マンションを建てて賃貸経営を始めたいと考えているものの、「実際にいくらかかり、何年で元が取れるのか分からない」と悩んでいませんか。建築費は近年大きく上昇しており、資材高騰や人件費の増加が投資計画に直接影響しています。国土交通省「建設工事費デフレーター」によれば、集合住宅(RC造)の建築費は2015年から2025年にかけて約3割上昇しており、指標によっては4割超上昇したとする集計もあります。つまり、いまマンションを建てる場合、数年前より高いコストを前提に計画を組む必要があります。
本記事では、マンションを建てる金額の内訳から融資条件、投資回収期間の考え方、そして回収を早める工夫までを順を追って解説します。公的機関のデータを織り交ぜながら、初めての方にも分かりやすくお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
マンションを建てる金額の内訳と坪単価相場
マンション投資を始める前に、まず費用の全体像を把握することが欠かせません。マンションを建てる金額は、建物本体を造る本体工事費、外構や設備引き込みなどの付帯工事費、そして設計料や各種税金などの諸費用という3つで構成されます。さらに土地を持っていない場合は、土地取得費が最大の項目となります。これらを総合的に試算しなければ、正確な資金計画は立てられません。
RC造の坪単価はいくらか
本体工事費とは、建物そのものを建てるための費用を指します。鉄筋コンクリート造、いわゆるRC造のマンションの相場は、統計によって幅があります。2025年の住宅着工統計をもとにした集計では、共同住宅の全国平均坪単価はS造で約114万円、RC造で約116万円とされており、ネット上でよく見かける「RCは120〜150万円」という数字より低い値も存在します。
一方、令和7年度に着工した賃貸マンションの建築工事費で見ると、RC造は全国平均で1平方メートルあたり36.2万円、坪換算で約120万円となります。ここで注目すべきは地域差です。東京都では1平方メートルあたり45.6万円、坪換算で約151万円に達し、全国平均をかなり上回ります。都心で建てる場合は、この地域差を前提に予算を組むことが重要です。
総額感をつかむために20戸規模のRC造賃貸マンションを例にすると、1戸あたりの工事費予定額は全国平均で約1,654万円、東京都で約2,043万円です。これを20戸分に換算すると、全国平均で約3.3億円、東京都では約4.1億円という規模になります。マンションを建てる金額は、まさに数億円単位の投資になると理解しておきましょう。
付帯工事費・諸費用・土地代も忘れずに
本体工事費のほかに、外構工事や駐車場整備、給排水設備の引き込みといった付帯工事費が発生します。これらは一般的に本体工事費の15〜20%程度を見込んでおく必要があります。さらに設計監理料、建築確認申請費用、登記費用、不動産取得税といった諸費用も加わり、これらは総事業費の数%を占めます。個別の金額は物件規模や地域によって異なるため、複数の建設会社から見積もりを取り、実額で確認することをおすすめします。
土地をすでに所有しているなら土地代はかかりませんが、新たに購入する場合は土地取得費が最大の費用項目になります。都心部では坪単価が非常に高いエリアも多く、総事業費の半分以上が土地代になることも珍しくありません。加えて、用途地域や容積率、前面道路の幅員によって建てられる延床面積の上限が変わるため、同じ土地でも収益力は大きく異なります。物件計画の初期段階で、建築可能な規模を必ず確認しておきましょう。
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マンション建築に使える融資と金利の目安
数億円規模の投資を自己資金だけでまかなうのは現実的ではなく、多くの場合は金融機関からの融資を活用します。融資条件によって毎月の返済額が変わり、回収期間にも直結するため、金利や借入期間の把握は欠かせません。ここでは公表されている主要な融資商品の条件を見ていきます。
民間金融機関の投資用ローン
民間銀行の不動産投資ローンは、金融機関ごとに条件が異なります。オリックス銀行の不動産投資ローンは、2026年8月3日時点で店頭表示の変動金利が年2.425%から年4.425%のレンジで示されています。資金使途については、同行の不動産投資ローンはアパート・マンション・一戸建てのいずれも購入・建築・建築用地の購入・借りかえに対応しており、マンション新築資金としても利用できます。ただし融資エリアや物件条件などの詳細は公式サイトで確認してください。
