不動産の税金

鉄骨造のメリットとは|木造・RCと徹底比較

「鉄骨造のメリットって具体的に何だろう」「木造やRC造と比べてどこが優れているの」という疑問を持つ方は少なくありません。投資用物件を検討するうえで、建物の構造は収益性や長期的なリスク管理に直結する重要な要素です。構造を理解しないまま物件を購入すると、想定外の修繕費や融資条件の悪化に悩まされることもあります。

本記事では、鉄骨造が持つメリットを公的データや具体例を交えながら解説します。あわせてデメリットと対策、木造・RC造との違いも整理しますので、読み終えるころには鉄骨造があなたの投資目的に合うかどうかを判断できるようになるでしょう。重要なのは、鉄骨造を一括りにせず、軽量と重量の違いまで踏み込んで理解することです。

鉄骨造の基本|軽量と重量で性格が変わる

鉄骨造とは、建物の柱や梁に鉄骨を使用した構造のことを指します。木材と比べて素材が均質で強度のばらつきが少なく、工場で規格化された部材を使うため品質管理がしやすい点が大きな特徴です。ただし、鉄骨造をひとまとめに語ると、コストや工期、空間設計の説明がぼやけてしまいます。

住宅分野では、骨格材の厚さ6mm以下を軽量鉄骨造、6mm超を重量鉄骨造と整理するとわかりやすいでしょう。軽量鉄骨造は施工が簡単で工期が短く、一般的な住宅やアパートの多くで採用されています。主に3階までの建物に用いられ、コストを抑えやすい傾向があります。一方の重量鉄骨造は強度に優れ、3階以上の中高層建物にも対応できる点がメリットです。

税務上の法定耐用年数も、この骨格材の厚さで細かく分かれます。減価償却資産の耐用年数等に関する省令によると、住宅用の鉄骨造は骨格材の肉厚が4mmを超えるものが34年、3mm超4mm以下が27年、3mm以下が19年と定められています。RC造の47年と比べると短くなりますが、木造の22年よりは長い区分が多いという位置づけです。「鉄骨造は一律で○年」と書かれている記事を見かけますが、これは正確ではないため注意しましょう。

投資家が注目すべき鉄骨造のメリット

ここからは、不動産投資を検討する方が押さえておきたいメリットを順番に解説します。それぞれが収益にどう影響するかを理解することで、物件選びの精度が高まります。

地震エネルギーを吸収する耐震性

鉄骨造の代表的な強みは耐震性です。ただし、その本質は「硬いから強い」ということではありません。鉄骨は粘り強い素材で、大地震時には部材がしなやかに変形しながら地震のエネルギーを吸収する設計思想に基づいています。JFEスチールの技術解説でも、塑性変形によるエネルギー吸収能力を活用して安全性を確保し、塑性ヒンジが生じても破壊に至らないよう部材設計を行うと説明されています。

この特性により、大きな揺れに対しても建物の倒壊リスクを抑えられます。入居者にとって安心感のある建物は、長期的な入居継続や家賃設定の面でプラスに働きます。ただし、エネルギーを吸収する過程で地震後に残留変形が残る可能性もあるため、過信せず定期的な点検を行うことが大切です。

工場生産による品質の安定と短工期

鉄骨造のメリットを語るうえで欠かせないのが、品質の安定性です。鉄骨部材はほとんどが工場で生産されるため、職人の腕による仕上がりのばらつきが生じにくくなります。木材はすべて天然物で加工に手間がかかり、仕上がりが職人の技量に左右されやすいのとは対照的です。現場では高品質な部材を組み立てる作業が中心になるため、施工品質が安定します。

工期の短さも見逃せません。特にプレハブ工法でつくられる軽量鉄骨造は、工場生産によって現場での作業工数が少なく、短期間で完成します。工期の短縮は人件費や現場管理費の圧縮につながり、賃貸開始時期を早めることで収益化までの期間を短くできます。つまり、品質と工期の両面で投資効率を高められるのです。

減価償却期間が比較的長い

不動産投資において減価償却は重要な節税手段です。鉄骨造は木造よりも法定耐用年数が長い区分が多いため、減価償却を活用できる期間が延びる傾向にあります。骨格材4mm超の鉄骨造は34年、木造は22年ですから、その差は大きいといえます。

