会社員でも経営者でも、年々増える税負担に頭を抱えている人は多いはずです。特に所得が一定以上になると、実質的な手取りは伸びにくくなります。そんな悩みを解決する一手として注目されているのが「ビル 節税」です。本記事では、ビルを保有・運営することで税額がどのように圧縮できるのかを丁寧に解説します。減価償却や消費税還付、相続対策まで網羅するので、最後まで読めば2025年時点で使える具体的な手順と注意点がわかります。
ビル投資が節税につながる仕組み

まず押さえておきたいのは、ビルへの投資が「経費化」と「資産形成」を同時に実現できる点です。国税庁の統計によると、不動産所得を持つ個人の約60%が赤字計上を利用し所得税を抑えています。それは家賃収入よりも減価償却や借入利息などの経費が上回る構造をつくることで可能になります。つまり、キャッシュフローを確保しながら課税所得を引き下げられるのです。さらにビルは住宅より小規模宅地評価の特例が使えないものの、賃貸用資産としての評価減が効きやすく、長期保有で相続税対策にもなります。
一方で、ビル投資には修繕費や固定資産税などのランニングコストが伴います。しかし、これらの支出も適切に計上すれば税額を下げる要素になります。たとえば外壁補修を一括で支払った場合、資本的支出として複数年にわたり償却するか、修繕費として即時経費化するかで損益が変わります。税務署の見解に沿って区分し、損金算入のタイミングを調整すれば、黒字化を避けつつキャッシュは維持できます。この点こそ、ビル節税の最初の分岐点といえるでしょう。
減価償却でキャッシュを守る方法

重要なのは、減価償却費をどこまで柔軟にコントロールできるかです。鉄筋コンクリート造(RC)の法定耐用年数は47年ですが、中古ビルを購入すれば「残存耐用年数=法定耐用年数-経過年数×0.2」を適用できます。たとえば築30年のRCビルなら残存耐用年数は11年となり、帳簿価格を11年で償却できます。これにより年間の経費計上額が大幅に増え、手元資金を守りつつ税負担を減らす効果が高まります。
また、2025年度税制改正でも認められている「定額法」と「定率法」の選択は依然として可能です。定率法を採用すれば初年度の償却額を厚くでき、短期間で節税メリットを享受できます。ただし償却費が年々減少するため、数年後に黒字化して納税額が跳ね上がるリスクがあります。そこで定額法に切り替える「償却方法の変更届出」を事前に検討すると、長期的な税金の平準化が図れます。税理士とシミュレーションを重ね、家賃の成長シナリオと照らし合わせるのが賢明です。
さらに、内装や設備を区分資産として認定できれば、最短3年の耐用年数で償却できます。空調やエレベーターのリニューアルを行う際は、建物本体と分けて資産計上し、短期で費用化を進めるとキャッシュアウトを節税効果に直結させやすくなります。これらの手法を組み合わせることで、ビル 節税はより戦略的に実現できます。
消費税還付とインボイス制度への対応
ポイントは、課税事業者の選択とインボイス制度をどう活用するかです。ビル購入時の消費税(建物代の10%)は一度支払いますが、課税事業者として確定申告すれば仕入税額控除により還付を受けられます。国税庁の資料では、2024年度の消費税還付額の平均は2,300万円超とされ、ビル投資家の大きな資金源になっています。
しかし、2023年10月に開始したインボイス制度は、テナントからもらう家賃のうち課税売上が95%未満の場合、仕入税額控除が制限される「95%ルール」の適用が難しくなりました。2025年現在も経過措置はありますが、将来的に還付額が減る恐れがあります。そこで、課税売上割合を維持するためにオフィスや店舗テナントを一定比率で入れる、もしくは共用サービスを課税取引に切り替えるなど、実務的な対策が欠かせません。
また、還付後の2年間は「調整対象固定資産」として用途変更や課税売上割合の変動に注意が必要です。用途が変わると還付額の一部を返還するケースがあるからです。結果として、消費税還付は確かに魅力的ですが、インボイス制度下での事後管理を怠ると逆効果になります。税務調査も厳格化しているため、契約書や領収書を電子保存法に沿って保管し、エビデンスを整備しておくことが実務上の必須ポイントです。
