不動産の税金

SRC造 法人化で築く堅実な不動産投資戦略

不動産投資を始めようとすると、建物構造や税金、融資など複数の要素が一度に押し寄せてきます。特に「SRC造 法人化」という言葉を耳にしても、具体的に何が有利なのか分かりにくいと感じる方は多いでしょう。本記事では、2025年12月時点の最新データを基に、SRC造物件の特徴と法人化の効果を丁寧にひも解きます。読了後には、堅実なキャッシュフローを生む仕組みがイメージでき、次の行動を自信を持って決められるはずです。

SRC造とRC造・S造の違いを押さえる

SRC造とRC造・S造の違いを押さえるのイメージ

重要なのは、SRC造(Steel Reinforced Concrete:鉄骨鉄筋コンクリート)の堅牢性と資産価値を正しく理解することです。SRC造は鉄骨と鉄筋コンクリートを組み合わせ、S造(鉄骨造)より耐火性が高く、RC造(鉄筋コンクリート造)より揺れへの粘り強さがあるとされています。

国土交通省の「建築物の構造別延べ床面積統計」では、2024年度以降に建設された10階建て以上の共同住宅の約55%がSRC造です。つまり中高層の都市型レジデンスでは主流となりつつあり、賃貸需要が底堅いエリアで選択肢が豊富と言えます。

一方で、建築コストはRC造より10〜15%高い傾向があります。そのため取得価格が上がりやすいものの、耐用年数が47年と長いので減価償却の期間も延び、毎期の費用計上額が抑えられる点は法人決算に有利に働きます。また、固定資産税の評価は構造ごとに異なるものの、耐震性能が高いことで長期保有時に価格下落が緩やかなデータも示されています。

つまり、SRC造は初期投資が膨らむ半面、長期で見れば維持費と資産価値の両面でリターンを底上げする可能性が高い構造なのです。

法人化がもたらす税務メリットを整理

法人化がもたらす税務メリットを整理のイメージ

まず押さえておきたいのは、法人化により所得税率の急激な上昇を避けられる点です。個人の最高税率は45%ですが、2025年度の中小法人の実効税率はおおむね23%前後で推移しています。家賃収入が年間900万円を超えると、法人化で節税効果が顕著になるケースが増えます。

さらに、法人は役員報酬や退職金、社宅制度などを活用し、経費計上の幅が広がります。SRC造の減価償却を定額法で行うと年間費用化額が小さくなりますが、法人なら賃料管理会社を別に設け、外注費や管理報酬を適切に振り分けることでキャッシュフローを調整できます。

金融機関の評価も見逃せません。日本政策金融公庫や都市銀行は、法人名義での融資枠を個人とは別に設定します。自己資本比率が高まりやすいSRC造を担保に取ることで、追加融資を受けて物件を拡大する戦略が立てやすくなります。

このように税率、経費、融資という三つの軸で法人化は優位性を持ち、SRC造の長寿命と組み合わせると、持続的なポートフォリオ拡大が狙えるのです。

SRC造物件を法人で保有する戦略

ポイントは、長期的に手残りを最大化する設計図を描くことです。購入時はRC造より高い利回りを確保しにくいため、賃料設定と空室対策で差別化します。例えば、都心駅徒歩5分圏の築15年SRC造を取得し、法人名義で内装リニューアルを実施することで家賃を1割程度引き上げる事例が多く見られます。

次に、法人が保有することで相続時の評価額を圧縮できる点も魅力です。国税庁の財産評価基本通達によれば、賃貸用不動産の路線価評価は借家権割合や借地権割合を乗じるため、持株会社方式で株式に置き換えると課税対象がさらに下がる可能性があります。

キャッシュフロー計算では、家賃収入からローン返済・管理費・修繕積立金を差し引いた「税引前CF」を常に黒字で維持するのが基本です。SRC造の大規模修繕は築25〜30年で1回目が来るケースが多いため、年間賃料の8〜10%を修繕積立に回すシミュレーションを行うと安心です。

言い換えると「減価償却で赤字、キャッシュは黒字」という法人決算を設計することで、節税しつつ内部留保を厚くする運用が実現します。

2025年度の融資環境と補助制度の最新動向

実は、金利環境は小幅な上昇局面に入っています。日本銀行の2025年9月短観によると、都市銀行の平均貸出金利は1.15%と前年より0.1ポイント上がりました。ただし、SRC造は資産性が高いと評価されるため、金利引き下げ交渉の余地があります。複数行に持ち込むだけで0.2ポイント差が付く例も珍しくありません。

補助制度では、2025年度「住宅エコリフォーム推進事業」が引き続き利用可能です。省エネ性能を高める改修に対して最大120万円の補助が出るため、SRC造の共用部LED化や高効率給湯器設置でコスト削減と物件価値向上を同時に狙えます。なお、申請期限は2026年2月末までと発表されています。

さらに、住宅金融支援機構の「フラット35リノベ」金利引下げ幅が0.5%に維持されており、法人名義での適用はできないものの、個人保証を付けた関連会社スキームで利用する例が増えています。制度ごとに要件が細かいので、最新ガイドラインを確認したうえで専門家に相談するとよいでしょう。

このように金利上昇リスクをヘッジしながら補助金を活用すると、SRC造の高コスト問題を緩和し、法人収益を安定化できます。

長期運用を見据えたリスク管理

まず、空室率と修繕費の二大リスクをコントロールする仕組みづくりが欠かせません。人口動態統計(総務省)によれば、都心3区の単身世帯は2030年まで年率1.2%で増加見込みですが、郊外部は減少傾向が続きます。立地選定で誤るとSRC造でも空室が長期化します。

修繕費については、建築後20年時点で外壁タイルと給水管を同時更新すると、延床1000㎡規模で約2,000万円かかるケースが多いと住宅金融支援機構の資料にあります。法人会計上、長期修繕計画を資金繰り表に組み込み、赤字期を作らないよう前倒しで積み立てる姿勢が重要です。

また、出口戦略としてリートやファンドへの売却を視野に入れると、収益性の高い法人決算書が買手の評価を底上げします。耐用年数が長いSRC造は築30年でも金融機関の融資対象になりやすいため、売却価格がRC造より10%高く成立した事例も報告されています。

結局のところ、リスクを数値化し、法人のガバナンスでPDCAを回す体制を整えれば、SRC造の強靭さと法人化の節税力を最大限に引き出せるのです。

まとめ

ここまで、SRC造物件を法人で保有する意義を耐久性・税務・融資・補助金・リスク管理の五つの視点で見てきました。初期費用は大きくても、長期で見れば減価償却と資産価値の両面でリターンが安定し、法人化による税率低減や経費計上の柔軟さがキャッシュを守ります。2025年度も利用可能なエコ改修補助や低金利融資を組み合わせることで収益性はさらに向上します。まずは自分の投資目的と資金計画を整理し、信頼できる専門家とともにシミュレーションを重ねることが、堅実な不動産運用への第一歩となるでしょう。

参考文献・出典

  • 国土交通省 建築着工統計調査 https://www.mlit.go.jp/toukeijouhou/
  • 総務省 人口推計 https://www.stat.go.jp/
  • 国税庁 財産評価基本通達 https://www.nta.go.jp/
  • 日本銀行 短観 https://www.boj.or.jp/
  • 住宅金融支援機構 フラット35リノベ https://www.jhf.go.jp/

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