減価償却期間が長いと、毎年の経費計上額は小さくなるものの、より長期間にわたって課税所得を圧縮できます。長期保有を前提とした投資戦略では有利に働くでしょう。一方で、短期売却を狙う場合は木造の短い償却期間が有利なケースもあります。自身の投資スタンスに照らして判断することが大切です。なお、税務上の耐用年数と中古市場の売買価格は別物である点には留意してください。

大空間・大開口を実現しやすい

鉄骨は剛性が高いため、柱と柱の間隔を広く取りやすく、開放的な空間を確保できます。壁で建物を支える木造では難しい大開口も、鉄骨造なら実現可能です。特に重量鉄骨は大空間をつくりやすいとされますが、軽量鉄骨でも柱と梁を剛接合で固定するラーメン構造を用いれば大開口を実現できます。

具体例として、積水ハウスは軽量鉄骨で最大スパン7m、3階建て専用構法では最大スパン9mの大空間を訴求しています。こうした可変性は将来のリノベーションでも有利に働きます。市場ニーズの変化に応じて間取りを変更したいとき、柔軟に対応できることは物件の資産価値を維持するうえで重要な要素です。

融資期間を確保しやすくシロアリにも強い

金融機関は融資期間を設定する際、法定耐用年数を重要な判断材料とします。鉄骨造は木造より耐用年数が長い区分が多いため、築年数が経過した物件でも比較的長い融資期間を確保しやすい傾向にあります。融資期間が長ければ月々の返済額を抑えやすく、キャッシュフローの安定につながります。

また、骨組みが鉄であるためシロアリ被害に遭いにくいこともメリットです。ただし、トヨタホームの解説にもあるとおり、骨組みが鉄骨でも内装の下地や床組材には木材を使うため、完全に無対策でよいわけではありません。木部へのシロアリ対策は引き続き必要だと理解しておきましょう。

知っておくべき鉄骨造のデメリットと対策

メリットばかりに目を向けていると、思わぬ落とし穴に陥ることがあります。ここでは鉄骨造の弱点を正直に解説し、それぞれの対策も併せて紹介します。

火災時の高温に弱く耐火被覆が必要

「鉄骨造は鉄だから火に強い」と単純に考えるのは危険です。鉄は高温になると強度が低下するため、火災に備えた耐火被覆が必要になります。耐火性能を確保するには、鉄骨部材に対して適切な厚さの耐火被覆材を施工する必要があります。耐火性は構造名だけでなく、こうした仕様込みで比較するのが実務的です。

なお、耐火被覆を省略できるケースもありますが、それはJFEスチールの耐火鋼のような高温時の強度を保証した鋼材を用い、耐火設計で性能を確認した場合に限られます。一般的な鉄骨造で無条件に耐火被覆を省けるわけではない点を押さえておきましょう。

断熱性・結露への対策が欠かせない

鉄骨造は熱を伝えやすいため、断熱対策をおろそかにすると弱点が表面化します。アットホームの比較でも、鉄骨造のデメリットとして通気性や断熱性が低いこと、内部結露が発生しやすいことが挙げられています。鉄骨部分が熱橋となって結露を生み、建物の劣化や入居者の不快感につながる恐れがあります。

対策としては、断熱材の適切な施工と熱橋部分の処理、そして計画的な換気が重要です。設計段階からこれらを織り込むことで、快適性を確保しながら建物の長寿命化を図れます。初期費用は増えますが、入居者満足度と資産維持の両面で投資効果が見込めます。

遮音性は構造名でなく性能等級で判断する

鉄骨造は床衝撃音が伝わりやすいといわれますが、遮音性は構造名だけで決まるわけではありません。正確には、性能等級や床・界壁の仕様で比較する必要があります。国土交通省の日本住宅性能表示基準では、軽量床衝撃音はL-60相当以上、空気伝搬音はR-45相当以上といった等級で表示されます。

対策としては、防振ゴム付きの二重床や遮音マットの導入、吸音材の活用などが有効です。物件を選ぶ際や仕様を検討する際は、構造の名称だけで判断せず、こうした遮音性能の等級を確認することが大切です。満足度の高い入居者は長期入居につながり、結果として空室リスクの低減に貢献します。

