不動産クラウドファンディングに興味はあるものの、「中古物件が多いけれど本当に安全なのか」「リスクを正しく理解できていない」と感じていませんか。実際、少額で始められる魅力の裏には、運営会社や物件の質に関する不安が潜んでいます。本記事では、投資初心者でもわかるように仕組みを整理し、中古物件ならではのリスクとその回避策を具体的に解説します。最後まで読むことで、2025年時点の最新制度を踏まえ、自分に合った案件を選ぶための判断軸が手に入ります。
不動産クラウドファンディングとは何か

まず押さえておきたいのは、少額出資をインターネット上で募り、複数の投資家が共同で物件を運用する仕組みです。不動産特定共同事業法(通称不特法)の改正により、オンライン完結型の事業が2020年以降急増し、2025年は累計募集額が1,800億円を超えました(国土交通省調べ)。
仕組み自体はシンプルですが、出資者は運営会社を通じて匿名組合契約を結ぶため、物件の所有権は持ちません。つまり、配当や元本の回収は運営会社の経営状態に左右される点が株式とは異なります。また、投資期間中は途中解約できない案件が多く、流動性が限定的です。この特徴を理解せずに「手軽さ」だけで参加すると、思わぬ資金ロックに悩む原因になります。
さらに、案件ごとに劣後出資比率という安全装置が設けられているものの、一律ではありません。劣後出資が10%しかない場合、想定外の価格下落が起これば一般出資者も損失を負担します。つまり、案件ページの数字だけでなく、評価方法や出口戦略を読み解く力が欠かせないのです。
中古物件を扱う案件の特徴

ポイントは、取得コストを抑えられる分、運用益が高めに設定されやすいことです。中古物件は割安で仕入れられるため、リノベーション後の賃料上昇や売却益が期待できます。一方で、築年数が古いほど設備更新や大規模修繕のタイミングが早まり、想定外の支出が増えるリスクも抱えます。
実は、2024年の不動産クラウドファンディング案件のうち約65%が中古区分マンションでした(不動産クラファン協会調査)。運営会社は短期運用で売却益を狙うケースが多く、運用期間は半年から2年程度が一般的です。短期であるほど、投資家は市況変動に直面しにくい反面、リフォームコストの精度が収益を大きく左右します。
中古物件ならではの確認ポイントとして、建築基準法改正前の旧耐震基準物件かどうかは最重要です。1981年6月以前の建物は耐震性が劣る可能性が高く、金融機関の評価も伸びません。運営会社が耐震補強を実施しているか、または適切な保険に加入しているかを必ずチェックしましょう。
投資前に押さえておきたい主なリスク
重要なのは、物件リスク・運営リスク・市場リスクの三つを分けて考えることです。物件リスクとは老朽化による修繕費や空室発生で収益が低下する可能性を指します。中古物件は表面利回りが高く見えても、年間家賃の8〜10%程度を維持管理費として差し引く必要があります。
運営リスクは、資金管理や情報開示の不透明さから生じます。金融庁の2025年モニタリング報告によると、クラウドファンディング事業者の約12%が「重要事項の説明が不十分」と指摘されました。投資家向けレポートの頻度や損益の算定方法が曖昧な企業は避けるのが賢明です。
市場リスクは金利上昇や地価下落による売却価格の目減りを含みます。日本銀行は2025年4月にマイナス金利政策を解除しましたが、長期金利は1.2%台に留まり、急騰していません。しかし、国際要因で金利が2%近くまで上がれば、不動産価格が5〜10%程度調整されるシミュレーションも複数出ています。つまり、市場の不確実性を見越した保守的な収支計画が欠かせません。
リスクを減らすためのチェックポイント
まず、劣後出資比率が20%以上ある案件を選ぶと、軽微な価格下落なら元本を守りやすくなります。次に、運営会社の貸倒引当金や上場有無を確認し、財務健全性を測りましょう。上場企業であっても新規事業として運営している場合は、親会社の保証がない点を見落とさないようにしてください。
物件については、過去5年分の修繕履歴と今後の修繕計画を比較し、将来コストを数字で把握します。特に中古区分マンションは、管理組合の長期修繕計画と積立金残高が十分かどうかがリスク判定の核心です。もし情報開示が限定的なら、その時点で投資を見送る判断も合理的です。
最後に、出口戦略が明確かどうかを確認します。賃貸継続型なのか、バリューアップ後に売却するのかで収益構造は変わります。賃貸継続型なら空室リスクのシナリオを複数提示しているか、売却型なら売却先の候補や想定価格を根拠データ付きで開示しているかをチェックすると、リスクを低減できます。
2025年度の制度と市場動向
2025年度は、不特法に基づく電子取引業者の登録要件が一部緩和され、資本金要件が5,000万円から2,000万円に引き下げられました。これにより中小事業者の参入が増えると見込まれますが、投資家側は事業者の経験値をより慎重に見極める必要があります。
税制面では、不動産所得と他の所得の損益通算は従来通り認められており、クラウドファンディングによる分配金も雑所得として総合課税対象です。2025年度税制改正大綱では、マイナス所得の損益通算制限が議論されましたが、現時点で制限は導入されていません。ただし今後の改正余地は残るため、長期投資を考える場合は税理士と定期的にシミュレーションを行うと安心です。
市場動向として、日本不動産研究所の予測では、2025年の中古マンション価格指数は前年同期比2%上昇と緩やかな伸びにとどまる見通しです。大幅な上昇局面ではないため、短期転売益を過度に期待するより、インカムゲイン中心の案件を選ぶ戦略が実践的と言えます。
まとめ
本記事では、不動産クラウドファンディングの基本構造から中古物件特有のリスクまで整理しました。重要なのは、物件リスク・運営リスク・市場リスクを分けて分析し、劣後出資比率や修繕計画など具体的な数値を確認することです。さらに、2025年度の制度緩和で事業者が増える一方、情報開示の質は玉石混淆になる可能性があります。投資を始める際は、複数案件を比較しながら少額で試し、自身のリスク許容度と照らし合わせてステップアップする姿勢が成功への近道です。今日得たチェックポイントを活用し、安心して第一歩を踏み出してみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産市場動向調査2025年版 – https://www.mlit.go.jp
- 金融庁 不動産クラウドファンディングモニタリング報告書2025 – https://www.fsa.go.jp
- 日本不動産研究所 不動産価格指数レポート2025 – https://www.reinet.or.jp
- 不動産クラファン協会 年次報告2024 – https://www.j-recfan.or.jp
- 日本銀行 金融政策決定会合議事要旨2025年4月 – https://www.boj.or.jp