「RC造(鉄筋コンクリート造)は固定資産税が高い」——不動産投資の検討中に、こんな話を聞いたことはありませんか?
結論から言うと、RC造の固定資産税が高く”感じやすい”のは事実です。ただしその原因は「RC造だから」ではなく、固定資産税の評価の仕組みにあります。さらに、固定資産税の「評価」と所得税・法人税の「減価償却」はまったく別の制度です。
本記事では、評価額の計算式を整理し、築年数別の税額目安、軽減措置、減価償却(中古の耐用年数計算を含む)まで、投資判断に必要な情報を一つの記事にまとめました。
RC造の固定資産税が高く感じる3つの理由
再調達価格方式で建築費が評価に乗る
固定資産税における家屋の評価額は、実際の売買価格ではありません。「その建物を、評価時点で同じ場所に新築したらいくらかかるか(=再調達価格)」を基礎に計算されます。
具体的には、次の式で評価額が決まります。
家屋の評価額 = 再建築費評点数 × 経年減点補正率 × 評点1点当たりの価額
この「再建築費評点数」は、建物の構造・仕上げ・設備などを積み上げて算出されるもので、RC造は木造に比べて材料費・施工費が高いため、スタート地点の評点数が高くなりがちです。
※評価額の算出方法は総務省「固定資産評価基準」に基づきます。
経年減点補正率の下がり方が緩やか——しかも下限は0.2(20%)
建物は年数が経つと劣化するため、「経年減点補正率」という係数で評価額を下げていきます。しかしこの係数には最低値(下限)が0.2と決められており、どんなに古くなっても新築時の20%以下には下がりません。
そして、この下限に到達するまでの年数が構造によって大きく異なります。
| 構造 | 下限0.2に到達する目安 |
|---|---|
| 木造 | 約25〜27年 |
| 軽量鉄骨造 | 約25〜30年 |
| RC造(用途による) | 約45〜60年 |
木造は25年前後で下限に達しますが、RC造は45年〜60年かけてゆっくり下がります。つまりRC造は長期間にわたって評価額が高く維持されるわけです。
注意:「約45年」は非木造全般の概算値です。 RC造の共同住宅(マンション等)では60年程度で下限に達するケースもあり、用途区分や自治体の運用で到達年数は変わります。「下限0.2」は共通ルールですが、そこに至るスピードは一律ではないと覚えておきましょう。
評価替えと据置措置で「下がらない年」がある
評価額は原則3年ごとの基準年度(評価替え)で見直されます。つまり、毎年下がるわけではありません。
さらに、評価替えの際に建築物価の変動(再建築費評点補正率)を反映した結果、理論上の評価額が前回を上回る場合は、前年度の評価額に据え置くというルールがあります。物価が上がっても税額が増えることはない代わりに、下がるはずの年に「据え置き」で現状維持になるケースがあるのです。
固定資産税の計算方法
計算式はシンプルです。
固定資産税額 = 課税標準額 × 1.4%(標準税率)
都市計画税額 = 課税標準額 × 税率(自治体ごと。制限税率0.3%以内)
課税標準額は、評価額そのままの場合もあれば、住宅用地の特例などで軽減される場合もあります。
ここで押さえるべきポイント
- 税率1.4%は「標準」であり、自治体によって異なる場合があります。
- 都市計画税は市街化区域内の土地・家屋に課される目的税です。税率は自治体ごとに設定され、例えば東京23区は0.3%です。
- 土地と建物は別々に評価・課税されます。RC造で「高い」と感じるのは主に建物部分です。
納税通知書で確認できること
毎年届く納税通知書(課税明細書)には、評価額・課税標準額・税額が記載されています。「自分の物件の税額が正しいのか」を確認するための第一歩は、この通知書を読み解くことです。固定資産評価証明書を取得すれば、より詳細な情報を確認できます。
【表あり】築年数別:RC造の評価額・税額シミュレーション
ここでは以下の前提で、築年数ごとの税額目安を概算します。
前提条件:
- RC造の建物(建物部分のみ)
- 新築時の再調達価格:2,000万円と仮定
- 固定資産税率:1.4%(標準税率)
- 都市計画税率:0.3%(上限例)
- 経年減点補正率:非木造の概算値を使用
数式:
建物評価額 ≒ 再建築価格 × 経年減点補正率 固定資産税(建物分) ≒ 建物評価額 × 1.4% 都市計画税(建物分) ≒ 建物評価額 × 0.3%
| 築年数 | 経年減点補正率(概算) | 建物評価額 | 固定資産税 | 都市計画税 | 合計(年額) |
|---|---|---|---|---|---|
| 新築(1年) | 0.9579 | 約1,916万円 | 約26.8万円 | 約5.7万円 | 約32.6万円 |
| 10年 | 0.7397 | 約1,479万円 | 約20.7万円 | 約4.4万円 | 約25.1万円 |
| 20年 | 0.5054 | 約1,011万円 | 約14.2万円 | 約3.0万円 | 約17.2万円 |
| 30年 | 0.3059 | 約612万円 | 約8.6万円 | 約1.8万円 | 約10.4万円 |
| 45年以降 | 0.2000(下限) | 約400万円 | 約5.6万円 | 約1.2万円 | 約6.8万円 |
