マンション投資に興味はあるものの、「一棟買いはハードルが高そう」「資格がない自分でもできるのか」と悩む方は少なくありません。実際に区分所有と比べ、物件価格もリスクも大きくなるため、不安を感じるのは当然です。しかし一棟を保有すれば、空室対策や修繕計画を自分でコントロールでき、長期で安定したキャッシュフローを得やすいのも事実です。本記事では最新の市場データを交えながら、必要な資格の有無、資金調達のコツ、物件選びの視点まで丁寧に解説します。最後まで読めば、一棟買いの判断材料を体系的に整理でき、次のアクションを自信を持って選べるようになるでしょう。
マンション投資で一棟買いを選ぶ理由

まず押さえておきたいのは、一棟買いがもたらす収益構造の違いです。区分所有では管理組合に依存しますが、一棟所有なら修繕積立や家賃設定を自分で決められます。
東京23区の新築マンション平均価格は2025年10月時点で7,580万円(不動産経済研究所)ですが、一棟物件は郊外でも1億円超が一般的です。その分、複数戸から家賃が入るため、1室空いても収入がゼロにはなりません。つまりリスク分散を建物内で実現できるのが強みと言えます。
さらに土地と建物を合わせて購入するため、減価償却の範囲が広がり、所得税や住民税の圧縮効果が期待できます。一方で修繕計画や賃貸管理を自分で考える責任も大きくなる点は忘れないでください。
実は地方の政令市では、築20年超の一棟RCマンションが表面利回り9%前後で流通しています。人口推計によると都市部への流入は今後も続く見込みで、適切な立地を選べば高い利回りと長期需要を同時に狙えます。
資格は必要か?義務とメリットを整理

ポイントは、「投資そのものに国家資格は不要」だという事実です。個人や法人が自社物件を賃貸するだけなら、宅地建物取引士の免許も賃貸不動産経営管理士の登録も義務ではありません。
しかし2021年施行の「賃貸住宅管理業法」により、管理戸数200戸以上を外部へ委託せず自主管理する場合、2025年度も引き続き業務管理者の配置が求められています。この業務管理者は宅建士または賃貸不動産経営管理士でなければなりません。自主管理を視野に入れるなら、早めにどちらかの資格取得を検討すると良いでしょう。
加えて、銀行融資で有利になるケースも見逃せません。金融機関はオーナーの管理能力を重視する傾向があり、面談時に「資格を持ち、自主管理体制も整えている」と示せれば、金利優遇や融資枠拡大につながる例が増えています。
つまりマンション投資 一棟買い 資格の関係は、法律上の必須条件ではなく「信用力を高める武器」と捉えるのが現実的です。取得までに時間はかかりますが、長期保有を前提とする一棟オーナーにとって費用対効果は高いと言えます。
2025年の融資環境と資金調達のポイント
重要なのは、金利だけで判断しないことです。2025年10月現在、主要地銀の不動産投資ローン固定金利は年2.3%前後で横ばいですが、融資期間や自己資金比率によって総返済額は大きく変わります。
まず自己資金は物件価格の20%を目安に用意すると、銀行からの信頼度が上がり審査がスムーズになります。例えば1億5,000万円の一棟物件なら3,000万円を自己資金に充て、残りを25年返済で借りるケースが一般的です。このとき返済比率を家賃収入の50%以内に抑えられれば、キャッシュアウトの不安が減ります。
一方で、ノンバンクや信販系のローンは自己資金10%でも借りられますが、金利が年4%を超えることが多く注意が必要です。金利が1%上がると、25年間で総返済額は約1,800万円増えるとの試算もあります。言い換えると、低金利のうちに自己資金を厚くして銀行融資を確保する戦略が、長期で見ればリスクを最小化します。
さらに地方銀行の中には、エリア内の空室率や人口動態を重視し、独自に物件を評価する動きがあります。最新の総務省人口推計データを準備し、「なぜこの立地が持続可能か」を資料にまとめて臨むと、融資面談で説得力が増します。
物件選びとキャッシュフローの見方
まず押さえておきたいのは、利回りの数字だけを追わない判断軸です。表面利回りが高い物件ほど、修繕費や空室リスクが隠れているケースが多いためです。
実際に築30年の地方RCマンションで利回り12%という案件でも、エレベーター更新が近く、500万円以上の一時負担が必要だった例があります。購入前に長期修繕計画書を取り寄せ、次の大規模修繕時期と費用を確認することが必須です。
家賃設定は周辺の成約事例を徹底的に調べ、バリュエーション(価値評価)を裏付けるデータを集めます。たとえば東京都城東エリアでは、築20年前後でもフルリノベ済みなら平均93%の稼働率を維持している調査結果があります(日本賃貸住宅管理協会)。こうした実績をもとに家賃下落リスクを試算し、空室率15%でもキャッシュフローが黒字かどうか確認すると安全です。
さらに退去時の原状回復費用を想定し、1戸あたり年間家賃の5%を修繕積立としてプールしておけば、突発的な支出に慌てずに済みます。収支シミュレーションでは、税引き後キャッシュフローが年間100万円以上残るかを一つの目安にすると、金利上昇や突発修繕に耐えやすいポートフォリオになります。
リスク管理と長期運営のコツ
実は一棟オーナーの最大のリスクは「情報の遅れ」です。入居者ニーズや法改正を把握しないまま放置すると、収益悪化に直結します。
2025年度の民法改正では賃貸借契約の電子化がさらに進み、IT重説(重要事項説明のオンライン実施)が標準化しました。管理会社任せにせず、自らもオンライン手続きを理解しておくことで、入居付けのスピードを上げられます。
また、災害リスクの把握も欠かせません。国土交通省のハザードマップによると、同じ駅距離でも浸水想定区域か否かで保険料が年数万円変わる事例があります。購入前に必ず行政の公開資料を確認し、火災保険・地震保険の見積もりを取得しておきましょう。
最後に、サブリース契約を検討する際は「家賃保証の減額リスク」に注意が必要です。保証料率が最初の10年で10%下がる条項が入っている契約もあるため、長期シミュレーションを行い、保証終了後の自主管理体制を準備することが安心につながります。
まとめ
ここまで、マンション投資 一棟買い 資格の関係から資金調達、物件選び、リスク管理まで整理しました。資格は必須ではないものの、取得すれば融資や自主管理で大きなメリットがあります。資金面では自己資金を厚くし、低金利の銀行ローンを確保することが長期安定の鍵です。物件選びでは利回りの裏側に潜む修繕費と空室リスクを見抜き、厳しめのシミュレーションで黒字が出るか確認してください。今日学んだ視点をもとに、まずは希望エリアのハザードマップや家賃相場を調べ、融資相談の準備を始めてみましょう。行動を積み重ねることで、一棟オーナーとしての未来が現実のものになります。
参考文献・出典
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 国土交通省「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」 – https://www.mlit.go.jp
- 金融庁「金融モニタリングレポート2025」 – https://www.fsa.go.jp
- 総務省統計局「人口推計 2025年版」 – https://www.stat.go.jp
- 一般財団法人日本賃貸住宅管理協会「賃貸住宅市場景況レポート2025」 – https://www.jpm.jp