鉄筋コンクリート造(RC造)の建物は、耐震性と遮音性の高さから投資家の人気を集めています。しかし「木造より高いらしい」「コストが読みにくい」と感じ、第一歩を踏み出せない人も多いのではないでしょうか。本記事では、2025年12月時点での最新データをもとに、RC造 建築費の構造的な特徴から相場、そして費用を抑える現実的な方法までを丁寧に解説します。読み終える頃には、見積書の数字を的確に読み解き、合理的な判断ができるようになるはずです。
RC造が選ばれる理由

重要なのは、RC造特有の性能が長期的な収益性に直結する点です。木造や鉄骨造と比較したときのメリットを押さえることで、建築費の高さをどう評価すべきかが見えてきます。
まずRC造は、鉄筋とコンクリートが一体化することで構造強度を高めています。国土交通省の耐震診断指針によれば、同規模の木造と比べて震度6強相当の揺れに耐える確率が約1.5倍という試算があります。またコンクリートの厚みは遮音効果ももたらし、賃貸住宅なら入居者満足度の向上につながります。これらの性能は長期間維持されるため、大規模修繕の周期が延び、結果として運営コストを抑えやすい点が魅力です。
さらに、火災保険料が鉄骨造や木造より安く設定されるケースが多いことも注目すべきです。保険会社が公表した2025年度料率例では、延べ床面積1,000㎡未満の非木造住宅に対し、木造の7割程度の保険料が提示されています。つまり初期投資は高くても、毎年かかるランニング費用で差を縮めやすいわけです。
一方で、建築費が割高になるのは事実です。大切なのは、建物の寿命や修繕周期まで含めた「トータルコスト」で比較する視点を持つことです。次の章では、その建築費を構成する要素に踏み込みます。
建築費を左右する三つの要素

ポイントは、材料費・人件費・設計条件の三要素が互いに影響し合う点です。単に坪単価だけを見るのではなく、費用を押し上げる因子を切り分けることが重要です。
最初に材料費を考えます。RC造では鉄筋と生コンが主材料ですが、どちらもエネルギー価格に連動します。資源エネルギー庁の2025年11月速報によると、生コン単価は前年同月比6%上昇しました。一方で鉄筋価格は3%下落しており、材料費は品目ごとに変動が異なるため、見積もり時には内訳に注目する必要があります。
次に人件費です。公共工事設計労務単価は2025年4月に全国平均で2.9%上昇しました。RC造は型枠大工や鉄筋工など専門職種が多く、木造より職種間の調整が複雑になります。工期が延びると人工(にんく)も増えるため、工程管理の巧拙がコスト差に表れやすい点を押さえましょう。
最後に設計条件です。階高、スパン(柱間距離)、地下階の有無は構造材の量を大きく変えます。例えば居室階高2.8mと3.0mの差は、一棟5階建て総延べ1,000㎡の物件で鉄筋量を約5%押し上げるという設計事務所の試算があります。つまりプランの初期段階でコスト意識を持つかどうかが、最終的な建築費を左右します。
2025年度の相場と具体的なコスト
まず押さえておきたいのは、RC造の坪単価が全国平均でいくらなのかという目安です。国土交通省「建築着工統計」に基づく住宅専用RC造の2025年上期平均は、首都圏で約115万円/坪、地方中核都市で約95万円/坪でした。これに諸経費や設計料を加えると、実際に支払う総工費は坪あたり120〜140万円に収まるケースが多いのが現状です。
例えば、延べ床面積300㎡(約90坪)の3階建て共同住宅を想定してみましょう。単純計算で総工費は1億800万円から1億2600万円のレンジになります。これに対し木造3階建ての同規模物件は総工費6000万〜7000万円が一般的です。数字だけ見るとRC造は高価ですが、耐用年数は国税庁の法定耐用年数で47年とされ、木造の22年のおよそ2倍です。単年度あたりに均した場合、RC造はむしろコスト効率が良いという見方もできます。
また、ZEH-M(ゼッチ・マンション)仕様のRC造は建築費がさらに3〜5%上昇する傾向があります。しかし経済産業省の試算によれば、一次エネルギー消費量が平均で30%下がり、長期的な光熱費削減効果が期待できます。単なるイニシャルコストではなく、ライフサイクルコストを合算して判断する姿勢が不可欠です。
