とともに価値を失っていくことを、税務上の費用として毎年少しずつ計上していく仕組みです。国税庁の説明によると、「取得した時に全額必要経費になるのではなく、その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費としていくべきもの」とされています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm)。つまり、実際にお金が出ていかなくても、帳簿上の費用として計上できるのが減価償却の大きな特徴です。
この仕組みが節税につながる理由は、不動産所得の計算方法にあります。不動産所得は「家賃収入などの収入金額」から「必要経費」を差し引いて計算されます。減価償却費は必要経費として認められているため、毎年一定額を経費に計上することで課税対象となる所得を減らすことができます。実際にお金を支払っていないにもかかわらず経費として認められる点が、減価償却が節税ツールとして注目される理由です。
ただし、重要な点として、土地は減価償却の対象にはなりません。国税庁は「土地や骨とう品などのように時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産ではありません」と明示しています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm)。不動産投資では建物部分のみが償却対象となるため、物件購入時に土地と建物の価格を正確に区分することが非常に重要になります。
法定耐用年数と償却方法の基本ルール

減価償却の計算には「法定耐用年数」という概念が欠かせません。これは税法上で定められた資産の使用可能年数であり、建物の構造によって異なります。
国税庁が公表している耐用年数表によると、住宅用建物の法定耐用年数は構造ごとに定められています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/023.pdf)。国税庁によると、木造・合成樹脂造の住宅用建物は22年、木骨モルタル造は20年、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造(RC造)の住宅用建物は47年です。また、鉄骨造(金属造)の住宅用建物は骨格材の肉厚によって異なり、4mm超で34年、3mm超4mm以下で27年、3mm以下で19年となっています。耐用年数が短いほど毎年の償却額が大きくなるため、木造物件は節税効果が出やすい一方、RC造は長期にわたって安定した償却が続くという特徴があります。
償却方法については、平成19年4月1日以後に取得した建物は定額法のみが認められています。さらに、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備および構築物についても定額法のみとなっています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2106.htm、https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5409.htm)。定額法とは、毎年一定額を均等に償却していく方法です。なお、償却方法を自分で選択したい場合は、その年分の確定申告期限までに届出が必要で、届出をしない場合は法定償却方法が自動的に適用されます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/18.htm)。
中古物件の減価償却と節税効果の考え方
中古物件を購入した場合の減価償却には、新築物件とは異なる特別なルールが適用されます。この点を理解することが、中古物件投資の節税効果を正確に把握するうえで重要です。
中古物件の場合、取得後の使用可能期間を見積もれるならその年数を使うことができます。見積もりが困難な場合は「簡便法」と呼ばれる計算方法を使うことが認められています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm)。国税庁によると、簡便法の計算は、法定耐用年数をすでに全部経過した資産であれば「法定耐用年数×20%」、一部経過している場合は「法定耐用年数-経過年数+経過年数×20%」の算式に従って求めます。計算で1年未満は切り捨て、2年未満になる場合は2年として扱います。
具体的なイメージとして、木造住宅(法定耐用年数22年)を築30年で購入した場合を考えてみましょう。法定耐用年数をすでに超えているため、22年×20%=4.4年、端数を切り捨てて4年が耐用年数となります。つまり、建物取得価額を4年間で均等に償却できるため、毎年の償却額が大きくなり、短期間で高い節税効果が期待できます。これが中古物件、特に築年数の古い木造物件が節税目的で注目される理由の一つです。
ただし、注意点もあります。購入直後に大規模なリフォームを行った場合、その費用(資本的支出)が建物取得価額の50%を超えると、簡便法による耐用年数の算定が使えなくなります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm)。また、修繕費として処理できるのは原状回復や通常の維持管理に関する支出に限られ、建物の価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする支出は「資本的支出」として減価償却で処理する必要があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2107.htm)。
損益通算と青色申告で節税効果を最大化する
減価償却費を計上することで不動産所得が赤字になった場合、その赤字を他の所得と相殺できる「損益通算」という制度があります。これを活用することで、給与所得などにかかる税負担を軽減できる可能性があります。
国税庁によると、「不動産所得の損失(赤字)の金額があるときは、他の黒字の所得金額から差し引くことができます(損益通算)」とされています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1391.htm)。たとえば、給与所得が500万円あり、不動産所得が減価償却費の計上によって100万円の赤字になった場合、課税対象となる所得を400万円に圧縮できる可能性があります。これが、サラリーマンが不動産投資で節税を図る際の基本的な仕組みです。
