不動産の税金

比較 不動産 相続の最適解とは

相続で急に不動産を受け継いだとき、「売るべきか、貸すべきか、それとも共有を解消すべきか」と迷う人は多いはずです。税金や管理コストのほか、家族間の意見調整も必要になるからです。本記事では、2025年12月時点の制度と市場データを踏まえながら、不動産相続で押さえるべき比較ポイントを整理します。読むことで、取れる選択肢と判断基準を具体的に理解でき、将来のトラブル回避や資産最大化につなげられるでしょう。

相続で受け継ぐ不動産の基本を押さえる

相続で受け継ぐ不動産の基本を押さえるのイメージ

まず押さえておきたいのは、相続財産としての不動産が持つ特徴です。現金と違い、分割が難しく、評価額と実勢価格がずれる点が意思決定を複雑にします。国税庁の路線価は相続税評価の基準ですが、実際の売買価格は国土交通省の地価公示より上下することもしばしばです。つまり、相続が発生した時点で「税務上の評価」と「市場価格」を別々に把握する姿勢が重要になります。

次に、共有名義のまま放置すると管理責任が分散し、修繕や売却に全員の同意が必要になります。持ち分譲渡や共有物分割訴訟という解決策もありますが、時間と費用がかかるため、早期に方針を決めるほうが合理的です。また、2024年4月に施行された相続登記の義務化により、2027年3月までに手続きを終えないと10万円以下の過料となる可能性があります。

さらに、固定資産税や都市計画税は保有している限り発生します。総務省の統計では、一般的な木造一戸建ての年間固定資産税は10〜15万円程度ですが、築年数や所在地によって大きく変わります。相続人が複数いる場合、このランニングコストをどのように分担するかも事前に合意しておくとトラブルを防げます。

売却か保有かを決める損得比較

売却か保有かを決める損得比較のイメージ

ポイントは、「短期的な税負担」と「長期的な収益」の両面で比べることです。売却を選ぶと、譲渡所得税と住民税が課税されますが、取得費加算の特例を使えば相続直後の3年10か月以内の売却で税負担を抑えられます。この特例は2025年度も延長されており、相続税を取得費に加算できるため、節税効果が高いといえます。

一方、保有して賃貸に回す場合、毎年の家賃収入が得られ、長期的にはインフレヘッジにもなります。国土交通省の家賃動向調査によると、2025年上半期の首都圏マンション平均賃料は前年同期比で2.1%上昇しました。人口が集中するエリアでは、堅調なキャッシュフローを期待できます。しかし、空室率と修繕費のリスクを見積もる必要があります。

つまり、売却益と賃料収入を単純比較するのではなく、残債の有無、減価償却費、物件の老朽度合いまで加味した「実質利回り」を計算したうえで意思決定することが不可欠です。また、築古物件ならインスペクション(建物診断)で修繕費を把握し、売却価格の交渉材料にする方法も有効です。

相続税対策としての比較視点

重要なのは、現金での納税資金確保と、将来の二次相続を見据えた節税です。相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で、2025年度も変更はありません。評価額が基礎控除を超える場合、現金納税ができるかをまず確認しましょう。不動産を保有したまま納税すると、教育資金や生活費に影響を与えるリスクがあります。

一方で、不動産を賃貸することで評価額を下げる「貸家建付地(かしやたてつけち)」の特例が活用できます。この方法では、自用地評価額に比べ約20%の減額が見込めるケースもあり、長期的な節税効果が大きいです。ただし、遺産分割協議前に賃貸契約を結ぶと相続人間でトラブルが起きやすいので、協議成立後に進めるのが安全です。

さらに、2025年度の小規模宅地等の特例は、賃貸住宅用地なら面積上限200平方メートル・50%減額が適用されます。自宅として住む場合の特定居住用(330平方メートル・80%減額)とどちらを選ぶかで節税効果が変わるため、居住の実態と将来計画を踏まえた選択が欠かせません。

賃貸経営と管理の実務を理解する

実は、相続した不動産を「貸す」と決めても、管理体制が整わなければ収益は安定しません。管理会社に委託するなら、管理料は家賃の5%前後が一般的ですが、首都圏の一部では3%というプランも登場しています。手数料だけでなく、入居者募集力や設備トラブル対応の速さを比較すると、委託料の差額以上の価値を得られる場合があります。

また、修繕積立の計画を立てておくことが将来のキャッシュフローを左右します。日本建築学会の指針では、鉄筋コンクリート造マンションの大規模修繕周期は12〜15年が目安です。外壁改修や給排水管更新で数百万円単位の費用がかかるため、家賃収入の10〜15%を毎年積み立てると、急な出費にも対応しやすくなります。

自主管理を選ぶなら、入居者対応の24時間窓口や家賃督促などを自力で行う必要があります。家族が高齢の場合や遠方に住んでいる場合は負担が大きいので、部分的に管理会社へアウトソーシングする「サブサブリース方式」も検討するとよいでしょう。

2025年度の支援制度と金融環境

まず押さえておきたいのは、住宅金融支援機構が実施する「相続空き家リフォーム融資」です。2025年度は、耐震性向上と省エネ改修を同時に行う場合、金利が年0.4%優遇されます。リフォーム後に賃貸や売却を目指す場合、自己資金を抑えつつ物件の価値を高められるメリットがあります。

また、金融機関の融資姿勢も変化しています。金融庁の資料によると、2025年上期の不動産業向け新規融資額は前年同期比8%増となり、地方銀行が相続対策ローンを拡充しています。固定金利は2%台前半が主流ですが、地域や物件評価によっては1%台後半も提示されるため、複数行で比較すると条件が改善しやすいです。

一方で、長期金利は日本銀行のイールドカーブ・コントロール幅拡大により、将来的に緩やかな上昇が想定されます。そのため、変動金利で借りるなら、将来2%程度の上昇を見込むストレステストを行い、家賃収入が返済額を上回るか確認すると安心です。

まとめ

ここまで、相続した不動産を「売る・貸す・持ち分整理」という観点で比較し、税負担や管理コスト、2025年度の制度まで幅広く解説しました。不動産相続は感情と数字が交錯する分野ですが、評価額と実勢価格を切り分け、ランニングコストと税効果を数値化すれば、最適なシナリオが見えてきます。まずは物件の現況調査と家族間の情報共有を行い、専門家とも連携しながら具体的なアクションプランを立ててみてください。

参考文献・出典

  • 国税庁「令和6年分 相続税の申告事績」 – https://www.nta.go.jp
  • 国土交通省「地価公示・地価LOOKレポート2025」 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省統計局「住宅・土地統計調査(2023年速報)」 – https://www.stat.go.jp
  • 金融庁「金融レポート2025上期」 – https://www.fsa.go.jp
  • 住宅金融支援機構「リフォーム融資 商品概要(2025年度)」 – https://www.jhf.go.jp

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