不動産の税金

転職前に考える不動産投資ローンの借り換え術

転職活動を控えながらも、手元の不動産投資ローンをどうするか悩む人は少なくありません。勤務先が変われば収入の安定性や勤続年数がリセットされ、融資条件が厳しくなる可能性があるからです。本記事では「不動産投資ローン 転職前 借り換え」のポイントを整理し、金利メリットだけでなく審査面や将来のキャッシュフローまで踏み込んで解説します。読むことで、転職を機に損をせず資産形成を続ける具体的な手順が分かります。

転職がローン審査に与える影響を知る

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まず押さえておきたいのは、転職前後で金融機関の見るポイントが大きく変わることです。融資審査では勤務先、勤続年数、年収の安定性が三本柱とされ、特に勤続年数は1年以上が望ましい目安とされています。

金融機関は返済能力の継続性を重視します。そのため、転職直後は実績が未知数とみなされ、追加融資や借り換え審査で不利になるケースが多いです。また、年収が同程度でも業種や雇用形態が変わればリスク判定が厳格化することがあります。つまり、転職を予定しているなら、現職の勤続年数がカウントされているうちに審査を終えるメリットが大きいのです。

さらに、日本信用情報機構(JICC)の統計では、勤続1年未満の申込者の可決率は平均より15ポイント低いというデータがあります。転職が内定していても、申し込み時点で在籍証明が取れないと審査自体が進まないこともあるため、タイミングの見極めが欠かせません。

借り換えのメリットと費用対効果

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重要なのは、借り換えが本当に得になるかを数値で確認することです。2025年10月時点での不動産投資ローン金利は、変動型が1.5〜2.0%、固定10年型が2.5〜3.0%程度と報告されています(全国銀行協会)。現行ローンが金利3.5%以上なら、借り換えによる利息軽減効果が大きいと考えられます。

例えば残高3000万円、残期間20年、現行金利3.6%のケースを想定しましょう。変動1.7%へ借り換えると、総支払利息は約330万円減少します。一方で、繰上げ返済手数料や抵当権設定費用など諸経費が70万円かかるとすれば、差し引きでも260万円の改善です。実は、この試算を行う際に見落としがちなのが、将来の金利上昇リスクです。金利が1%上がった場合でも総支払額が現行より悪化しないか、ストレスシナリオを併せて検証しておくと安心感が増します。

また、借り換えによって固定から変動へ移るか、逆に固定期間を延長するかによって、キャッシュフローの安定度は変わります。投資物件の築年数や修繕計画とあわせて、毎年の家賃収入と支出のバランスを再計算することが欠かせません。

借り換えの適切なタイミングと準備

ポイントは、転職前にローン手続きを完了させる工程を逆算することです。一般的に借り換え審査から実行まで1〜2か月を要します。内定が出た後に会社を辞めるまでの猶予が短い場合、その間に決済が終わらないと審査条件が変わるおそれがあります。

まず金融機関への事前相談で必要書類をチェックし、源泉徴収票や確定申告書を早めに揃えましょう。必要に応じて評価証明書やレントロール(家賃明細)を提出し、物件の収益性を補強します。こうした資料は、転職による年収変動をカバーし、家賃収入で返済できることを示す根拠として有効です。

加えて、団体信用生命保険(団信)の内容も見直しておきましょう。最近はワイド団信や三大疾病保障付き商品が増え、金利上乗せ0.2〜0.3%で加入できるケースがあります。転職後に福利厚生が変わる可能性があるなら、保険代わりとして団信を強化する判断も一考の価値があります。

2025年度に使える関連制度と金融商品の選び方

まず押さえておきたいのは、投資用不動産に対する直接的な補助金や減税制度は限定的だという点です。2025年度も、住宅ローン減税は自宅用が対象であり、賃貸物件のローンには適用されません。ただし、青色申告特別控除や減価償却による節税効果は引き続き利用可能です。

青色申告を行う際、65万円控除を受けるには複式簿記と帳簿保存が条件になります。借り換えによって金利支払いが減少すると、損益計算書の支出が小さくなり、所得税が増える可能性があります。言い換えると、節税とキャッシュフローの最適化を両立させるには、借り換え後の収益構造を再度シミュレーションすることが欠かせません。

商品選びでは、ノンバンク系よりも都市銀行や信用金庫の方が金利は低めですが、審査は厳格です。一方、ノンバンクは金利が高いものの、転職予定でも家賃収入を重視する傾向があります。2025年度に新設された「中小企業支援型ローン」は、個人事業主として複数物件を保有する投資家も対象で、変動2.2%から利用可能です。ただし、財務諸表提出と事業計画審査が必須となるため、余裕をもった準備が必要になります。

審査を通すための実践的なポイント

実は、審査担当者が重視するのは書面だけではありません。面談時の説明や返済計画の説得力も評価対象です。家賃下落や修繕費のシミュレーションを提示し、「最悪のケースでも返済が滞らない」ことを数字で示せれば、勤続年数の短さを補えます。

また、クレジットカードや他の借入残高を整理しておくことも重要です。総借入額の圧縮は毎月返済比率を下げる効果があり、審査の印象を良くします。JICCのデータによると、投資ローン可決者の平均返済負担率は35%以下が多いとされています。家計全体を見直し、余裕資金を確保しておけば、面談での質疑にも自信を持って答えられます。

最後に、借り換えの意思を示す際は複数行への同時照会を避け、優先度の高い金融機関から順に申し込む方法が効果的です。信用情報に照会履歴が短期間に集中すると、資金繰りに窮していると誤解されるリスクがあるためです。審査結果に納得がいかなければ理由を確認し、条件改善の余地を探る姿勢が大切になります。

まとめ

転職を控えた時期の借り換えは難易度が高い一方で、成功すれば金利低減とキャッシュフロー改善の二重の恩恵を受けられます。現職の勤続年数がカウントされているうちに審査を完了させ、青色申告や団信など周辺制度も同時に見直すことで、不確定要素を最小限に抑えられます。まずは数値シミュレーションと書類準備を進め、信頼できる金融機関と交渉を重ねてください。行動を一歩早めることが、将来の安定した不動産収益につながります。

参考文献・出典

  • 全国銀行協会 – https://www.zenginkyo.or.jp
  • 日本信用情報機構(JICC) – https://www.jicc.co.jp
  • 総務省統計局 家計調査 – https://www.stat.go.jp
  • 国税庁 タックスアンサー 青色申告特別控除 – https://www.nta.go.jp
  • 不動産流通推進センター「賃貸市場データブック2025」 – https://www.retpc.jp

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