不動産の税金

初心者向け 戸建て賃貸 確定申告 完全ガイド

戸建てを賃貸に出したばかりのオーナーからは、「家賃収入はそれほど多くないのに、わざわざ確定申告をしないといけないのか」という声をよく聞きます。実際に申告を怠ると追徴課税や延滞税のリスクが生じ、せっかくの収益を圧縮してしまいます。本記事では戸建て賃貸と確定申告の基本から、2025年度も有効な控除制度の活用法までを分かりやすく解説します。読み終えたときには、必要な書類や計算方法がイメージでき、次の申告期日に向けて自信を持って準備を始められるでしょう。

なぜ戸建て賃貸でも確定申告が必要なのか

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重要なのは「家賃収入の有無」ではなく「所得が発生した事実」です。国税庁のガイドラインでは、給与所得以外の所得が20万円を超える場合には申告義務が生じると定められています。家賃が月6万円でも年間では72万円になり、経費を差し引いても20万円を上回るケースが多いのが実情です。

また、不動産所得は税務署が把握しやすい点にも注意が必要です。入居者の契約書や金融機関の振込記録から収入の存在が確認できるため、無申告のままでは後日指摘を受けるリスクが高まります。延滞税は年率最大14.6%(2025年時点)まで膨らむ可能性があり、早めの申告が結果的にコスト削減につながります。

一方で、正しく申告すれば経費計上や控除の適用により税負担を抑えられます。戸建て賃貸は修繕費や減価償却費が大きく、現金収支より課税所得を低くできることも少なくありません。つまり、確定申告は義務であると同時に、賢く節税するためのチャンスでもあるのです。

まず押さえておきたい所得区分と計算の流れ

まず押さえておきたい所得区分と計算の流れのイメージ

まず押さえておきたいのは「不動産所得」という区分です。家賃収入から必要経費を差し引いた金額が不動産所得となり、給与と合算して総合課税で計算されます。課税所得が195万円以下なら税率5%、330万円以下なら10%というように、累進税率が適用されます。

計算の流れはシンプルですが、漏れなく書類をそろえることが大切です。家賃収入の通帳コピー、管理会社の送金明細、固定資産税の納税通知書、保険料の証券などを一年分まとめておきましょう。特に通帳はプライベートと区分するために専用口座を用意すると後々の集計が楽になります。

青色申告を選択する場合は帳簿付けが必須になります。複式簿記で電子帳簿保存を行うと、2025年度も最大65万円の青色申告特別控除が適用されます。白色申告では控除がないため、手間をかけても青色を選ぶメリットは大きいと言えるでしょう。

経費になるもの・ならないものの判断基準

ポイントは「家賃収入を得るために直接必要かどうか」です。戸建て賃貸では固定資産税、火災保険料、管理委託手数料が代表的な経費になります。さらに、入居募集の広告費や家電の交換費も経費計上できるケースが多いので領収書を必ず保管してください。

一方、プライベートで使用する車のガソリン代や自宅の通信費などは原則として経費になりません。ただし、物件までの移動に車を使う機会が多い場合は、走行距離に応じた按分が認められるケースもあります。按分比率の根拠を走行ログで示せば、税務調査時にも説明しやすくなります。

減価償却費の取り扱いは戸建て賃貸ならではの重要論点です。木造住宅の法定耐用年数は22年ですが、中古で購入した場合は「残存耐用年数」を用いて計算できます。取得費を年数で均等に割り、毎年費用化することでキャッシュアウトを伴わずに課税所得を引き下げられます。つまり、減価償却は最も強力な節税ツールと言っても過言ではありません。

2025年度の控除制度と節税アイデア

実は、控除制度を活用するか否かで納税額は大きく変わります。2025年度も青色申告特別控除65万円が存続しており、電子帳簿保存が条件です。帳簿を紙で保存した場合は55万円に減額される点を押さえてください。

少額減価償却資産の特例も注目です。10万円以上20万円未満のエアコンや給湯器は、一括経費か3年で均等償却かを選べます。収支が黒字で税率が高い年に一括で落とすと節税効果が最大化するため、交換時期を調整するだけでも現金残高が変わってきます。

さらに、小規模企業共済やiDeCoへの掛金は全額所得控除になります。掛金年間84万円を上限まで拠出すれば、課税所得を大幅に圧縮できるうえ、将来の退職金や年金として受け取ることも可能です。家賃収入が安定し始めたら、資金繰りを見ながら長期的な節税策として検討してみる価値があります。

スムーズに申告するための実務ポイント

まず、年間スケジュールを逆算することが成功の鍵です。国税庁が定める確定申告期間は例年2月16日から3月15日までで、2026年分の申告も同様の日程が想定されています。年末までに帳簿を締め、1月中に必要書類をそろえておくと突発的なトラブルにも余裕を持って対応できます。

次に、会計ソフトとe-Taxを活用すれば作業時間が圧縮できます。クラウド型ソフトは金融機関と連携し、自動で仕訳を提案してくれるため、通帳コピーを目視で転記する手間が省けます。e-TaxはマイナンバーカードとICカードリーダーがあれば24時間送信が可能で、郵送よりも還付金の振込が早い点もメリットです。

最後に、税理士への相談タイミングを逃さないようにしましょう。2月以降は繁忙期で予約が取りづらくなるため、秋頃に試算表を作成し、節税施策の効果をシミュレーションしてもらうと安心です。専門家の助言を受ける費用も経費に計上できるため、結果的にネットワークや時間の節約につながります。

まとめ

この記事では戸建て賃貸のオーナーが確定申告で失敗しないためのポイントを整理しました。家賃収入が20万円を超えた時点で申告義務が発生し、経費や控除を正しく適用すれば税負担を大幅に抑えられます。特に青色申告特別控除や減価償却費は大きな節税効果をもたらすため、帳簿付けと書類管理を早めに始めることが重要です。次の申告期日までまだ時間がある今こそ、会計ソフトの導入や専門家への相談を進め、安心してオーナー業に専念できる体制を整えましょう。

参考文献・出典

  • 国税庁 – https://www.nta.go.jp
  • 国土交通省 住宅局 賃貸住宅市場データ – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省統計局 人口推計 – https://www.stat.go.jp
  • 中小企業庁 青色申告制度の手引き – https://www.chusho.meti.go.jp
  • e-Tax 国税電子申告・納税システム – https://www.e-tax.nta.go.jp

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