賃貸物件を契約するとき、初期費用の明細を見て「鍵交換代って何?本当に払わないといけないの?」と疑問に思った方は多いのではないでしょうか。実は、鍵交換の費用負担については国土交通省がガイドラインで考え方を示しており、知っているかどうかで損得が変わることもあります。この記事では、鍵の種類ごとの費用相場から、誰が負担すべきかのルール、鍵を紛失した場合の対応まで、初心者にもわかりやすく解説します。契約前に読んでおくだけで、不要なトラブルを防ぐことができますので、ぜひ最後までお付き合いください。
賃貸の鍵交換費用の相場はいくら?

賃貸物件の鍵交換費用は、鍵の種類によって大きく異なります。まず鍵の種類と費用感を把握しておくことが、初期費用を正しく理解するための第一歩です。
一般的なマンションやアパートで多く使われているディスクシリンダー鍵やピンシリンダー鍵の場合、部品代と工事費を含めた総額は数万円程度が目安とされています(SUUMOの比較情報より)。UR都市機構の解説でも、通常の賃貸で多い一般的な鍵交換の目安は1〜2万円とされており、この価格帯が最もよく見かける相場といえます。
防犯性の高いディンプルキーになると、費用は通常の鍵よりも高くなります(SUUMO調べ)。ディンプルキーとは、鍵の表面に複数のくぼみ(ディンプル)が刻まれたタイプで、複製が難しく防犯性が高い反面、交換コストも高くなる傾向があります。実際に2026年8月時点のSUUMO掲載物件でも、ディンプルキー仕様の物件で鍵交換代33,000円(税込)という事例が確認されています。
カードキーや電子錠の場合はさらに幅が広がります。SUUMOの情報ではカードキーの交換費用は10,000円〜20,000円とされていますが、LIXILの修理費用目安によると、電気錠の錠ケースごと交換する場合は69,000円〜201,000円、リモコン・カードキーの交換だけでも17,000円〜73,000円という幅があります。設備の仕様によって費用が大きく変わるため、物件ごとに確認することが重要です。
実際の募集物件を見ると、LIFULL HOME’Sでは18,700円(税込)や23,100円(税込)、SUUMOでは22,000円(税込)といった事例が2026年時点で確認できます。一方で「鍵セット費(契約時):3,300円」という低額な費目の物件も存在しており、費目の名称だけで一律に比較することはできません。見積もりや契約書の内訳をしっかり確認することが大切です。
鍵交換費用は誰が負担するのが原則?

鍵交換の費用負担については、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の中で考え方を整理しています。これを知っておくことで、不当な請求に気づきやすくなります。
国土交通省のガイドラインでは、破損や紛失がない通常の入居者入れ替わり時の鍵交換は、「入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題であり、賃貸人(貸主)の負担とすることが妥当」と整理されています(国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」https://www1.mlit.go.jp/common/000991390.pdf)。つまり、何も問題なく退去した場合の鍵交換は、本来は大家さん側が負担すべきものという考え方です。
ただし、契約書に「鍵交換費用は借主負担とする」という特約が明記されている場合は、その特約が有効として扱われます。国土交通省の案内でも「契約にその旨の規定がある場合には、鍵交換等の特約は有効なものとして扱われます」と示されています(国土交通省「賃貸住宅の入居・退去に係る留意点」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000026.html)。賃貸契約は「契約自由の原則」に基づくため、法令や公序良俗に反しない内容であれば、標準的な契約書に書かれていない事項でも特約として有効になり得ます。
また、業界団体(全日本不動産協会)の法律Q&Aでは、借主に鍵交換費用を負担させる特約がある場合でも、「従前と同種同程度の鍵への交換費用の負担をさせることを前提にすべき」とされています。つまり、貸主が防犯性の高い鍵へグレードアップしたい場合、その差額分まで借主に負担させるべきではないという考え方です。契約書を確認する際は、費用の上限や鍵の種類についても注意して読むようにしましょう。
鍵を紛失した場合の費用負担はどうなる?
