突然の転勤が決まったとき、「今住んでいるマンションをどうすればいいのか」と頭を抱える方は少なくありません。売るべきか、貸すべきか、それとも空き家のままにしておくべきか、判断に迷うのは当然のことです。この記事では、転勤でマンションを売る・貸すどっちが自分に合っているかを、お金・手間・ライフプランの3つの視点から整理します。税制上の特例や賃貸契約の種類など、初心者が見落としがちなポイントも丁寧に解説しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
空き家のままにするのは損?まず基本を押さえよう

転勤が決まったとき、多くの方が最初に考えるのは「しばらく空き家にしておけばいいか」という選択肢です。しかし実際には、住まなくなっても管理費や修繕積立金、固定資産税といった固定費はかかり続けます。つまり、何も手を打たないまま放置するのは、経済的に見てもっともリスクの高い選択といえます。
だからこそ、「売る」か「貸す」かを早めに検討することが大切です。どちらにもメリットとデメリットがあり、正解は一つではありません。自分の転勤期間の見通し、ローンの残高、物件のある地域の賃貸需要など、複数の条件を組み合わせて判断する必要があります。
また、分譲マンションを賃貸に出した場合でも、管理費・修繕積立金・共用設備の維持管理費用は、借主の使用の有無にかかわらず貸主の負担となります(東急リバブル)。この点を見落として「家賃収入がそのまま利益になる」と思い込むと、後から収支が合わないと気づくことになります。まずはこうした基本的なコスト構造を理解した上で、売るか貸すかを検討しましょう。
売却を選ぶメリットと注意したい税制の特例

売却を選ぶ最大のメリットは、まとまった資金を一度に受け取れることです。管理費や修繕積立金といった固定費の支払いがなくなり、所有に関する手間からも解放されます。転勤先での生活費や新居の費用に充てられるため、資金計画が立てやすくなるという点も大きな魅力です。
一方で、売却損のリスクがある点は忘れてはなりません。購入時より市場価格が下がっていれば、手元に残る金額が期待より少なくなることもあります。また、一度売却すると、転勤から戻ってきたときに同じ物件に住むことはできなくなります。将来的に「やっぱりあの家に戻りたかった」と後悔しないよう、長期的なライフプランも踏まえて判断することが重要です。
売却を検討する際に必ず知っておきたいのが、税制上の特例です。国税庁によれば、マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)。この特例を活用することで、売却益が出た場合でも税負担を大幅に軽減できる可能性があります。
ただし、この3,000万円特別控除を使った場合、入居した年・その前年・前々年に住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けることはできません(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)。住宅ローン控除を引き続き活用したい方は、どちらの特例が有利かを慎重に比較することをおすすめします。税務上の判断は個別の事情によって異なりますので、詳細は税理士や最寄りの税務署にご相談ください。
賃貸を選ぶメリットと空室リスクの現実
転勤中にマンションを貸す最大のメリットは、家賃収入を得ながら物件を手放さずに済む点です。転勤から戻ってきたときに再び自分の家として使えるため、「いつかまたあの家に住みたい」という方にとっては魅力的な選択肢です。また、将来的に不動産価格が上昇した場合には、資産価値の恩恵を受けることもできます。
しかし、賃貸活用が必ずしも黒字になるとは限りません。三菱地所の住まいリレーによれば、マンションがあるエリアの賃貸需要は、賃貸活用が黒字になるか赤字になるかを左右する重要なポイントの一つです。周辺に駅やバス停、大学や企業などがなく、入居者の流入が見込めないエリアは賃貸需要が低い傾向にあります(三菱地所の住まいリレー https://www.mec-h.com/column/sumikae/78)。
空室リスクも現実的な問題として考えておく必要があります。空室であれば家賃収入はゼロになり、それでも管理費や修繕積立金は支払い続けなければなりません(SUUMO https://suumo.jp/baikyaku/guide/entry/mansionbaikyaku_chintai)。賃料設定が相場とかけ離れていると空室が長引く原因にもなります。賃料は、賃貸に出す時期・間取り・階数・築年数・最寄駅・交通の便・日照・騒音・周辺環境などを参考に設定することが基本です(東急リバブル https://www.livable.co.jp/assets/files/resources-pdf-guide-lease_05.pdf)。
住宅ローンが残っているマンションでも賃貸活用は可能ですが、借り入れをしている金融機関との協議や承認が必要になる場合があります(三菱地所の住まいリレー https://www.mec-h.com/lease/qa)。ローンが残っている方は、まず金融機関に相談することを最初のステップとして考えてください。
転勤で貸すなら「定期借家契約」が基本
転勤中にマンションを貸す場合、契約の種類の選択が非常に重要です。賃貸借契約には大きく「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。普通借家では、貸主からの更新拒絶は正当な事由がない限りできないため、転勤から戻ってきたときに「物件を返してもらえない」というトラブルが起きるリスクがあります(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000060.html)。
