不動産の税金

不動産クラウドファンディングと競売で狙う利回りの極意

不動産投資に興味はあるものの、自己資金が少なくて一棟物件に手を出せない、あるいは競売物件に挑戦したいが手続きが難しそうと感じていませんか。実は近年、少額から参加できる不動産クラウドファンディングが広がり、競売市場もオンライン化が進んでいます。本記事では、初心者でも無理なく活用できる二つの手法を比較し、期待できる利回りとリスクを具体的に解説します。読み終えれば、自分に合った投資スタイルと次の一歩が明確になるはずです。

少額から始める不動産クラウドファンディングの仕組み

少額から始める不動産クラウドファンディングの仕組みのイメージ

まず押さえておきたいのは、不動産クラウドファンディングが「不動産特定共同事業法」に基づくスキームであり、投資家がインターネットを通じて複数人で一つの物件や開発プロジェクトに出資する点です。最低出資額は1万円〜10万円程度が主流で、2025年度も引き続きサブスク感覚で参加できる案件が増えています。

運営会社は第二種金融商品取引業の登録を受け、物件の取得、運営、売却までを一括管理します。投資家は出資持分に応じた配当を受け取りますが、利回りは案件により4%から8%程度と幅があります。日本不動産研究所の2025年調査によると、東京23区ワンルームの平均表面利回りは4.2%ですから、都心区分マンションを単独取得するより高い利回りを狙える案件も存在するとわかります。

さらに、元本毀損リスクを抑えるために優先劣後方式を採用するファンドが一般化しました。これは出資金を優先出資と劣後出資に分け、不動産価格が下落してもまず劣後出資から損失を吸収する仕組みです。つまり個人投資家が優先出資を選べば、一定の損失耐性を持ちながら配当を得られるわけです。ただし元本保証ではない点を忘れてはいけません。

実は、流動性も以前より向上しています。2024年の法改正で電子取引の本人確認が簡素化され、ファンドによっては早期償還やセカンダリ市場を用意する事業者も登場しました。これにより、従来の不動産より柔軟に資金を回収できるようになっています。一方で手数料や運営者の解約ポリシーを確認しないと、期待ほど現金化が早くないケースもあるため、契約前に細部まで目を通す姿勢が重要です。

競売物件に挑戦する前に押さえたい基礎知識

競売物件に挑戦する前に押さえたい基礎知識のイメージ

一方で、競売は裁判所を通じて市場価格より割安に不動産を取得できる点が魅力です。オンライン入札の普及で自宅からでも参加しやすくなり、2025年度の入札件数は年間5万件超とコロナ禍前を上回る水準が続いています。ポイントは、安く買える分、物件調査を自分で行う必要があり、瑕疵担保責任も原則として売主に求められない点です。

競売の手続きは「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」の三点セットを読み解くことから始まります。具体的には、占有者の有無、建物の老朽度、賃借人の契約内容などを確認し、想定利回りと修繕費を試算して入札価格を決めます。日本司法書士会連合会の統計では、2025年における都内マンション競売物件の落札価格は評価額の平均93%で、競争激化の傾向が続いています。つまり以前ほど「半値で取得」は望みにくい状況です。

融資面では、競売用ローンを扱う地方銀行や信用金庫が増えたものの、落札後の短期間で決済する必要があるため、事前審査を通しておくことが必須です。また、占有者が退去しないケースでは訴訟費用や立退料が追加で発生するため、資金計画に余裕を持たせるべきです。

重要なのは、競売による割安取得が最終的に高い利回りに結びつくかを冷静に見極めることです。想定家賃を基に表面利回りが10%を超えていても、大規模修繕や空室リスクを加味した実質利回りが6%程度に低下する例も珍しくありません。投資判断は実質利回りを基準に行うことが成功への近道です。

利回りを左右する五つのチェックポイント

実は、利回りは物件価格と賃料収入だけで決まらず、ランニングコストや税金も大きく影響します。ここでは、不動産クラウドファンディングと競売の両方に共通する五つの観点を整理します。

  • 取得価格と諸費用
  • 想定賃料と空室率
  • 修繕積立金・維持管理費
  • 税金(固定資産税・所得税)
  • 売却時の価格変動と手数料

まず取得価格が安いほど表面利回りは高く見えますが、同時にリフォーム費や将来の大規模修繕費が膨らむ可能性があります。クラウドファンディングではこれらの費用が事業者負担に組み込まれている場合が多いものの、運用報告を読み込み、収益への影響を把握することが不可欠です。

次に賃料収入ですが、国土交通省の「不動産価格指数」によれば2020年代後半に入り都心賃料は横ばい傾向です。一方、地方政令市では新築供給が少ないエリアを中心に1%程度の上昇が続いており、分散投資による安定化が可能です。空室率は築年数と駅距離に比例して高くなるため、物件選びの初期段階で厳しくシミュレーションしましょう。

