不動産投資を検討していると、「SRC造のマンションは高い」と耳にすることが多いものです。しかし、なぜ高いのか、実際にどの程度の建築費がかかり、投資家にどんなメリットをもたらすのかは意外と知られていません。本記事では最新の公的データを交えながら、SRC造 建築費の基本から費用を抑えるコツまでを丁寧に解説します。読み終えたとき、あなたは物件選びの判断軸を一つ増やせるはずです。ぜひ最後までお付き合いください。
SRC造とは何かを正しく理解する

まず押さえておきたいのは、SRC造(Steel Reinforced Concrete:鉄骨鉄筋コンクリート造)の構造的特徴です。鉄骨の骨組みに鉄筋コンクリートを巻き付けるため、耐震性・耐火性が高く、大規模なマンションやオフィスビルに多く採用されています。国土交通省の「建築着工統計調査令和6年度版」によると、全国の15階建て以上の集合住宅の約6割がSRC造です。
結論として、SRC造は建物の長寿命化と資産価値の維持に優れる一方、部材が多層になる分だけ建築費が増える傾向にあります。投資家はこの両面を理解し、表面利回りだけでなく長期収支で判断する必要があります。
さらに、SRC造は柱や梁を細くできるため、同じ床面積でも居室を広く取れる利点があります。入居者満足度が高まり、結果として空室期間を短縮できる可能性があります。この点も長期的な投資収益を左右する大切な要素です。
建築費の内訳と最新相場

重要なのは、SRC造 建築費が何で構成され、どこにコストが集中しているかを把握することです。一般社団法人建設物価調査会「2025年度 建築コスト情報」によれば、SRC造の標準的な工事単価は坪当たり約110万〜130万円です。これはRC造(鉄筋コンクリート造)の約1.2倍、S造(鉄骨造)の約1.4倍に相当します。
建築費の内訳をみると、材料費が全体の55%前後、労務費が25%、残りが諸経費という構成です。材料費の大半を占めるのが鉄骨と高強度コンクリートで、2023年以降の資源価格上昇がそのまま反映されています。一方、労務費は職人不足による賃金高騰で年率4%程度の上昇が続いており、短期的な価格下落は見込みにくい状況です。
つまり、SRC造 建築費を理解するうえで鍵になるのは、材料市況と人件費の二つのトレンドを常にチェックすることです。特に鉄骨単価は為替と国際市況の影響を受けやすいため、着工時期の見極めがコスト管理に直結します。
最後に、諸経費には設計監理料や地盤調査費、各種保険料が含まれます。これらは交渉余地が少ないと思われがちですが、複数社から見積りを取ることで平均5%程度の削減が可能です。細部の積み上げが総コストを大きく左右します。
RC造・S造と比較したコストと性能
実は、建築費の数字だけを比較するとSRC造は割高に見えます。しかし、耐用年数や修繕費を加味すると総コストが逆転するケースも少なくありません。国税庁の法定耐用年数では、SRC造が47年に対しRC造は47年、S造は34年です。この数字だけでは同等に思えますが、実際の解体期平均はSRC造が60年以上、RC造が50年弱、S造が40年前後という調査結果が国土技術政策総合研究所により報告されています。
ポイントは、長期間にわたる大規模修繕費の総額です。SRC造は外壁のタイル剥落や構造クラックが少なく、12年周期の大規模修繕でも足場や防水工事のコストがRC造比で1割ほど低くなることがあります。さらに、耐震改修の必要度が下がるため、将来的な追加投資リスクを抑制できます。
一方で、建築時の資金調達が課題になるケースもあります。金融機関は建物の耐用年数を融資期間設定の基準にするため、SRC造のほうが長期融資を受けやすいメリットがあります。しかし、建築費が高いため自己資金比率をどの程度に設定するかが焦点になります。物件の事業計画書に長期修繕計画を盛り込み、将来キャッシュフローを明示することで融資条件が改善されることが多いです。
総合的に考えると、利回りを計算する際には単年の家賃収入だけでなく、耐用年数延伸による解体回避コストや修繕費の削減効果も織り込むことが肝要です。単純比較で割高と判断するのは早計と言えるでしょう。