同行の個人向けローンは、借入時に20歳以上60歳未満で最終返済時85歳未満、原則同一勤務先に3年以上勤務、前年度の税込み年収500万円以上という条件が原則です。借入時のコスト面では、取扱事務手数料が借入金の2.20%以内で、団体信用生命保険料と保証料は不要とされています。
スルガ銀行の投資用不動産ローンは、アパートや賃貸マンション、商業ビルなどの新築・購入・借換に対応し、融資期間は1年以上35年以内です。ただし金利は公式資料では非公開で、窓口での確認が必要となります。団信に加入する場合、借入時20歳以上70歳未満かつ最終返済時85歳未満が条件で、原則として保証人は不要です。法人向けでは期間1〜35年、手数料0.55%で、原則として法人代表者の連帯保証が求められます。
これらのほか、L&Fアセットファイナンスのアパートローンは、2026年4月時点で団信なし3.55%〜4.55%、団信あり3.95%〜4.95%、返済期間6〜40年、融資額3億円以内、手数料1.65%が公開されています。なお首都圏の地方銀行では、独自調査で判明したところによると、変動金利で1%台後半から3%台前半まで幅があり、条件は借り手の属性や物件によって変動します。実際の金利は各金融機関へ直接確認することが確実です。
公的な固定金利という選択肢
安定した固定金利を重視するなら、住宅金融支援機構の賃貸住宅融資が選択肢になります。この融資は35年固定と15年固定の2タイプを持つ公的な固定金利商品で、2026年8月申込分の金利は2026年10月下旬に決定される仕組みです。なお、子育て世帯向け省エネ賃貸住宅建設融資は2026年8月現在、新規申込の受付を停止しており、再開時期は未定です。過去に示されていた参考金利は35年固定3.94%、15年固定3.19%程度でしたが、現行の金利水準は機構の公式サイトで最新情報をご確認ください。返済期間は最長40年に及びます。
この融資は建設費や除却工事費、諸経費を対象としますが、子育て省エネ型やサービス付き高齢者向け賃貸住宅では土地取得費への融資を原則停止しています。そのため土地取得費に相当する額以上の手持ち資金が求められ、自己資金の負担が重くなる点には注意が必要です。融資手数料や繰上返済手数料が不要である一方、敷地と建物に第1順位の抵当権を設定する必要があります。
投資回収期間を測る3つの指標
回収期間を正しく見積もるには、利回りだけでなくキャッシュフローや投資効率まで含めて多角的に捉えることが重要です。一見魅力的に見える物件でも、実際の回収年数が想定より延びるケースは少なくありません。まずは基本となる指標を整理しましょう。
表面利回りと実質利回りの違い
建築費の回収年数をざっくり見るなら、まず表面利回りを起点にします。表面利回りは、年間賃料収入を購入価格で割ったシンプルな指標です。ただし、この数字だけで判断するのは危険です。実際には管理費や固定資産税、修繕積立金といった経費がかかるため、これらを差し引いた実質利回りは表面よりも大きく下がります。
たとえば表面利回りが5%でも、経費を反映した実質利回りが2.5%台まで落ちれば、回収年数はおよそ倍に延びてしまいます。この差を把握しておかなければ、投資計画を大きく誤算する恐れがあります。物件を比較するときは、必ず経費を織り込んだ実質ベースで検討してください。
キャッシュフローで見る現実的な回収
キャッシュフローとは、家賃収入からローン返済と経費を引いた手残り金額を指します。毎月いくら残るかを把握することで、より現実的な回収期間が見えてきます。仮に月々の返済と管理費・修繕積立金を差し引いた結果、家賃収入があっても手元に残るのはその一部にとどまることが多いのが実態です。
この手残りをもとに自己資金を回収する年数を計算すると、表面利回りから単純に求めた年数よりも長くなりがちです。融資の金利や返済期間が手残りを左右するため、前章で触れた金利水準を織り込んで試算することが欠かせません。
長期シミュレーションが不可欠
投資回収年数は、単純な利回りだけでは判断できません。専門家が指摘するように、自己資金の回収年数を知るには、長期的な事業収支を試算する投資シミュレーションの作成が不可欠です。購入時点の価格や利回りだけでなく、金利、空室、修繕、税引後のキャッシュフローまで組み込むことで、初めて現実的な回収像が描けます。楽観と悲観の両シナリオを用意し、最悪ケースでも耐えられるかを事前に確認することが、失敗を防ぐポイントです。
家賃下落と空室率が回収を左右する
マンション投資で見落としがちなのが、家賃収入は年々一定ではないという現実です。築年数が進むほど賃料は下落し、新築時の家賃で利回りを固定すると、後年になるほど回収期間が延びる原因になります。この点を初期のシミュレーションに織り込んでおくことが重要です。
