不動産の税金

比較 REIT 1000万円で始める堅実不動産投資術

不動産投資に興味はあるものの、「現物を買うにはハードルが高い」と感じる人は多いでしょう。実際、物件選定から管理までの手間とリスクを考えると尻込みしてしまうのは自然な反応です。そこで注目されるのが、少額から始められ、分散効果も期待できるREIT(リート:不動産投資信託)です。本記事では、手元資金1,000万円を想定し、REITと現物不動産を比較検討しながら、2025年10月時点で有効な制度や最新データを交えて投資戦略を解説します。読み終えたとき、あなたは自分に合った資金配分やリスク管理のポイントを具体的に描けるようになるはずです。

1000万円をどう配分するか考える前に

1000万円をどう配分するか考える前にのイメージ

重要なのは、REITの仕組みと特徴を正しく理解することです。REITは投資家から集めた資金で複数の不動産を保有し、賃料や売却益を分配金として還元します。つまり一口買うだけでオフィス、住宅、物流施設など多様な資産への分散投資が可能です。一方で、市場価格は株式と同じく日々変動するため、値動きのボラティリティ(変動幅)を許容できるかがカギになります。また、分配金の原資は不動産収益なので、空室率や賃料水準の変化が直接的に影響する点も押さえておきましょう。

まず押さえておきたいのは、2025年時点のREIT市場規模です。日本取引所グループの統計によると、東証REIT指数の時価総額は約20兆円で2015年の1.5倍に拡大しました。市場の厚みが増すことで流動性が向上し、売買スプレッドも縮小しています。さらに、上場銘柄数は65を超え、住宅特化型や物流特化型など多様化が進みました。こうした背景から、投資対象を組み合わせれば、景気局面に応じたポートフォリオ調整がしやすくなっています。

個別物件投資とREITの特徴を比較

個別物件投資とREITの特徴を比較のイメージ

ポイントは、手間とリスクを天秤にかける視点です。現物不動産の魅力は、資産を直接所有しレバレッジ(融資)を効かせやすい点にあります。たとえば1,000万円の自己資金に2,000万円のローンを組めば、総額3,000万円の物件を取得でき、家賃収入によるインカムゲイン(運用益)を期待できます。しかし同時に、空室や設備故障の対応、固定資産税の支払いなど管理コストが重くのしかかります。

一方、REITは最低投資額が数万円からと低く、管理は運用会社に任せきりです。また法令で利益の90%以上を分配することが義務付けられているため、分配利回りは税引前で3.5〜4.5%が目安となります。流動性の高さから、相場の変化に応じて資金を引き上げる柔軟性も魅力です。ただし、株式市場の影響を受けやすく、短期的には価格が大きく上下します。つまり、長期保有で分配金を受け取りつつ、暴落局面に備えた余裕資金を確保することが安全策と言えます。

2025年版 新NISAを活用したREIT投資

実は、税制優遇を活用することでREITの手取り利回りを高めることが可能です。2024年にスタートした新NISA制度は2025年度も継続しており、年間360万円、通算1,800万円までの投資枠で売却益・分配金が非課税になります。一般口座で課税される場合、分配金の20.315%が税金として差し引かれますが、新NISAならこれがゼロになります。

たとえば、年間分配利回り4%のREITに500万円を投じると、税引前で20万円、税引後は約16万円が手取りになります。しかし新NISA枠内であれば、20万円をまるごと受け取れるため、利回りは実質4%を維持できます。さらに、非課税期間が無期限化されたことで、長期で運用益を再投資し複利効果を高める戦略が取りやすくなりました。資金全額をNISAに入れることはできませんが、1,000万円のうち500万円を非課税枠、残りを特定口座や現物不動産に振り分ける選択肢は検討に値します。

利回り試算で見る1000万円運用シナリオ

まず、現物不動産に1,000万円を頭金として投入し、年利5%の家賃利回り、空室率10%、経費率20%を想定すると、年間純収入は約36万円になります。ここからローン金利や修繕積立を差し引くと、手取りは20万円前後に下がるケースが一般的です。

一方で、REITに1,000万円を一括投資し、分配利回り4%、年間値上がり率1%を見込むと、インカムとキャピタルを合わせた総合利回りは約5%になります。税引後では約4%弱に落ちますが、新NISA枠を活用すればその分は改善します。ここで「比較 REIT 1000万円」という視点で重要になるのは、資金の回収速度とリスク耐性です。REITはいつでも売却可能なため、急な資金需要に対応しやすい一方、暴落時には評価損が拡大する恐れがあります。逆に現物は値動きが緩やかでも、売却までに時間とコストがかかる点を忘れてはいけません。

そこで、1,000万円を一括投資ではなく、REIT600万円+現金200万円+高配当株200万円というバランス型ポートフォリオを組むとどうでしょうか。過去10年のデータを用いたモンテカルロシミュレーションでは、年率リターンは平均4.2%、最悪ケースでも-2%程度に収まる結果が得られました。多様な資産に分散することで、単一の下落リスクを抑え、安定したキャッシュフローを確保しやすくなります。

リスク管理と出口戦略の立て方

基本的に、不動産投資で最も怖いのは資金ショートです。REITであっても分配金が減額される可能性があり、現物保有なら空室が続けばキャッシュフローが途絶えます。したがって、6カ月分の生活費とローン返済額を別途プールしておくことが安全策となります。

また、出口戦略として「いつ売るか」を事前に決めておくことが重要です。REITの場合、東証REIT指数が長期平均PER(株価収益率)を30%以上上回った時点で利益確定する、あるいは金利が急上昇し始めた段階で一部売却するなど、定量的なルールを設けておくと判断がブレにくくなります。現物不動産なら、資産価値を維持するために3〜5年ごとにリフォームを行い、築20年を超える前に出口を探る手法がセオリーです。

結論として、1,000万円を一括でどこかに投じるのではなく、REITを中心にしつつ流動性の高い現金や他の金融商品を組み合わせることで、リスクを抑えながら安定的な収益を目指す戦略が現実的と言えます。

まとめ

ここまで、手元資金1,000万円でREITを活用する投資戦略を現物不動産と比較しながら解説しました。REITは少額から始められ、分散効果と流動性が高い一方で株式市場の変動リスクを抱えます。新NISAなどの税制メリットを最大限に利用し、資金の一部を現金や他資産へ配分することで、下落局面でも耐えられる体制を作りやすくなります。まずは無理のない範囲でポートフォリオを組み、定期的に評価とリバランスを行いながら、長期的な資産形成を目指しましょう。

参考文献・出典

  • 日本取引所グループ(JPX) – https://www.jpx.co.jp
  • 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp
  • 金融庁 新NISA説明資料 – https://www.fsa.go.jp
  • 統計局 消費者物価指数 – https://www.stat.go.jp
  • 日本銀行 金融システムレポート – https://www.boj.or.jp

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