年収が1500万円を超えると、銀行からの融資枠が広がり税負担も意識し始めるため、不動産投資に興味を持つ方が急増します。しかし高収入ゆえの油断が大きな損失を招く事例も少なくありません。本記事では「年収1500万以上 不動産投資 リスク」を軸に、具体的な資金計画、税制、物件選び、そして将来にわたるリスク管理の方法を体系的に解説します。読み終えるころには、自分の収支と目標に合った投資戦略を設計できるようになるでしょう。
高収入層が直面する意外な落とし穴

まず押さえておきたいのは、高収入だからこそ起こりやすい判断ミスです。金融機関は属性の良さを評価し、高額融資を提案してきますが、それに甘えて返済比率を高めすぎると後が苦しくなります。
実は、年収1500万円クラスの方は可処分所得が高い半面、生活水準も並行して上がりやすい傾向があります。仮に年収の40%超を年間返済額に回すと、教育費やライフイベントと重なった際にキャッシュフローが一気に逼迫します。また、複数物件を同時取得すると管理負担が急増し、空室や修繕の対応が後手に回りがちです。
高収入層ほど節税メリットに注目しがちですが、減価償却による赤字計上で税が抑えられるのは長くても十数年です。減価償却が切れた後の税負担を見落とすと、思わぬ税額に驚くケースが後を絶ちません。つまり、短期的な節税だけでなく、保有期間を通じた総合的な収支設計が欠かせないのです。
キャッシュフローと税効果を正しく読む

重要なのは、表面利回りではなく手取りのキャッシュフローを把握することです。国土交通省の「不動産投資市場動向調査2025」によると、個人投資家の失敗理由の上位に「経費計上の見誤り」が挙げられています。
まず家賃収入から管理費、修繕積立、固定資産税、長期修繕費の積立分を差し引いた後の純収益を算出します。そのうえで、減価償却による税効果を加味し、実質的な手取り額を試算しましょう。法人化している場合には、役員報酬と社宅制度を組み合わせることで節税余地が生まれますが、個人名義と比較して登記・維持コストが増える点を見逃せません。
2025年度も継続している「住宅借入金等特別控除」は自宅購入向け制度であり、賃貸用物件には使えません。一方、青色申告特別控除65万円は個人でも活用でき、複式簿記で帳簿を備えるだけで手取りを押し上げられます。言い換えると、制度選択の違いが長期収益に直結するため、税理士との綿密な相談が必須です。
資金調達の選択肢と金利上昇リスク
ポイントは、資金調達を融資一本に頼らず多様化することです。日本銀行のマイナス金利政策は2024年に緩和方向へ動き、2025年には長期固定金利が1%台後半まで上昇しています。
変動金利は依然として低水準ですが、金利が0.5%上がるだけで30年ローン総支払額が数百万円増えるのは避けられません。そのため、総借入額の一部を固定金利でヘッジし、残りを変動金利で柔軟に返済するミックス戦略が有効です。さらに、物件の一部を自己資金で購入することで元本圧縮を図れば、金利上昇局面でも返済比率を抑えられます。
一般的に、金融機関は年収1500万円層に対し総収入の35〜40%まで融資枠を提示します。しかし、返済比率は25%以下に留めると、空室率15%のストレスシナリオでもキャッシュフローが黒字で推移しやすいです。つまり、融資枠いっぱいに借りるのではなく、将来の金利上昇と家賃下落を想定した安全余力を確保する姿勢が欠かせません。
物件選びとエリア分散の考え方
まず押さえておきたいのは、価格上昇余地よりも収益安定性を重視する視点です。総務省の2025年推計では、今後10年間の人口減少率が3%未満にとどまる政令指定都市は東京23区、横浜市、福岡市などに限られます。
都心のワンルームは利回りが低めですが、長期空室率が5%前後と安定しています。一方、地方都市の築浅アパートは表面利回りが7%を超えることもありますが、家賃下落が加速すると実質利回りが急低下します。たとえば、家賃が月1万円下がると年間12万円の減収となり、利回りが0.5%近く下がることも珍しくありません。
複数物件を保有するなら、エリアと構造の分散が効果的です。RC造(鉄筋コンクリート)と木造を組み合わせれば、修繕周期を平準化でき、突然の大規模修繕リスクを回避しやすくなります。また、都心と郊外をバランスよく配置することで、どちらか一方の市場環境が悪化してもポートフォリオ全体の収益が安定します。
リスク管理を仕組み化する方法
実は、リスク管理を人の判断だけに頼ると継続性が担保できません。そこで、定量的な指標と運用ルールをあらかじめ設定しておくことが重要です。
たとえば、表面利回りではなく「ローン返済後キャッシュフローが月5万円以上」という取得基準を設けると、物件比較が容易になります。さらに、空室率が10%を超えたら賃料改定やリフォームを検討するといったトリガーを設定すれば、感情に流されず素早い施策実行が可能です。
保険加入も欠かせません。2025年度の家賃保証保険は家賃の3〜5%の保険料で、最大6か月分の滞納をカバーします。火災・地震保険は築年数によって料率が変わるため、更新時に必ず再見積もりを行いましょう。最後に、定期的なポートフォリオ点検を年1回実施し、売却や借換えの意思決定をシステム化することで、長期的な資産価値を守れます。
まとめ
本記事では、年収1500万円以上の方が陥りやすい投資過信を戒めながら、キャッシュフロー計算、金利対策、物件選定、リスク管理の仕組み化までを解説しました。高収入だからこそレバレッジを効かせやすい一方で、負債が膨らむスピードも速い点は忘れないでください。まずは返済比率25%以下の安全圏を維持し、空室や金利上昇を織り込んだシミュレーションを作成しましょう。そのうえで、エリア分散と保険活用による多層的リスクヘッジを徹底すれば、将来のライフプランに合わせた堅実な資産形成が実現できます。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産投資市場動向調査2025 – https://www.mlit.go.jp
- 日本銀行 金融政策決定会合議事要旨2025 – https://www.boj.or.jp
- 総務省 人口推計2025 – https://www.stat.go.jp
- 国税庁 青色申告特別控除の手引き2025 – https://www.nta.go.jp
- 消費者庁 家賃保証保険に関するガイドライン2025 – https://www.caa.go.jp