鉄筋コンクリート造(RC造)の賃貸マンションは、耐久性と資産価値の高さから長期保有に向くと言われます。しかし、初期投資が大きいため「本当に利益が出るのか」「何年で回収できるのか」と不安を抱く初心者も多いはずです。この記事では、RC造物件を例にキャッシュフローを試算し、期待利回りや修繕費、金利変動をどう織り込むかを丁寧に解説します。シミュレーションの手順を学ぶことで、数字に基づいた判断力が養われ、購入後に後悔しない投資戦略が描けるでしょう。
RC造を選ぶ意味と投資ゴールの設定

重要なのは、RC造の特性を理解したうえで投資ゴールを具体化することです。RC造は木造より建物寿命が長く、減価償却期間も47年と長期にわたります。つまり短期売却益ではなく、安定した賃料収入を軸に計画する必要があります。
まず、国土交通省の「住宅着工統計」によると、2025年はRC造共同住宅の着工戸数が前年比4%増と堅調でした。需要が底堅い一方、建設コストは木造の約1.5倍と言われます。投資家は高い初期投資を回収するまでの期間を意識しなければなりません。また、金融機関の融資期間は構造耐用年数に連動するため、RC造なら35年超の長期ローンも組みやすい点がメリットになります。
投資ゴールを「20年で自己資金を回収し、その後は年200万円の手取りを得る」といった形で数値化すると、シミュレーションの前提がぶれにくくなります。目標を先に定めることで、利回りや自己資金割合の調整ポイントが明確になるのです。
基本のキャッシュフローシミュレーション

ポイントは、家賃収入から諸経費と返済額を差し引く「純収益」を毎年算出し、投資効率を可視化することです。ここでは、購入価格1億2,000万円、自己資金2,000万円、借入金1億円、金利1.5%・35年元利均等返済という前提で計算してみます。
年間家賃収入を1,000万円、空室率を5%とすると実質賃料は950万円です。管理委託料5%、固定資産税60万円、火災保険10万円、修繕積立80万円を差し引くと、年間経費は約250万円になります。よって営業純利益(NOI)は700万円です。ローン年間返済額は約420万円なので、税引前キャッシュフローは280万円となります。
この時点で自己資金利回りは14%と良好ですが、将来の大規模修繕を加味せずに判断すると危険です。RC造の場合、外壁補修や屋上防水など一度に数百万円が必要になるため、シミュレーションでは修繕積立を毎年積み増し、それでも不足する分を10年ごとに追加投資として計上します。こうした現実的な設定が、シミュレーションを机上の空論から実践的な指標へ変える鍵になります。
長期修繕費と資産価値の変動を織り込む
実は、RC造の優位性は耐久性だけではありません。国交省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告書」によると、築後30年時点でのRC造の平均修繕費は坪当たり約3.5万円と木造の2倍ですが、同時期の賃料下落率は木造より15ポイント低いのです。つまり修繕に費用はかかるものの、賃料維持力が高い点が長期収益を支えます。
シミュレーションでは、築15年で外壁塗装250万円、築30年で設備更新450万円といった大規模修繕を織り込みます。さらに、国土交通省の「賃貸住宅市場景況調査」で示された地域別平均賃料下落率を参照し、毎年1%ずつ賃料を減額するベースケースを設定します。これにより、投資回収期間が当初20年の想定から22年へ延びる場合もあると分かりますが、逆に金利が1%を切る局面では再び短縮できるシナリオも見えてきます。
言い換えると、長期修繕と賃料変動を同時に反映させることで、最悪ケースでも破綻しないキャッシュフローを確認できるかが重要です。安全域を確保したうえで、将来の出口戦略として売却益を狙うか、相続対策として保持するかを検討しましょう。
シナリオ別リスクシミュレーション
まず押さえておきたいのは、シナリオを複数用意し感度分析を行うことです。同じ物件でも金利上昇や空室率悪化により収益性は大きく変わります。ここでは、①金利上昇シナリオ、②空室率上昇シナリオ、③大規模修繕遅延シナリオを比較します。
金利が2.5%に上昇した場合、年間返済額は約490万円となり、純キャッシュフローは210万円に低下します。自己資金利回りは10.5%へ縮小しますが、依然として黒字を維持しています。一方、空室率が15%に悪化すると実質賃料は850万円に下がり、純キャッシュフローはわずか110万円です。さらに修繕時期を後ろ倒しにすると短期的には資金繰りが楽になりますが、その分建物劣化が進み賃料下落が加速します。
このように、複数の想定でRC造 シミュレーションを行えば、どのリスクが最も収益に影響するかが可視化されます。結果として、融資条件の見直しや、入居促進のための設備投資を優先すべきかといった具体策が浮かび上がるのです。
デジタルツール活用と最新制度のチェック
さらに、2025年はクラウド型不動産シミュレーターが進化し、建物構造や地域相場を入力するだけで10年超の資金計画を自動生成できるようになっています。無料プランでも金利感度グラフや修繕費カーブが確認できるため、試算の精度が格段に向上しました。
また、2025年度は「長期優良住宅化リフォーム推進事業」が継続しており、耐震補強や省エネ改修を伴う工事に対して最大250万円の補助が受けられます。RC造でも一定の要件を満たせば対象になるため、シミュレーションの経費項目で補助金を差し引くと、投資回収期間を1年程度短縮できるケースがあります。補助金の受付は予算上限に達し次第終了するため、事前に国土交通省サイトで最新情報を確認し、早めに申請手続きを進めると良いでしょう。
一方、税制面では2025年度も「不動産取得税の減額措置」や「住宅ローン控除」が継続していますが、いずれも期限付きの特例です。制度改正で条件が変わる可能性があるため、購入前に税理士や行政書士に相談し、シミュレーションの前提を最新の情報で更新することが欠かせません。
まとめ
RC造 シミュレーションを通じて見えてくるのは、初期投資が大きくても長期的には安定収益が得られるという事実です。家賃収入と修繕費、金利変動を織り込んだ複数シナリオを作成し、最悪ケースでもキャッシュフローが赤字にならないかを確かめましょう。そのうえで、補助金や税制優遇を活用すれば、回収期間を短縮しリスクを低減できます。数字を武器に物件選定と融資交渉を進め、安心して長期保有できるポートフォリオを築いてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅着工統計 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省 建築物リフォーム・リニューアル調査報告書 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省 賃貸住宅市場景況調査 – https://www.mlit.go.jp
- 住宅金融支援機構 金利情報 – https://www.flat35.com
- 国土交通省 長期優良住宅化リフォーム推進事業 2025年度概要 – https://www.mlit.go.jp