空室率もエリアによって大きく異なります。都心の需要が厚いエリアでは空室が発生しにくい一方、郊外や人口減少地域では空室リスクが高まります。空室が1カ月発生すると年間家賃のおよそ8%を失う計算になり、利回りへ直接的な打撃を与えます。物件選びの段階で、そのエリアの家賃相場や人口動態、駅からの距離や生活利便性を調査しておくことが、回収期間の短縮につながります。
空室リスクを軽減する手段としてサブリース契約を検討する方もいます。これは不動産会社が一括で借り上げ、オーナーに固定家賃を支払う仕組みです。安定収入が得られるように見えますが、契約更新時の家賃減額や中途解約の条件が想定以上の負担になる場合もあります。契約書の細部まで確認し、家賃下落と空室を保守的に見積もったうえで、10年後・20年後のキャッシュフローも検証しておきましょう。
節税と制度活用で回収を早める
税制を上手に組み合わせることで、キャッシュフローを押し上げて回収期間を短縮できます。代表的な手法が減価償却の活用と損益通算です。減価償却とは、建物価格を耐用年数に応じて毎年費用として計上できる仕組みで、実際にお金が出ていくわけではないため、帳簿上は費用でも手元にキャッシュが残るという特徴があります。
損益通算とは、不動産所得が赤字になった場合に、給与所得など他の所得と相殺できる制度です。減価償却費を計上して帳簿上の赤字を作り、本業の所得税を軽減する手法は多くの投資家が活用しています。ただし、これらの税務上の取り扱いは個別事情によって異なり、適用要件や耐用年数の判定は複雑です。修繕費の見積書や領収書などの証拠書類を保管し、正確な申告を心がけることが不可欠で、最新の取り扱いは国税庁の公式サイトや税理士に確認してください。
省エネ性能を高める改修や設備導入は、光熱費の削減と入居者満足度の向上を通じて、家賃の維持や空室抑制に役立ちます。省エネ関連の補助制度は年度ごとに内容や締め切りが変わるため、活用を検討する場合は各公的機関の公式サイトで最新の公募情報を確認し、工事スケジュールを逆算して準備を進めることが肝心です。
売却も視野に入れた出口戦略
回収期間だけを追うのではなく、将来の売却まで含めた出口戦略を設計しておくことで、想定外の損失を防げます。ローン返済が進んだ段階で物件を売却し、売却益を得られれば、実質的な回収期間を机上計算より短縮できる可能性があります。
もっとも、将来の不動産市場を正確に予測することは誰にもできません。金利上昇や景気後退、人口減少といった外部要因によって資産価値が下がるリスクも存在します。そのため、賃料収入だけでローン返済が可能な安全圏を確保したうえで、売却益はあくまでプラスアルファと位置づけるのが賢明です。
あわせて、地震や水害といった災害リスクへの備えも欠かせません。地震保険や水災補償を適切に付帯しておけば、大規模修繕が必要になった際の出費や資産価値の毀損を軽減できます。物件選定の段階でハザードマップを確認し、浸水リスクを評価しておくことも、長期的な投資成功への重要なステップです。
まとめ
マンションを建てる金額は、本体工事費に付帯工事費や諸費用、さらに土地代を加えると数億円規模になることも珍しくありません。RC造の坪単価は全国平均で約116〜120万円、東京都では約151万円と地域差が大きく、20戸規模なら全国平均で約3.3億円、東京都で約4.1億円という総額感になります。まずは建築費だけでなく土地と諸経費まで含めた総事業費を正確に把握することが出発点です。
回収期間は物件や融資条件、税効果によって大きく変わります。表面利回りだけで判断せず、金利や空室、修繕、税引後のキャッシュフローまで織り込んだ長期シミュレーションを、楽観と悲観の両シナリオで組み立ててみてください。融資条件や税制の詳細は各金融機関や公的機関の公式サイトで最新情報を確認し、現実的な計画を立てることが、マンション投資で成功するための最も確実な方法です。
参考文献・出典
- 国土交通省「建築費の推移」 – https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001903259.pdf
- オリックス銀行「不動産投資ローン」 – https://www.orixbank.co.jp/personal/property/
- スルガ銀行「投資用不動産ローン商品概要説明書」 – https://www.surugabank.co.jp/surugabank/prod/pdf/real_estate.pdf
- 住宅金融支援機構「賃貸住宅融資金利」 – https://www.jhf.go.jp/kinri/chintai.html
- 住宅金融支援機構「賃貸住宅を建設する場合 令和8年8月の参考金利」 – https://www.jhf.go.jp/files/topics/5378_ext_99_0.pdf