年収が700万円前後になると、貯蓄も増え将来の資産形成を真剣に考え始める方が多いものです。しかし「会社員でも不動産投資は本当にできるのか」「どんな物件を選べば失敗しないのか」と疑問は尽きません。本記事では年収700万円層が取り組みやすい投資スタイルを中心に、物件選びのコツ、銀行融資のポイント、最新の税制優遇まで丁寧に解説します。読み終えるころには、具体的な一歩を踏み出すイメージが描けるはずです。
年収700万円層が目指すべき投資スタイル

まず押さえておきたいのは、年収700万円という水準が金融機関にとって「安定した給与所得者」と評価されやすい点です。つまり適切な計画を立てれば、自己資金と融資を組み合わせてレバレッジを効かせやすいレンジにいます。
最初の段階では、ローン返済比率を年間手取りの35%以内に抑えることが安全圏といえます。例えば手取り550万円なら、年間返済は190万円程度が上限です。これを目安に家賃収入を逆算し、月々のキャッシュフローが赤字にならない物件を選ぶ発想が重要です。
多忙な会社員にとって、運営の手間を抑えられる区分マンションや築浅一棟アパートが現実的な選択肢になります。区分は少額から始めやすく流動性も高い一方、管理組合の決定に左右されやすい点に注意が必要です。一棟アパートは修繕や空室リスクを自分でコントロールできる半面、初期投資が大きくなります。
実は副収入が増えると急に節税メリットが大きくなります。所得税率が23%を超えるケースも珍しくなく、減価償却や借入金利の経費化が家計のキャッシュフローに与える効果は想像以上です。毎年三月の確定申告を通じて、税引き後の手残りを必ず検証しましょう。
物件タイプ別に見るメリットと注意点

ポイントは、自分のライフスタイルと投資目標に合う物件タイプを見極めることです。ここでは区分マンション、木造アパート、RC一棟マンションの三つに絞って特徴を整理します。
まず区分マンションは都心部の駅近を選べば空室率が低く、月5〜6万円の自己資金でも購入可能な物件が見つかります。不動産経済研究所の2025年上期データによると、都心区分の平均空室期間は1.2カ月と非常に短いです。ただし管理費・修繕積立金が家賃の15%前後を占めるため、利回りは表面で4%台にとどまりがちです。
一方、木造アパートは郊外でも駅徒歩10分圏内なら需要が底堅く、表面利回り8%前後が狙えます。国土交通省の「土地白書2025」によれば、人口減少エリアでも単身世帯は増えており、戸数の少ないアパートは需給バランスを保ちやすいとされています。ただし木造は修繕周期が短く、屋根や外壁の大規模修繕が10〜15年ごとに必要になる点が課題です。
RC造一棟マンションは耐用年数が長く、金融機関からの評価も高いのが魅力です。物件価格が1億円を超えることも珍しくなく、年収700万円層が挑戦する場合は共同投資や法人設立での購入が現実的な道筋となります。維持費が高額になるため、長期の空室率や金利上昇への耐性をシミュレーションし、慎重に判断しましょう。
融資を引き出すコツと資金計画の立て方
重要なのは、金融機関ごとの審査基準を理解し自分に合う商品を選ぶことです。会社員であれば勤務先の規模や勤続年数が評価され、年収700万円前後なら借入限度額は年収の8〜10倍が目安といわれます。
まず自己資金を物件価格の20%用意することを推奨します。日本政策金融公庫の調査では、自己資金比率が20%を超える案件は金利が0.3%低くなる傾向があります。金利が0.5%下がれば、5000万円を30年で借りた場合の総返済額は約250万円節約できる計算です。
また、返済方法は元利均等が一般的ですが、手残りを厚くしたい場合は元金据置期間を交渉する手もあります。最長5年の据置が認められれば、開業直後の空室リスクに備えやすくなるでしょう。ただし据置終了後は返済額が跳ね上がるため、キャッシュフローに余裕を持たせておくことが欠かせません。
最後に、複数行から同時に審査を取る「ショッピング行為」は印象を下げる恐れがあります。候補を三行ほどに絞り、物件概要と事業計画書を整理してから打診することで、金利や融資比率の条件が有利になりやすいです。
キャッシュフロー安定化とリスク管理
まず押さえておきたいのは、収入の柱を複数持ち、支出を可視化することが長期安定への近道だという点です。家賃収入は季節変動があるため、年間を通じた平均で黒字になる設計が求められます。
空室リスクへの対策として、募集開始を退去の一カ月前にずらす「早期募集中断戦略」が有効です。レインズの統計によると、募集期間が30日多いだけで成約賃料が平均3%下がる傾向が出ています。家賃保証会社との提携や、家具付きプランの導入も成約スピードを高める手段となります。
修繕リスクは、購入時にインスペクション(建物診断)を実施し、10年分の修繕計画を作ることで予測可能性が高まります。長期修繕計画に基づき、毎月家賃の5%を修繕積立に回すルールを設定すれば、不意の出費で資金繰りが崩れる心配が減ります。
金利上昇リスクについては、フラットに固定金利を選ぶか、変動金利の場合でも金利上昇時の返済額を試算しておくことが必要です。日本銀行の「金融システムレポート2025」は、今後5年間で政策金利が1%上昇するシナリオを示しています。この水準を前提に、返済比率が40%を超えないか確認しておくと安心です。
2025年度に活用できる税制・支援制度
実は2025年度も、個人投資家が活用できる優遇策がいくつか継続しています。最も身近なのは「住宅ローン控除の併用不可」を避けつつ、不動産所得で赤字を出した場合に給与所得と損益通算できる制度です。
建物部分の減価償却費は、木造22年、RC47年の定額法が基本となります。年収700万円層が木造アパートを新築した場合、建物価格3000万円なら年間約136万円の償却費を計上でき、所得税・住民税が合計で30万円ほど軽減されるケースがあります。
2025年度税制改正では、青色申告特別控除65万円が電子帳簿保存を条件に維持される見込みです。クラウド会計ソフトを導入すれば手間をかけずに控除を受けられ、キャッシュフローの改善に直結します。
さらに、住宅セーフティネット法に基づく「登録住宅賃貸人制度」は2025年度も継続中で、高齢者や子育て世帯向けに賃貸する場合、改修費の一部を補助する自治体があります。補助率や上限額は地域差があるため、購入検討段階で自治体窓口に確認すると良いでしょう。
まとめ
本記事では年収700万円層が不動産投資を始める際に押さえるべき要点を説明しました。投資スタイルの選定、物件タイプごとの特性、融資戦略、リスク管理、2025年度の税制優遇を理解すれば、会社員でも安定収益を目指せます。まずは自己資金比率とキャッシュフローを試算し、自分に合った物件を一つ選んで情報収集を始めてみてください。行動を起こすことで、資産形成のスピードは確実に加速します。
参考文献・出典
- 国土交通省「土地白書2025」 – https://www.mlit.go.jp
- 不動産経済研究所「首都圏賃貸住宅市場動向2025上期」 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 日本銀行「金融システムレポート2025」 – https://www.boj.or.jp
- 日本政策金融公庫「2025年度 融資利用者実態調査」 – https://www.jfc.go.jp
- 総務省統計局「家計調査年報2024」 – https://www.stat.go.jp