ただし、損益通算には重要な例外があります。土地を取得するための借入金の利子に相当する部分は、たとえ不動産所得が赤字でも損益通算の対象外となります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1391.htm)。また、海外の中古物件(国外中古建物)については、令和3年以降、簡便法による減価償却費に相当する損失は他の所得と損益通算できないルールが設けられています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1391.htm)。国内物件と海外物件では税務上の扱いが異なる点に注意が必要です。
さらに節税効果を高めるうえで見逃せないのが青色申告です。不動産貸付けが「事業的規模」と認められる場合、青色申告特別控除として最高55万円、電子帳簿保存またはe-Taxを活用すれば最高65万円の控除を受けられます。事業的規模の目安は、アパートなどであればおおむね10室以上、独立家屋であればおおむね5棟以上とされています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1373.htm)。事業的規模に満たない場合でも青色申告は可能ですが、特別控除は最高10万円となります。
減価償却・節税の相談先と注意点
減価償却の計算や節税戦略は、個々の物件の状況や投資家の所得状況によって大きく異なります。そのため、正確な情報を得るためには適切な相談先を選ぶことが非常に重要です。
まず、税務上の疑問については国税庁が設けている「国税相談専用ダイヤル(0570-00-5901)」を活用できます。一般的な税務の質問に対応しており、具体的な書類や事実関係の確認が必要な場合は、税務署での面接相談(事前予約制)に案内されます(国税庁 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/08_1.htm)。無料で利用できるため、まず基本的な疑問を解消したい場合に有効です。
より踏み込んだ節税戦略の立案や確定申告の代行を依頼したい場合は、税理士への相談が適切です。国税庁は「税務代理、税務書類の作成および税務相談の業務は税理士業務であり、行うことができるのは税理士、税理士法人、国税局長に通知をした弁護士および弁護士法人に限られています」と明示しています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9204.htm)。資格のない者に税務相談を依頼することは税務トラブルの原因になり得るため、必ず有資格者に相談するようにしましょう。
不動産投資に関する節税相談では、不動産投資の実務に詳しい税理士を選ぶことが大切です。減価償却の計算方法、修繕費と資本的支出の区分、損益通算の適用可否など、不動産特有の論点は多岐にわたります。税理士報酬の相場や選び方については公的な基準がなく個別事情によりますが、複数の税理士に相談して比較検討することをおすすめします。また、不動産会社や管理会社が「節税になる」と勧める情報は、あくまで参考程度にとどめ、最終的な判断は必ず税理士など有資格の専門家に確認するようにしてください。
まとめ
不動産投資における減価償却は、建物の価値減少を毎年の経費として計上することで課税所得を減らし、節税効果をもたらす重要な仕組みです。法定耐用年数は建物の構造によって異なり、中古物件では簡便法を使った短期間での大きな償却も可能です。さらに、損益通算や青色申告を組み合わせることで、節税効果をより高められる可能性があります。一方で、土地の借入金利子の取り扱いや国外中古建物の損益通算制限など、見落としやすい例外ルールも存在します。減価償却を活用した節税は、正しく理解して実践することが大前提です。疑問点は国税相談専用ダイヤルや税理士などの有資格者に相談しながら、安心して不動産投資を進めていきましょう。
参考文献・出典
- 国税庁 No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
- 国税庁 No.2100 減価償却のあらまし — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- 国税庁 令和7年分 主な減価償却資産の耐用年数表 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/023.pdf
- 国税庁 No.5404 中古資産の耐用年数 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm
- 国税庁 No.2107 資本的支出を行った場合の減価償却 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2107.htm
- 国税庁 No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1391.htm
- 国税庁 No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1373.htm
- 国税庁 A1-18 所得税の減価償却資産の償却方法の届出手続 — https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/18.htm
- 国税庁 税に関する相談をするには — https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/08_1.htm
- 国税庁 No.9204 にせ税理士にご注意 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9204.htm
- 国税庁 手順2 収入金額等、所得金額を計算する(不動産所得) — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/03/order2/3-2_03.htm