そのため、転勤でマンションを貸す場合には、定期借家契約を選択することが有効です(HOME4U https://www.home4u.jp/lease/contents/relocation/lease-42-13656/)。国土交通省によれば、定期建物賃貸借は、契約で定めた期間が満了することにより、更新されることなく、確定的に賃貸借契約が終了する制度です(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000059.html)。つまり、あらかじめ「転勤期間の2年間だけ貸す」と決めておけば、期間満了後に確実に物件を取り戻せます。
また、定期借家であっても、貸主と借主の双方が合意すれば、改めて再契約をして引き続き居住を続けることができます(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000060.html)。転勤期間が延長になった場合でも、双方の合意のもとで柔軟に対応できる点は安心材料といえるでしょう。
なお、転勤で住めなくなった場合でも、一定の要件のもとで住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の取り扱いが認められるケースがあります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1234.htm)。ただし、適用可否は個別の状況によって異なりますので、詳細は国税庁の公式サイトや税務署でご確認ください。
売る・貸すを判断するための3つの視点
最終的に「売る」か「貸す」かを決めるには、3つの視点から自分の状況を整理することが有効です。
まず「転勤期間の見通し」です。1〜2年程度の短期転勤であれば、定期借家契約で貸して戻ってくる選択肢が現実的です。一方、5年以上の長期転勤や、転勤先に永住する可能性がある場合は、売却を検討する価値が高まります。将来の見通しが不確かなほど、判断は難しくなりますが、それでも「空き家のまま放置」は避けるべきです。
次に「エリアの賃貸需要」です。物件が駅近や都市部にあり、賃貸需要が見込めるなら、貸す選択肢は十分に成立します。しかし、需要が低いエリアでは空室リスクが高く、固定費だけがかさむ結果になりかねません。不動産会社に相談して、想定賃料と空室リスクを事前に確認することが大切です。
そして「ライフプランと感情的な価値」も無視できません。「いつかあの家に戻りたい」という気持ちが強いなら、多少の手間やコストがかかっても貸す選択が後悔を生みにくいでしょう。逆に、転勤先での生活を新たなスタートと捉えるなら、売却してすっきりと資金を確保するほうが前向きに動けます。数字だけでなく、自分のライフプランに照らし合わせて判断することが、長期的な満足につながります。
まとめ
転勤でマンションをどうするかは、売る・貸すどちらが正解というわけではなく、転勤期間・エリアの賃貸需要・ローン残高・ライフプランによって最適解が変わります。売却すれば固定費の負担がなくなり、3,000万円特別控除などの税制上の特例も活用できる可能性があります。一方、定期借家契約を使って貸せば、物件を手放さずに家賃収入を得ながら転勤期間を乗り越えることができます。
大切なのは、「空き家のまま放置しない」という意識を持つことです。まずは不動産会社や税理士に相談し、自分の状況に合った選択肢を具体的に検討してみてください。早めに動き出すほど、選択肢は広がります。転勤という大きな変化を、マンションの活用を見直す良い機会として前向きに捉えてみましょう。
参考文献・出典
- 国税庁 「No.3302 マイホームを売ったときの特例」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁 「No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1234.htm
- 国土交通省 「定期建物賃貸借」 — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000059.html
- 国土交通省 「定期建物賃貸借 Q&A」 — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000060.html
- 国土交通省 「定期建物賃貸借契約《大家さんのための》」 — https://www.mlit.go.jp/common/001334934.pdf
- SUUMO 「マンションを売るか貸すか?どっちが儲かる?確認したい「お金」「手間」「ライフプラン」」 — https://suumo.jp/baikyaku/guide/entry/kasu_mansion
- SUUMO 「マンションを売却するのと賃貸に出すのはどっちがトク?メリットデメリットを解説」 — https://suumo.jp/baikyaku/guide/entry/mansionbaikyaku_chintai
- 三菱地所の住まいリレー 「マンションは売却か賃貸活用か?判断のポイントとそれぞれのメリット・デメリットを比較」 — https://www.mec-h.com/column/sumikae/78
- 三菱地所の住まいリレー 「賃貸活用Q&A」 — https://www.mec-h.com/lease/qa
- 賃貸経営HOME4U 「転勤の間マンションを貸すなら、絶対にやるべき5つの対処とは?」 — https://www.home4u.jp/lease/contents/relocation/lease-42-13656/
- 東急リバブル 「条件設定について」 — https://www.livable.co.jp/assets/files/resources-pdf-guide-lease_05.pdf