一棟マンションを購入すると、家賃収入の喜びと同時に「確定申告はどうすればいいのか」という不安が頭をよぎります。特に会社員として給与所得がある場合、不動産所得との区分や経費計上の範囲を誤ると税金を払い過ぎる危険があるからです。本記事では、2025年度の最新ルールに沿って一棟マンション 確定申告の流れを解説し、初心者でもスムーズに申告できる手順と節税のポイントを詳しく紹介します。
一棟マンション投資と所得区分の基本

まず押さえておきたいのは、不動産所得の計算構造です。家賃や共益費などの総収入から必要経費を差し引き、残った額が所得となります。この不動産所得は給与所得や事業所得とは区分して計算し、最終的に合算した課税所得に税率が掛かります。
一般に区分所有のマンションと異なり、一棟物件は規模が大きくなるため、経費として計上できる項目が増えます。減価償却費や修繕費、管理委託料に加え、建物全体の固定資産税を一括計上できる点が特徴です。一方で、土地部分の減価償却が認められない点は区分所有と同じなので注意が必要です。
所得区分に関して、一定規模を超えると「事業的規模」に該当します。具体的には一棟マンションなら戸数や賃貸面積によって判断されるものの、2025年12月時点で法令上の明確な数値基準は示されていません。国税庁の事例集では「概ね家屋10室以上」で事業的規模と認定されるケースが多く、青色申告特別控除65万円の対象となる可能性があります。
さらに、赤字が生じた場合は給与所得と損益通算できる点も魅力です。空室率が高くなった年に修繕を集中させることで赤字を作り、翌年以降の黒字と相殺する戦略もあります。ただし過度な節税目的と見做されないよう、適正な修繕計画を立てることが肝要です。
2025年度の必要書類と提出フロー

重要なのは、提出期限までに必要書類を漏れなく準備することです。確定申告書B第一表・第二表、青色申告決算書(または収支内訳書)、各種領収書や銀行取引明細のコピーが基本セットとなります。電子申告を行う場合でも、領収書原本は7年間の保存義務があります。
2025年分の申告期間は、2026年2月17日から3月15日までです。e-Taxを利用すると、24時間いつでも送信でき、医療費控除や寄付金控除のデータも自動で反映されるため効率的です。またe-Taxで提出すると、青色申告特別控除65万円を受けるために必要な「電子帳簿保存要件」を満たしやすくなります。
提出フローとしては、まず帳簿ソフトで年間の収支を確定させ、次に減価償却費を計算します。建物と附属設備を分けて耐用年数を設定することで、節税効果を高めることが可能です。続いて青色申告決算書へ転記し、最後に確定申告書Bへ合計額を入力します。税額が確定したら、金融機関やクレジットカードで納付すれば完了です。
紙で申告する場合は税務署の窓口が混雑するため、提出前に書類チェックシートで不備を確認すると安心です。特にマイナンバーの記載漏れや添付書類の不足は、後日の呼び出しの原因になります。
節税に直結する経費計上のコツ
ポイントは、合法的に経費を最大化することです。修繕費と資本的支出を正しく区分し、10万円未満の備品購入は一括で損金算入するなど、細かなルールを理解するだけで税負担が大きく変わります。
修繕費は、原状回復や機能維持を目的とした工事であれば全額をその年の経費にできます。一方、耐用年数を延長させるリノベーションは資本的支出として減価償却の対象です。国税庁のガイドラインでは、判定基準の一つとして「修繕費が20万円未満または建物取得価額のおおむね3%以内」が示されており、これに該当すれば修繕費と認められやすくなります。
また、融資に伴う借入金利や保証料も経費に算入できます。これらは忘れがちな項目ですが、一棟物件では年間数十万円規模になることが多いため見過ごせません。さらに、管理会社へ支払う空室募集の広告料や専門書籍の購入費も対象です。領収書をデジタル保存する際は、2025年度の電子帳簿保存法に基づきタイムスタンプ付与と改ざん防止措置を施せば紙保存を省略できます。
保険料控除と異なり、不動産所得の経費は実際に支出した金額がベースです。そのためキャッシュアウトと節税効果を照らし合わせ、投資利回りが下がらないようバランスを取ることが大切です。
キャッシュフローを守る青色申告のメリット
実は、青色申告を選択するだけで現金収支の改善につながります。最大65万円の青色申告特別控除は、不動産所得から直接差し引かれるため、課税所得が下がり実効税率で10〜20%程度の節税になるケースが一般的です。
さらに、30万円未満の少額減価償却資産の即時償却制度も利用できます。例えば、共用部の防犯カメラを総額28万円で導入した場合、白色申告では耐用年数に応じた償却に留まりますが、青色申告なら初年度に全額を経費化できます。これによりキャッシュフローと税金のタイミングを一致させ、手元現金を厚く保てます。
青色事業専従者給与の制度も見逃せません。家族が管理業務や経理を手伝う場合、適正額を給与として支払い、経費化することが可能です。ただし、労務実態と支払水準が市場相場とかけ離れると否認リスクがあるため、勤怠管理簿と給与明細を整備しておくことが前提となります。
国税庁統計によると、2024年度における不動産所得者の青色申告利用率は64%でした。その大半が特別控除だけでなく、家族給与や少額資産の即時償却を組み合わせ、平均して年間28万円の追加節税に成功しています。2025年度も制度は継続しているため、導入しない手はありません。
税務調査に備える記帳とデータ管理
税務調査は突然やって来ますが、日頃の備えがあれば恐れる必要はありません。最も大切なのは、領収書と銀行記録の突合を毎月行い、未処理の取引を溜め込まないことです。
2025年度の電子帳簿保存法では、スキャナ保存の際に「解像度200dpi以上」「カラー画像」「保存後の訂正・削除履歴の確保」が必須です。クラウド会計ソフトの多くはこれらを自動で満たす設計になっており、スマホで撮影したレシートがそのまま仕訳に変換されます。また、銀行API連携により入出金データを自動取得できるため、入力ミスの心配が大幅に減ります。
税務調査で指摘が多いのは、修繕費と資本的支出の区分ミスと、プライベート支出の混入です。交際費や車両費を計上する場合は、「どの入居者募集活動に必要だったのか」を説明できるメモを残しておくと良いでしょう。これだけで調査官の印象が変わり、深掘りされにくくなります。
最後に、適切な専門家との連携が安全網になります。税理士に丸投げするのではなく、自分でも最低限の流れを理解し、月次の試算表を共有しながら改善点を議論する姿勢が、長期的な信頼関係を築くコツです。
まとめ
一棟マンション 確定申告を成功させるためには、収入と経費の区分を明確にし、2025年度の電子帳簿保存要件を守りつつ青色申告の特典を最大化することが欠かせません。特に修繕費の扱いと減価償却の計算は節税効果が大きく、キャッシュフローを左右します。今日から領収書を整理し、会計ソフトにデータを取り込む習慣を始めることで、来年の申告が驚くほど楽になります。不安を行動に変え、賢い税務管理で安定した投資ライフを実現しましょう。
参考文献・出典
- 国税庁 – https://www.nta.go.jp
- 財務省「税制改正解説 2025年度版」 – https://www.mof.go.jp
- 不動産経済研究所「首都圏新築マンション市場動向2025年12月」 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 総務省統計局「家計調査年報2024」 – https://www.stat.go.jp
- 中小企業庁「電子帳簿保存法ガイドブック2025」 – https://www.chusho.meti.go.jp