鍵を紛失してしまった場合は、通常の退去時とは異なるルールが適用されます。紛失は借主の責任によるものであるため、費用の扱いが変わってくる点を理解しておきましょう。
国土交通省のガイドラインでは、鍵を紛失した場合はシリンダー(鍵穴)の交換を含む費用相当額を借主が負担するとされており、さらに「経過年数は考慮しない」と明記されています(国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」https://www1.mlit.go.jp/common/000991390.pdf)。通常の原状回復では経年劣化を考慮して借主の負担額が減額されますが、鍵の紛失については減額なしで交換費用の全額を負担するのが原則です。
金属キーを紛失した場合は、防犯上の理由からシリンダーごと交換することが一般的です。一方、カードキーやタグキー、リモコンキーを紛失した場合は、紛失したキーの登録を抹消したり、他のキーを再登録したりすることで対応できるケースもあり、必ずしもシリンダー交換が必要になるわけではありません(LIXILのサポート情報より)。ただし、この対応はメーカーや管理システムによって異なるため、まず管理会社に確認することが重要です。
鍵を紛失したときに注意したいのが、いきなり民間の鍵業者に連絡してしまうことです。国民生活センターは「賃貸住宅の場合は大家や管理会社に、鍵の故障・紛失時にどのような対応をしているか確認する」よう注意喚起しています(国民生活センター「鍵開けで高額請求された!」https://www.kokusen.go.jp/t_box/data/t_box-faq_qa2021_28.html)。管理会社を通さずに業者を呼ぶと、想定外の高額請求につながるリスクがあります。まず管理会社へ連絡するのが鉄則です。
契約前に確認しておきたいポイント
賃貸契約を結ぶ前に鍵交換費用について確認しておくことで、後からのトラブルを防ぐことができます。具体的にどこを見ればよいかを押さえておきましょう。
まず確認すべきは、契約書や重要事項説明書に鍵交換費用の特約が記載されているかどうかです。特約がなければ原則として貸主負担ですが、特約があれば借主負担となります。また、募集図面やポータルサイトの掲載情報にも「鍵交換代が必要な場合は、その旨と金額を表示する」という実務ルールがあるため、物件情報の段階でも確認できることがあります。
次に、費用の内訳を確認することも大切です。「鍵交換代」という名目でも、部品代のみなのか、工事費・出張費・登録費込みなのかによって金額が変わります。特にカードキーや電子錠の場合は費用の幅が大きいため、何が含まれているかを具体的に聞いておくと安心です。
さらに、グレードアップ分の費用負担についても確認しておきましょう。前述のとおり、業界団体の見解では、貸主が鍵のグレードアップを希望する場合、その差額分を借主に負担させるべきではないとされています。もし「防犯性の高い鍵に変えるので費用が高くなる」と言われた場合は、通常の鍵との差額分について交渉の余地があるかもしれません。
まとめ
賃貸の鍵交換費用は、鍵の種類によって数千円から数万円まで幅があります。一般的なシリンダー鍵であれば1〜2万円程度、ディンプルキーなら2〜3万円台、電子錠や電気錠はさらに高額になるケースもあります。国土交通省のガイドラインでは、通常の退去時の鍵交換は原則として貸主負担とされていますが、契約書に特約があれば借主負担となるため、契約前に必ず確認することが大切です。鍵を紛失した場合は経過年数に関係なく交換費用を全額負担するのが原則であり、その際はまず管理会社に連絡することが重要です。契約内容をしっかり理解したうえで、疑問点は遠慮なく不動産会社や管理会社に確認するようにしましょう。
参考文献・出典
- 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」 — https://www1.mlit.go.jp/common/000991390.pdf
- 国土交通省「賃貸住宅の入居・退去に係る留意点」 — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000026.html
- 国土交通省「賃貸住宅標準契約書 Q&A」 — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001399558.pdf
- 国民生活センター「鍵開けで高額請求された!(消費者トラブル解説集)」 — https://www.kokusen.go.jp/t_box/data/t_box-faq_qa2021_28.html
- UR都市機構「賃貸物件の鍵交換費用は借主が負担する?よくある疑問を詳しく解説|へや学部」 — https://www.ur-net.go.jp/chintai/college/202012/000597.html
- SUUMO「賃貸物件の鍵交換費用は誰が負担する?鍵交換を行う必要性とは」 — https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/chintai/fr_money/kagikoukan_hiyou/
- LIXIL「お客さまサポート|修理費用の目安」 — https://www.lixil.co.jp/support/repair-cost/
- LIXIL「玄関ドア・引戸のカギやカギ関連の部品を紛失した時のサポート」 — https://www.lixil.co.jp/support/door/keylost/
- 全日本不動産協会「賃貸Q&A・賃貸業務のトラブル事例と対応策(9)」 — https://www.zennichi.or.jp/law_faq/賃貸qa・賃貸業務のトラブル事例と対応策(9)/