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築10年の物件で始める投資の基本ステップ

「築10年の中古アパートは本当に狙い目なのか」「初心者でも失敗せずに始められるのか」と悩む人は少なくありません。新築より価格が落ち着き、築20年以上より修繕リスクが低い中間ゾーンだからこそ、適切に選べば安定したキャッシュフローが期待できます。本記事では築10年物件の特徴、選定方法、資金計画、運営のコツ、2025年度の税制メリットまで網羅的に解説します。読み終えるころには「築10年 始め方」のイメージが具体的になり、最初の一歩を踏み出す判断材料が手に入るはずです。

築10年物件が狙い目と言われる理由

築10年物件が狙い目と言われる理由のイメージ

重要なのは、築年数と価格・収益性のバランスを理解することです。国土交通省の「中古住宅流通・リフォーム市場の動向」によると、築10年前後で物件価格は新築時の7〜8割まで下がりますが、賃料は新築比で9割前後を維持するケースが多いと報告されています。つまり購入価格の下落幅より賃料の下落幅が小さいため、利回りが高まりやすいのです。

さらに、2000年代後半以降に建築された物件は耐震基準や断熱性能が大幅に向上しています。構造体そのものがしっかりしているため、突発的な大規模改修のリスクを抑えやすい点が魅力です。一方で外壁や給湯器など設備の交換時期が接近している場合もあり、事前に修繕計画を確認しておく必要があります。

金融機関の融資姿勢も築10年前後までなら比較的柔軟です。住宅金融支援機構のデータでは、築20年超の木造よりも築10年木造のほうが貸付期間を長く設定できる傾向が示されています。返済期間が延びれば月々のキャッシュフローにゆとりが生まれ、万一の空室時でも資金繰りが安定します。

ただし人気エリアでは築浅の割安感が薄れ、新築と大差ない価格で売り出される場合もあります。近隣の新築相場、築20年相場と比較し、家賃とのバランスが実質的に有利かどうかを数字で確認する姿勢が欠かせません。

物件選定で押さえておきたい三つの視点

物件選定で押さえておきたい三つの視点のイメージ

まず押さえておきたいのは立地です。賃貸需要が読みやすい駅徒歩10分圏内、または大型雇用施設の近くを基本線とします。人口動態を調べるときは、総務省「住民基本台帳人口移動報告」の五年推移を見れば、急減の市区町村を避ける判断ができます。

次に建物仕様を確認します。築10年でもメンテナンス状態は物件ごとに差が大きいからです。管理組合が発行する長期修繕計画書があれば必ず取得し、直近の大規模修繕積立金が不足していないかをチェックします。個別の空室は壁紙や床材の傷み具合も参考になります。

三つ目は賃貸管理の体制です。サブリース(家賃保証)をうたう会社もありますが、保証賃料の改定条件が厳しすぎると収益が目減りします。管理委託契約の内容を読み込み、入居者募集の広告料や退去精算ルールを把握しておくと、運営開始後のトラブルを避けやすくなります。

これら三つの視点を一体で検討すると、購入前に想定できるリスクが減ります。立地の将来性、建物の健全性、管理の透明性がそろった物件を選ぶことが、初心者でも安定経営に近づく最短ルートになります。

資金計画と融資のポイント

ポイントは、自己資金と借入比率をバランスさせることです。金融機関は築年数に応じて融資期間を短縮するため、返済比率が高くなりがちです。自己資金を物件価格の20%程度確保できれば、返済負担率を抑えつつ金利条件も交渉しやすくなります。

例えば2,500万円の築10年区分マンションを金利1.8%・期間25年で借り入れると、毎月返済は約10万円です。家賃が12万円なら表面利回りは5.8%、返済後キャッシュフローは管理費・修繕積立金を差し引いても2万円ほど残ります。ここに自己資金500万円を投入すれば、実質利回りはさらに高まり、空室が1カ月出ても赤字を避けやすくなります。

