不動産クラウドファンディングに興味はあるものの、ネットの情報が多すぎて何が正しいのか分からない、と悩む方は少なくありません。特に「リスク」や「事故物件」という言葉を目にすると、不安が先に立ってしまいますよね。本記事では、具体的な仕組みから潜在的な落とし穴まで丁寧に整理し、リスクを抑えつつ投資機会をつかむ方法を解説します。最後まで読むことで、案件選びの視点と最新の制度情報が手に入り、一歩踏み出す自信が得られます。初心者でも理解しやすいよう専門用語もかみ砕いて説明します。
不動産クラウドファンディングの仕組みと魅力

まず押さえておきたいのは、不動産クラウドファンディングが「不動産特定共同事業法」に基づく少額投資手段だという点です。複数の投資家がオンラインで資金を出し合い、事業者が運用・管理を行うため、個人でも数万円から不動産収益に参加できます。国土交通省の2025年版市場調査では、登録事業者数が過去5年で2.5倍に増え、投資総額も1,600億円規模に達しました。
この仕組みの魅力は、少額・短期間で分散投資ができる点にあります。従来の一棟購入型に比べ、流動性が高く、運用期間が半年から3年程度と短い案件が多いからです。また、事業者が物件管理を代行するため、「賃貸経営の手間をかけずに家賃収入の一部を得られる」ことも人気の理由と言えます。一方で、後述するように事業者選びや案件の中身を見誤ると、大きなリスクを背負う可能性もあります。
さらに2023年の法改正で、電子取引による出資上限が1人あたり1案件300万円から500万円に引き上げられました。国交省は「小規模不動産特定共同事業の活性化」を掲げ、2025年度も同上限を維持しています。ただし、高額投資が可能になった分、リスク管理の重要性も高まったと認識すべきでしょう。
投資家が直面する主なリスク

重要なのは、表面上の利回りだけで判断しないことです。実際のリスクは多層的で、案件ごとに比重が異なります。国交省ガイドラインや運用報告書を読む習慣をつけ、数字の裏側を想像する視点が欠かせません。
第一のリスクは「事業者リスク」です。不動産クラウドファンディングでは、物件の運営・売却を事業者に一任します。もし運営会社が倒産すれば、物件処分や配当に遅延が生じる恐れがあります。金融庁が2024年にまとめた事業者監査報告書では、倒産・業務停止件数は全体の1.8%でしたが、投資家保護の観点からは無視できない数字です。
第二に「不動産市場リスク」があります。利回りが高く見えても、空室増加や地価下落で実質利回りが悪化することは珍しくありません。特に地方案件では人口減少が加速しており、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年に20%超の自治体が人口半減の可能性を示しています。
第三のリスクが「法的・税務リスク」です。2025年度現在、クラウドファンディングで得た配当は原則として雑所得扱いで総合課税となります。総合課税は給与所得と合算されるため、最高税率45%が適用される可能性がある点を見落としてはいけません。また、外国籍の投資家はマイナンバー提出が必須となり、提出が遅れると源泉徴収率が20.42%から30.42%に上がる事例も報告されています。
事故物件が組み込まれる可能性と影響
実は、不動産クラウドファンディングの案件にも事故物件が混在することがあります。事故物件とは、過去に自殺・他殺・火災など心理的瑕疵がある物件を指し、賃料の下落や売却時の値引き要因となります。国交省の「宅地建物取引業法施行規則」改正で2024年から告知義務の範囲が明確化されましたが、クラウドファンディング案件については「重要事項説明書面の電子交付」で代替されるケースが多く、読み飛ばす投資家も少なくありません。
事故物件がファンドに入ると、賃貸需要の低下と家賃減額が生じ、予定利回りが目減りするリスクがあります。日本賃貸住宅管理協会の2025年度調査によれば、同じ築年数・立地でも事故物件の家賃は平均で13%低いと報告されています。さらに、売却時の価格影響は平均23%と、保有期間より出口戦略に大きなダメージを与える傾向があります。