相続・贈与対策としてのビル保有
実は、ビルを保有することで相続税評価額を圧縮できる場合があります。国税庁の財産評価基本通達によると、賃貸中の建物は「貸家評価」として自用建物の70%で評価されます。これに加え、土地も「貸家建付地」の評価減が適用できるため、路線価の80%前後まで下がることが多いです。結果として、現金で持つよりも評価額を3〜4割減らす効果が期待できます。
さらに、2025年度も継続されている「相続時精算課税制度」を活用し、親から子へビルを贈与する方法があります。2,500万円までの贈与を非課税にしたうえで、将来の値上がり益を子世代に移転できるため、相続発生時の課税を抑えられます。ただし、選択すると暦年贈与の非課税枠が使えなくなるため、他の資産と合わせて総合的に検討する必要があります。
また、ビルは共有名義にしやすく、持分の分割で相続人間の公平を保てる点もメリットです。しかし共有だと意思決定が遅れるリスクがあるため、遺言信託や法人化での承継を視野に入れると管理がスムーズになります。これらの方法を組み合わせれば、節税のみならず争族回避にもつながるため、事前の準備が欠かせません。
2025年度も使える優遇税制と申告のポイント
まず押さえておきたいのは、「中小企業経営強化税制」が2025年度末まで延長されている点です。この制度では、生産性向上設備に該当する空調や照明の更新費用について、即時償却または10%税額控除を選択できます。法人でビルを保有している場合、キャッシュアウトを抑えつつ節税効果を最大化できる仕組みです。
一方で、固定資産税についても自治体ごとに減免制度が残っています。たとえば東京都では、耐震改修を行ったビルに対し、翌年度から3年間、固定資産税と都市計画税が最大2分の1に軽減されます。2025年度までの申請期限が定められているため、工事スケジュールと申告時期を逆算して進める必要があります。
加えて、法人化による節税も依然として有効です。所得800万円超部分の法人税率は23.2%で頭打ちになる一方、個人の場合は45%まで累進課税が伸びます。役員報酬と不動産所得を分散させれば、社会保険料負担を調整しながら最適な課税構造を作れます。ただし法人は赤字でも住民税均等割がかかるため、収支予測と資金計画を綿密に立てましょう。
最後に、電子帳簿保存法の改正に伴い、2024年以降は電子取引証憑のデータ保存が完全義務化されました。2025年も猶予措置はありません。クラウド会計やストレージサービスを導入し、領収書や請求書を検索できる状態で7年間保管することが求められます。この対応が不十分だと青色申告特別控除55万円の適用が外れる恐れがあるため、ビル 節税を実行するうえで必ず押さえておきましょう。
まとめ
ビル 節税のポイントは、減価償却・消費税還付・相続対策・優遇税制の四つをバランス良く組み合わせることでした。減価償却で所得を圧縮しつつ、インボイス制度を踏まえて消費税還付を管理し、将来の相続まで見据えたプランを立てることで、中長期での税負担は大きく変わります。まずは自分のキャッシュフローと税率を整理し、信頼できる税理士と数値シミュレーションを行うことから始めてください。行動を先延ばしにすると制度改正に間に合わないケースもあるため、今日から準備を進めて賢いビル投資を実現しましょう。
参考文献・出典
- 国税庁 – https://www.nta.go.jp
- 財務省「令和6年度(2024年度)税制改正の解説」 – https://www.mof.go.jp
- 東京都主税局「耐震改修促進税制の概要」 – https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp
- 中小企業庁「中小企業経営強化税制について」 – https://www.chusho.meti.go.jp
- 総務省「電子帳簿保存法一問一答」 – https://www.soumu.go.jp