| 50年 | 0.2000(下限) | 約400万円 | 約5.6万円 | 約1.2万円 | 約6.8万円 |
※経年減点補正率は非木造(RC等)の概算平均値。実際は用途区分・再建築費評点数の区分等で異なります。
この表から読み取れること
- 築20年で評価額は約半分になりますが、その後の下がり方は緩やかです。
- 築45年以降は下限0.2で横ばい。築50年でも築60年でも税額は変わりません。
- 再建築価格2,000万円の建物でも、下限到達後の年間合計は約6.8万円と、新築時の約1/5になります。
木造との比較(30年間累計の目安)
| 項目 | 木造(再建築価格1,200万円想定) | RC造(再建築価格2,000万円想定) |
|---|---|---|
| 新築時の年間固定資産税 | 約13.4万円 | 約26.8万円 |
| 30年間の建物分累計(概算) | 約200〜250万円 | 約450〜550万円 |
| 下限到達の目安 | 約25〜27年 | 約45〜60年 |
RC造は30年累計で木造の約2倍の税負担になりやすいですが、これは「再建築価格の差」と「減価スピードの差」の両方が効いた結果です。建物の耐久性・賃料維持力を含めたトータルで比較する必要があります。
自治体で差が出るポイント
- 固定資産税率:標準は1.4%ですが、自治体によって異なる場合があります。
- 都市計画税率:0.2〜0.3%で自治体ごとにばらつきがあります。
- 評点1点当たりの価額:物価水準や設計管理費等の補正により地域差があります。
正確な税額を知るには、物件所在地の自治体の税率と、実際の課税明細を確認してください。
減価償却は固定資産税と「別の話」
ここが最も混同されやすいポイントです。先に結論を整理します。
| 項目 | 固定資産税の評価 | 減価償却(所得税・法人税) |
|---|---|---|
| 目的 | 自治体に納める税額の算定 | 所得計算上の費用配分 |
| 根拠 | 固定資産評価基準(総務省) | 法定耐用年数(国税庁) |
| 対象 | 土地+建物(+償却資産) | 建物・設備等のみ(土地は対象外) |
| 「年数」の意味 | 経年減点補正率の係数表 | 法定耐用年数(47年等) |
| 下限 | 0.2(評価額の20%で下げ止まり) | 備忘価額1円まで償却可能 |
同じ「年数」「耐用年数」という言葉が出てきますが、制度の目的も計算の入口もまったく異なります。「耐用年数47年を過ぎたら固定資産税がゼロになる」と思い込むのは典型的な誤解です。
減価償却の基本:土地は償却できない
減価償却とは、建物などの資産(減価償却資産)について、取得費を法定耐用年数にわたって各年の必要経費に配分する手続きです。
土地は時の経過で価値が減少しない資産とされ、減価償却の対象外です。不動産投資で物件を購入したら、売買代金を「土地」と「建物」に按分し、建物部分だけを償却することになります。
賃貸経営では、固定資産税も減価償却費も不動産所得の必要経費として計上できます。
RC造の法定耐用年数
RC造の建物の法定耐用年数は用途によって異なります。
| 用途 | 法定耐用年数 |
|---|---|
| 住宅用 | 47年 |
| 事務所用 | 50年 |
| 店舗用 | 39年 |
| 工場用 | 38年 |
住宅用47年の場合、定額法の償却率は0.022です。
各年の償却費 = 取得価額(建物部分)× 0.022
たとえば建物取得価額が3,000万円なら、年間の減価償却費は3,000万円 × 0.022 = 66万円です。47年間にわたって毎年66万円を経費計上できる計算になります。
※平成10年4月1日以後に取得した建物は定額法のみ。建物附属設備・構築物も平成28年4月1日以後取得分は定額法のみ。
中古RCの耐用年数——よくある計算ミスに注意
中古のRC造を取得して賃貸に使う場合、簡便法で残存耐用年数を短縮でき、年間の償却費を大きくできます。しかし、この計算を間違えている記事が非常に多いのが実情です。
簡便法の計算式(2パターン)
中古資産の耐用年数は、法定耐用年数を全部経過したか、一部経過かで式が変わります(国税庁 No.5404)。
① 法定耐用年数の全部を経過している場合
残存耐用年数 = 法定耐用年数 × 20%
② 法定耐用年数の一部を経過している場合
残存耐用年数 =(法定耐用年数 − 経過年数)+(経過年数 × 20%)
※いずれも端数は切り捨て。算出結果が2年未満の場合は2年とする。
計算例:RC住宅(法定耐用年数47年)
築20年で購入した場合(一部経過 → ②の式):
(47 − 20)+(20 × 0.2)= 27 + 4 = 31年
定額法の償却率は31年 → 0.033(年間の償却費が大きくなる)
築50年で購入した場合(全部経過 → ①の式):
47 × 0.2 = 9.4 → 端数切り捨て → 9年
定額法の償却率は9年 → 0.112(かなり大きな年間償却費)
⚠ よくある間違い