とはいえ、必ずしも事故物件=悪とは限りません。適切なリノベーションやターゲット変更で高利回りが狙える事例も存在します。ただし、こうした戦略は専門性が必要で、事業者の実績と運営力が成否を左右します。投資家は「事故物件リスクを織り込んだ上乗せ利回り」が妥当かどうかを冷静に判断する姿勢が求められます。
リスクを抑えるための具体策
ポイントは、「事業者選び」「案件分析」「分散投資」の三本柱を徹底することです。これらは単純ながら、実践するとリスクを大幅に下げられます。
まず事業者選びについては、直近3期以上の決算情報を確認し、自己資本比率が20%以上かどうかを目安にします。国交省の事業者登録データベースでは財務諸表が公開されているため、負債過多の会社は避けるのが無難です。また、過去に配当遅延があった案件数や、行政処分歴の有無も要チェックです。
次に案件分析です。重要なのは「運用シナリオが複数提示されているか」を見ることです。賃貸運用だけでなく、売却も含めた出口戦略が明示されていれば、事業者が市場変動を想定している証拠になります。また、募集ページに表示される「想定利回り」が内部収益率(IRR)なのか、単純利回りなのかも確認しましょう。IRRは再投資利回りを考慮した複利ベース、単純利回りは元本に対する年率です。混同すると実質の期待値がずれてしまいます。
最後に分散投資です。2025年度の個人投資家平均口数は1人あたり4.8案件という調査結果がありますが、筆者は最低でも5案件への分散を推奨します。都市型・地方再生型・物流施設型などタイプの異なる案件を組み合わせ、リスク相関を下げるのが狙いです。なお、同一事業者の複数案件に偏らないよう注意すると、事業者リスクをさらにヘッジできます。
2025年度の制度と税制のポイント
まず、2025年度も「小規模不動産特定共同事業者の電子取引業務」は引き続き利用可能です。これにより、ウェブ完結型の出資契約が広く普及し、契約時の印紙税はゼロとなります。ただし、電子契約を選ぶ場合でも、個人情報の暗号化と二段階認証を採用しているかを確認してください。国交省はガイドラインで多要素認証の導入を推奨しており、未対応の事業者は行政指導の対象となる場合があります。
税制面では、従来からの雑所得扱いに加え、2024年改正で損益通算が一部緩和されました。具体的には、不動産クラウドファンディングによる損失を他の不動産所得と通算できる特例が2025年度末まで延長されています。ただし、給与所得との通算は依然認められていないため、節税目的での過大なレバレッジは避けるべきです。
金融面では、新NISAの成長投資枠を不動産クラウドファンディングに使える、という噂が流れましたが、2025年10月時点で正式な対象商品には含まれていません。不確かな情報に踊らされず、現在の制度内で最善策を探る姿勢が重要です。なお、法人を設立して投資する場合は、配当が益金算入され、役員報酬を調整すれば節税余地が広がります。ただし、法人設立・維持コストが年間20万円前後かかる点も合わせて試算する必要があります。
まとめ
ここまで、不動産クラウドファンディングの基本構造から事故物件が及ぼす影響、そして2025年度の最新制度までを整理しました。リスクの中心は事業者・市場・法務の三つに集約され、事故物件の有無は利回り変動の大きな要因になります。一方で、決算情報の確認や案件分散といったシンプルな対策で多くのリスクは低減できます。まずは公式データベースで事業者の財務をチェックし、複数案件へ少額ずつ投資してみると良いでしょう。投資は自己責任ですが、情報武装を怠らなければ、将来の資産形成を力強く後押ししてくれるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産特定共同事業ポータル – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/
- 金融庁 クラウドファンディング監督指針 – https://www.fsa.go.jp/
- 日本賃貸住宅管理協会「事故物件に関する実態調査2025」 – https://www.jpm.jp/
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2025)」 – https://www.ipss.go.jp/
- 内閣府 経済財政白書2025 – https://www5.cao.go.jp/