融資審査では個人の属性も重視されます。年収400万円以上、勤続3年以上が目安と言われますが、副業解禁の流れから自営業者にも門戸が開きつつあります。日本政策金融公庫の「生活衛生貸付」や地方銀行のアパートローンなど選択肢は広がっており、複数行に同時打診して比較することが大切です。

また2025年度は「既存住宅取得に係る住宅ローン減税」が継続予定です。省エネ基準適合など条件を満たすと、年末借入残高の0.7%を最大10年間控除できます。築10年の場合は適合証明を取得しやすく、個人名義での取得なら実質利回りを底上げできます。期限や条件は改正が入りやすいので、契約前に国土交通省の最新情報を確認しましょう。

運営開始後に差がつく管理とリフォーム

実は、購入後の運営次第で収益は大きく変わります。入居者満足度を高めれば空室期間を短くでき、長期的な利回り向上につながります。具体的には定期巡回で共用部分を清潔に保ち、インターネット無料化や宅配ボックス設置など小規模設備投資を検討すると効果的です。

築10年物件は見た目が古くなる時期でもあります。外壁の洗浄やエントランスの照明交換を行うだけで印象が一新され、賃料維持に寄与します。日本賃貸住宅管理協会の調査では、室内クリーニングやLED化など5万円以内の改善でも入居決定率が約15%上昇したというデータがあります。

原状回復工事では、過剰なフルリフォームに走ると投資回収に時間がかかります。築10年なら設備はまだ使えることが多く、ポイントを絞ったリペアが賢明です。例として、水栓金具の交換とクロスのアクセント貼りで、入居者の内見満足度を高めたケースが増えています。

管理会社とのコミュニケーションも重要です。募集家賃の見直しや広告戦略を定例会議で共有し、リーシングのスピードを管理画面で確認しましょう。IT重説やオンライン内見を活用すると、遠方の需要も取り込めるため、競争力がさらに高まります。

2025年度の税制・減価償却メリット

まず押さえておきたいのは減価償却です。築10年の木造アパートなら法定耐用年数22年の残存12年を採用し、定額法で計上できます。購入価格のうち建物割合を60%とすると、毎年5%強を経費計上でき、所得税・住民税の圧縮が可能です。

また個人事業として青色申告すると、2025年度も最大65万円の特別控除を適用できます。複式簿記の帳簿付けと電子申告を行えば、家賃収入が少なくても税負担を軽減できます。国税庁のモデルケースでは、年間家賃収入240万円、経費110万円の物件でも、控除適用後の課税所得は大幅に減少しました。

法人化を検討する場合は、減価償却による赤字を本業所得と通算できない点に注意が必要です。ただし家族を役員にして給与分散を図るなど節税の選択肢が増えるため、物件規模が拡大した段階でシミュレーションすると効果が見えやすくなります。

最後に固定資産税の軽減措置です。2025年度も住宅用地の課税標準特例は継続され、200平方メートル以下の部分は1/6評価が維持されます。築10年で取得した場合も新築時と同じ恩恵が受けられるため、土地値の高い都市部では実効利回りに大きく影響します。

まとめ

ここまで築10年物件が持つ価格と賃料のバランス、物件選定の三つの視点、資金計画と融資、運営の実務、2025年度税制まで詳細に見てきました。新築より手頃で、老朽物件ほどリスクが高くない点が最大の魅力です。次に取るべき行動は、気になるエリアの販売図面を30件ほど集め、家賃・価格・築年の関係を一覧化することです。それだけで相場観が身に付き、自分に合う「築10年 始め方」が具体的になります。数字と現場を照らし合わせながら、着実に一歩を踏み出してみてください。

参考文献・出典

  • 国土交通省 中古住宅流通・リフォーム市場の動向 – https://www.mlit.go.jp/
  • 総務省 住民基本台帳人口移動報告 – https://www.soumu.go.jp/
  • 住宅金融支援機構 フラット35利用者調査 – https://www.jhf.go.jp/
  • 日本賃貸住宅管理協会 賃貸住宅市場景況感調査 – https://www.jpm.jp/
  • 国税庁 青色申告制度の概要 – https://www.nta.go.jp/

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