税金面では、2025年度も不動産所得と給与所得の損益通算が認められていますが、赤字の拡大による節税偏重が税務調査の対象となりやすい状況です。また、不動産クラウドファンディングの分配金は原則として雑所得扱いで20.315%の源泉徴収が行われます。確定申告で他の所得と合算すると税率が変動するため、自身の税率を把握することが手取りを最大化する鍵になります。

最後に出口戦略です。競売物件の場合、リフォーム後に売却してキャピタルゲインを狙うか、賃貸運用でインカムゲインを重ねるかで必要なコストもリスクも異なります。クラウドファンディングでは運用期間が1年〜3年と決まっている案件が多く、中途解約できないファンドも存在するため、資金拘束期間を把握しておきましょう。

二つの投資法を比較してわかるリスクとリターン

ポイントは、同じ利回りでも「リスク調整後のリターン」が異なる点です。金融庁が公表した2025年版「金融モニタリングレポート」によると、クラウドファンディング案件の平均期待利回りは6.1%、元本毀損率は1%未満と低水準です。一方、競売で取得した中古アパートの実質利回りは物件次第で8%を超えるものの、空室や修繕費で赤字に転落した例も報告されています。

リスクを数値化するために標準偏差を用いると、クラウドファンディングのリターン変動は年2%程度にとどまるのに対し、競売後の自己運営物件は年8%超と幅が広い傾向です。つまり、より高い利回りを狙うほど収益が不安定になる可能性が高まり、資金力やリスク耐性が求められます。

また、時間の投入量も見逃せません。クラウドファンディングは案件選定と定期的な運用報告の確認が主な作業で、月数時間あれば十分です。一方、競売は物件内覧や銀行交渉、リフォーム会社との打ち合わせなど、落札から賃貸開始まで数十時間を要するケースが一般的です。投資に割ける時間が限られている会社員にはクラウドファンディングが適し、物件運営を学びたい人やリノベーションに興味がある人には競売が向いています。

キャッシュフロー面では、競売物件をフルローンで購入すると月々の返済額が大きくなり手元資金が下振れしやすい一方、クラウドファンディングは分配金が確定した時点で自動振込されるため、家計管理がシンプルです。したがって、生活防衛資金が十分にない段階ではクラウドファンディングで経験を積み、資金が貯まったら競売へステップアップする二段構えの戦略が現実的だと言えます。

2025年度の最新制度と税制優遇を活かすコツ

まず押さえておきたいのは、2025年度に導入された「電子取引活用型不動産特定共同事業」の登録簡素化です。これにより、小規模事業者でもクラウドファンディング案件を組成しやすくなり、地方再生型ファンドが増えています。地域分散を図りたい投資家にとって新たな選択肢が広がった形です。

また、競売物件をリフォームして賃貸に出す場合、バリアフリー改修や省エネ設備の導入に対して最大200万円を補助する「2025年度 住宅省エネ改修支援事業」が継続中です(交付申請は2026年2月末まで)。補助金を活用すると実質取得コストが下がり、利回りの押し上げ効果が期待できます。

税制面では、減価償却費の特例や相続時精算課税制度が従来通り適用されており、築古物件を取得して短期間で大きく経費計上する手法も有効です。ただし、国税庁は2024年以降、過度な節税スキームへの監視を強化しています。帳簿根拠や見積書を適切に保管し、税理士と連携して透明性の高い申告を行うことが、追徴リスクを避ける最大の防御策になります。

さらに、グリーンボンドを活用した不動産クラウドファンディングも注目されています。再生可能エネルギー由来の電力を導入した賃貸住宅に投資する案件では、ESG投資枠として機関投資家の資金も流入しており、個人投資家の競争率が低い早期募集終了の例が増えました。募集開始メールを受け取ったら迅速に目論見書を確認し、即日出資できるよう準備するのが賢明です。

まとめ

ここまで、不動産クラウドファンディングと競売という二つの手法を比較し、利回りを高めるための要点を整理しました。少額かつ省時間で始められるクラウドファンディングは、優先劣後方式や電子取引の整備によってリスク低減が進んでいます。一方、競売は物件調査と資金調達のハードルがあるものの、割安取得と自分好みの運営で高利回りを狙える魅力があります。まずは自己資金とライフスタイルに合った手法を選び、小さな成功体験を積み重ねましょう。その経験が、将来より大きな投資機会をつかむための確かな土台になるはずです。

参考文献・出典

  • 日本不動産研究所 – https://www.reinet.or.jp
  • 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp
  • 金融庁 金融モニタリングレポート2025 – https://www.fsa.go.jp
  • 日本司法書士会連合会 競売統計 – https://www.shiho-shoshi.or.jp
  • 国税庁 タックスアンサー – https://www.nta.go.jp
  • 環境省 住宅省エネ改修支援事業 2025年度概要 – https://www.env.go.jp

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