コストダウンの現実的な方法
実は、大幅な値引き交渉よりも計画段階の工夫が費用を抑える近道です。ここでは多くの施工現場で効果が確認された手法を具体的に紹介します。
最も手軽なのは「スパンを揃える」ことです。柱の間隔を規則正しく配置すると鉄筋と型枠が反復利用でき、廃材ロスが減ります。建設会社の実績値では、同じ延べ床面積でも不整形プランより総工費を3%下げたケースがあります。また、設備シャフトを縦に一直線にまとめることで、配管長さを短縮し材料費と施工時間を同時に節約できます。
さらに、2025年時点で普及が進むBIM(ビム:Building Information Modeling)を活用すると、施工前に干渉チェックができ、現場手戻りのリスクを低減できます。国土交通省の調査では、BIM導入現場はそうでない現場に比べ平均工期が6%短縮し、人件費ベースで2%程度のコスト圧縮が報告されています。
加えて、複数社相見積もりは依然として有効です。ただし価格だけでなく、過去のRC造実績、工程計画の具体性、アフターサービス体制まで比較することが重要です。安さを優先して品質が下がれば、後々の修繕費が跳ね上がり本末転倒になります。
資金調達と補助制度の活用
まず資金調達について触れます。RC造は融資期間が長く取れるため、返済額を賃料収入で賄いやすいという利点があります。都市銀行や地方銀行では、2025年12月時点で最長35年のアパートローンを用意しており、木造向けの最長30年と比べ月々の返済負担を抑えやすい状況です。また、耐震性と耐久性が担保されることで担保評価が高くなる点も金融機関には好材料です。
補助制度については、2025年度も継続する国の支援策を押さえておきましょう。「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は新築RC造賃貸の場合、長寿命型の認定を受ければ1戸あたり上限40万円の補助があります。また、ZEH-M支援事業では、一次エネルギー消費量を基準から20%以上削減するRC造共同住宅に対し、1戸あたり最大100万円が交付されます。いずれも予算上限があるため、着工時期と公募スケジュールを設計段階で確認することが大切です。
さらに地方自治体によっては独自の補助金や固定資産税の減額措置を設けている場合があります。東京都の場合、2025年度の新築賃貸住宅で一定の省エネ基準を満たせば、固定資産税を3年間1/2に軽減する制度が継続予定です。制度は自治体ごとに内容が異なるので、地元の建築士や行政窓口に早めに相談しましょう。
まとめ
RC造 建築費は木造より高いという先入観だけで判断すると、本質的なメリットを見落とします。材料費・人件費・設計条件を細かく分析し、ライフサイクル全体で比較すれば、RC造は耐震性と長寿命によって長期の安定収益を支える選択肢になります。プラン段階でスパンを揃え、BIMを活用し、相見積もりで施工体制を見極めれば、総工費を3〜5%削減することも現実的です。さらに、2025年度の長期優良住宅化やZEH-M支援など公的支援を組み合わせれば、初期投資負担を和らげつつ高性能な建物を実現できます。ぜひこの記事を参考に、数字に基づいた判断で堅実な不動産投資を進めてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 建築着工統計 2025年上期速報 – https://www.mlit.go.jp/statistics/
- 資源エネルギー庁 生コン価格動向 2025年11月速報 – https://www.enecho.meti.go.jp/
- 国土交通省 公共工事設計労務単価 2025年度 – https://www.mlit.go.jp/tec/
- 経済産業省 ZEH支援事業 2025年度概要 – https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/
- 東京都 環境確保条例に基づく税制優遇 2025年度 – https://www.metro.tokyo.lg.jp/