不動産の税金

不動産投資 どこで買う?初心者が後悔しない立地選びの極意

賃貸需要が伸びるエリアはどこか、人口減少時代に資産価値を保てる場所はどこか──初めての不動産投資で悩む最大のポイントは「どこで買うか」でしょう。物件価格や利回りの数字だけを見ても、実際に運用が始まると想定外の空室や修繕費に直面することがあります。本記事では、立地選びに迷う読者へ向け、人口動態データの読み方から制度活用まで丁寧に解説します。読み終える頃には、自分の投資目的に合ったエリアを具体的に絞り込む方法が見えてくるはずです。

立地選びが未来のリターンを左右する

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まず押さえておきたいのは、立地はキャッシュフローだけでなく将来の売却価格にも直結するという事実です。たとえ表面利回りが高くても、需要が先細る地域では長期保有に耐えられません。つまり、「不動産投資 どこで買う」という問いは、短期の家賃収入と長期の資産価値を同時に検証するプロセスなのです。

一方で都心部は物件価格が高く、利回りが低めになる傾向があります。しかし、空室率の低さとリセールバリューの高さで総合パフォーマンスは安定しやすいのが強みです。対照的に郊外は取得価格を抑えられ、初期投資効率は良好ですが、人口減少や交通網の変化が収益を揺るがします。重要なのは、家賃収入と出口戦略のどちらを優先するかを決め、その基準でエリアを選定することです。

人口動態を読み解くコツ

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実は、人口統計はエリア選びの羅針盤になります。総務省「住民基本台帳人口移動報告」(2025年版)によると、東京都、福岡市、名古屋市など五大都市圏は依然として転入超過が続いています。転入が多いエリアは賃貸需要が底堅く、長期の人口減少局面でも相対的にリスクが低いと考えられます。

さらに細かく見るなら、15〜39歳の若年層比率に注目してください。この世代は賃貸ニーズが最も高く、移動も活発です。例えば福岡市中央区では若年層比率が36%を超え、同市平均の29%を上回ります。このような区単位のデータを掘り下げることで、同じ市内でも投資妙味の差が見えてきます。

一方で地方都市でも、大学や工業団地周辺に限れば人口流入があるケースもあります。秋田県大館市では2024年にIT企業のデータセンターが稼働し、周辺の単身用アパートの入居率が10ポイント改善しました。つまり、市全体の人口減だけで判断せず、局所的な需要源を確認することが欠かせません。

公共交通とインフラ計画をチェック

ポイントは、現在の交通利便性だけでなく将来のインフラ計画に目を向けることです。国土交通省「都市計画事業一覧」(2025年3月版)によれば、名古屋市では2028年開業予定の地下鉄新線が決定しました。予定駅から半径500メートル圏内の土地取引価格は、発表後1年で平均8%上昇しています。

しかし、計画が白紙撤回されるリスクもゼロではありません。大阪モノレール南伸計画(2030年度延伸予定)のように、地権者調整で遅延する例もあります。そのため、投資家は市の公式資料と議会議事録を照合し、予算計上の有無を確認する姿勢が求められます。予算が確定していれば工事進行率も追いやすく、価格上昇を狙った戦略が立てやすくなるでしょう。

加えて、バス路線の新設やオンデマンド交通の導入も見逃せません。さいたま市では2024年からAIオンデマンドバスが導入され、郊外部の高齢者移動を支える施策が進行中です。移動手段が確保されれば郊外物件でも空室リスクを抑えられる可能性があります。つまり、交通計画は「線」だけでなく「面」で把握することが大切です。

家賃相場と購入価格のバランス

基本的に、家賃相場と購入価格の比率が投資の妙味を決めます。国土交通省「賃貸住宅市場概況調査」(2025年版)では、東京23区の平均家賃は1Kで8.4万円、政令市平均は6.1万円です。一方、同規模の中古区分マンション価格は東京23区が約2,900万円、政令市が約1,800万円となっています。単純計算の表面利回りは東京が3.5%、政令市が4.1%前後で、地方中核市に行くと5%台まで上昇します。

しかし、利回りが高いエリアほど入居期間が短く、原状回復費用がかさむ傾向がある点に注意が必要です。例えば仙台市の築20年ワンルームでは平均入居期間が2.8年、福岡市では3.4年というデータがあります。頻繁な入退去は広告費やクリーニング費用を押し上げ、実質利回りを削ります。そこで、購入前に「賃貸管理会社の平均入居期間」をヒアリングし、費用計算に織り込むことが欠かせません。

また、家賃下落率の推移も重要です。東京都は過去10年間でワンルーム家賃が年平均0.3%上昇していますが、札幌市は同期間で0.6%下落しています。長期保有前提なら、家賃が横ばい以上か、下落幅が小さいエリアを選ぶことでキャッシュフローの安定度が高まります。つまり、購入価格の安さだけでなく、家賃の維持力を示すデータを並行してチェックする必要があります。

2025年度の制度を味方にする戦略

重要なのは、現行制度を踏まえて資金計画を最適化することです。2025年度も住宅ローン減税は一定の条件下で利用可能で、投資用区分ではなく自宅用住宅に限られますが、将来的に賃貸転用を視野に入れる「住み替え投資」では活用余地があります。ただし、賃貸化した時点で残期間控除は受けられなくなるため、時期を見極めることが欠かせません。

一方、登録免許税の軽減措置(2026年3月31日登記分まで予定)は、個人が一定の要件を満たす中古住宅を取得する際に適用されます。取得コストを抑えられれば、キャッシュフロー改善に直結します。また、固定資産税の新築住宅減額特例は2027年3月まで延長されており、新築アパート投資を検討する際のコストメリットとなります。

さらに、環境性能に優れた建物には自治体独自の補助金が充実しています。横浜市の「ZEBリノベ補助金(2025年度)」では、断熱改修費の3分の1を補助しており、電気代を削減できるため家賃アップ交渉の材料にもなります。補助金は年度予算が上限に達すると受付が終了するため、早期の情報収集が不可欠です。

結論として、制度は「もらえるもの」ではなく「賢く取りにいくもの」と捉え、立地選びと資金計画を連動させることが成功への近道になります。

まとめ

この記事では「不動産投資 どこで買う」という問いに対し、人口動態、交通計画、家賃相場、制度活用の四つの視点から検討する方法を紹介しました。まず、若年層の転入超過エリアを軸に絞り込み、次に将来のインフラ計画でプラス要因を確認します。そのうえで家賃下落率と購入価格を比較し、現行制度を活用して投資効率を高める流れが有効です。最後に、データを定点観測し、想定とずれたときは早めに軌道修正する柔軟さを忘れないでください。立地選びは一度きりではなく、常にアップデートする姿勢が安定収益への鍵になります。

参考文献・出典

  • 国土交通省 都市計画事業一覧(2025年3月版) – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省統計局 住民基本台帳人口移動報告(2025年版) – https://www.stat.go.jp
  • 国土交通省 賃貸住宅市場概況調査(2025年版) – https://www.mlit.go.jp
  • 日本銀行 金融システムレポート(2025年10月) – https://www.boj.or.jp
  • 福岡市オープンデータ 年齢別人口(2025年1月) – https://ckan.open-governmentdata.org

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