建築費を抑えるための具体策
まず押さえておきたいのは、材料調達戦略です。建設会社とスケルトン(構造躯体)だけの一括発注ではなく、鉄骨加工会社やコンクリート業者との直接契約を組み合わせることで中間マージンを削減できます。建設コンサルタントによると、部材ごとの分離発注で3〜7%のコスト削減が期待できるとのことです。
さらに、設計段階でモジュール(基準寸法)を統一し、同じ型枠や鉄骨パネルを再利用できるようにする方法があります。日本建築学会の実験では、標準化率を80%に高めると型枠工事費が平均15%低減しました。設計者との初期打ち合わせで標準化を明確に指示することがポイントになります。
労務費の抑制には工程短縮が効果的です。BIM(Building Information Modeling)を活用した事前シミュレーションで現場手戻りを減らせば、工期が1か月短縮され、現場管理費と人件費が合計で約2000万円圧縮された事例があります。中小規模の物件でもBIM外注費は数百万円で済むため、投資対効果は高いと言えます。
最後に、発注方式の選択も忘れてはいけません。日本ではまだ少数派ですが、CM(コンストラクション・マネジメント)方式を採用し、施主がマネジメント会社を通じて複数の専門工事業者を統括する手法があります。透明性が高く、出来高精算になるため、予算超過リスクを抑えながら品質を担保できます。
投資家目線で見る利回り計算と注意点
基本的に、SRC造 建築費が高いからといって利回りが必ず低くなるわけではありません。重要なのは、建物寿命と空室率、修繕費を加味したネット利回りです。たとえば建築費が坪120万円、家賃が坪月1万円の場合、表面利回りは10%前後になります。ここに耐用年数60年、年間修繕費率1.0%を織り込むとネット利回りは約7.5%です。一方、RC造で建築費坪100万円、同条件ならネット利回りは約7.0%となり、SRC造が僅かに優位という試算になります。
しかし、投資判断では資金回収期間も重要です。SRC造の建築費上昇が続く局面では、初期投資回収までの年数が2〜3年延びることがあります。キャッシュフローに余裕を持たせ、ローン返済比率を年間家賃収入の45%以下に設定するなどの安全策が求められます。
また、地方都市でSRC造を選ぶ場合は需給バランスにも注意が必要です。総務省「住民基本台帳人口移動報告2024年版」によると、人口減少が続く地域では築年数より賃料水準が重視される傾向があります。そのため、高規格なSRC造でも賃料プレミアムが得られず、想定利回りを下回るリスクがあります。市場調査を徹底し、賃料査定を複数社に依頼することが欠かせません。
最後に、2025年度の固定資産税減額特例は新築住宅の床面積要件が50㎡以上となっています。SRC造の場合、共用部が割高なため専有面積が狭くならないよう設計段階でチェックしましょう。税制優遇を確実に享受することで、実質利回りをさらに押し上げることができます。
まとめ
本記事では、SRC造 建築費の構成要素と最新相場、RC造・S造との比較、そしてコストを抑える具体策までを解説しました。ポイントは材料費と労務費の動向を注視し、設計の標準化や分離発注、BIM活用でコストを最小化することです。さらに、耐用年数や修繕費を考慮したネット利回りで投資判断を行えば、SRC造の初期コストを上回るリターンが期待できます。建築費高騰の時代だからこそ、正確な情報と戦略で一歩先を行く投資を実現してください。
参考文献・出典
- 国土交通省 建築着工統計調査 令和6年度版 – https://www.mlit.go.jp
- 一般社団法人建設物価調査会 建築コスト情報2025年度版 – https://www.kensetu-bukka.or.jp
- 国土技術政策総合研究所 建物寿命に関する研究報告書2024 – https://www.nilim.go.jp
- 総務省 住民基本台帳人口移動報告2024年版 – https://www.soumu.go.jp
- 日本建築学会 BIM活用による工期短縮効果の検証2024 – https://www.aij.or.jp