「築20年のRC → 47年 × 20% = 9年」としている記事を見かけますが、これは誤りです。①の式(法定耐用年数 × 20%)は”全部経過した場合”にのみ使えます。築20年はまだ47年を経過していないため、②の式を使い、正しくは31年です。
この間違いで耐用年数を短く申告すると、税務調査で否認されるリスクがあります。中古RC投資では必ず「全部経過か一部経過か」を確認してください。
売却時の落とし穴:減価償却費と取得費の関係
「減価償却で所得を圧縮できた」は保有中のメリットですが、売却時にはその分が跳ね返ります。
建物の取得費は、購入代金等の合計額からそのまま使えるわけではなく、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額が取得費になります(国税庁の規定)。
つまり:
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 − 減価償却費相当額)− 譲渡費用
減価償却で経費計上した分だけ取得費が減るため、売却益(譲渡所得)が大きくなり、譲渡所得税が増える可能性があります。
RC造は耐用年数が長く年間償却費は相対的に薄いため、木造の短期大量償却に比べると売却時の”跳ね返り”は穏やかです。とはいえ、購入前に「出口(売却時の税金)」まで含めたシミュレーションをするのが鉄則です。
よくある質問(Q&A)
Q:耐用年数(47年)を過ぎたら固定資産税はゼロになりますか?
A:なりません。 固定資産税の家屋評価には経年減点補正率の下限0.2があり、どれだけ古くなっても評価額はゼロになりません。「耐用年数47年」は建物の減価償却の話であって、固定資産税の評価とは別の制度です。
Q:築50年のRCなのに固定資産税が下がらないのはなぜ?
A:下限0.2に達している、または評価替えの据置措置が働いている可能性があります。経年減点補正率が下限に達した後は、年数が進んでも基本的には補正率は0.2のまま変わりません。また、建築物価の上昇期には、理論上の評価額が前回を上回り「据え置き」になることもあります。
Q:固定資産税と減価償却、投資ではどちらを重視すべき?
A:両方見る必要がありますが、役割が違います。 固定資産税は”毎年のキャッシュアウト”、減価償却は”帳簿上の費用配分”です。賃貸経営では両方が損益計算に関わります。特に、減価償却は土地部分には使えないため、土地・建物の按分比率によって節税効果が大きく変わります。
Q:中古RCの耐用年数は自分で決められますか?
A:自由に設定できるわけではありません。また、事業供用した年度に算定しなかった場合、後から短縮耐用年数を適用することはできないため、取得年度に確定させる必要があります。
Q:RC造のマンションと一棟アパート(木造)、固定資産税だけ見たらどちらが有利?
A:固定資産税「だけ」で見れば木造が有利です。 再建築価格が低く、下限到達も早いため、長期での税負担は小さくなります。ただし、RC造は耐久性・融資期間・賃料維持力で優れるケースが多く、トータルの投資収益で判断すべきです。
まとめ:確認すべき書類と次のアクション
RC造の固定資産税が高くなりやすいのは事実ですが、その原因は「再調達価格方式」「経年減点補正率の下限0.2」「評価替えの据置」という仕組みにあります。仕組みを理解すれば、対策の打ち方も見えてきます。
確認すべき書類
| 書類 | 確認できること |
|---|---|
| 固定資産税 納税通知書(課税明細書) | 評価額・課税標準額・税額・税率 |
| 固定資産評価証明書 | 土地・建物別の評価額の詳細 |
| 売買契約書・重要事項説明書 | 建物取得価額の按分根拠 |
| 建物の登記事項証明書 | 構造・築年月・床面積 |
意思決定チェックリスト
自宅として保有する場合:
- 固定資産税・都市計画税の年額を課税明細で確認
- 新築減額の適用期間と終了後の税額を把握
- 住宅用地の特例が適用されているか確認
賃貸・投資として保有する場合:
- 建物と土地の按分比率を決める(減価償却額に直結)
- 法定耐用年数(新築)or 簡便法による耐用年数(中古)を確定
- 減価償却による所得圧縮効果と、売却時の取得費減少を”セット”でシミュレーション
- 固定資産税・都市計画税をキャッシュフロー計算に織り込む
具体的な数字でシミュレーションを行い、税理士や不動産の専門家と相談しながら判断することをおすすめします。
参考文献・出典
- 総務省「固定資産評価基準」(家屋の評価・経年減点補正率基準表)
- 国税庁「No.5404 中古資産の耐用年数」
- 国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却」
- 国税庁「耐用年数(建物・建物附属設備)」
- 国税庁「No.3261 建物の取得費の計算」
- 国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
- 各自治体の固定資産税FAQ(函館市・我孫子市等)
一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。
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