木造・RC造との違いをコスト軸で比較

構造選びで迷ったら、コストや耐用年数など複数の軸で並列に比較すると判断しやすくなります。まずコスト面では、国税庁の令和6年分の工事費用表の全国平均によると、木造は1㎡あたり170千円、鉄骨造は235千円、RC造は245千円となっています。鉄骨造は「木造より高いがRC造より少し低い」という位置づけになります。

地域差も大きい点に注意が必要です。国税庁の令和6年用表では、東京都は木造230千円、鉄骨造384千円、RC造431千円となっています。都市部では鉄骨造のコストが全国平均より上振れするため、立地に応じて比較することが欠かせません。アパートの相場でも、軽量鉄骨と重量鉄骨では坪単価が異なり、低層か中高層かでコストが変わります。

項目 木造 鉄骨造 RC造
工事費用(全国平均・㎡) 170千円 235千円 245千円
工事費用(東京都・㎡) 230千円 384千円 431千円
法定耐用年数(住宅用) 22年 19〜34年 47年
大空間・大開口
耐火被覆の必要性 必要 不要

このように整理すると、それぞれの構造に得意分野があることがわかります。木造は初期投資を抑えて高い利回りを狙いやすい反面、耐用年数は短めです。RC造は資産保全性や耐火性に優れますが、初期投資が大きくなります。そして鉄骨造は、その中間でコストと性能のバランスを取りたい場合に有力な選択肢となります。

鉄骨造物件を運用する際のポイント

鉄骨造のメリットを最大限に活かすには、運用段階での備えが欠かせません。まず、外壁塗装や屋上防水といった大規模修繕は避けられないため、購入時から長期修繕計画を策定し、計画的に積立金を確保しておきましょう。突発的な出費を避けられるだけでなく、建物の資産価値を維持するうえでも有効です。

また、鋼材は国際市況の影響を受けやすく、修繕やリノベーションの時期に資材価格が高騰している可能性もあります。価格変動を見込んだ余裕のある積立額を設定しておくと安心です。断熱や遮音への投資も、初期費用は増えますが、入居者満足度の向上を通じて長期入居と安定収益に結びつきます。これらは目先のコストではなく、将来の収益を守る投資と捉えるべきです。

まとめ:鉄骨造はバランス型の堅実な選択肢

鉄骨造のメリットを整理すると、エネルギーを吸収する耐震性、工場生産による品質の安定と短工期、比較的長い減価償却期間、大空間を実現しやすい設計自由度、融資期間の確保しやすさ、そしてシロアリへの強さに集約されます。これらは投資収益を安定させ、リスクを軽減するうえで有効に働く要素です。

一方で、耐火被覆や断熱・結露対策、遮音対策にはコストと手間がかかります。さらに、軽量と重量の違いによって工期もコストも空間の自由度も変わるため、低層アパートなのか中高層なのかを意識した検討が欠かせません。これらを踏まえて仕様を選べば、デメリットは十分に補えるケースが多いでしょう。

最も重要なのは、自身の投資目的と保有期間、出口戦略を明確にしたうえで構造を選ぶことです。短期で高利回りを狙うのか、長期で安定収益を目指すのかによって最適解は異なります。鉄骨造は木造とRC造の中間に位置するバランス型の選択肢として、多くの投資家にとって有力な候補となります。なお、最新の制度や税務の詳細は個別事情によって異なるため、各公的機関の公式サイトや専門家に確認しながら、堅実なポートフォリオ構築を目指してください。

参考文献・出典

  • 国税庁 地域別・構造別の工事費用表(1㎡当たり)令和6年分用 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/r6/0023001-073/pdf/02.pdf
  • 国税庁 No.3261 建物の取得費の計算 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3261.htm
  • 減価償却資産の耐用年数等に関する省令 – https://elaws.jp/view/340M50000040015
  • 国土交通省 日本住宅性能表示基準 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001520692.pdf
  • 国土交通省 令和6年度建築基準整備促進事業(F25)耐火構造の構造方法の告示化に係る検討 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001889823.pdf

関連記事

TOP
不動産売買なら青山地所